開幕、ネタバレサブタイトル。そして、アクナからおじいちゃん変わってから改変が重ねられて、徐々に徐々に難易度というか表現や展開にトゲが無くなっていって、結果「超マイルド」になりました。
もう、世の中嫌なことだらけだなーっていう話……はおいといて、投稿直前の最終改変に至るまでに紆余曲折あったという話です。簡潔に言うと、今回のギャグシーンの大半が元々はFull-Bokko(される)シーンだったという事をお伝えしときます。それじゃあ、色々と持ちませんでした。
あとは、人気投票とか、発売日が12/13日に決まった『ネルケと伝説の錬金術師たち』のこととか、発売まであと2日の『アーランドの錬金術士1・2・3 DX』のこととか……前にもこんな風に色々書いて、結局何にも惚れられなかった気がしますが、何はともあれ連日投稿です。たたみかけろ、クライマックス。
今回はトトリ視点でのお話となっております。
***街道のはずれ***
「
私の視線の先に
『e…………l……a』
何か言ってるような気がするけど、ギリギリ聞こえない程度の声の大きさで呟いてて、一生懸命耳を澄ませて聞こうとしても聞き取れない。
モヤモヤの切れ間から見え隠れするその眼は、私たちを睨みつけている気もするけど、焦点の定まってなくて深く沈んだ闇の穴のようでもあった。
……そもそも、なんで私たちと
――――――
「『ゲート』を発生させるアイテム」と「反転させるアイテム」。両方を調合し終えた私たちは、その二つのアイテムを今手元にある『
それは、先生とホムちゃんと一緒に考えた理論を、「可能だ」と太鼓判を押した先生のそのまた先生であるアストリッドさんでさえもたどり着けなかった――と言うよりは、飽きて途中で投げ出してしまっていたらしい――その先の話。元々、偶然が絡むほど調整が難しいとされる「『ゲート』を発生させるアイテム」にもう一つ付け加えるんだから、より一層、慎重で繊細な調整が求められてるってことは私にもすぐにわかった。
そして、仮にも「モンスターを発生させるモノ」として
というわけで、手ごろな場所に移動した私たちは手分けをして準備を始めてた……。
「「「「ちっむ、ちっむ」」」」
人手が多いことに越したことは無い。なので、せっかくだからと『ロロナのアトリエ』にいたちむちゃんたちにも手伝ってもらうことに。
ちむちゃんたちには、私が調合した「『ゲート』を発生させる
……私とかがドバーッと流し込むように入れればいいような気もしなくはないけど、投入口が『属性結晶』より少し大きいくらいで、結果、効率はさほど変わらないので、私が他の事をして置かなきゃいけないから、このままやってもらっていたほうがいいんだと思う。
「ここがこうだから、こっちは……こう。あとはー……実際に
そんな私はと言えば、ちむちゃんたちのほど近くで、装置の調整と最終確認を
理論上は何とかなりそうではあるけれど、やはり初めての試みということもあって手探りな部分も多い。だから最善を尽くしたつもりでも、わからないことなんて山ほどある。そこから感じてしまう不安を少しでも拭う為に、最後の最後まで確認を怠らずにやってたい。
……うーん。でも、ココは本当にこんな感じでいいのかなぁ?
「
「すぐに「反転」! でも、人を巻き込んだりしないように注意!」
「「反転」する時、してる時は」
「むやみに近づかない! 吸い込まれそうになったりしたら、『トラベルゲート』とかで即座に退却!」
「上手く反転できたら」
「モンスター以外がちゃんと通れるか、まずは物を入れてみる! 人は危ないかもだから入らない!」
「モンスターの出現など、不測の事態・失敗に直面した場合は」
「安全第一! 一旦距離を取って冷静に対処。最悪の場合は装置ごと爆破! 万事解決!」
少し離れた所から聞こえてくる淡々とした声と、勢い良くハキハキした声とが、一つ一つ
「マスター……本当に、こんな
「こんな!? そんなことないよ、大丈夫だよ…………たぶん」
「忘れてはいないと思いますが、今回の実験にはおにいちゃんを助けられるかどうかがかかっています。真面目にやってください」
「ご、ごめんなさい……緊張し過ぎて肩に力が入っちゃってる気がしたから、ちょっと気を抜かそうとしただけなんだけど……」
……ちょっと、状況はよくわからないけど、先生がホムちゃんに叱られてるっぽい。
緊張で張りつめた中、難しい調合を続け、ようやくアイテムが完成して……それで先生、変に気が抜けちゃってたり?
