マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 独自解釈と捏造設定、ご都合主義 入ってます






※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……



マイス「なんとかとなんとかは紙一重」

***マイスの家***

 

 

 

 

「よしっ、あとはコレだけかな?」

 

 目の前にある建築時に余った木材をまとめ上げてロープで縛り上げる。そしてそれを 僕のそばにいた『アクティブシード』の『はにわサボテン』に渡した。

 

「それじゃあ、これが最後。木材置き場に持って行ってね」

 

 そう僕が言うと、「了解した」という意味だろうか軽く頷くような動作をした後、『はにわサボテン』は家の作業場の裏の方へと歩いて(跳ねて?)いった。

 

 

「遂に完成だね……」

 

 目をやるのは、もとからあった家に隣接するように建てられた2軒の建物。

 

 そう、『離れ』と『モンスター小屋』が完成したのだ。

 内装の確認は、自分でした後にこなーとウォルフにも確認してもらった。『ウォルフ』は『モンスター小屋』の家のベッドルームに勝るとも劣らない広々空間や寝床を気に入ってくれたようだし、こなーも『離れ』の内装を一通り見てまわった後、のんびりくつろぎ落ち着いていたようだったのでホムちゃんがまた泊まりに来た時も問題無く過ごせるだろう。

 そして、もとあった家からもすぐに行けるように簡単な通路もつくったので、抜かりはないはず。

 

 

 

「ほう、他にも種類があるとは思っていたが人型に近いモノもあったのだな」

 

 その突然そばから聞こえてきた声に少し驚きながらもそちらに顔を向けると、アストリッドさんがいた。僕の家にまで来るのは初めてではないだろうか?

 

「話には聞いていたが、本当に家を建てていたとは。まあ、彼らの力を借りてこそ出来たことなのかもしれんがな」

 

 そう言いながらアストリッドさんは僕に何かを投げ渡してきた。受け取ったそれを確認してみると、『アクティブシード』の『ジャックの種』だった。

 「なんでアストリッドさんが?」と一瞬思ったが、半年ほど前の今年の初めに 貸し出していたことを思い出し納得した。

 

 

「さて、他に何か面白そうなものはないか?」

 

「えっ?」

 

「なんだ? その種を貸し出した程度で借りを返せたと思っているのか? 三倍返しなのだから、まだまだ何かしらの要求はするぞ」

 

 そういえば、そういう話だったっけ?

 まあ、貸し借りのことは憶えて無くて、アストリッドさんが「面白い」と思うものがわからなくて声を出して驚いただけなんだけど……

 

 

「先程の動くサボテンでもいいのだが、あまり変わり映えしないしな……」

 

 辺りに目をやり何かないかと考えるような仕草をするアストリッドさんを見て、僕はあることを思い出す。

 

「アストリッドさんが帰ってきたっていうことは、ロロナたちも帰ってきたんですね」

 

「むっ?」

 

「エスティさんから聞いてたんですけど、『ネーベル湖畔』ってところに水遊びに行っていたって」

 

「あぁなるほど、エスティ嬢から聞いたのか」

 

 納得したように頷いたかと思えば、腕を組んでニヤニヤ笑いだした。

 

「いやー、至福の時間だったぞ アレは。ん? どうした? 羨ましいのか?」

 

「羨ましいですよー。前は町の中にある湖で、みんなで遊んだりしてましたから」

 

 そう少し懐かしんでいたが、ふと、アストリッドさんの顔からいつの間にか笑みが消えていたのに気がつき、そちらに意識を向けた。

 

「どうしたんですか?」

 

「予想していた返答とは違ったものでな……これはロロナには気は無いと思っていいか、ただ単にそこまで深く考えていないだけか?

 

「?」

 

「まあいい。それと――――――

 

 

 

 

錬金術をいかように用いても、キミを元の世界に帰すことは不可能だからな。変に希望は持たない方がいいぞ」

 

「へぇ、やっぱりそうなんですね。錬金術は凄いと思ってはいたど、さすがに無理があるだろうなーって……」

 

 

 ………………………あれ?

