マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 読者の皆様の中にアカデミーで『ルーン』を研究していた方はいらっしゃいませんか! 『はじまりの森』に行った事のある方はいらっしゃいませんか! あの世と『はじまりの森』が同一視される問題・その関係性について語れる方はいらっしゃいませんか!
 えっ? 「公式(オフィシャル)の情報があるだろ」? ありましたか? オフィシャルメモワール? おのれ、はしもと!(新作『RF5』ありがとうございます!)

 ……なにはともあれ、大変お待たせしました。ようやく『ネルケ』に手を付けた小実です。『ルルアのアトリエ』が目前なのに、これで大丈夫か……? 当然のごとく、体験版は未プレイです。



 今回のお話しは――というより、今回に限りませんが、登場キャラが多くなるとまとまりがつかなく……しかし、出さなければならないことには違いないので、このような形となりました。


トトリ「積み上げてきたもの」

***青の農村***

 

 

 実験とか色々あった日から数日経ったある日の朝。

 私はロロナ先生やクーデリアさんたちと、『青の農村』にあるマイスさんの家の裏手……マイスさんがが消えた地点だとされる場所から少しだけズレた場所で『ゲート発生装置』をいじってた。

 

 そんな私の背中に、聞き慣れた声がかけられた。

 

「おーい、トトリ。例の宝石、集めてきたぜ」

 

「宝石じゃなくて結晶だっての。よっ……と! 結構集まったわね。まっ、大陸中掛け周ったんだから、むしろこんくらいあって当然かしら?」

 

 振り向いてみれば、『ぷに』くらいの大きさの袋を持って走ってくるジーノくんと、その後ろで倍くらいの大きさの袋を肩にかけて背負ってるメルおねえちゃんが。

 そのまた後ろには、袋を背負ったステルクさんがいて、並ぶようにフィリーさんのお姉さんのエスティさんと、アーランドの元国王さまのジオさんも来てた。

 

 まず先に、私のそばまで来て袋を差し出してきたジーノくんとメルおねえちゃんに、受け取りながらお礼を言う。

 

「ジーノくんもメルおねえちゃんも、ありがとうっ! 大事に使うね」

 

 続いて来たステルクさんたちからは、ホムちゃんと「実験中にまたあんなことがあったらあれだから」って護衛としてそばに居てくれてたミミちゃんが、代わりに受け取ってお礼を言ってて……そのそばで、私たちの様子を見渡したジオさんが自分のあご髭を指で触れながら喋りだした。

 

「フムッ。『青の農村(こちら)』に来ているとは、どうやら調合は一段落したのかね?」

 

「あっ、じおさん。そうですね、『ゲート』の発生装置や反転させるための道具(アイテム)、それに探索に必要なものも一通り調合し終えてて……今は、細かい調整や改良の余地が無いか模索してるところです」

 

 ジオさんがいることに今の今まで気がついてなかった様子の先生が頷いてから応えると、腰を曲げて前のめりになったエスティさんが装置を覗き込みながら「それじゃあ」と言葉を続ける。

 

「そろそろ、その『はじまりの森』ってところに行けそうなのかしら?」

 

 きっと、エスティさん的には何気ない、当初の計画的に考えても順序通りの普通の問いかけ……だったんだろうけど、私や先生を含め、フィリーさんやリオネラさんたち、前からここに来てた人たちの間で、何とも言えない空気が漂っちゃった。

 一旦作業の手を止めた先生が、ちょっと視線を泳がせながら、申し訳なさそうに話し出した。

 

「えっと、行けなくはないんですけど、実は少し問題があって」

 

「問題? 何か足りないものでもあったのか?」

 

「足りないと言えば足りません……けど、根本的にはそれ以前の問題って言うか……」

 

 ステルクさんからの問いかけに、言いよどむ先生。

 

 

「まぁ、ようするに思った以上に『属性結晶』が……『ルーン』が必要だったってこと」

 

 「どういうこと?」と首をかしげるステルクさんたちに対してまず口火を切ったのはクーデリアさん。続いて、リオネラさんたちが説明を付け加える。

 

「ちょっと詳しく言やぁ、発生させた『ゲート』が自然の(野良)よりゼンゼン安定してねぇってこったな」

「そのせいで一定割合はグルグル巡るはずの『ルーン』の大半が空気中に霧散しちゃって、すぐ装置の中の『ルーン』が空っぽになるのよ」

 