本番はまだまだこれからなんだから、先生にはしっかりしてほしいんだけどなぁ……?
「ちーむー?」
「ちちむ」
「? どうかしたの?」
最終調整をしている最中に、呼び声(?)と共にチョンチョンと裾をひっばられた。促されるままソッチに目を向けてみたら、空っぽになった大袋をかかげるちむちゃんたちが。つまりは用意していた『属性結晶』を全部入れきったらしい。
私は、ちむちゃんたちに微笑みながら小さく頷く。
「終わったんだね、ありがと。私の方ももう少しで出来そうだから、先生たちを呼んできてくれる?」
「ちむむ!」
「ちむっ!」
「了解!」とでもいった様子で元気の良い返事をした後、
そんなちむちゃんたちの姿を少しだけ目で追ってから、私は再び最終調整とその確認の作業の続きをする。
あともうちょっと。実験をする前ギリギリまで私に出来ることしっかりやらないと……!
ほどなくして、先生とホムちゃんを連れてちむちゃんたちが戻ってきた。
「あっ先生、準備できまし……た……よ?」
「ごめんねー、そっちのこと全部任せちゃって。それで……どう? ちゃんと動きそう?」
「……え、は、はい。初めてだから何とも言えない所もありますけど、たぶん大丈夫かと……。それでーそのー……?」
先生の言葉にしどろもどろしそうになりながらもなんとか答えたんだけど、私がついつい目をやってしまってたのは先生――正確には先生の顔……もっと言うならその両頬――だった。なんでかしらないけど赤くなっている。
その視線に気づいた……とはいっても、何故見られているのかまでは
「あれ? どーかした?」
「えっと、どうかしたっていうか……こっちがどうしたんですかっていうか……?」
「気にしないでください。気合を入れなおすために自分で叩いて、その際に力加減を誤っただけですから」
先生に真っ赤になってる
「えーっと、先生の方も準備は出来てるんですよね?」
「うん、出来てるよ! 爆弾と回復アイテムもバッチリ!」
「ほら!」と、手元のカゴの口を開けて中を見せてくる先生。その中身はゴチャゴチャしてて……というか、いくらなんでも多過ぎな気が……今回のことのために一体、冒険何日分の用意をしてきてるんだろう?
「それって……街の外に出たのは「もしもの時」のためですけど、いくらなんでも厳重過ぎじゃあ……」
「マスター。いざという時のための備えというのは大切ですが、失敗を前提に行動するというのも考えものかと」
「わ、わかってるよ!? 『ゲート』を発生させられたらすぐに「反転」させちゃえば、モンスターは出てこない! だから、そこをしっかりしさえすれば大丈夫……うん、できる!」
そう言ってギュっと握りこぶしを作るロロナ先生。
……なんだろう。余計に不安になった気がする……。
「とっ、とにかく! 準備もできたんだし、さっそく実験を始めちゃおう!」
「そうですね…………ちょっと心配ですけど」
「気にしてはいけません。何か言って図星でも着いてしまっては、マスターが
言ってることはわかるし、納得もできちゃうんだけど……でも、それはそれでどうなんだろう……?
というか、時々、ホムちゃんがロロナ先生のことをどう思ってるのかがわからなくなっちゃう。ロロナ先生はほむちゃんのことを「お手伝いしてくれる妹みたいな子!」って言ってたけど……。
そんなちょっとした疑問を抱きつつも、でも結局は
「『ゲート』を発生させる
「それじゃあ、『ゲート』を発生させますよ?」
振り返りつつ声をかけると、「反転させるアイテム」を手に持ったロロナ先生が――
先生の隣に佇むホムちゃんと足元で整列しているちむちゃんたちが頷いた。
「うん!」
「いつでもどうぞ」
「「「「ちむっ!」」」」
……やれることは全部やったはず。あとは落ち着いて、実際に
「いきます! ……開け、『ゲート』!」
シュゴゴーン!
凄い音を立てて台座の上で発生した渦巻く光……『ゲート』。
うん、見た感じ問題は無さそう……かな?
でも、なんだか「シュオンシュオン」って音が『ゲート』から聞こえ続けてるのが気になるけど……採取地とかで見かけるヤツではそんなに落して無かったと思うんだけどなぁ……
ちょっとひっかかるけど、先生の方は見た感じいつも通りで首をかしげたりはしてないし……私が気にし過ぎてるのかな。
「すかさず「反転」! ええーいっ! ひっくりかえれー!!」
そんな掛け声と共にロロナ先生が持つ
すると、『ゲート』は何度か色を変えながら
……こころなしか周りの空気が『ゲート』へと向かっているような気もするから、きっと『ゲート』の「反転」に成功した……んじゃないかな?
