昨日に引き続き「超マイルド」のつづき。
昨日投稿した分よりもだいぶ短いです。というよりも、話のくぎり的に仕方ないとはいえ前回が長すぎました。
③まで続きます
そして、今回もトトリ視点でのお話しとなっています。
***街道のはずれ***
「…………んん?」
マイスさんを助け出すための、『ゲート』を発生させ「反転」する実験。その実験の失敗(?)のせいか、はたまたロロナ先生が『ゲート』に『ベリーパイ』を投げ込んだせいか、突如現れた黒い靄を纏った
そのナニカとの戦いがついに始まろうとした……
……んだけど、私としては今、こっちにむかってきたナニカが上げた
今、あの『
『――――――!!』
……うん、気のせいだよね。言葉にもなっていないような叫びをあげて、こっちに突進してきてるだけで……
私たちめがけて来ているナニカは、文字通り飛んでくるかのように……じゃなくって、まるで地面のスレスレを滑るかのように移動してて――
――意外と速い!?
『――――!』
「
もの凄い
とっさに杖を前に突き出すように構えてガードの体勢をとるけど、こんな予想以上に速い勢いのまま攻撃されたら不味い……とまではいかなくても、けっこう痛そう……!!
そんな痛みを想像してしまって、反射的にギュッと身体が強張ってしまった。
ナニカは勢い良く私の横を
「っ! トトリちゃん、あぶない!!」
「えっ、きゃぁっ!?」
通り過ぎた『
いきなりの事に、先生にどうかしたのか聞こうと――――あと、文句を一言二言言おうとして……
ソレラがまるでタイミングを、そして高さを微妙にずらして一点を狙うように飛び交ってて…………
あのまま通り過ぎたナニカを呆然と見つめていたらと考えると、ゾゾゾッと足先からずずーっと背中を通って頭のてっぺんまで駆け上がってきた鳥肌。
「せ先生っ、ありがとうございます」
「あはは……ほぼ真正面からだったら見えなかったかもしれないけど、アレの後ろのほうからボールみたいなのがピョンピョン出てきてたのが気になって……。それで、なんか動いたって思った時とっさに――――ふえっ?」
なるほど……きっと、あのナニカが通り過ぎた後にあの黒い球たちが飛んでくる時間差攻撃だったんだ。危ない所だった……。
で、先生が何か変だけど、いったいどうしたんだろ……ん? なんだかちょっと
あのナニカが突進してくる前に黒い
そうしてた仕上がりながら辺りを確認しようとして――――偶然か何なのか、私が最初に目をやったのはナニカがいる方で――――そして
「ド……
体格はアーランドで見かける『ドラゴン系』とは異なり二足歩行で前足が翼と一体化したような見た目をしているけど、他人を丸のみに出来そうな大きな口、その口から覗く牙、頭から伸びる角、体を覆う鱗、大きな翼……それ等の特徴は間違い無くドラゴンだ。
長い首も気にはなるけど、それ以上に特徴的なのはその翼が骨格部分以外はまるで羽毛のようでなおかつ色鮮やか
――まずい……!!
そう思った時にはもう遅かった。
雄たけびを上げるように首を、頭を、口を動かしたその竜が大きく羽ばたいたかと思えば、その竜の前に――つまりは竜と私たちとの間に――それこそ竜と大差のない大きさの『竜巻』が発生し、あろうことかこっちに向かって来た!
その上、『竜巻』からは時折、マイスさんが使っていた風の魔法『ソニックウィンド』みたいな風の
なにより、ただ単純に風の大きな流れであることも確かで……あの『
「ちむ~!?」
「ちー!」
「…………」(気絶)
「ちっむ! ちっむ! ちっ…………ちむ~」
「わー!? またちむちゃんたちが、飛んでってるー!?」
必死に地面の草にしがみついてる子もいたけど結局はみんな竜巻に飲み込まれて、さっきよりも高く遠くに飛ばされていって…………あっ。
ふわりと浮かぶ人影。そのまま『竜巻』に吸い寄せられそうになったのは、踏ん張っていた残りの三人のうち一番体格が小さいホムちゃん。
「あっ」
「あぶない!」
「ほむちゃん!」
私が何とか手を伸ばしホムちゃんの右手を捕まえたのとほぼ同時に、ロロナ先生も手を伸ばしてホムちゃんの
よく見てみると、ホムちゃんの手を捕まえたのとは反対の手で持つ杖を地面に突き刺して風に耐えてるのがわかった。「なるほど!」って感心した私も先生に
……ただ、飛ばされそうになってるホムちゃんを握ってる方の手は、やっぱりキツイ。でも何とか耐えて……!
ガギンッ!