「自然に発生してる『ゲート』はそんなことならないから、きっと何か状況が違ってて条件が合えばそんなに『ルーン』を消費することも無くなる……はず、なんです……」

 

「発生装置のほうの調整もしてみてはいるんですけど、全然うまくいかなくて……もしかすると、もっと根本的に変えなきゃいけないところがあるのかも……」

 

 最後に、『ゲート発生装置』を調合し調整も主にやってる私が、現状について本当にちょっとだけだけど、簡単に付け加えた。

 もちろん、「行くための道具(アイテム)」以外の「行ってからのための道具(アイテム)」もとりあえず全部調合し終えてる今は、ロロナ先生も調整のほうを手伝ってくれてるんだけど……それでも変化はちょっとだけで、こう進展と言った進展はないまま。もういっそのこと、装置そのものを新しいものを調合しよう(作ろう)かとも考えもしたけど、実行はしてない。素材コストとかそういうの以前に、今のヤツ以上の構造を考えつかないっていうのが理由だったりする。

 

 

 

 一通り話を聞いて一つ頷いたジオさんが、「それで」と話の続きをうながす。

 

「あとどれくらい『属性結晶(コレ)』が必要そうなのかね?」

 

「えっと、継続させる時間……『はじまりの森』に行ってから帰ってくるまでのこととか考えたら、今の10倍くらいはないと不安かなーと」

 

 ロロナ先生の言葉に、そのことをすでに知ってた皆も含めた多くの人が息を飲んだ。先生が「余裕を持って考えればですよっ!?」と付け加えたけど、それでも対して変わらない気が……。

 

 

 でも、先生が言ってる「今の10倍は欲しい」って話も一応事実ではあるんだよね。

 

 少し話はズレちゃうけど、そもそも、こっちから『はじまりの森』へと『ゲート()』を開くと何処へ繋がるかは分からなくって、現時点では「マイスさんが消えた地点(ばしょ)で開けば、ほぼ同じところに繋がる()()」っていう仮説をもとにしてる状態。方法が他に思い浮かばないから仕方ないけど、マイスさんを探すにあたって不安が無いわけじゃない。

 けど、それ以上に問題なのは、ロロナ先生がちょっと言ってたけど()()のこと。

 ソレに対しては不安要素しかない。一番手っ取り早いのは発生装置と反転道具をもう1セット調合する(つくる)こと……だけど、『アーランド(こっち)』で調合した(つくった)『ゲート発生装置』が『はじまりの森』で使えるかわからないっていう問題点。「じゃあ、行くために反転させた『ゲート』を元に戻して維持すれば?」って話になって……そこで、さっきの『属性結晶』が今の10倍欲しいって話に戻ってくるわけ。

 

 ……でも、この「10倍」も()()()()()()()信用できないというか、不確かなものだからなぁ。

 というのも、フィリーさんが『冒険者ギルド』内を探し周って見つけた、マイスさんが書いた「『ゲート』及びそれに関係する内容の報告書」によって、()()()()()()()()()()()()()()()()から。マイスさんがいた世界(むこう)でも『ゲート』は謎が多いらしく、特に発生メカニズムなんかについては全くと言っていいほど解明されてないみたいで記述はほとんど無かったそう。

 一応、他の国では『ゲート』を『アーランド(こっち)』で言う『機械』によく似た『キカイ』っていうモノによって発生させることが出来る……らしいが、報告書を書いたマイスさんも又聞き(うわさ)でしか知らないようで、詳しくは書かれてなかったらしい。

 

 

 もちろん、マイスさんの事を諦めるわけにはいかないけど、今よりも何倍もの量を集めるという時間や労力と言った現実的な問題が少なからず湧いてくる状況に「どうしたものか……」といった空気が流れ出す……けど――

 

「おーし! それじゃあ、もっと集めてくるな!」

 

 ――ジーノくんはいつも通りだった。

 そんな単純で一直線な思考回路に、呆れつつもどこか安心しちゃって……ちょっとだけ羨ましい気も…………けど、ねぇ? さすがに、そういうわけにもいかない。

 

 当然のように他の人達も各々驚いてたり、呆れてたり――一部、それもそうだと言わんばかりに頷いてるけど――私と似たような反応をしてた。

 その内のメルおねえちゃんが、ちょっと驚きながら――それ以上に呆れながら――ジーノくんに詰め寄ってく。

 

「ちょっと!? 話聞いてたの? 第一、今集めてきたのだって結構時間かかったのよ?」

 

