マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 もう何度目かになる、連絡無しのお休み。大変申し訳ありませんでした。
 やはり、根本的な書く時間の確保の問題もあるのですが……今回はちょっと色々とありました。


仕事忙しい!? 書く時間無い!?

時間が出来た! 手元に『RF3』と『RF4』が! やるっきゃない!

全データ結婚して子供ができたデータで埋めたぞ! イチャイチャを書く意欲も湧いたぞ! 各キャラのイチャイチャの方向性も固まったぞ!!

……あれ? 何で自分、こんな胸が痛むことを書かないといけないの? なんでハイライトが仕事しないような人が出てきてしまうの?(今ココ!


 ……と、ここ最近の作者でした。
 周回したことがある? 全ヒロインの結婚生活を体験したこともある? それでも新品を前にすると無性にやりたくなってしまう農夫としての(さが)

 そして、ルーンファクトリーをプレイした後に今作を見て感じる「あれ?」感。まぁ、ルーンファクトリーのほうが修羅場とかが全くと言っていいほど無い、その辺りがあっさりした優しい世界なのが大きいとは思うのですが……。
 でも、『IF』のほうのルートはともかくとしても、本編に採用された『ロロナルート』はどうしてもそのあたりを消化せざるを得ないので、仕方のないことなのですが、それでも何と言うか、話を考えた作者本人のくせに胸が痛んでしまい、執筆スピードも過去最悪に。「このキャラたちを悲しませたかったのだろうか?」と一人で勝手にこことを痛めてます。

 ……この後に待っているであろう、イチャイチャを心の糧にし、頑張って執筆していきます。


 そして、今回のお話である【*6*】ですが、簡単に言うと「周囲の反応・様子」といったところでしょうか? そのため、少々これまでとは書き方が異なっております。



ロロナ【*6*】

【*6*】

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

『その1:トトリ「変な先生」』

 

 

 

 

***青の農村・マイスの家***

 

 

 変だ。

 

 わたしが感じた事を言い表すとすれば、たったそれだけになると思う。

 でも、「何が?」って聞かれたら、ちょっと説明が必要になるかもしれないけど……それでも、それでもやっぱり「変」の一言が一番ピッタリ合っているんじゃないかな?

 

 それが何の話かって言うと……

 

 

 

「それじゃあ、「調合」だけじゃなくって「採取」を焦点に当てた授業も(おこな)っていくってことでいいんだよね?」

 

「はいっ、それがいいと思いますよ。いくら『青の農村』内で手に入る素材は多いって言っても、限度がありますし…………って、あ……」

 

「…………」

 

 これまでにこうして集まっての作業でほとんど完成したと言っていい教科書。それが置かれたテーブルを囲んでわたしと先生、あとマイスさんで『錬金術』の授業の事について会議をしていた。……けど、その途中、先生がぽけーっとしている時がこうしてよくある。

 

 窓の外から見えてる空に浮いている雲を見てる……とか、そういうわけじゃなさそうなんだけど……? だって、今回なんか、ロロナ先生の顔はテーブルを挟んだ反対側にいる()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだもん。……マイスさんを見てるのに、マイスさんが言ってることに気付かないっていうのも、変な話だけど。

 

 

 そして……「こうしてよくある」って言ったように、これは今日が初めてじゃないし、何回もあってる。

 『塔の悪魔』を倒してから少しの間、わたしは『アランヤ村』のほうでゆっくりしてた。で、ちょっと前からまた『アーランドの街』やそのそばの『青の農村(ここ)』なんかに(かよ)って『学校』の『錬金術』関連の事をまた手伝ったりするようになったんだけど……その、こうしてまた来るようになった頃から、ロロナ先生の様子がちょっと変になってた。

 

 

 つまりは、『塔の悪魔』を倒した後……わたしが『アランヤ村』にいる間に先生に何かあったんだと思うんだけど……全く見当もつかないんだよなぁー?

