マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 【11-○】は「マイス失踪」中の各自の行動・心情等となっています。
 なので、ルートごとに場面は結構違いますし、ロロナとトトリのように重なったり……でも内容がかなり違ったりすることもあります。……そう言う予定です。


 引き続き、「独自解釈」、「捏造設定」のオンパレード。

 三人称でのお話となっております。



ロロナ【*11―1*】

 

【*11―1*】

 

 

 「マイス救出」の目標を掲げて各々自分がやるべき役割をこなすべく邁進していく……。

 

 

 そんな中、今回の計画の要といえる部分を任されたロロナとトトリは、『アーランドの街』の『ロロナのアトリエ』に場所を移し、それぞれ試行錯誤をしながら調合を行っていた……。

 

 

 

―――――――――

 

 

***ロロナのアトリエ***

 

 

 

――ぼかんっ!

 

 

「あっ」

 

 音を立てて爆発――とは言っても、周囲の物を吹き飛ばしたりすることのない釜の中だけで済む小規模の爆発ではある――したのは、ロロナがかき混ぜていた錬金釜。どうやら調合に失敗したようだ。

 

「先生、()()……」

 

「集中力を散らさないでください。一段落するまで自分の調合に専念を」

 

「は、はいっ!」

 

 爆発してしまったロロナの錬金釜(ほう)に意識が向いてしまっていたトトリは、二人の補助をしているホムちゃんに指摘され自身の目の前にある自分用の錬金釜の方へと集中を戻した。

 それを確認したホムちゃんは、薄っすらとではあるが確かに黒い煙を上げているロロナの錬金釜へと近づいた。そして、中の様子を確認してからロロナのほうを向く。

 

「……やはり、中身は全部ダメそうです。ホムも手伝いますので手早く片付けてしまいましょう」

 

「ううっ。ゴメンね、ほむちゃん」

 

「かまいません。これがホムの仕事ですし……それに次こそは失敗しなければいいだけです」

 

「が、ガンバリマス……」

 

 凹んだ様子でイジイジとするロロナに「……早く片付けましょう」と言って促すホムちゃん。

 

 

 結局ふたりの片付けが終わったのは、トトリの調合が一段落した後だった……。

 

 

――――――

 

 

「あの、先生が今やってる調合って「『ゲート』を反転させる道具」でしたよね? それってそんなに難しいんですか?」

 

「んーん、そんなことな――「難しいです」――うえっ、そうなの!?」

 

 ロロナとホムちゃんが後片付けを終え、トトリが調合が一段落したところで、「焦ったところで良い結果は出ません」というホムちゃんの発案で小休憩のティータイムが始まり……少ししてからのトトリの疑問。ソレに答えようとしたロロナの言葉――の途中に割り込んできたホムちゃん。それにはトトリよりもロロナが驚かされていた。

 

 

「いや、でもなんとなく何をどう入れたらいいかとかも分かってるからレシピ考えるのも簡単で、工夫もそんなにいらないし、調合自体もそんなに難しくないと思うんだけど……?」

 

 ホムちゃんの言った「難しい」がいまいちピンときていない様子のロロナが、そう反論を述べる……が

 

「でも、その調合を失敗しちゃってますよね?」

 

「うぐっ!?」

 

「それも、何回も……」

 

「うぐぐっ!? そ、それはそうなんだけど……」

 

 トトリの鋭い指摘に、ロロナは胸に手を当てて大袈裟に見えるリアクションを取る。

 

 

 

 と、まあ、そんな調子の師弟の様子を見ていたホムちゃんが、「ですが……」と相変わらずの淡々とした口調で喋りはじめた。

 

「マスターが自信があるのに失敗しているという奇妙な点はさておき、難しいのは事実です。おそらく……トトリ(あなた)では調合は困難かと。まあ、だからといってそちらの調合が簡単だと言うわけではありませんが」

 

「トトリちゃんが調合し(やっ)てるのって、『ゲート』を発生させる道具だよね? ソッチのほうがよっぽど難しそうに思えるんだけど……?」

 

「どうでしょう? 今は完成品(最終目標)のためのパーツを作ってる途中段階で、細かかったりはしますけど作れないーって頭抱えちゃう程じゃないです。うーん……これから大変になってくるのかな? でも、考えたレシピ通りにやれるならそんなこともなさそうだけど」

 

 トトリは自分のやっていること・やっていくことを頭の中で整理し……そのうえで少々悩みつつもそう判断する。そこにホムちゃんが注釈を入れる。

 

「調合そのものは難しくないでしょう。ただ、全てを合わせた上での最終調整は運と根気との勝負だと、グランドマスターは言っていました。失敗しても調合ではなく細かい部分の微調整の繰り返しなので、爆発して部品がダメになったりすることはありませんしそう心配しなくてもいいかと」

 

 「へぇーそうなんだ」と話を聞いていたトトリだったが、不意に違和感を覚え「はて?」と首をひねった。

 

「えっと……グランドマスターって、あのアストリッドさんっていうロロナ先生の先生のこと……だよね? なんで、私と先生とで考えた道具の事を詳しく理解し(わかっ)てるの?」

 