「? だから、もっと強い奴ら倒しまくって、ついでに『ゲート』を壊しまくって集めてきたらいいんだろ?」

 

 目的とオマケが逆になっちゃってるような……? まぁ、ジーノくんなら仕方ないよね。

 

「しかし、破壊(こわ)した『ゲート』が何時再発生するかもわからず、闇雲に探すのも限度がある。目印となっていた例の『新種のモンスター』の目撃情報ももうほとんど周りきったとなると、なおのことか」

 

「だからって、みんなで集まってここでウダウダ言ってても仕方ないのも確か。……ジーノ(こいつ)の意見に乗る形になるのが、なんかちょっと(しゃく)だけど」

 

 ステルクさんとミミちゃん、二人が言ってることはどっちも間違ってない。間違ってないけど……。

 

 

 やっぱり、ここは根本的な解決策が必要なんだと思う。だから私たちが『ルーン』が霧散しちゃう問題を解決して『ゲート発生装置』を改良しないと……!

 でも、何をどうしたら? そもそも、ルーンをその場に留めるって言っても、閉じ込めるわけにも……発生のために流動させてる時点で壁とかで囲っても効果は薄くなるから、そこから変えていけば? ううん、でも結局は使うための空間が必要で、そこから流れ出しちゃう…………どうすれば……下手に留めようとしたら何故か結晶化させちゃう、というかさせちゃったし。そうなったら『ルーン』の流れそのものが止まってどうしようもなくなる……。

 

 せめて、『ルーン』のことがもっと解れば……。

 リオネラさんが調べてくれた分では、マイスさんお得意の農業関連や『魔法』の使用に関わる感覚的な部分で、『ルーン』そのものやその性質・運用などといった研究や理論部分はほとんど無かったらしくて……それらの実戦・実技的には十分役に立つんだろうけど、今私たちがやろうとしているような他の事への応用は考えられて無くて、イマイチな内容だった。

 一から自分たちで『ルーン』の研究をしようにも、どう考えても時間が沢山必要で……。結局はみんなに『属性結晶』を集めてもらうのとほとんど変わらない――どころか、研究が上手く進む(いく)保証も無い事を考えたら、『属性結晶』集めを優先したほうが確実な気さえしてくる。

 

 

 ミミちゃんも「もう実験中の敵発生(あんなこと)も起きそうにないし、私も結晶集めに戻ったほうが良いわね」って言ってる通り、もうこうなったら『属性結晶』集めにもっと人を割いた方がいいんじゃ……?

 

「ううっ……正直、これ以上チョコチョコ調整しても『ルーン』の効率もよくなりそうにないですし、私も結晶集め(そっち)のお手伝いを……」

 

「大丈夫よ」

 

「えっ?」

 

 私に待ったをかけたのはエスティさん。その顔はやさしそうな笑顔でありながらも、ふとした瞬間にクスクスと笑いだしそうな、まるでイタズラを仕掛けた子供のようなものでもあって……なんというか、変に不安感が。

 そんなエスティさんの隣にいるジオさんも、あご髭を指でつまむように触れながら……口髭の陰からチラリと覗く口がちょっとだけだけど確かにニヤリと歪んだ。

 

クーデリア嬢(彼女)から今回の件の事の次第を聞いた後、転ばぬ先の杖にと軽く相談しておいただけだったのだが……良くか悪くか、役に立ちそうじゃないか」

 

 ……? いったい、何を言ってるんだろう?

 

 そんな疑問は私だけじゃなく周りのみんなも持ってるみたいで……って、あれ? ()()()()()()()()()()()()()()()、なんだかちょっと様子が違うような?

 

 

 

「そんなしたり顔で言うなら、最初から自分たちで持って行ってくれませんかねぁ? ほんとにもう……」

 

 そんな声が聞こえてきた方向……そこにいたのは、『アーランド共和国』の大臣さんで、先生のお知り合いでもあるトリスタンさん。

 ちょっと疲れたような顔をしてため息をついて――あっ、でも先生を見たとたん「やぁ、ロロナ」って爽やかな笑顔をむけた。……本当に嫌々ってわけでもないのかも?

