マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 ちょっと短め、マイス君視点のお話。

 内容はおおよそ「モコッ! モコココ、モコー!」って感じですかね(意味不明)。
本当は、「マイス君、本当に珍しく真面目に難しいことを考える」です。

 あと、こちらでは更新の都合上直前の告知になってしまいましたが、『IF』のほうが明日4/5に更新予定です。



5年目:マイス「モコモコとモコモコと行商人」

***青の農村・モンスター小屋***

 

 

 

 人とモンスターが一緒に暮らす『青の農村』。その村の村長を一応やらせてもらっている僕の家の裏手……『離れ』と隣接する『倉庫』、そのまた隣に建てられている一軒屋『モンスター小屋』。……まぁ、「小屋」って言ってはいるけど、僕の住んでいる家のような普通の家と大きさはあんまり変わらなかったりするんだけど。

 

 名前から分かる通り、モンスターたちが住む家の()()()()()()

 『青の農村』が村として形になってからというもの人が増えるのと比例するかのようにモンスターも増え、それに合わせて『モンスター小屋』も村の中に数か所建てられたんだけど……昼間は基本モンスターたち(みんな)は外で活動してるし、外で寝る方が性に合ってるっていう子も多かったりするから、家と言うよりも、「雨や雪からの避難所&もしもの時の病院代わり」くらいの扱いの建物だったりする。特にウチの裏手のはその傾向が強い。

 

 

 

 そんな『モンスター小屋』に、僕は今いるんだけど……

 

 

 

「モコモコ、モコ?」

 

「…………もこ」

 

「モコ。モコッコ、モーコ?」

 

「もこー」

 

「モコ……」

(まいったなぁ……)

 

 困ってしまった僕は、金のモコモコ(変身した)状態のまま腕を組み首をかしげてうなった。

 

 

――――――

 

 

 問題の中心は、もちろん……って言っていいかはわからないけど、少し前にコオル伝いで僕のもとで保護された『モコモコ』だ。

 

 

 僕が初めて会ったころ、まだ意識が戻っておらずぐったりとしていたモコモコ。けど、応急処置もちゃんとされていたこともあってか『モンスター小屋(ここ)』で看病するようになってからというものの怪我はみるみるうちに回復していき、ほんの数日でほぼ全快した。

 

 で、身体の傷が治っていけば、衰弱気味だった精神面も自然と回復に向かっていき……怪我が全部治りきるかどうか、といった時期くらいからモコモコは目を覚ますように……。

 ()()、それがまた()()()()()とそれに(ともな)()()を浮かび上がらせることとなった。

 

 

 逃げたんだ、(人間)を見て。

 

 

  治りかけていた怪我が少し悪化してしまうくらい暴れて(おびえて)しまい、落ち着かせるのも一苦労だった。

 

 一旦離れて金モコ状態で再び会うことで一応はなんとかなったんだけど……それでも、金モコ()(人間)と同じ匂いがするからか、暴れはしなくなった者の警戒心を解いてはくれなかった。そのため、なんとなくの感情しか読み取れないくらい意思疎通が出来なくなってた。こっちから話しかけても、返事が返ってこない……完全な敵意を向けられてきて会話にならないことはあったけど、こういったことは初めてだった。

 そんなこともあって、目が覚めてすぐのころは食事や怪我の治療の経過確認など最低限の時間意外は、僕以外の他の子……例えば、一番付き合いの長いウォルフとかに……交代交代(こうたいごうたい)でモコモコのことを見守ってもらうようにした。それでも、最終的なことも考えて、日々接していく時間を僕も少しずつ増やしていってるんだけどね。

 

 

――――――

 

 

 でも、これでわかったことがある。

 この保護されたモコモコが負っていた怪我は、()()()()()()()()()()()だということ。本人から直接聞けてはいないから確定じゃないけど、ほぼ間違い無いと思う。

 

 それに、()()()()()()も別段初めてというわけでもない。『青の農村(ここ)』にいるモンスターの中には()()()()()()がある子も実はいるんだ。……だからこそ知っている。その子たちとしっかりと向き合うには、お互いにしっかりと根気と時間が必要だってことは……。

 

 

