終盤、途中で視点が変わりますのでご注意ください
追記
Twitterで告知したように、明日5/3に『IF』の『クーデリア【5-2】』更新予定です。
【*9-2*】
―――――――――
***ロロナのアトリエ***
「うー……う~!」
朝、くーちゃんのところに駆け込んでからどれだけの時間が過ぎたか……よく憶えてないけど、すーっごく経った……わけじゃないっぽい。
まだお昼にもなって無いはずなのに、一日くらいアトリエの中をウロウロしちゃってるような気がする。
「くーちゃん、遅いなー。やっぱり、マイス君が怒ってたりしたのかなぁ?」
私の話を聞いてくれた後、すぐにくーちゃんはマイス君の様子を見に『青の農村』へと行ってくれたんだけど……未だに
いや、まさか、帰ってきても私のところに報告に来てくれないとか、そんなこと無いよね……? ちゃんと、マイス君がどうしてたかとか、教えてくれるよね!?
「うーん。色々心配だし、やっぱり一緒に行ってたほうがよかったんじゃ……でも、マイス君が私を避けちゃってたら会えないかもだし、こそこそ隠れてついて行ってそんな所をマイス君に気付かれちゃったら、いっそう嫌われて顔を見てくれないどころか何にも喋ってくれなくなるかも!? そんなことになったら、私……!」
絶対、立ち直れなくなっちゃうよ……!!
逃げられたりしないように不意打ちで目の前に立って、それで真っ先に謝って……でも、謝るっていっても、なんでマイス君が
きっと、私が何かマイス君を怒らせちゃうようなことをしちゃったんだと思うけど……
「もしかして、私、イビキがうるさかったりしたのかな?」
「前に野営した時に聞いた限りじゃあ、ロロナの寝息は静か……というか、かわいらしかった気がするけど?」
かわいいかどうかはわかんないけど、これまでにそういうことを指摘されたりしたことは無いのは無いからなぁ。
「それじゃあ、寝相が悪くて寝てる間に蹴っちゃったとか……言われたこと無いけどなぁ~?」
「そうだね。良かったとも言えないけど、それでもそんなに激しくは動いたりはしてなかったかな」
まあ、そんなに動いちゃうんだったら
とすると、あとは……
「ああっ!! マイス君と一緒に『パイ』作って食べる夢てたから、寝ぼけてマイス君のこと
「本当に齧ってたかどうかは知りようがないけど……とりあえず、夢でも君に見てもらえてる彼にちょっと嫉妬しちゃうかなぁ?」
うう~ん? 私の歯形っぽいのは、マイス君のどこにもついてなかったと思うんだけど……まさか、よく見れなかった顔に? 例えば、顔の中で噛みつきやすそうな鼻、とか?
………………………………。
……………………?
…………っ!?
「ええっ!? だっ、誰ぇ!?」
「誰って、顔も忘れられたとなると流石に傷つくんだけどな」
そんなことを言って肩をすくめてるのは――さっきまで独り言だった私の呟きに答えてた人――いつの間にかアトリエに入ってきてたタントさん。……って、ホントいつの間に入ってきたんだろ……?
「で、どうしたんだい? なんだか難しい顔しちゃってさ」
タントさんがそんないつも通りのかるい感じの口調で聞いてきて、私はちょっとだけ悩んだ。
とは言っても、今回はマイス君に対して私が何か失敗しちゃったってだけの話だし、別にそんな隠すことでもない気もする。だから、
「実は――」
―――――――――
「――ってわけで、今はくーちゃんが様子を見に言ってくれてるんです」
「ふぅん……」
私の話を聞いてたタントさんはあごに指を当ててなにやら考えるようなそぶりをしてた。
……
なんで私が悩んでたのか、っていう話はした。ただ、「マイス君と一緒の布団で寝た」ってことは流石に話さないでおいた。だって、私としてはまんざ……別に悪くはないんだけど、噂なんか立っちゃったらマイス君に迷惑かなーって。
……嫌がられたら、それはそれで私がキツイし……。
とにかく、言ってないから大丈夫なはず。
……でも、何か忘れちゃってるような、見落としちゃってるような……?
