マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 フィリーちゃんがキャラブレ気味……本来いないはずのマイスくんが絡んだ結果ですから、仕方ないですね!






※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……


マイス「モコッ!」

***マイスの家***

 

 

 

 

「それでね、また お姉ちゃんがね……」

 

「モコ~!」

 

 ただいま僕の家でフィリーさんとお喋り中……と言っても僕はモコモコ状態なんだけどね。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 人の状態で街までフィリーさんを迎えに行った後、僕の家まで護衛。それで半分予想していたことだけど――

 

「きょ、今日はモコちゃんいないんだね……」

 

 と、なんとも残念そうに言ったので

 

「あの子は時々遊びに来る子だから」

 

 そう言ったのだけど凄く寂しそうな顔をしてしまったので、本当は もう少し様子を見てからにするつもりだったけど、予定を繰り上げて入れ替わることにした。

 

 まずは『ウォルフ』のブラッシングを軽く教え、それをしてもらっているうちに適当な理由を言って外出することをフィリーさんに伝えた。そして外に出て林の中に隠れて『変身ベルト』でモコモコ状態になり、遊びに来たように家に入った。

 

「あっ……! モコちゃん、こ、こ、こんにちは!」

 

「モコッ!」

 

 そうして、前回のようなお喋りを再びすることとなる。

 なお『ウォルフ』はというと「やれやれ、おれの出番は終わったな」といった様子で歩き、階段脇の寝床に寝にいった。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 そして現在にいたるわけだ。

 

 僕はソファーに座ったフィリーさんの隣に座っていたはずなのに、いつの間にかフィリーさんに抱き上げられ(ひざ)に座らさせれていた。

 ううーん、これじゃあ喋る練習にはなっても、相手の目を見て話す練習はできないな……

 

「それとね、前に読んだ本を久しぶりに読み返してみたんだけど……」

 

 まあ フィリーさんが楽しそうだし、わざわざ中断させるのもどうかと思うから とりあえずこのまま続けよっか。

 

 

コンコンコンッ

 

「ひゃい!?」

 

 ふいに響いたノックの音にフィリーさんが飛び上がる。そして、僕をギュっと抱きしめ震えだしてしまった。

 

「えっ、マイス君ならノックしないよね……もももしかしてっ!? ドロボー!!??」

 

 小声でそんなことを言っているフィリーさん。いや、泥棒はノックをしないと思うけどなぁ……。

 でも、いきなりのこととはいえ ここまで怯えてしまうのは予想外だ。まだまだ道は長いということかな?

 

 

 一応言っておくと、フィリーさんは怯えてしまっているが 突然の来訪者に対して特別警戒する必要は無い。何故なら……僕の耳にはドアの外の会話が聞こえてきていたからだ。

 

「留守かな…?」

 

「たぶん違うとは思うわよ?さっき中から声が聞こえたし……でも、マイスがいるならすぐに返事とか出てくるとかしそうよね」

 

「もっ、もしかして泥棒……!?」

 

「だったらなおさら中に入って、追い払うか捕まえるかしねぇとマイスのヤツがかわいそうだぜ?」

 

 来訪者は3人――いや、1人と2匹と言ったほうが正しいのかな? とにかく、リオネラさんとホロホロとアラーニャだ。

 

 

 さて、まずは僕を抱きかかえたまま涙を溜めてがたがた震えるフィリーさん。

 ちょっと苦しいけど体を半回転させて向き合う体制にし、フィリーさんの頭に手を伸ばす。が、ちょっと足りずにオデコまでしか届かなかったので、仕方なくオデコに手を乗せて優しくなでてあげることに。

 

「モコちゃん……」

 

「モコッコモーコッ!」

 

 「大丈夫だよ、安心して」と伝えようと笑顔を向けると、相変わらず震えてはいるけどフィリーさんの顔からは幾分か不安感が消えてきたような気がする。

 

「ありがとうね……モコちゃん」

 

 

 フィリーさんを少し落ち着かせることができた ちょうどその時、玄関のドアがゆっくりと開いてきた。そして、ヒョコリとリオネラさんが顔をのぞかせてきた。

 

「あっ……」

 

 家の中に 知らない子がいたことに驚き戸惑ったような声を出すリオネラさん……が、ここで予想外のことがおきた。

 

 

「ど、ドロボーさんは、帰ってくださいいぃっ!!」

 

 

 僕のすぐそばから大声が上がった。

 その発信源はもちろん――だけど、信じがたいことに――フィリーさん。聞いたことの無いくらいの大きな声で、そばにいた僕だけでなく、寝ていたウォルフも飛び上がるほどだった。

 

「わ、わたしだって! お留守番、ちゃんと……! お、お家を守らなくちゃ……っ!!」

 