「どうなんだろう?」ってちょっと思いながらも、確認するために隣に立ってる先生の方を見てみた。そしたら、コッチに顔を向けた先生と目があった。……どうやら、先生もちょうどコッチを見てきたみたい。
その先生はといえば、私が何か言うよりも早くニッコリと笑いながら頷いてきた。ということは、きっと先生からしてみても上手く「反転」できたように感じたんだろう。
「やったね、トトリちゃん!」
「はいっ、先生!」
「達成感に浸るのは結構ですが、まだ実験の最中です。早く次の工程に移ってください」
「「「「ちむ~」」」」
不意に向けられた声に、私と先生は「あっ」って揃って声を漏らしてしまう。
声のした方を見てみれば、ジットリとした目を向けてくるホムちゃんとちむちゃんたちが……!
「「ご、ごめんなさい」」
揃って謝る先生と私。
私たちに、ホムちゃんはゆっくりと首を振って「いいんです」って言って――
「今回は「成功した」とは言い難いようですから、つい先程の数秒の
そんな事を言うホムちゃんに私と先生は「どういうことだろう?」って顔を見合わせる。『ゲート』は発生させられたし、「反転」もうまくいってたし……?
と、コッチから何か言うよりも先に、ホムちゃんは私たちじゃなくって『ゲート』のほうを向いて……釣られるように私たちもソッチを――――って、あれ?
「あれっ!? ち、小さくなってってる!?」
そう、先生が言ったように、反転した『ゲート』が徐々に……けど、確実に
どうして……!? 確かに、上手くいってたはずなのに!
……! ううん、
そもそも、今回はあくまで上手くいくかどうかの実験だったわけで、何か不具合や想定外の事態が起きたとしても、それらを記録しちゃんと調べて原因追究をするべきなんだ。それが本番への布石になるんだから!
考えられるのは、実は「反転」が上手くいってなかったとか、『ゲート』を構成している『ルーン』の補充量が足りていなかったとか……なんにせよ、今の状態を調べるなり記録するなり、何かしらしていかないと!
「先生っ!」
「うん!」
私の呼びかけに先生は間髪入れずに応え――――その手をカゴへと突っ込んだ。
んん?
……これまでの経験から、この時点でなーんとなく嫌な予感がした。
ううん、カゴの中から何か調査や記録に使えそうな
――モンスターの出現など、不測の事態・失敗に直面した場合は
――安全第一! 一旦距離を取って冷静に対処。最悪の場合は装置ごと爆破! 万事解決!
ふと、実験開始前にホムちゃんと先生とがしていた会話を思い出した。
――
……あっ!
「せっ先生っ! ちょ――――」
「てりゃーっ!!」
失敗だったかもしれないし、不測の事態ではあっただろうけどっ! 最悪の事態っていほうどじゃ……! というか、もっとやれることとかあると思うんですけどー!!??
そんな私の想いは虚しくも届かず、止めるよりも早く、先生はカゴから取り出したモノを反転した『ゲート』へ向かって投げつける……!
ああっ……。これじゃあ、もしかすると「『ゲート』発生装置」ごと爆破されちゃって一から作り直し――――
シュオーンシュオーンッ!
「えっ?」
聞こえてきたのは、爆発音じゃなくって変な音。
不思議に思って辺りを見回してみるけど、変わった様子は何処にもなくって……あえて言うなら、反転した『ゲート』が相変わらず収縮していってることくらい。いつの間にか、人の頭ほどの大きさまで小さくなってしまっていた。
というか、一体何がどうなって……?
「おー……上手くいったねー」
ドンドン小さくなってついには拳大くらいにまでになってしまっている『ゲート』を見ながら、隣にいるロロナ先生はそんなことを言ってる。
けど、なにがどう「上手くいった」んだろう?
「むこうからこっちに来るのはモンスターだけらしいけど、モンスター以外も通れるみたい。 けどまあ、マイス君が通ったのもコレと似たやつみたいだしきっと私たちでも大丈夫だよね?」
そこまで聞いて、私の頭の中に少し前に先生が言ってたことが浮かんできた……
――モンスター以外がちゃんと通れるか、まずは物を入れてみる! 人は危ないかもだから入らない!