 

 

 そんなことを考えているうちに……って言っても、時間にしてほんの数秒だったとおもうんだけど……わたしだけじゃなくマイスさんもロロナ先生の異常に気がついたみたいで「あっ、()()()ぁ」とちょっとだけ困ったように笑いながら肩をすくめてた。

 そして……

 

「ローローナー?」

 

「ん? ……んー…………あ、えっ……うぇぇえっ!?」

 

 イスから立ち上がって、先生に近づいて行き……先生の目の前で軽く手を振りながら名前を呼ぶマイスさん。

 ロロナ先生は、その手と声でようやく動いて……マイスさんの顔を見てビクッと跳び上がりながら変な声を出す。

 

 なんでかはよくわからないけどワタワタともの凄く慌てるロロナ先生と、その様子を見て苦笑いをするマイスさん。

 ……これも実はよく見る光景になってたりする。先生が動かなくなった時、その場にマイスさんがいたらまずこうなるんだから、ある意味当然かも? それに、先生がこうなるのってマイスさんの家に来てる時が大半だし……。

 

 

 

 そんな光景を見てわたしは「変」って思うわけだけど……おそらくは「アーランド一のお人好し」であるマイスさんは、(そんな考え)よりもっと別のことが真っ先に来るみたいで……

 

「ロロナ、最近なんだか元気がないみたいだけど……大丈夫? 体調が悪いとか、どこか痛いとか、熱っぽいとか……何かお薬とか必要なら用意するし、看病だって!」

 

「か看病!? それはそれで……じゃなくて!? えええ、ええっとー……調子が悪いってわけじゃないけど、何というか……と、とにかくっ! 大丈夫だから! 本当に大丈夫だから!!」

 

「うーん……ならいいんだけど? 本当に何かあるんなら、遠慮しないですぐに言ってね?」

 

 赤くなってる先生の顔を覗きこんだりしながら心配するまいすさんと、手と首をブンブン振ったりして言葉だけじゃなく身振り手振りで「大丈夫!」ってことを必死に伝えようとするロロナ先生。

 まあ、そこまで必死に否定されればさすがのマイスさんも「そう?」と一応手は引くんだけど……最後の最後まで、何も言ってなくてもその表情だけで「ホントのホントに大丈夫?」と心配してるのが丸わかりだ。

 

 

 そして、これまでの傾向から考えると、次にマイスさんはきっとおやつと飲み物を用意してくる……と思う。たぶん。

 そうわたしが予想した通り、マイスさんは動き出した。

 

「それじゃあせっかくだし……って言うのはおかしいかもしれないけど、今から休憩にしよっか? 『ドーナツ』作ってくるから、適当にのんびり待ってて!」

 

 そう言うとマイスさんは、わたしや先生が何か言ったりするよりも早くスタコラサッサと『キッチン』のほうへと行ってしまう。

 ……となると、この場に残されるのはわたしと先生なんだけど……

 

「………………」

 

 またぽけーっとして、マイスさんが消えた『キッチン』のほうをじーっと見ているみたいで……とにかく、変っていうかおかしいっていうか……。

 

「…………はぁ」

 

「うわぁ」

 

 落ち込んでるって感じじゃなくて、物憂げって言うか影というか深見っていうか……がある感じの……、先生らしくない子供っぽくない大人しめのため息をついていた。

 それがあまりにも似合わなくて、ついつい「うげっ」ってなっちゃって変な声が漏れ出てしまった。

 

 

 

 先生、本当にどうしちゃったんだろう?

 やっぱり、わたしがこっちにいないうちに何かあったんだろうけど、いったい何が……?

 

 あっ、それとも、もしかして、ただ単に頭ぶつけちゃったとか、変なもの食べちゃったとかなのかな?

 

 

 あと……

 

「…………」

 

 窓の外にチラチラ見えるあの黒いのって、もしかしなくてもステルクさん……だよね? なんであんなところに……?

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

『その2:メリオダス「今、欲しい物」』

 

 

 

***オルコック家邸宅の一室***

 

 

 

 コツ コツ コツ コツ…… コツ コツ コツ コツ……

 

 

 

 室内に一定のリズムで鳴り響く音。

 それは靴が床を叩く音……室内を特にあてがある訳でも無く、だがジッとしていられずに自宅の書斎の(はじ)から端を行ったり来たりしている……他でもない()()の足音だ。

 

「うむぅ……」

 

 こうして頭を悩ませる時というのは、以前は王宮の大臣用の執務室でということが多かったが、大臣職から身を引いた今では書斎で……いやっ、今はそんなどうでもいいことを考えている場合ではない!!

