マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 ただでさえ色々と余裕がないのに、リアルでもコッチでも「ああしたい」、「こうしたい」、「ここでこうするならこっちは……」と自分で勝手に仕事を増やして、自分で自分の首を絞める計画性の無い人間……私です。


5年目:マイス「…………。」

 

 

***青の農村・マイスの家***

 

 

 

 家のコンテナや倉庫の中に保管されている様々な素材を種類ごとにまとめて作ったリストの書類束に目を通しながら、僕はつい「うーん……」と(うな)ってしまう。

 

 もちろん全体に目を通すわけだけど、特に注意深く見るのは『木材』、『鉱石類』に属する素材たち。

 何故かと言えば……

 

「『学校』施設の建設材料だから、気にかけとかないといけないからね……」

 

 そう。建物そのものにしろ、中の設備……机や椅子といった基礎的なものから、錬金釜や()といったものまで……必要なものは山ほどあるのだ。それも、一個人(いちこじん)が使うためではなく、『学校』という集団で活動する場で使うもののため、文字通り規模が違う。

 なので、そのための素材の管理は大切。大切、なんだけど……ちょっとした問題にぶつかってしまった。

 

 

「うーん……? 思ったよりも()()()()()なぁ?」

 

 

 そう。素材が想定していたよりも消費されていないのだ。

 予定よりも建設や設備の作製が遅れている……そんなわけでもない。むしろ、全体的に見て、予定よりも早く進んでいるくらいだ。だから、むしろ減りが大きくなって然るべきなんだけど……

 

 素材が減っていない。なのに、建築の進捗状況自体は問題無く進んでいる。それって少しおかしな話だけど……じゃあ「欠陥建築」だとかそう言う話なのかと言えば……それも違うと思う。

 というのも、なんとなくだけど、原因はわかる気がしているのだ。

 

()()()()()()()()……っていうか、おかげだよね?」

 

 トトリちゃんのお手伝いのためにロロナが作った『ほむちゃんホイホイ』という装置から生み出されるホムンクルス、通称「ちむちゃんず」。長女のちむちゃんから始まり、紆余曲折あって最終的に男の子4人、女の子5人の計9人となったちむちゃんずは、今現在『トトリのアトリエ』と『ロロナのアトリエ』のそれぞれのアトリエに配属され活動している。

 

 『ロロナのアトリエ』のほうにいるちむちゃんずなんだけど……その子たちが自分たちで申し出てきて、仕事が無い時に同じ規格の物が複数個必要な建築資材を『()()』してくれることになったのだ。特に、『塔の悪魔』を倒した後、トトリちゃんが『アランヤ村』に帰っていた時期は沢山『()()』してくれてたみたいで……

 

 で、その『()()』なんだけど……その言葉通り、作って欲しいモノを見せたら、それと全く同じものを作ってくれる。それも何の素材も無しに、だ。

 前に一回、ちむちゃんたちにどうしているのか聞いてみたことがあるんだけど、全く教えてくれそうになかった。というか、本人たちも「え?」と首をかしげてた……不思議なこともあったものだと思う。

 

 

 そんなわけで、素材の消費も無しに沢山の建築資材をそろえることができたわけで……それが結果的に、今、僕の目の前にあるリストの『木材』や『鉱石類』の縁の少なさで目に見える数値として現れてきたわけだ。

 代わりに、ってわけじゃないけど、『パイ』の素材となる『食材』の素材がそこそこ減った。……まあ、ちむちゃんたちが手伝ってくれる理由が、僕の作った各種『パイ』が欲しいっていうものだったからね?

 

「まぁ、このまま何も問題が発生しなかったら……とりあえず、素材に関しては不足したりはしそうにないかな?」

 

 建築等には僕がたくわえている物を使って村の人たちに負担は駆けさせないって言った時、コオルには「えー……」って、ものすっごく嫌そうな顔をされて何度も拒否されたりもしたんだけど……彼が心配していたであろう「足りなくなる」っていう事態にはなりそうにも無い。

 次会う時にはこのリストと今後の建設予定をまとめたものを用意して、「ね? 大丈夫だったでしょ?」と胸を張ってみせよう。

 

 

 

 

 

 そんなことを考えていると、不意に玄関のほうからノックの音が聞こえてきた。

 

「おーいっ、マイスいるかー!」

 

 噂をすればなんとやら。聞こえてきた声は、さっき僕が思い浮かべていたコオルのものだった。

 ちょうどいい……と思ったんだけど、ここでふとある事に気付く。

 

 ……なんか普段よりも声色が強めって言うか、焦り……?