 

 ついでに言えば、その後ろには何かが入ってる様子の麻袋がいくつか積まれた荷車と、それを引いてきたんだろう体つきがガッシリとした冒険者らしき人が二人ほど。……あと、見知った『アーランドの街』の人も数人。

 

 

 

()()()()()()()マイス()にはそこまでどうこう思ってたりはしないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()。冒険者たちに国からの依頼として『属性結晶』集めの依頼が大々的に発注されてね。そして、集まったモノを大臣である僕がこの一件の代表として届けるついでに顔を出しに来たってわけ」

 

「国からの依頼!? 一体いつの間に……あっ、そういえば」

 

 『ゲート発生装置』の実験で『終わりのもの(謎のモンスター)』が現れたあの時。

 黒い靄が広がり異常な状況となった街道のことが『冒険者ギルド』へとほうこくされて、その現状調査・原因究明のためにクーデリアさんとフィリーさんが緊急派遣された。そうして、途中たまたま合流したミミちゃんと一緒に私たちの所までたどり着いて、あの『終わりのもの(ナニカ)』との戦闘に加わってくれた。

 

 クーデリアさんは『魔法』が使えるだけで『冒険者』でもないフィリーさんまでもわざわざ引っ張ってきたわけだけど、あの時「腕利きの冒険者が各地に散ってる今――」みたいなことを言ってたはず。アレはメルおねえちゃんやステルクさんのことを言ってたんだと思ってたけど……もしかして、その国からの『属性結晶』集めの依頼で本当に冒険者のほとんどが各地に出て行ってたのかな?

 だとすると、さっきクーデリアさんとフィリーさんの反応が他の人達(わたしたち)と違ったのにも納得できる。

 

 

 というか、今の話からするとあの荷車に乗せられてる麻袋って、もしかしなくてもその依頼で集められた『属性結晶』なんだよね? そうすると、先生が言ってた「今の10倍」には流石に届かないだろうけど、それでも結構な量がある。

 人海戦術っていうのかな? 沢山の人が集めてまわってくれたからこそ、あんなに集まったんだろう。長としてきっかけを作ってくれたジオさんや、色々と頑張ってくれたんだろうトリスタンさんには感謝しきれない。

 

 ……まぁ、当の自称代表のトリスタンさんは、また疲れ顔になっちゃってるんだけどね。

 

「まったく。上も上だけど、特別割が良い報酬でもないのに喜々として依頼を受けてまわる人の多いことといったら……。そもそもそこまで協力したいっていうなら、国の運営(ウチ)を通さずに自分たちで持って行けって話なのにさ」

 

 そんな愚痴を吐くトリスタンさんの肩を叩きながら「まー、まー」と口を挟んでいったのは、街の『サンライズ食堂』のコックさん――先生の幼馴染で、私もよくお世話になってるイクセルさんだった。

 

「んなこと言って、あんたも冒険用物資のサポートの手回しとか、結構積極的に動いてただろ? なんだよ、照れ隠しか?」

 

「……親父の(くち)(うるさ)さが4割増しくらいになりそうなのが嫌なだけだよ」

 

 そっぽを向いてそういうトリスタンさんに、イクセルさんは「あー……うん、そうだよな、あの人は」って、何とも言えない顔で頷いてる。トリスタンさんのお父さんについて何か知ってるのかな?

 

 と、そのイクセルさんが一歩前に出てから、荷車に乗っている麻袋の一つを親指で指差しながらいつものカラッとした軽快な笑顔を見せてきた。

 

「『サンライズ食堂(ウチ)』に来る連中にも持ってるヤツがいないか声かけて、色々集めてまわったんだ。上手く使ってくれよ、ロロナ、トトリ」

 

 

 入れ替わるように前に出たのは、これはまた私もお世話になってる街の雑貨屋さんの店主・ティファナさんだった。

 

 

「わたしのところでも、似たようなことをしたの。あと、街の常連さん以外にも外からやって来るお客さんもいて、その人たちの中に持ってる人もいたから買い取ったり、ね。装飾用に多少加工されてるのもあるけれど、使えそうかしら?」

 

「えっ、あっはい。よっぽど手を加えられてない限り本質に変化はないから大丈夫だと思いますけど……その、大丈夫なんですか?」

 

 買い取ったりして集めたって、聞いた限りじゃあ大変なことをしているように聞こえるから、ちょっと心配になってくる。

 もちろん、あの荷車の上の麻袋のどれか一つ丸ごとをティファナさんだけで集めたとか、そういうわけじゃないだろうけど……それでも、けっこうな金額を使わないといけないんじゃないかな……?