 

 

 

 わしが頭を悩ませることとなっている原因は、他でもないあのトリスタン(バカ息子)だ。

 

 

 昔から何かとありはしたが、奴に後任の大臣を任せてからもうすでに十年近い月日が経とうとしている。

 勤務当初から口だけは達者だったがどこか物の見方に(かたよ)りがあるように思えたが、まだ精神的な幼さが残っている程度に思っていた。事実、それは時間が経つにつれ大体解消されていった。

 

 しかし、トリスタン(バカ息子)の仕事が向上したのは途中まで。いつからか悪くなっていったのだ。

 いや、「いつからか」という表現はいささか不適切かもしれんな。あのトリスタン(バカ息子)の勤務態度が悪くなったのは大きく()()()()()()()()があったように思える。

 

 一度目は、今から6,7年ほど前だっただろうか? 目に見えてやる気を無くし、本当に最低限の最低限という程度の仕事をやる程度になってしまった。

 二度目は、今から3,4年ほど前……のはずだ。これまでのやる気の無さは()()()解消され……その代わり、頻繁に仕事から抜け出すようになったのだ。これには王国時代の他所から帰って来たばかりの生意気さがあふれかえっていたころのトリスタン(バカ息子)が戻って来た感覚を覚えたものだ。

 

 

 しかし、まあ、そんなトリスタン(バカ息子)が最近また仕事を頑張りだしている……と思った矢先に大事が起き……その後の出来事が、あろうことかそのトリスタン(バカ息子)が引き起こしたものだと知ることとなった。

 それが、今、わしの頭を悩ませていることの大元の原因だ。

 

 肝心の国のことは周りに任せっきりで、外での仕事(活動)にいそしんでいる……ということになっているが、ほんの最低限の報告以外ロクに情報や連絡を寄越さない元国王兼現国長、ルードヴィック・ジオバンニ・アーランド。

 昔からわしの頭を悩ませている一番の人物なのだが……その元国王がついこの前家に来て話したのは、トリスタン(バカ息子)が、世間一般に言われる「マイスの結婚騒動」に乗じる形で「国」の名を(かた)ってマイス()の元に見合い話を持っていったという話……つまりは、あのトリスタン(バカ息子)がまたやらかしたというわけだ。ただし、今度はある意味盛大に、だ。

 

 

 そもそも、元国王が国に戻ってきたのも、その「マイスの結婚騒動」によるもので…………いやっ、そこの話はもういい。もうマイス()自身の口から結婚の話は真っ赤なウソだということは聞いているし、噂も完璧に消えたわけではないが大分下火にはなってきている。

 

 も! ん! だ! い! は! 問題は!! トリスタン(バカ息子)マイス()に見合い相手を勝手に仕向けた()()だ!!

 

 

 

 結婚はウソってことになってるけど、本当にウソなのか?→マイス()とそういう仲になりそうな相手って?→もしかして……ロロナ(錬金術士)!?→いやいや、まさか……でも、二人の距離って妙に近いなぁ→……とりあえず邪魔をして、その間に何としてもコッチが距離を縮めよう!

 

 

 

「馬鹿か、アイツは! ウソだと知っておきながら、その対応! 焦ったからといってそんな姑息な手段を取るとは!! 彼の迷惑になる可能性を考えんかったのか!?」

 

 もちろん、話はトリスタン(バカ息子)本人からではなく、元国王から又聞きのような感じで聞いたものであるうえに推測も混ざっているかもしれないため、全てが正しいとは限らないだろう。

 だがしかし、もはや、「馬鹿」以外の言葉が思いつかない……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 というのも、彼が進めている『学校』の設立、それにトリスタン(バカ息子)が差し向けた見合い相手()()()人物が協力することとなり、結果的にではあるが、マイス()が抱えていた悩みの一つを少なからず解決することとなったのだ。……トリスタン(アイツ)自身、そうしようと思っていなかったことだろうが、それでもマイス()の助けになった事には変わりない。

 

 

 そして、もう一つ。わしを大いに悩ませることが……!