「モコ、モココー……」

(でも、()()()()()()がある、って言うのはわかってたんだけど、やっぱり……)

 

 

 さっきも言ったように「初めて」じゃない。でも、だからと言って全くショックでないわけでもない。

 

 そもそも、モンスターを『はじまりの森』へ返す『タミタヤ』どころか『魔法』そのものすらなかった世界なんだ。そんな世界で、モンスターがはびこる地で人々が生活していくには何かしらの対処法を持たないといけないのは当然のことだ。

 文化から何から違う世界。だから「仕方ないことだ」と割り切ってた部分もある。……第一、僕だって()()()()を使っているとはいえモンスター(相手)の意思をくみ取らずに戦って倒すことなんて、それこそ何回も数えきれないほどやってきた。この気持ちは「偽善」に他ならない。

 

 それでも、こうして『青の農村』が出来てからは、隔たり無く受け入れ……また、人とも交流を深め、互いに理解し合い、一緒に楽しく過ごせる環境づくりをしていって……ほとんど自己満足なんだけど、「これでいい」って自分の気持ちに折り合いを付けて完結させていた。

 

 

 ……だというのに、僕と同じ世界から来たであろう『モコモコ』が傷ついているのを見たら、どうしてこうも心が揺さぶられてしまうんだろう?

 

「モコモコモーコー」

(他でもない、みんなに失礼なことだよね)

 

「キュゥ?」

 

 そんなことを考えていたら、手近にいた、今日の午前中モコモコのことを見てくれている『たるリス』くんの頭を、金モコ()の小さな手でいつの間にか撫でてしまっていた。

 『たるリス』くんは、僕がどう思ってそんな風に言っているのかまでは流石に理解できなかったみたいだったけど、僕の感情は感じ取ることはできているみたい。でも、その上で、なんで撫でられる(こうなる)のかはわからないみたいで、首をかしげる塔にその丸い身体を傾けている。

 

 

 僕はそんな『たるリス』くんにあとの事を頼んで『モンスター小屋』から一匹(ひとり)出て行ったのだった……。

 

 

 

――――――――――――

 

***青の農村***

 

 

「モコー、モモッコ……」

(ゆっくり時間をかけてでも心を開いてもらって、何とかしてモコモコ(あの子)に何があったのか聞くとして……)

 

 怪我のことはもちろん、そもそもどうして『アーランド(こっち)』に来ちゃったのか、その経緯も……

 

「モコ?」

(って、それはモコモコ(あの子)自身だけじゃなくって「新種のモンスター」全体にいえることかな?)

 

 

 というのも、調べてみてわかったけど、()()()()と言うべきか各地で目撃情報が挙がった「新種のモンスター」とは8割くらいは『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 人前に現れたり、他のモンスターのナワバリに割って入ったり、元いた群れを分散させてしまったり……間接的な部分を含めれば、本当に色々な方面に影響を与えただろう「新種のモンスター」。それが『シアレンス(あっち)』のモンスターだったということには驚かされた。

 

 それで改めて詳しく情報を見ていってわかったことがあるんだけど……「思ったより少ない」それが素直な感想だった。

 

 もし、いつからか『アーランド』でも見られるようになった『ゲート』。その内のいくつかが「『シアレンス(あっち)』の世界」もしくは『シアレンス』の『ゲート』と同じく「『はじまりの森』」に繋がっていたとしよう。その場合、そのゲートのある場所一帯は『シアレンス(あっち)』のモンスターだけになっていてもおかしくない。

 けど、「群れを見た」という話はほとんど(ゼロ)に近い。多くて3,4匹が一緒にいたってくらいで、全体のうちのほとんどが1,2匹の目撃情報なのだから……正直「『ゲート』で繋がっている」っていう仮説の信憑性は半々くらいも無いかもしれない。

 

 

 

「モココ、モコーコ……」

(なら、なおさらその子たちがコッチに来ちゃった理由がわからないんだよなぁ……)

 

 今現在、そのあたりのヒントになりそうな情報を持っているだろう存在は、先程の『モコモコ』である。……が、今の状態から見るに、その子から情報を聞き出すのには時間がかかってしまうだろう。

 なら、それまでボーっとしておくか……と言われて、大人しくしておくはずもない。他に何か糸口が無いか模索するべきじゃないかな?