 

 そんな私の考えの全部を口に出しはしなかったんだけど、言いたいことは伝わったみたいで……それでもティファナさんは優しい微笑んだまま小さく首を振った。

 

「ふふっ、気にしないで。マイス君のおかげで得れた利益もあるもの、それなりの余裕だってあるわ。それに……お金じゃ買えないないモノだって、彼には貰ってきたもの。このくらい、大したこと無いわ」

 

 

 

 

「皆さん……! でも、なんでこんなに」

 

 協力してくれることがもちろん嬉しいんだけど、いきなりの――しかも大人数で大量の――支援に、どちらかといえば驚きとか戸惑いとかそういったモノが前面に出て来てしまってた。

 そんな私がついこぼしてしまった言葉に()えたのは――

 

 

「お前らだけに任せてないで、自分たちも何かしたい……みんながそう思ったってだけの話さ」

 

 

「コオル君!?」

 

 私よりも先に、声の主に気付いたらしいロロナ先生が読んだその名前。いなくなったマイスさんの代わりに『青の農村』をまとめているコオルさんだった。

 

「ちょうど良いタイミングみたいだな。『青の農村(ウチ)』の連中が集めてきたのをまとめ終えたところだったんだ。ほらっ」

 

 コオルさんが差し出した袋は、総量こそ荷車に乗った街のみんなが持ってきた『属性結晶』の半分にも満たない量だったけど、頭数(総人数)の差を考えればもの凄い量だ。

 それに対して私たちが何か言うよりも先に、「言っただろ?」って呟いてそのまま付け加えるように言葉を続けてくる。

 

「マイスがいなくなってすぐの時、ねぇちゃんたちがそれぞれ役割決めて頑張ろうって話になっただろ? あん時に思ったんだ、オレも他の奴らも「何か力になりたい」ってな。都合のいいことに、『青の農村』には農民や商人みたいな人間以外にも多種多様なモンスター(いろんなやつ)がいるから、他の奴らの手が届かないような場所まで探しに行けたんで、中々効率良く集まったもんだと思うぜ?」

 

確かに、街道や採取地などある程度は人が立ち入る場所でも、その奥深くや足場の悪い場所、その先などにはどうしても手が伸びない範囲がある。それら地域をカバーするのは、他でもない『青の農村』のモンスターたち以外に適任な存在はいないだろう。

 

「まっ、チカラになりたいってのは俺が知らないところでもあってたみたいだけどな」

 

「それって……?」

 

 

 

 

 

「ととり~」

 

「トトリちゃんっ!」

 

 その二人の声は、よく聞き覚えのある声で……っていうか、この声は――

 

「おねえちゃん!? それにピアニャちゃんまで! どうしてここに!?」

 

――そう、『アランヤ村』にいるはずのおねえちゃんとピアニャちゃんが、ふたり揃って――正確には、元気良く走るピアニャちゃんにおねえちゃんが付き添う形で――こっちに向かってきてた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、《《高々と上げて》》。

 

 って、もしかして?

 

「キラキラしたけっしょー持ってきたの! マイスを助けるのに、これ、必要なんだよね?」

 

 予想は的中してた。

 すぐそばまで来たピアニャちゃんが見せてくれたカゴの中身は『属性結晶』。

 

「メルヴィたちに声をかけに来た時に話は聞いてたから、私たちも村周辺で集めてみたの。お父さんも乗り気で、近場の島だけだけど海のほうでも探してきたわっ」

 

 そう、普段とは違う珍しい元気良さで言うおねえちゃん。

 何回かメルおねえちゃん私とで冒険に連れてったりもしてた時期があるからこそわかるけど……きっと、なんだかんだ言っておねえちゃんも冒険が好きなんだろう。――――だからって、外海に出るのは止めて欲しいなぁ。それはまあ、他の人が手を出さないし出せないだろうから『ゲート』がある可能性が高いかもしれないけど、現れるモンスターが村の周りのヘタな採取地よりも強いし、知ってたら絶対止めてたよ……。

 

 言われて気付いたけど、おねえちゃんたちが知る機会はあったね。

 『ゲート発生装置』の調合を始める前、『属性結晶』を集めるための協力者を得るために、私は『トラベルゲート』を使ってジーノ君と一緒に一度『アランヤ村』に戻ってた。それがあってメルおねえちゃんが『属性結晶』集めに参加してくれたんだけど――なるほど。確かにあの時に知ったんだったら、おねえちゃんたちが『属性結晶』を集めててもおかしくはない。――――でも、危ないことはして欲しくは無い――けど、反対を押し切って『冒険者』になったり船で外海に出たりした私がどうこう言えた話じゃないよね。

 

「トトリちゃんはいつ帰ってくるかわからなくて……それでペーター君の馬車で街のほうまで行こうかとも思ったんだけど、馬車はあるのにペーター君はどこにもいなくて」

 

「ペーターさん……」

 

 まるでおねえちゃんを避けるかのようなペーターさんの雲隠れ。もしかしなくてもヘタレて(いつもの)……ンン?