「以前、『()()()()()』の際にグランドマスターが二人の考えたものとよく似たものを作ったことがありました。その時に半ば独り言のようにホムたちに教えてくださったのです」

 

「えっ? 師匠も作った事あったの? じゃあ、それを使えばいいんじゃ……」

 

「今現在、その道具は現存していませんので不可能です」

 

 そう言い切ったホムちゃんの言葉に、二人は顔を見合わせた後、再びホムちゃんのほうを向いた。その目は「なんで?」という疑問を言葉が無くともありありと伝える視線(もの)だった。

 

「理論上問題無いはずの動作を、毎回微調整を繰り返しながら百回ほど試行した末に八つ当たりのため空高くで爆散しました」

 

「師匠でも上手出来なかったんだね、その道具。ちょっと意外かも」

 

「「『ゲート』の発生は、理論一割、素材一割、残りの八割運と偶然。でなければ、この方法でこの私が出来ないなんてことはありえないからな」……とのことで。まあ、グランドマスターは他の研究もしていましたし、元々その道具は「本命」ではなかったそうなので、八つ当たり(そんなこと)をしたのでしょう」

 

「それって負け惜しみ……って、あれ? 私、今からそんなものに挑戦しないといけないんじゃ……さっきホムちゃんが言ってた運と根気ってそういう?」

 

 めんどくさがったりしながらも実は何でも出来る……というイメージが強かったアストリッド(師匠)の意外な一面を知れてなんとなく嬉しくなっているロロナ。

 ただし、トトリは余計にこの先の事への心配を募らせてしまっていた……。

 

 

 「けど……」

 

「師匠がわたしとトトリちゃんとで考えた事を知ってたのは、昔から間を見計らったみたいに突然出てきてたりしたし、そんな師匠の事だからてっきり色々考えてるわたしたちのことをずーと覗き見てたのかと……まぁ、そんなこと無いよね、あはははっ~」

 

 トトリとも出会っていないころの――まだアトリエを護るために王国からの依頼をこなすことに奔走していたころの――昔を思い出して、一人その思い出にふけり微笑み(わらい)ながら言ったロロナ。

 彼女の脳裏にはきっと、アストリッドに驚かされ、からかわれ、いじられたりもした過去が廻り廻っているのだろう。

 

 ただ……

 

 

「……ホムは黙秘します」

 

 

「「えっ」」

 

 そのホムちゃんの意味深な一言で、ロロナとトトリは固まってしまうのだが……。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「それじゃあ、休憩もここまでってことで調合を再開しよっか! ここまでで遅れちゃってる分も取り戻しちゃうくらい、がんばってこー!」

 

 そう元気良く宣言するロロナに、隣に立つトトリが良い笑顔で「はいっ!」と返事をする。

 

 

 

 

 

「では、マスターは数時間散歩でもしてきてください」

 

「うん!――――

 

 

 

 

 

 ――――うん?」

 

 ホムちゃんに言われたことに素直に頷き――数秒の間を持ってから首をかしげるロロナ。その表情(かお)は段々と眉と口とがヘニャリと曲がり……

 

 

「失敗するたびに段々と爆発音が大きくなり、上手くいっていたトトリ()の釜を巻き込んでの連鎖爆発をしてしまわないかヒヤヒヤしますので、とりあえずトトリ(こちら)の調合が終わるまでマスターは行動ということで……」

 

 

「うわ~ん!!」

 

 ……泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 泣いたロロナがアトリエを飛び出して行った後……

 

 

「あのー、ホムちゃん? 私が『アランヤ村』の自分のアトリエで調合すればよかったんじゃ……」

 

「いえ、それだともしもの時の補助や相談といった連携が上手くいきませんので、二人揃って『ロロナのアトリエ(ここ)』でするのがいいんです」

 

「でも……」

 

 これでは本末転倒なのでは?と気にするトトリを他所に、ホムちゃんは淡々とトトリの調合の用意をしている。その準備の手を止めぬまま、ホムちゃんは口も動かす。

 

「それに、マスターはきっとすぐに作り終えてしまうでしょうから、今のうちにこちらの調合を終わらせていた方が良いのです」

 

「えっ?」

 

「本来、マスターほどの腕があれば「『ゲート』を反転させる道具」の調合は、マスター自身がそう思ってたようにそう難しいものではなく、失敗するはずはありません」

 

「でも、先生は実際に何回も失敗しちゃってるよ?」

 

「それは今のマスターはダメダメだからです。あれではどんな調合も失敗しています。原因は単純明快ですので、さすがのマスターでも自覚しているとは思いますが……早く気持ちを入れ替えてもらわないと、ホムも他の人達も、マスターも……そしてきっとおにいちゃんも困ってしまいます」

 

 

 そう言って、不意に作業の手を止めてロロナの出て行った扉を見つめるホムちゃん。それに釣られるようにして同じく扉を見るトトリ。

 

 

 

 

「ときに」

 

「?」

 

「ホムはトトリ(あなた)のことを何と呼べばいいのでしょう? グランドマスターの孫弟子で、マスターの弟子ですから……」

 

「…………え?」

 





 状況説明的な部分が多い今回。

 次回はロロナ視点で心情やらを。そして……(悪い意味で)いつもと違うロロナが前に進むためのきっかけとなる出来事が……?

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