 それは、元国王から去り際に付け足されるように聞かされた一言………。

 

 

 『ああ、そうそう。少々面倒……と言っては悪いかもしれないが、そのお前の息子の想い人の錬金術士だが、どうやら『青の農村』の村長に気があるようでな……肝心のマイス()のほうは不明なのだがな』

 

 つまりは「トリスタン→ロロナ→マイス」の「三角関係」ということらしい…………。

 

 ……息子があの錬金術士に好意を持っていたということは……言われるまで、知りもしなかった。でなければ、未だに結婚しないトリスタン(アイツ)に見合いの場をセッティングしたりはしない。だが、よくよく考えてみれば「何故今の今まで気付かなかったのか?」と思ってしまうほど、トリスタン(アイツ)の行動にはあの錬金術士が関わっていた。

 

 アトリエを閉鎖させるための工作をしていたころも、思い出してみればトリスタン(アイツ)がまともに工作をしていることは無かった。

 そして、トリスタン(バカ息子)の勤務態度が悪くなった()()()()()()()()。一度目は「錬金術士が街を出て旅をし始めたころ」やる気をなくした。二度目は「錬金術士が街に帰って来たころ」仕事から抜け出すようになった。

 

「…………むしろ、何故今まで気付かなかったんだ!? これでもかというくらい、察せそうなタイミングはあったじゃないか!!」

 

 我ながら、鈍感すぎるというか何というか……この察せなさには、脳裏に一瞬だけ、息子が飛び出して行った時の仕事ばかりに目をやっていて家庭を疎かにしていたころの記憶がよぎってしまった。……あの時とは色々と状況や事情は違うというのに、な。

 

 

「というか、わしはどうすればいいんだ!? トリスタン(アイツ)にはいい加減身を固めてほしいとは思っているが、だからと言ってマイス()に少なからず迷惑をかけたことがどうでもいいというわけではない。それにマイス()にも幸せな家庭を築いて欲しいと思っている。しかし、やはりそこは息子の恋を応援したいという気持ちが出てくるのだが……何故、よりにもよってその間に入るのが、あの錬金術士とは……悪い、と言うわけではないのだが、何と言うか気不味さが…………ああーっ! どうすればー!!」

 

 あてもなく書斎の中をウロウロしてしまっていた脚を止め、頭を抱える。しかし、答えなど出るはずも無く……唯々(ただただ)、頭と胃が痛くなってきた。

 

 

 胃薬……は、今、ちょうど手元に無い。

 こういう時は様子見がてらにマイス()に厄介になることが多いのだが……今、どういう顔をして会いに行けばいいのやら……。

 …………あと……ここ最近、生え際の後退が激しくなってきた気が……加齢のせい、だけではない気がするのだが……

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

『その3:????「助けて……」』

 

 

 

***アーランドの街・広場***

 

 

 

 

 

 『アーランドの街』の中心部にある広場。

 人々が行き交い、子供がはしゃぎ遊び、婦人(マダム)たちが世間話に花を咲かせる……そんな活気のある場所、のはずなのだけど、その一角が周囲に比べて妙に淀んでいた。

 

 

「「……はぁ」」

 

 

 偶然にも揃ってため息をついたのは、ベンチの両端に座っている二人。

 

 一人は、旅の大道芸人の人形師・リオネラちゃん。旅の大道芸人って言っても、ここ最近はほとんど街と『青の農村』を中心に活動しているから、「旅の」って感じはしないかもしれない。

 もう一人は、この『アーランド共和国』の大臣を務めているタントリスさん。一応はそこそこ偉い立場なはずなんだけど、仕事をほったらかしにすることも多々あるらしい。……今日は、仕事をちゃんとやってきたのかな……今の時間からして、やってない気がするけど……?

 

 そんな二人が、揃いも揃って落ちこんでるっていうか、凄く暗い。リオネラちゃんなんて、ホロホロくんとアラーニャちゃん(ふたり)を抱き抱えた状態で、ドヨンとした暗いオーラが見えるのに口元はうっすらと笑ってて……最初にその顔を見た時は、背筋がゾッとした。

 

 

 そんな二人が何をしているかと言えば……

 

「……こんなところにいないで、彼のところに行ったらどうなんだい?」

 

「それはー、その、マイスくんは、今は『学校』のことで忙しいから……『魔法』のことなら私も手伝えるけど、それは昨日で、今日は違うし……」

 

 目を合わせたりすることも無く……というか、その目が光が無いというか薄いんだけど……ただただ、二人(そろ)ってベンチに座って脱力していた。

 