 

「あれ? それじゃあどうやって『青の農村(こっち)』まで来れたの?」

 

 当然と言えば当然の疑問。

 昔、改造されたことでいくらか早くなった馬車でさえ『アランヤ村』から『アーランドの街』や『青の農村』までは数日かかってしまう。なのに、その馬車がペーターさんのせいで使えなかったとしたら……。

 ……まさかとは思うけど、歩いてきたり?

 

 

()()()()()()()()()が連れてってくれたの。ビュッンって、ととりのみたいに景色がパッて変わったよ!」

 

「ちょっとだけ変な人だったけど、トトリちゃんかロロナ先生の知り合いなんでしょ? 「いろんな意味で未熟とはいえ()()()()()()()()()が困ってるのであれば、手を貸してやるのもやぶさかではない」って言って親切に『青の農村』のすぐそこまで送ってくれたの」

 

 体いっぱいの身振り手振り(ジェスチャー)で伝えようとするピアニャちゃんに、おねえちゃんが頷きながら付け加えた。

 「メガネのおねーさま」とか「弟子のそのまた弟子」って話からして……ううん、でも私、()()()とは会ったのは一回だけな上に会話らしい会話もしてないから、ほとんど人伝に聞いた内容(こと)ばっかりで、確信は持てないし――――

 

「師匠、見かけないと思ったらそんなところに。というか、間を測ったように()()()()()()()でぴあちゃんたちが来たことといい……それに「変な人」とか「おねーさま」って呼ばせるところとか相変わらず……ううん、今は考えないでおこう」

 

 ――――あっ、先生がそう確信した(思った)んだったら、間違い無くアストリッドさん(あの人)なんだろう。

 

 

 そんなことを考えてたら、私の服の裾をクイクイッとつまむ手が。それはもちろんそばにいるピアニャちゃんの(もの)で、その目は少し潤んでいるけど私の事をしっかりと見てる。

 

「マイスと約束してるの。一緒に『がっこう』に行って色々いっぱいおべんきょーするって……ピアニャ、マイスがいなきゃヤだよ」

 

 マイスさんってば、いつの間にそんなことを……

 というか、『錬金術』を教えてもらうなら『学校』じゃなくても、前みたいにロロナ先生に……もしよかったら私も教えるんだけど――ああ、でも、私たちも『学校』での『錬金術』の授業はお手伝いはするんだから、いいのかな?

 

 私はピアニャちゃんの手をとり、両手で優しく包んであげる。

 

「大丈夫だよ。私たちがマイスさんのことちゃんと連れて帰ってくるから!」

 

「っ……うんっ!」

 

 

 

 ――――とは言ったものの……。

 

 

 いけなくはないだろうけど……まだ足りない、よね?

 

 

 袋の中身をちゃんと全部確認したわけじゃないけど……今は大体最初の約8倍くらいまで『属性結晶』は集まったかな?

 あともうひと押しってところまで来てはいるし、予想よりも素早くマイスさんを連れ戻すことが出来るとすれば十分な量……なんだけど、それでも不安要素が残っちゃう状況なのが事実。やっぱり安全を考えると万全の準備をして置くべきで、そうすると『属性結晶』はまだ足りないだろう。

 

 とっても言い辛いけど、また『属性結晶』を集めるお手伝いをしてもらうように言わなきゃ――――

 

 

 

 

「フッフッフ……! お嬢さんたち、忘れてはいないかい? 天才科学者であるこの僕を!」

 

「オレもいるぜ! 嬢ちゃんたちが一生懸命頑張ってるのは知ってたが、声も全くかけてくれねぇだなんて、水くせぇじゃねぇかよ」

 

 

 

「マークさん! ハゲルさん!」

 

 そこには、珍しく背筋が伸び腕を組んで仁王立ちしてるマークさんと、そばにある人一人が乗れるくらいの台車を押してきたんだろうハゲルさんが。台車には何かが乗ってるけど、大きな布がかけられててその全容を知ることはできそうになかった。

 

