マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 映像を文字で表現しきれないことに悩む、今日この頃。







※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……


マイス「錬金術士とアクティブシード」

***ロロナのアトリエ***

 

 

 

 

 

「そういえば、2人に聞きたい――というか、見てもらいたいものがあるんですけど……」

 

 僕はアップルパイを食べ終えたロロナとアストリッドさんに、以前 見様見真似の錬金術で創った『アクティブシード』の『ジャックの種』をカゴから取り出し、見せた。

 なお、ホムちゃんはティーカップの片づけをしてくれている最中のため、そばにはいなかった。

 

「えっと……師匠、何でしょうコレ?」

 

「初めて見るな。何かの実か?」

 

 最初は興味なさそうだったアストリッドさんも 『ジャックの種』を目にすると、ロロナと同じように不思議そうにそれを見ていた。

 ということは、錬金術で普通につくったりすることはないものなのだろう。あまり、深くは聞けなさそうだ。

 

 

「一つ聞きたいのだが、キミはこれを何処で手に入れた?」

 

「手に入れたというか、『錬金術』でできてしまって……」

 

「「『錬金術』!?」」

 

 2人そろって盛大に驚いた。特にアストリッドさんがこんなに驚くのを見るのは初めてだった。

 僕は『ジャックの種』ができるまでの経緯を全部説明すると、ロロナはポカンと口を開け驚き、アストリッドさんは長い溜息をついて首を振っていた。

 

「参考書も見ずに ロロナの真似と自分の発想で錬金術を行い、予想していた物とは別のものではあるが成功しまうとは……。そもそも、『錬金術』で新たな作物を創ろうという考え自体……」

 

「ま、マイス君が……自分でレシピを考えて『錬金術』を……」

 

「えっと……?」

 

 どうしよう、よくわからないけど2人ともショックを受けているみたいで話が進みそうにない。

 すると、片づけを終えたホムちゃんが戻ってきて 種を見ながら問いかけてきた。

 

「それで、コレはどういったものなのですか?」

 

「対モンスター用なんだけど……一応ここでも使えるものだよ」

 

 

「えっ? 植物の種なんだよね? アトリエでも使えるってどういう?」

 

「よくわからんまま終わらせるのも(しゃく)だ。ホム、植木鉢か何か用意――」

 

「あ、何も無くて大丈夫ですよ」

 

 不思議そうにしてるロロナはとりあえずおいといて、ホムちゃんに用意させようとしているのを止める。

 

「なに?」

 

「家の床とかでも問題無いのは僕の家で実験済みですから」

 

 そう言って『ジャックの種』を部屋の中心付近に落す、「芽生えて」と念じながら。

 

 

――――――

 

 床に落ちた種から瞬時にツルが上へと伸び、それにともない何枚かの葉も茂る。

 ツルの先端から垂れ下がるように 人の頭より大きなツボミが膨らむ。

 そして、ツボミが眩い光を放ったかと思うと……

 

先程まであった植物は消え、そこには ギザギザの口と穴のような目を持った巨大カボチャがたたずんでいた。

 

――――――

 

 

「これが『アクティブシード』の『ジャック』です」

 

「ほうっ。これはまた……」

 

 そう紹介すると、アストリッドさんは興味深そうに観察しだした。

 対してロロナはおっかなびっくりといった様子で、あわあわ狼狽えていた。

 

「お、襲ってきたりしない……?」

 

「大丈夫だよ。種を植えた人の意思に忠実だからね」

 

「そうなんだ……なら安心かな?」

 

 ロロナはそう言うと『ジャック』のほうへと近づき、ペタペタ触ってみたり 口の中を覗いてみたりしだす。

 それが気になるのか、『ジャック』は口を少しモゴモゴしたりしている。

 

 

「体はほぼ植物と同じだが、まるで生きているかのように動いている……ふむ、内部はどうなっているのか気になるな」

 

 こっちに向きなおると、アストリッドさんは片手で眼鏡の位置をなおしながら僕に聞いてきた。

 

「コイツは半永久的に動き続けるのか?」

 

「どれくらい維持できるか試したことがないので詳しくはわかりませんが、一定以上のダメージを受けるか、「戻る」ように命令したら種に戻ります。ただ、その後一日寝かせないともう一度使用することはできませんけど……」

 