私は「ああ、そっち」と納得して、自分のはやとちりを恥ずかしく思いつつ、『ゲート』の様子がおかしいとわかったとたん物を投げ入れた先生の良いのか悪いのか判断し辛い即決力に驚きつつ……「そういえば」とあることが気になってしまった。
「ああー、もう消えちゃいそう」って少し寂しそうに言いながら、豆粒ほどになった『ゲート』を見ている先生に、その疑問を投げかけてみることにした。
「あの、ロロナ先生」
「ん、なあに?」
「よく見えなかったんですけど……『ゲート』に何を投げ入れたんですか?」
そう。反転させた『ゲート』が収縮していっているのがわかった時、先生はカゴから何かを取り出して投げつけた。
てっきり『ゲート』を破壊するために投げたんだと思ってた私は、爆弾系の何かを投げたものだとばかり思っててちゃんと確認してなかったんだけど……結局は何を投げ入れたんだろう?
って、あれ?
どうしたんだろう? 先生と目があわない……というか、先生の目が泳いでいるような……?
「わ……」
「わ?」
「……わかんない」
「えっ」
わかんない……ワカンナイ…………「わからない」?
「ええっとねっ! 小っちゃくなってくの見てね、早く何か入れてみないとーって思って急いでカゴから何か出そうとして……それでー……その」
「つまり、マスターはソレが何なのかを確認しないまま投げちゃったんですね」
私も大体察せたあたりで、ホムちゃんがズバッと言った。
「うぐっ!?」と言葉を詰まらせる先生に、私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。……ま、まあ、先生らしいって言えばらしくって、なんだか変な安心感はあるんだけど。
「堅かったような……柔らかかったような……? あとは、あとはっええっと……?」
「と、とりあえず、カゴの中身を確認して何が無くなってるか調べてみましょう?」
「……うん」
先生は少し申し訳なさそうにしながらカゴのふたを開けて「ええっと……」と漏らしながら、その中をガサゴソと漁りだした。
その様子からして、とっさのこととはいえ何か確認もしないで投げ込んでしまったことに負い目を感じちゃってるのかな? 私からしてみたら、物を投げた事に驚きはしたけど、駆け足ではあっても実験が出来たんだから結果オーライだと思うんだけどなぁ?
ピシッ ミシミシッ……
音が聞こえた。
「しょうがないなぁ」なんて思いながら、先生を見ていた私の耳に入ってきたのは、何かが軋みヒビが入るかのような音。
反射的に音のした方へ目を向けたんだけど……そこに見えたのは、反転した『ゲート』が完全に消えてしまった台座――
ううん、「浮かんでいる」というよりは、まるで
パキッ パリンッ! カシャンッ!! ドヂューン!
ひび割れが音と共に弾け、それに伴って出来た『穴』から「黒い風」とでも言うべき何かが吹き出してきた。そう、さっきまでの反転した『ゲート』とは逆の流れ……アッチからコッチへと何かが流れ出してきたのだ。
「きゃっ!?」
「トトリちゃ……わわぁっ!?」
「…………っ!!」
「「「「ちむ~!?」」」」
私も、先生も、ホムちゃんも、ちむちゃんたちも、その吹き荒れる「黒い風」に飲み込まれて押されてしまい、必死に踏ん張ったり、尻餅をついちゃったり……体の小さいちむちゃんたちは何処かへ飛ばされてしまったり。
一分にもならない、きっとほんの十数秒くらいだったと思う。
吹き荒れてた「黒い風」の勢いが徐々に弱まり……ひび割れのあったほうへと集まっていく。
勢いが弱まりだしたくらいで見えてきてたんだけど、「『ゲート』発生装置」の台座があったあたり――「黒い風」のせいで台座は私たちからちょっと離れたところまで飛ばされちゃってるから、「あった場所(過去形)」なんだけど――そこにナニカがいた。
『…………』
いつの間にかそこにいたナニカ。
状況からして、『ゲート』あった場所に発生したヒビ割れ……そこから現れたんだとは思うけど…………。
「黒い風」が吹き止んだ『街道のはずれ』。体勢を立て直した私たちの前に、そのナニカは立ちはだかった。
――――――
「先生……
そして今。
私の視線の先に
蠢く
『e…………l……a』
ヒトに似た黒き存在。
そうとだけ言えば『塔の悪魔』に似ている気もするけど……違う。何かが違う。そんな気がしてた。
『塔の悪魔』のような掴み所の無いが確かに突き刺さってくる殺意――ではない。まるで、どこまでも纏わりついて来そうなほどネットリとした視線と悪意。
よくわからないけど、もの凄く怒ってる……のかな?