 震え泣きながら、自分に言い聞かせるように言うフィリーさん。

 すごく頑張ってくれているのはわかる。けど、これ以上させるのは心苦しい。

 

「あっ!? モコちゃん、行っちゃダメ!!」

 

 悲痛な訴えに対して申し訳ないけど、フィリーさんの腕からすり抜けて半開きのドアまで行き、全開にしてリオネラさんたちを招き入れる。リオネラさんは、いきなり開いたドアに驚いて……続いて僕に気がついて、もう一度驚いていた。

 

 

 そして、泣きじゃくりだしてしまったフィリーさんのもとまで戻り、ソファーに飛び乗ると――

 

「もごぢゃーーーーん!!」

 

「モッ……!?」

 

 ものすごい速さ&力で抱き締められた。く……苦しいけど、とにかく落ち着かせないと……!

 チョンチョンと(ほお)をつつくと、涙があふれながらも僕を見てくれた。それを確認して、手でジェスチャーをしたりしながらフィリーさんに何とか伝えようとした。

 

「モコッコモーコ、モーコッモコモコー」

 

「…………。」

 

 うん、まあ、伝わるわけないよね……。

 玄関口のほうでは「なんだこの状況…?」、「さあ……」というホロホロとアラーニャの呟きが聞こえてきて、僕に的確に精神的ダメージを与えてきた。

 

「……も……もしかして、モコちゃんの知ってる人?」

 

 ……以外に伝わったようだ。

 僕とリオネラさんたちを交互に見るフィリーさんに「モコッ」と返事をしながら笑顔で頷くと、フィリーさんは安堵の表情を浮かべた。

 

 

 

ごめんなさい……

 

 僕を抱えた状態で、消えかかりそうな小さな声でリオネラさんに謝るフィリーさん。それに対して、机を挟んでソファーとは反対側にある椅子に座っているリオネラさんはワタワタしながらも返事を返す。

 

「だ大丈夫、ちょっとビックリしたがけだから……!」

 

 リオネラさんのほうもなんだか緊張しているようで、笑顔をつくろうとしているみたいだけど変に堅い笑顔になってしまっている。そんな2人にホロホロとアラーニャは いつものようにふわふわ浮かびながら会話に加わっていった。

 

「それにしても、アナタを見てたら昔のリオネラを思い出しちゃったわ」

 

「ああ確かにな。リオネラもちょっと前までは、知らない奴が近寄ったりしたら泣いたり、ひっかいたり、逃げ出したり、いそがしい人見知りだったしな」

 

 へぇ、リオネラさんも人見知りだったということは初耳だ。今なんて、人前で人形劇をしていたりするのにね。

 ……そういえば後から聞いた話だけど、僕が初めて会った時サイフをなくしていたのは、人形劇のあとにお客さんから逃げ出しちゃったからとか言ってたっけ? じゃあまだ完全に人見知りがなおったわけじゃないのかな?

 

 

 先程のやりとりから、気が合いそうに感じたりでもしたのだろうか。フィリーさんとリオネラさんは互いに おずおずとだけど話しはじめた。

 もしかしたら、モンスターとの会話で練習するっていう方法じゃなく、リオネラさんと会わせてみることで フィリーさんの人見知りをなおせそうかな。

 

 

「そういえば、マイス君 遅いな……?」

 

「そんなに時間がたったの? 何かあったのかな……」

 

 フィリーさんの言葉に、不安そうに尋ねるリオネラさん。

 気づかない内に結構な時間がたってしまっていたみたいだ。それじゃあそろそろ、家から出て変身して人の姿で戻ってこよう。

 

 ピョンと跳んでフィリーさんの腕から飛び出し、玄関へと向かう。

 

「モコちゃん、行っちゃうの……?」

 

 その声に振り返ると、泣きそうな顔でこっちを見つめるフィリーさん。

 

「また、会えるよね……!」

 

「モコッ!!」

 

 返事をしながら片手をグッと挙げる。僕としては「もちろん!」と返したつもりだけど、ちゃんと伝わっただろうか。

 

 

「またねー」

 

 そう言いながら玄関からお見送りをしてくれているフィリーさん。そして、そのそばで小さく手を振ってくれているリオネラさんとホロホロとアラーニャ。僕は林の中を駆け抜け、十分に距離をとった後 周囲に誰もいないことを確認して『変身ベルト』で人の姿になる。

 

「さてっと、それじゃあ街道のほうに出て家に戻ろう」

 

 おそらくその時間は、フィリーさんはリオネラさんと話す時間になるはずだ。人見知りをなおすきっかけになるだろう。

 そんなことを考えながら 僕はゆっくりと家への道へと歩き出した。


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