「ねぇ。
「えっ、あ、はい。そうですけど……?」
「何かあったっけ?」って考えているところにタントさんから声をかけられて、ちょっと慌てちゃいながらも返事をする。
「移動時間を考えると、まだ帰ってこないっていうのもあり得なくは無いけど……案外、『
「のんびり、お茶……?」
「ほらっ、あの二人って何だかんだ言って相性ピッタリに見えない? 二人でいることも多いし、なんていうか「気の置けない仲」って感じ」
た、確かにっ! 昨日もそうだったけど、マイス君のところに行ったらくーちゃんもいた、ってことは昔から時々あった気もする……。
「はっ!? ま、まさか……!?」
くーちゃん、私がこうして悩んでる
―――――――――
***マイスの家(妄想 byロロナ)***
「うわ~ん、クーデリア~! ロロナが、ロロナがいじめてきた~」
「はいはい、大丈夫よー。あの子が勝手に来ないようにアトリエで待っておくように言ってあるから」
「クーデリア~! クーデリア~!」
「さぁ、嫌なことはお酒で忘れちゃいましょう。今日は多少飲み過ぎるくらいでいいわよ。心配しないで、もし酔いつぶれちゃってもあたしが
「クーデ……ううん! クーちゃん! 大好きだよっ!!」
「うふふふふ」
―――――――――
「マイス君が、盗られちゃう~!?」
お、おおお、落ち着いて私っ!! これはあくまで想像の世界の話で……!
そ、そうっ! だって、昨日くーちゃんが言ってたじゃない! 「あたしはマイスを狙ったりしてない」って!
だから大丈夫。心配しなくたって、そんなことには……
……って、あれ?
「「くーちゃん
そうだよ!? マイス君がくーちゃんのことを好きになるってことは普通にあるんだった! っていうか、可能性的には大きい気がする……。
だって、くーちゃんってカワイイんだよ? なんだかんだ言って優しいんだよ? お仕事だってイッパイできるし、戦っても強いし、色々知ってて頭もいいし!
……あれ? なんか本当に有り得そうな気が……?
「でもでもっ! マイス君って鈍感だし!
「……ロロナ?」
「はっ!?」
い、今、どこまで口で漏れちゃってた!? わかんない!
と、とにかく! 恥ずかしいし、勢いでも何でもいいから誤魔化して……!!
「あの、これはーそのっ! 何でもないっていうか、フィリーちゃんの真似っていうか――――
いきなりのことで……なんて言ったらいいんだろう?
ちょっと浮いたような……ううん、本当に浮いてたのかもしれない。
続くようにして、背中から何かにぶつかったような感触。そんな痛かったりしたわけじゃないけど、衝撃がポフンッって感じであって、身体の中の
「――やっぱり、って言うべきかな?」
ちょっとむせながらも、衝撃で反射的に閉じちゃってた
そして、目の前には――――いつものにこやかな表情とは違う、鋭い目をした
「目の前で話してても、隣にいても、なかなか僕だけを見ていてくれないのは分かりきったことだったさ。……でも、ロロナが一生懸命に打ち込んでる姿は僕も嫌いじゃなかったし、国を動かす側になって君のその手助けをしたいとも思った」
えっ、どういう状況……?
あれ? これはソファー? 私、今ソファーに……?
「えっ、ちょ――」
「
押さえつけてる手がギュっと閉じて握りしめられる。
「
「っ」
数秒くらい……かな?