例えば、採取地で遭遇するモンスターの中には「ナワバリに侵入された!!」って感じに怒り心頭な様子のモンスターもいたりする。だから、「怒っているモンスター」ってだけなら、そんなに驚くことでも恐れることでもないんだけど……何かが根本的に違うような気がしてならない。
それに……
「気のせいじゃなかったら、私のこと凄く睨んできてるような……」
隣にいるロロナ先生でなく、そのまた隣あたりにいるホムちゃんでもなく、私のほうをジッと
というか、さっきから目があってて背中のあたりを中心にゾクゾクとした悪寒を感じてる。
でも、なんで私? 身に覚えなんてないよ……?
「ちむっ、ちーむ!」
「ひゃっ!? って、なんだちむまるだゆうくんかぁ……驚かさないでよぉ」
さっきの「黒い風」で吹き飛ばされてしまってたちむまるだゆうくんが、いつの間にか私の足元まで来てて、チョンチョンとつついてきてた。周りを見てみると他のちむちゃんたちもトテトテと駆け足で戻って来てるのがわかった。
視線の先のナニカに気を取られちゃってた私はちょっとびっくりしちゃったんだけど……ん? ちむまるだゆうくんが何かを
「ちむむっ!」
「ん?」
よく見てみたら、指し示してるのはナニカの上のほう……人で言うところの「頭部」のあたり……
顔っぽい所とか、長い髪の毛とか、髪の毛と一体化してるようにも見える立派なお
なんて言うか、こう、服とか装飾でもない限り人なんかにはない艶やかな赤紫色。そんな色が頭部の三割くらいを占めてるように見える。いやまあ、『ゲート』の向こう側……『はじまりの森』から出てきたってことで、あのナニカがモンスターだろうって考えたら「そういうモンスターなんだろう」って納得できはする。
でも、何か違う気がするんだよなぁ? なんていうか、鱗とか毛といった体色の一部が
そして、
ナニカの、
それは、
「「あっ」」
それの正体に気付いてついつい漏らしてしまってた声に、偶然にもロロナ先生の声も被る。……きっと、先生も気づいたんだろう。
頭からこぼれ落ちたそれ――ナニカの頭を赤紫色に染め上げた中身と、コンガリと焼けた生地と、おいしそうなニオイを併せ持つものは間違い無く『
問題は、なんで『ベリーパイ』がナニカの頭からこぼれ落ちたのか……って、それは深く考えなくてもすぐに
「つまり、アレが怒ってるのってどう考えても先生のせいじゃないですか!! なのになんでかわからないけど私が睨まれちゃってるし……ってことは、私、とばっちり!?」
「ううっ、わたしにもそんなつもりは…………いっそのこと投げ込んでたのが爆弾で、倒してしまってたほうがよかったかなぁ?」
「投げ込まれたのがパイでも爆弾でも、叩きつけられたのが
「辻爆弾魔!?」
「がーん!?」ってショックを受けて涙目になってるけど、そんなことはどうでも……というより、少しくらい反省してくれたほうが良い気がしてる。
とは言っても、先生もわざとやったってわけじゃないし、とっさの行動が
「マスター、トトリ、おふざけはそこまでにしてくださいっ…………きます……!」
まだ短い付き合いしかない私でも「珍しい」と思ってしまうホムちゃんのこころなしか強めの口調での注意喚起に、私と先生は揃って身構える……まだ先生は涙目のままだけど。
見れば、ナニカの周りに漂っていただけの
その様子と肌で感じられる空気から、あのナニカがもの凄くやるきなのが嫌なほどわかってしまう。
『G……Giiiiiiー!!』
「とにかく、このまま放ってはおけないし倒しちゃおうっ!」
「は、はい!」
取り出した杖をギュッと握りしめて、視線の先にいるナニカを見据える。
あの暗く深い穴のような目で睨みつけられるのは怖いし、ゾクゾクと感じる悪寒は未だに身体を駆け巡っている。
結果的にとはいえ、私たちがした実験で呼び寄せてしまったモンスターなのだから、責任を持って倒さないといけない。そして……きっと『ゲート』の先で頑張っているだろうマイスさんのためにも、今ここで引くわけにはいかないんだ……!
ナニカが
『Giii――――Zzeeee――――Llllaaaaaa!!』
「…………んん?」
(そういうことだよ)
引き伸ばしに伸ばされたバトルにようやく突入。
文字数の割には話は進まない。状況説明やらが多すぎたか……?
次回、『錬金術士師弟&ホムンクルス`s VS 終わりのもの』