 

「モコ~……モコッ!」

(他の「あっちの子」にも会ってみたいし、今度は外に行ったりしてる『青の農村(ウチ)』のモンスター()たちに何か心当たりが無いか聞いてみようかな……そうと決まれば!)

 

 

 

 僕は人の姿に変身せず(戻らず)金モコ状態(モコモコの姿)のまま村の中心部のほうへと出て行くことに決めた。

 

 

 その足でテッテコ駆けていく……んだけど、家の前方にあるウチの畑の範囲を越えたあたりで、ふと僕の家(こっち)に来ている人がいることに気付いた。

 

「モコ……」

(あれは……)

 

「よぉ、チビモコ」

 

 その人物は、活発な印象のある赤毛の商人、昔から何かとお世話になってるコオルだった。

 コオルも金モコ()に気付いていたみたいで、立ち止まって片手を軽く上げてきた。僕もそれに(ならう)うようにして、彼の少し前で立ち止まり「モコッ」と手を上げて答えてみた。

 

「あっちから出てきたってことは、()()()()の様子を見てきたところか?」

 

 「例の仲間」っていうのは、怪我をしていた『モコモコ』のことだろう。

 あの子を僕のところに連れてきた時の様子からもわかるように、コオルは『金のモコモコ』と今回の『モコモコ』とが同族である事をすでに理解しているんだろう。まあ、毛の色や身に着けている装飾(アクセサリー)系統の有無の違いはあれど、それ以外はほぼ同じだからわかってもそうおかしくはないかも。

 

 何はともあれ、コオルの言った通りなので僕は頷いて見せることにした。

 

「モコ!」

 

「ならよかった。まっ、怪我の悪化なんかはそうそう無いだろうけど、どんな様子だ? ……やっぱ、まだマイスのことは怖がってるか?」

 

「モココ……モコー……」

 

「……そっか。まっ、そんな思い詰めることは無いさ。お前の底なしのお人好し加減を一身に受けてればそのうち相手もわかってくれる、そこんところはオレが保証してやる……って、マイスに言ってやってくれ」

 

「モコ~」

 

 まったく、コオルったら。そうやって、本職の行商に加えて村の運営のことにも色々してくれてるっていうのに、更にはわざわざこうやって来て他人(ひと)への気遣いをしてまわるんだから……。

 けど、コオルが言ってくれているように、こっちから誠心誠意をもって接していけば、きっとあのモコモコも心を開いてくれるに違いない。今、僕は、()()()()()()()()()()()

 

 

 

 コオルの言葉に自信が湧いてきて……それとは別に「やれそうなことはやっていってみないと!」って気持ちもドンドン湧いてきた。

 だから、コオルに一言二言言ってからその場から離れようとした……んだけど、

 

 

 

 

「あ~もこちゃんだ~!」

「ん? ほんとうだー」

「もふもふ!」

 

「モコッ」

(あっ)

 

 おそらくは、手を繋いで散歩していたんだろう『青の農村(ウチ)』の仲良しちびっ子三人組。

 遊び盛りな年頃の子たちが(金モコ)のような絶好の遊び道具を見つければ……それは当然、飛びついてくるに決まってる。

 

「あそぼ~」

「あそんでー」

「あそべ!」

 

「モ、モコーッ!?」

(えっあっ、ちょ! わー!?)

 

 逃げるには一歩遅く、あっけなく捕まってしまい……胴、耳、腕をそれぞれ捕まれ、拘束されてしまう。

 

 

村のちびっ子たちに連行される中、(金モコ)の大きな耳には「……まぁ、子供と遊ぶのは良い気分転換になるかもしれねぇし、とりあえず放置でいいか」という、声の感じからして苦笑交じりだろう呟きがかろうじて聞こえてきたのだった。

 

 




  次回、また『ロロナ』ルートのお話。

 大体、クーデリアが頑張ってくれるお話になります(結果、好転するとは言ってない)。
 

 やっぱり、各ルートの関係上、共通のお話でメインキャラたちを中々出せないのが、話を作るうえで厳しいです。……自業自得ですね!

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