 そこまで言ったリオネラちゃんに変わって、今度は抱き抱えられているホロホロくんが喋りだした。

 

「そういうオメーは何してんだよ? ロロナ(あの嬢ちゃん)んところに行って、いつもの歯の浮きそーなセリフでも吐いてきたらどうなんだ?」

 

「ロロナは今、弟子のトトリ(あの子)と一緒に(マイス)の家に行ってるよ。さっき言ってた『学校』のことなんじゃないかな? ……正直、暑い眼差しをマイス(アイツ)に向けてるロロナを目の前で見たら冷静でいられる自身がなくてね。だから、今会いに行くのは遠慮してるんだ」

 

「まぁ、簡潔に言うとヘタレちゃったのね」

 

 ぐはっ!?

 

 タントリスさんの言い訳じみた語りに、アラーニャちゃんがビシッと言い切った。……それでダメージを受けてるのが、タントリスさんだけじゃなくてリオネラちゃんも、っていうのが何とも言えない。……ついでに私も……。

 

 

「「はぁ……」」

 

 再び揃ってため息を吐いた二人は、また

 

「色々と扱いやすそうだからって『貴族』のところに発破かけたわけだけど……よくよく考えてみたら、キミみたいな娘にやってもらったほうが良かった気がするよ」

 

「そんなことない、と思います。長年一緒にいたけど、マイス君、私をそういう目で見てそうに無かったから……」

 

「まぁ、じゃなきゃ、キミがマイス(アイツ)の家に泊まってたっていう時期に、アイツが手を出してそのままゴールイン……いや、なんでそうならなかったのさ?」

 

「な、なんでかなぁ……あはははっ……はぁー……」

 

 力無く笑ったかと思えば、ひときわ大きくため息を吐くリオネラちゃん。

 そんなリオネラちゃんに、やっぱり目を向けることも無くトリスタンさんは言葉をかけた……。

 

「……キミも随分と変わったよね? 昔は僕の顔を見るだけでも逃げ出しそうだったのにさ」

 

「それは、あなたを怖がる理由が無くなったから……。もう逃げなくてもいい世界に、マイスくんが変えてくれたから……マイス、くんが……。だから、もう私はこれ以上は……(ぐすっ)

 

「ああ……確かにあの『魔法』でそういうチカラに対する意識は大きく変わったからね。それにしても、「変えた」かぁ……そういう意味では僕も少なからず……いやっ、でもそのあたりはロロナの存在が大きいかな? ……はぁー……もうちょっと頑張ってみてそれでもロロナが彼と結ばれたら……仕事もやる気でないし、昔みたいにちょっと旅に出てみようかなぁ?」

 

 

 感極まったのかすんすん泣きはじめてしまうリオネラちゃんに、ポケーっと空を見上げて役職をほっぽりだそうと考え始めているトリスタンさん。二人とも目が……。

 

 

 

 

 と・い・う・か!!

 

 私も色々吐き出したい気持ちとか、愚痴とかいっぱいあるんですけど~!?

 でも、そばに居る二人がちょっと私よりもいろんな意味で重いっていうか、そこに割って入って何か言うほどの覚悟が無いっていうか……

 

 

 私、フィリー・エアハルトは、たまたま居合わせてしまったがために、ベンチの両端に座っているリオネラちゃんとトリスタンさんに挟まれる形で、冷や汗を流しつつ背筋を伸ばして黙って座ってます……。

 とっ、とにかく! 誰かこの重苦しい空気から助けてください~!?

 




 なお、『その3:????「助けて……」』は3回ほど書き直してこの短いものになった模様。
 プロトタイプの二つは「重い」、「ドロドロ」、「後味悪い」のどうしようもないものでした。

 ……正直なところ、これまでの『ロロナのアトリエ編』や『ロロナのアトリエ・番外編』などでもそうだったように、その過去のせいでリオネラがかわいそうなことになってしまうという問題が。リオネラにスポットライトを少しでも当てると、その辺りがどうしても浮き彫りになってしまい、加減が難しい所です。
 マイスくんとの相性自体は悪くないですし、個人的にも『ロロアト』にしか出てこなかったことを悔むくらい好きなキャラなので、『リオネラルート』ではこれでもかってほど幸せになって欲しいです。というか、もう絶対します。

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