「となると、外的要因が無ければ動き続ける可能性もあるということか」

 

 「なるほど」と頷くアストリッドさん。

 

 そういえばロロナが前に「師匠もたまには真面目に仕事してほしい」と言ってたけど、こういったところを見る限り、本当に「できない」のではなく「しない」人なんだろうなと感じた。

 普段見るアストリッドさんは、大抵ロロナを弄ってるか寝ているかだからなぁ……

 

 『シアレンス』にもいたなぁ。アストリッドさんとはちょっと違う感じだけど仕事をあんまり真面目にしない子が……

 

 

 

*-*-*-*-*

 

≪んー……≫

 

≪枕は……あそこの商品棚に≫

 

≪んしょ≫

 

≪…………くぅ≫

 

*-*-*-*-*

 

 

 

 初めて会った時も雑貨屋さんのレジカウンターで店番なのに寝てて、起きたかと思えば「本日の営業は終了しました」の一言。その後に母親に叱られるまでの一連の流れは、インパクトが強くてよく覚えてる。

 いや、そもそも『シアレンス』のみんなとの初対面はどれもインパクトが強かった気も……

 

 そういえば()()()は都会に憧れてたけど、この『アーランドの街』を見たらどういう反応をするだろう?

 まあ最初は喜んでも結局働かないといけないからって、変わらずだるそうにしてそうだけど。

 

 

 

「聞いているか……?」

 

「あ、ごめんなさい。ちょっとボーっとしちゃって」

 

 思考を目の前の現実に戻すと、アストリットさんが何やら僕に言っていたみたいで、聞き逃してしまっていた。

 

「それで、だ。アレを種の状態で少々借りたいのだが」

 

「はい、いいですよ。でも取り扱いには注意してくださいね?」

 

「それはこっちのセリフだ。『錬金術』の扱いには注意しろ。とは言っても、私から特に教えたりするつもりは無い。まあそれに、キミは思いつくままにやってみればなんとかなる気もするがな」

 

 「てきとうだなぁ」と思ったが、『錬金術』をてきとうに行った僕が言えたことじゃないのに気付く、返す言葉に困った。

 

 

「た、たしゅけてぇー!?」

 

 

 そんな声が聞こえ そちらを見ると、口を閉じモグモグしているジャックと その周りをうろちょろしているホムちゃん。

 ということは、声の主のロロナは………

 

「もしかして、自分で口の中に入っちゃった!?」

 

「中はどうなってるのかなーって思って……じゃなくて!? 早く! モグモグされてる!! 美味しくいただかれちゃうー!!」

 

 ごめん、必死なんだろうけど 何だか楽しそうに聞こえてきてる……

 

 

「……一応聞くが、アレは大丈夫なのか?」

 

「ええっと、一応あんまり痛くはないと思います。ジャックは特別攻撃力が高いわけじゃなくて、モンスターを丸のみにして拘束し状態異常を与えるのが特徴ですから。それに、すぐに吐き出すかと……」

 

 まさにその時、「ぺっ」という擬音語がふさわしい吐き出し方でロロナは吐き出され、床に転がった。怪我もなさそうで安心した。

 

「びびビックリしたー……あ、れ? な、何だかカラダががが痺れて……動くのガ……」

 

「毒になってたらどうしようかと思ったけど、状態異常は運良く麻痺だけみたい。でも、麻痺を治す『マヒロン』は今持ってないし……」

 

 『マヒロン』を作るための材料、家にあったかな……?

 

 

「そこは問題無い、この私がいるのだから麻痺の解消など容易なことだ」

 

 「ふふんっ」と微笑みながらアストリッドさんが一歩前に出る。

 というかこの人、何か手をワキワキしてるし、顔が段々を悪い笑い方に……

 

「だがまあ、今後のことも考えて一応どういう症状なのか、他に異常は無いか、詳しく調べておかねばな。隅々まで……な」

 

「し、師匠!?なんでそんなにニヤニヤして……逃げれないっ! いやーーーーーー!!」

 

 

 

「グランドマスターとマスターは仲が良いですね。ホムも見習わなければ……」

 

「……そう?」

 

 とりあえず『ジャック』を種の状態に戻し、ホムちゃんに預け、後でアストリッドさんに渡すようにお願いし、僕はアトリエをあとにした。


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