そんな音が聞こえて、反射的にソッチに目がいった。
見るとそこには……「あっ」って顔をしてフワッと地面から浮いてるロロナ先生と、何故か末端のほうが折れてしまってる先生が持つ杖と、浮かんだ先生の下を通過する風の
そして、こっちはちゃんと声に出して言わないといけなかった。
「せんせ~! か、片手で二人は……色々と無理ですー!!」
「だよねー……でも、なるべくなら離さないでー!?」
「あ……あれ?」
「あいたっ!?」
「…………」
ついに私も浮いて『竜巻』にのみ込まれてしまうのかと思ったら、
代わりに「どすんっ」と「すたっ」という着地音が聞こえ、先生が尻餅をついてホムちゃんが足先からキレイに着地をしてた。どうやら、私だけじゃなくってホムちゃんと先生の間でも手が離れてしまってたみたいで、幸か不幸か先生の着地失敗の道連れにはならなかったみたい。
でも、どうしていきなり……?
そう思ってあの竜のいた方を見てみると、竜はどこにもいなくて『
何はともあれ、あの竜が消えたからか、ただ単に『竜巻』が自然消滅したかでとりあえず私たちは助かっ――――――
「気を抜き過ぎです」
ホムちゃんの声にハッとすると、いつの間にか視線の先にいたはずのナニカがいなくなっていて……私から見て右手の方向で、ホムちゃんが両手を前に突き出して何かを防いでいた。
それは一番最初に渡しを狙って打ち出された「闇の球」とは真逆の「光の球」で、4つがクルクルと回るように連なってホムちゃんを襲っている。防いでも防いでも代わる代わるグルグルとぶつかってくる「光の球」にホムちゃんがじりじりと押されているのがわかる。
「……くぅ!?」
私や先生が何かするよりも先に、ホムちゃんが
「大丈夫!? 怪我は……!」
ポーチに手をつっこみ手探りで薬を探しながら、私は起き上がるホムちゃんに駆け寄る。
「ご心配なく。ホムはつくられた段階で「
「そ、そうなの?」
思いの外、元気そうなホムちゃんに少し驚きながらも安心しひと息つく。
けど、今度はホムちゃんの声ではなく先生の声が私の注意を引いた。
「気を付けて! また何かくるみたい!」
目を向けてみれば、ちょうど『
「闇の球」か「光の球」を撃ち出してくるのかと思って身構えた……んだけど、開かれた手のひらから何かが出てくる様子は無くて、私は首をかしげてしまいそうになった。
小さく、でも確かに、足元のから音がしたような気がし――
ズガガガガガッン!!
「きゃっ!!」
「うわぁっ!?」
「…………!」
運良く誰にも直撃はしなかったけど、腕や足に少なからずかすってしまい傷を作ってしまう。かすっただけでもわかるけど、かなりいたい。直撃したら空に打ち上げられる……だけで、すめばまだマシかもしれない。
そして、コレに私は覚えがあった。
「これって、マイスさんが『
「発生する数が大きく異なりますが、同種の『魔法』かと」
「そっ、それじゃあもしかして、マイス君の魔法と同じで他にも『火』とか『水』とか……まだまだいっぱいあるの!?」
先生が口にした言葉に、私は頷くことも首を振ることもできない。だって、
でも、ただでさえ押され気味というか押されてばかりなのに、コレがまだ序の口だなんてわかってしまったら……気が滅入るなんてものじゃない、けど、それだけ強く恐ろしい相手ならばなおさら逃げるわけにもいかない。
それに、あの突然現れた
そして……こうしている間にも『
「先生。私がとりあえず『フラム』をばらまいて
「うんっ、わかったよ!」
先生の返事を聞くと同時に、私は
ぶつかってくるような勢いで……でも、脇を通り過ぎるコースで私たちのそばを高速移動したナニカ。その通り過ぎた後には、ナニカからしみ出すように発生した十数個の「闇の球」。それがふわふわと浮かんでいた。
それを見た瞬間、『フラム』を投げるのを完全に止めて、数歩下がる。
それを判断するためにも、飛んでくる「
――――えっ?
「闇の球」は音を立てて高速で飛ぶ――――
「これって、どういう……!?」
困惑する最中、顔が、陽の光とは別のなにかに照らされた気がした。
ハッとして目を向けた先には、私たちのそばを通り過ぎた『
その手のひらの先には――――――私たちの方へと向かってくる「
気づいてからほんの2,3秒後。その「光」と私たちとの距離が5メートルになろうかというあたり。
点滅していた「光」が
「人の頭ほど」の大きさが一気に「家一軒分」ほどに。
草を吹き飛ばしながら、土を抉りながら、空気を焼きながらまだまだ膨張を続け……あっという間も無く私たちの眼前に迫るまでの巨大な光球となって私たちを飲み込もうとし―――――――――
「…………ぁ」
――――――
※なお、「超マイルド」以前はここらでホムちゃんが、その前までは三人全員、最初期では町や村にも被害が……くらいのレベルでいろいろハードでした。詳しくはまたの機会、何かの機会にでも……。
明日は『IF』&たまった感想返信の予定です。