 いや、理由はわからないけど、その声だけで「普段は無い何かがあった」と察せる程度には様子がおかしかった。だけど、鍵のかかってない玄関戸を返事も聞かずに開けたりするほど切羽詰まっているわけでもなさそう……一体どうしたというんだろう?

 

 

「はーい、っと。どうしたの?」

 

 玄関戸を開けて顔出すと、そこには予想していた通りコオルがいた。そのコオルは僕の顔を見て「よぅ」と軽く手をあげて挨拶を簡単に済ませ、そのまま本題を喋りだす。

 

「いやな、さっき昔からの行商仲間が村に来たんだけど……そいつが、()()()()()()()()()()を連れて来ててさ」

 

「大怪我!?」

 

「ああ。なんでも『青の農村(ウチ)』に来る道中で倒れてるのを見つけたとか……つっても、見つけてすぐにそいつが手当てしてくれたみたいで、命に別状は無さそうだぜ」

 

 一気に心配になった僕を、手で「まあまあ」と制止しながらコオルは「けど……」と言葉を続けてきた。

 

「もう見つけてから一日以上は経ってるのに目を覚まさない、って心配しだしてさ。んで、オレのところに来たってわけだ。……んで、怪我の原因を考えると、()()()()()()()()()()()()()()かなんだけど……なんにせよ、目覚めた瞬間パニック状態になるかもしれねぇ。そうなった時、落ち着かせられそうな奴って言ったらマイスが真っ先に思い浮かんだんだ」

 

「だから、僕のところに?」

 

「一緒にいろいろしてるから、やることが沢山あって忙しいのは百も承知だ。村の事とか『学校』のこと……そのあたりはいくらかオレが代わりにやってやれるからさ、ちょいと引き受けてくれねぇか?」

 

 確かに、個人的に『モンスター小屋』を持っているのは流石の『青の農村』でも僕ぐらいだ。ちゃんと落ち着ける場所がある……それは傷を負っているモンスターにとってはかなり重要なことだ。

 それに、もし仮に人為的な原因で怪我を負ってしまったのであれば、人に対して極度の警戒心を持つかもしれず……モンスターが原因で怪我を負ってしまったのであれば、モンスターに対して極度の警戒心を持つかもしれない。

 ぼくであれば、そのどちらにも対応できる…………まぁ、コオルは僕が『ハーフ』であることは知らないわけだし、ただ単に「モンスターと一番仲良くできる奴だから」っていう感じに考えて僕のところに来たんだろうけど……。

 

 

 もちろん、断る理由も無い。なので、僕はコオルに向かって大きく頷いた。

 

「任せてよ。仕事の中には僕がやらなきゃいけないことも少なからずあるから、流石に一日中そばに居るってことは出来ないけど……でも、そういうところはウチのモンスター()たちに手伝って貰ったりして何とかするから。……で、その大怪我したモンスターっていうのは今どこに? あと、どういった種族なのかもわかったら、色々と準備しやすいんだけど……」

 

 行商人さんが『青の農村(ここ)』まで連れてきたってことは、『島魚』みたいな大きなモンスターではないんだろう。

 おおまかな大きさや骨格、その種族の習性などがわかっていれば、休養させる場所の環境や必要な物などを今すぐにまとめられる。なので、できれば先に知っておきたいんだけど…… 

 

 コオルは、僕の問いに「あー、うーんとだな……」と呟きながら頭をかいて明後日の方向を向いたりした後、ちょっと考え込むような仕草をして「実はだな……」と粗らめて口を開いた。

 

()()……のような、そうじゃないような?」

 

「えっ? どういうこと?」

 

「いやっ、たぶん同じ種族のモンスター(ヤツ)は見たことあると思うんだけどな……大怪我してる(今回の)ヤツで()()()っていうか」

 

 なんとも言えない感じのコオルに、僕はつい首をかしげてしまう。

 そんな僕の様子を見てか、コオルは苦笑いを浮かべる。

 

「まっ、実際に見てもらったほうが早いかもな」

 

 「ついてきな」。そう言って歩き出したコオルを……まあ、村の中だし、玄関の鍵は閉めなくていっか……僕は追っていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 ああ、()()()()()()()……。

 

 

 僕は、コオルが言っていたことがどういうことなのか、理解した。

 

 

 

 

 

 コオルに連れられてきた場所にいたのは、包帯などの治療処置をしたのだとわかるものが身体のあちこちにみうけられる……目を閉じてぐったりとしている一匹の『()()()()』だった……。

 




 ……そうですよ。
 どうしても各ルートのほうに気が行きがちですが、本筋のストーリーも進めて行かないといけないんです。まぁ、各ルートというか結婚相手も必要不可欠なストーリーとなるんですけども。

 つまり……そういうことです。

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