「実はね、『属性結晶(例のモノ)』の収集の際に、これまでに同型の見たことの無い、おそらくは『シアレンス(彼が元々いた世界)』出身だろう巨大なゴーレムと出会ってね。鹵獲はかなわなかったけどサンプルとして一部を持ち帰ることが出来たのだよ。そして……ハゲル(おやじ)さん!」

 

「おうよっ!!」

 

 送った合図に、威勢のいい掛け声を返したハゲルさんが台車に乗せてあるモノにかかった布を勢い良く取り払い、マークさんが大仰な身振りで()()を指し示しながら高らかに声を上げる。

 

「これがマイス()から『ルーン(未知のチカラ)』について聴いてからというもの、持てるチカラを注いできた僕の研究の集・大・成! その名もー……色々省略して『ルーン式原動機関』!!」

 

 ソレは、なんというか、こう……ゴツゴツとしてあれな感じの…………よくわからないけど、とりあえず「なにかの機械」なんだろうってことはわかった。逆にそれ以外はよくわかんない。げんどうき?

 

 私を含め、あんまり反応がよくなくて――そのせいか、呆れたような顔で「ヤレヤレ」と首を振るマークさん。

 

「わかりやすく言うなら、『ルーン』とかいうものを動力に換える機械だよ。ただし、最初にきっかけとなるエネルギー――いわゆる「呼び水」が多少必要だけどね。しかし、そこもすでに解決(クリア)済みさ。実は彼らが持ち帰ったものをちょっと拝借させてもらってね、それが思いの他原動機の基礎動力源に適した性質で、発生されるパワーが初期の想定を随分と超えるくらい良いものだったよ」

 

「何? アレがそこまで? バチバチ音を立てて発光し、その上、下手に触ればシビれてしまう代物だったが……役に立ったのであれば、わざわざ苦労してまでして持って帰った甲斐があるというものだ」

 

 マークさんの言葉に反応したのは、ステルクさんだった。

 結局どういった物(なんのこと)を言ってるのかはさっぱりのままだったけど、どうやらマークさんがいたチームとは別のステルクさん達のチームが入手した物だったらしい。話からしてマークさんもステルクさんも初めて見るものみたいだから、もしかしたらマイスさんがいた世界由来のものなのかな?

 

「と、まあ、そんなわけで彼らが持ち帰った『電気の結晶(帯電した結晶体)』を、ハゲル(おやじ)さんの技術も借りて作り上げた機械に組み込んだのが『ルーン式原動機関(コレ)』というわけさ」

 

 そう言わて、改めてその機械を見てみる。

 おそらくは、珍しいものを使い、マークさん達の技術が詰め込まれた凄いものなんだろうけど……うん、やっぱりよくわかんないや。

 

 

「でも、これがいったい……まさかとは思いますけど、見せびらかすためだけに……?」

 

 

「そんなことは無い――と言いたいところだけど、そのまさかさっ!」

 

 

「ええっ!? そんな!?」

「ええっ!? そうだったのかぁ!?」

 

 本当に何しに来てるんですか!?

 そんなにも予想外だったのか、先生なんかは声をあげてまで驚いて――って。

 

「いや、先生はわかりますけど、なんでハゲルさんも驚いてるんですか……?」

 

「だってよぉ、マー坊が嬢ちゃんたちのためになることだって言ってたから、色々先を見越して何か作ってるのかと思って……」

 

 そう言ってバツが悪そうにその頭を軽くかくハゲルさん。対して、マークさんは軽快かつどこか演技がかったような「はっはっはっ!」という笑い声をあげてる。

 

「軽いジョーク……というか「()()()」だよ。そんな些細なことは気にしない、気にしない。ただ単に自慢と言うか、行き詰ってるところの気分転換にって思ってただけだし。――けど、タイミングを見計らってた時にキミらが言ってたその『ゲート発生装置』の問題点についての話が聞こえてきてね……そこでふと思い当たったのさ、「『ルーン式原動機関』が役に立つんじゃないか」って」

 

「役に立つ……?」

 

 「コレが?」と首をかしげてしまう私。もっとも、()()()()()()()()()マークさん以外の誰もが首をかしげてるんだけどね。

 

「『ルーン式原動機関(コレ)』が動力を生む原理を至極簡潔に説明すると、「機関内やその延長上での『ルーン』奔流による循環運動」。そしてそれを利用したモノであり、理論的には半永久的に、実際にはエネルギーの分散や『ルーン』の性質故の流出もあって『ルーン』の追加補充が必要だけど……それでも、今キミたちが使っている『ゲート発生装置(ソレ)』より『ルーン』の継続保有率もエネルギー伝達効率も数倍良いという確信はあるよ」