そのくらいの間をあけて、右手を押さえてたタントさんの左手が離れた……けど、その右手を私は動かせなかった。
動かしたかった。けど、
「タントさ――」
「……なんて、ね?」
スッっと、タントさんの顔が離れる。
その口元は笑ってたけど、目は髪型が少し崩れてしまってるせいで目元まで長髪がかかってしまってて、ちゃんとは見えなかった。
私が何か言うよりも先に、押さえつけてきてたタントさんの右手がクルリと向きを変え、優しく手を握り直してそのままその私の左手を引いて私の上体を引き起こしてくれた。
左手で自分の前髪をかき上げながら、タントさんは喋りはじめる。
「なんだか、こうやってロロナを
「もぅ、からかうって……ホントにもう、タントさんはしかたのない人ですね。でも、それにしては乱暴すぎませんか?」
「ああ、ゴメン。久々過ぎて気持ちが……いや、加減がわかんなくなってたみたいだ。本当に申し訳ない」
私が口をとがらせて言うと、タントさんはいつもの調子で行った後……大きく頭を下げて謝ってきた。
「……
「………………
「
「
顔をあげないまま、私の問いかけに答えるタントさん。その顔は私からは全然見えない。
「そう、ですか? うーん……私の勘違いだったならいいんですけど……」
「でも」と続けるよりも先に、タントさんが動いた。顔を上げて……でも、一緒になって反転したから、最後にちゃんと私に見えたのはタントさんの後ろ姿だけ。そのままタントさんはアトリエの玄関口へと歩いて行った。
「ロロナ」
「……? はい、なんですか?」
「ありがとう。それと……頑張れ。彼はキミのことを待ってると思うよ」
ノブに手をかけたところで振り返って……ちょっと変な笑顔を浮かべてた。
「タントさん……やっぱり…………ううん、違うよね?」
―――――――――
***職人通り***
『もしかして、私、イビキがうるさかったりしたのかな?』
悩むロロナの姿はとても愛おしく……そして、僕ではなく彼を案じてであるという事実が僕の奥底で炎をくすぶらせ……
『実は――』
悩み混じりに彼との思い出を語るロロナの笑顔がとても愛らしく……僕との思い出を語る時も同じ笑顔を見せてくれるのだろうか? と考え、不安に胸を締め付けられ……
『マイス君が、盗られちゃう~!?』
彼を想い、妄想で焦り慌てふためく姿は、好きなロロナであるはずなのに、とてつもなく嫌いな「何か」であるように見えた。
「……ハァ」
『っ』
僕の言葉に、驚き目を見開いた
僕はその顔をやはりというか、好きなものではかった。
「あの表情も好きになれたら、また違ってたのかなぁ……」
関係が好転するとは思えないのがまた笑えるところではある。僕自身はちっとも笑えそうにないけど。
『……
『
あの時、彼女はどんな顔をしていたんだろうか?
「嫌われたくない」という気持ちもあるが、「嫌ってくれれば、諦めようもある」と思っている僕がいる。
いや、それくらいの差は今更なんということもないだろう。そもそも、僕の中で大きく変わる時期があったとすればもっと前…………ん?
「…………」
「「「「ちむ~……」」」」
「ロロナの弟子の……あと、ホムンクルスの子たちか。どうかしたかい……って、聞くまでもない、か」
ちょっと赤くなっている顔色。警戒している目。手に持っている何かの薬品が入ったビンとあと爆弾。
最後のはひとまず置いておいたとしても……残りの要素からして……。
「もしかして、さっきのアトリエでのこと、見たり聞いてたりした?」
僕の問いに、一同はほぼ同じタイミングで頷いた。
「最初のほう何を話してたのかとか、途中の詳しい事情まではよくわからなかったんですけど……でも、ああいうのは、その……よくないと思います」
「ちむっむ、ちむー!」
「ちーむ!」
「ちむちー、ちちむっ」
「ちむちむ!」
「……まあ、その辺りは自覚もしてるから、さ。本当に許されるとは思ってないし、
「む、むぅ……先生も一応許したっぽかったですし、先生が許してるのに私が勝手に何かするっていうのも、確かにおかしいですけど……でもっ」
「ちむ! ちちむちむちっち!」
「ちむちーむっ! ちむちーむっ!」
「そうだそうだ! ロロナが許そうとも、この私が許すはずが無かろう!」「ちむ!?」
「ちむみっ……む?」
何か、今、変な声が……
「えっと……ちむちゃんたちって、普通に話せたっけ?」
「ちむむ?」
「ちむ?」
「ちーむちむ?」
「ちちむ~」
いや、でもさっきの声はどこかで…………
「……まさか!?」
書きたかったことをちゃんとかけているかが不安な今日この頃。
加筆修正するかも、です。
えっ、最後?
そこは変わりませんよ