 

 「勘違いしないでほしいけど、実際はそもそもの理論構築はもちろん、『ルーン』の活生動作やエネルギー移行はもっと複雑だからね?」……そう念押しをするマークさんの顔は真剣そのもの。そこには科学者じゃない私たちにはわかならいこだわりとか信念とかがあるのかもしれない。

 

 

 

「それで提案なんだけど……その『ゲート発生装置』に、この『ルーン式原動機関』を組み込んでみないかい?」

 

「へっ? ソレを装置に組み込む……ですか?」

 

「うん。原動機関が生み出す力学的エネルギーを利用するために()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そうだね、図解すると……」

 

 そう言って、背負ったリュックから何か書かれた紙――おそらくは、原動機関を図に書き起こしたもの――を広げ、詳しい説明をツラツラと喋りながらそこに筆を走らせ出した。

 

「……と、まあ、こんな感じかな? 『ゲート発生装置』がいくらか機械寄りのモノとはいえ僕は『錬金術(そっち)』には疎いからどこか間違いがあるかもしれないけど、『ルーン』の運用についてはそう間違っていないだろうから修正はいらないと思うよ」

 

 そう言って渡してきた図面に改めて目を通してみる。

 すると、マークさんが一から説明をしてくれたからか細かい所はいまいちだけど、おおよそ把握することはできた。おそらくはマークさんがわかりやすく一部を簡略化してくれてるからって部分もあるんだろう。

 

 

 うん……うん……うんっ!

 やってみなきゃわかんない部分も、思い通りになるかどうか微妙な部分もあるにはあるけど……理論的には『ゲート発生装置』のエネルギー効率が最低でも三割は向上するはず!

 

「先生! これならこの量の『属性結晶』でも余裕を持ってて安心ですよっ!」

 

「えっ? そう、なのかな……う、うんっソウダネ!」

 

 ……?

 ロロナ先生ってば、そんな穴が開きそうなくらい図を睨みつけなくてもいいのに……。普段はそうそう利用しない機械が大部分を占めちゃうからいつも以上に慎重になってるのかな?

 

 それはともかく――――

 

「……いいんですか? 私は重要性とか凄さとかまだ半分も理解しきってませんけど、すごく希少な機械(もの)なんですよね? それを貰うような形になっちゃうんですけど……」

 

 「本当にいいんですか?」と改めてマークさんに聞く。

 別に調合に失敗してダメにする気は全く無いし、そんなことにはならないだろうけど……ことが終わった後に原動機関を取り出せるかどうかとなると話は別だ。仮に取り出せたとしても、完全に元のままとは限らないし……。

 

「いや、構わないよ? 確かに、二度と手に入るかわからない材料も使ったりはしたけど、あくまでそれは「試作品(プロトタイプ)」。それ以上のものを作る予定だし、その案ももうできてるから遠慮なく使ってくれていい」

 

 いつものように「それに……」と

 

「そもそも『ルーン式原動機関』はマイス()がいたからこそ発想を得たものであり、彼をギャフンと言わせるために研究を進めたものの一つ。――彼がいないとほんの少しだけど、モチベーションが落ちるんだよ。あくまでほんの少しだよ? 彼がいなくたっていくらでも有効利用できる場はあるし、あのボヤッとした説明にイラつく必要も無くなるんだから」

 

 最後のほうは……あっ、もしかして、前にマイスさんの家で『ルーン』と『プラントゴーレム』について話して口論みたいになってる時があった、あの時の事かな? そう考えると、この『ルーン式原動機関』もあの話と結びついたり……?

 

 

 

 

 なにはともあれ、『属性結晶』の確保も、『ゲート発生装置』の改良も目途がついた。改良結果にある程度は左右されはするけど、これでマイスさんを救出するために必要だったものはそろうわけだ。

 

 あとは、『ルーン式原動機関』を『ゲート発生装置』に組み込むだけ。

 

 

「待っててください! マイスさん!!」

 





次回、「○○リスペクト」。
 『トトリのアトリエ編』が始まるころからほぼ確定していたお話で、『メルルのアトリエ編』に続く土台となるお話……なのですが、『ルルアのアトリエ』の情報が入ってから色々変わった模様。
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