 

 

 

「あの……別世界じゃないかなってこと、アストリッドさんに話しましたっけ?」

 

「聞いてはいない。だが、むしろこの天才錬金術士の私が、その『アクティブシード』を手にした時点でそれくらい推測できないとでも思ったのか?」

 

「いやいやいや!? なんでわかったんですか!?」

 

 アストリッドさんは「やれやれ……そこから説明しなければならんか」と面倒くさそうにため息を吐いた。

 

 

「『アクティブシード』に関しては、何故意思があるように動いたりするか等わからない部分もあるが、動力についてはおおよそわかっている。私でも知りえない「未知のエネルギー」だ」

 

 未知のエネルギー? 思い浮かぶものといえば 『ルーン』だろうか?

 

「活動後の『アクティブシード』が薄黒い色の種になって一定以上の休息を必要とするのは、このエネルギーが枯渇し、補充する必要があるからだ。 エネルギーを調べたところ、錬金術でいう『エレメント』や『エーテル』に近しいものでありながら、これまでに一度も発見されていないものだとわかった。しかし、『アクティブシード』が自らそれを生成している様子は無く、それこそ植物の如く空気中から摂取しているようだった……」

 

 色々とわからない言葉が出てくるうえに、僕が知らない『アクティブシード』のことまで……

 

「その「未知のエネルギー」だが、そう難しくない方法で空気中から摘出できてだな……すると、何故これまで発見されなかったのか――まあ簡単な話だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え?それっておかしくないですか?」

 

「おかしくなどないぞ? 生み出す存在、もしくは 生み出される環境が ()()()()できたとすれば 何の問題もないだろう?」

 

「そうですか……?」

 

「まあそれで『アクティブシード』の持ち主であるキミが真っ先に思い浮かび、聞いたことも無いような場所から来たと言うのだから、「別世界から、何らかの事情でその世界の理ごとこの世界に来た」という予測が立ったのだ」

 

 確かに筋が通らないわけでは無さそうな話だけど、よくそんな発想にたどり着くことができたものだと思う。

 そう僕が思っていると、アストリッドさんは 何故か少し呆れたようにため息をついた。

 

「相変わらず顔によく出るな、キミは……。なに、確信に変わったのはつい最近で、キミが元気が無いとロロナから聞いた時に『街から離れたところに住みたがっていたのは、元の世界に帰る手段を探る実験か何かをするためで、それが成功しなかったから元気が無くなったのでは?』と考えてな」

 

「……本当になんでそこまでわかるんですか?」

 

「単なる勘だ」

 

 真顔でそんなにキッパリと言われると何も言えなくなってしまう。

 

 

 

「さて、キミを元の世界に帰すことが不可能な理由だが……実際のところ、帰すこと自体は可能だ」

 

「可能なのに不可能なんですか?」

 

「難しい内容は省略するが……端的に言うと、キミがいた世界の物があるならば、そちらの世界への『道』を開くことは出来る。が、どんなに上手く開いたとしても時間軸の固定ができず、ブレ幅は少なくとも5年、最悪 数百年も異なる時間に飛ばされる」

 

「……………」

 

「そちらの世界に行ってから時間軸を移動するという手も無くは無いが、こちらの世界で生み出されたものがそちらの世界でも正常に作動する保証もない。故に不可能というわけだ」

 

 確かに、それは不可能なのとほぼ同じだろう。諦めていたとはいえ、少し残念に思ってしまっている自分もいる。

 

 

 

「私から伝えられることは以上だ」

 

 そう言ったアストリッドさんに僕は頭を下げた。

 

「なんていうか、その……ありがとうございます」

 

「礼を言われるようなことはしていない。色々と考えたのも暇潰しの一環だ」

 

「それでもです」

 

「………まあいい。何か面白いものがないか、物色させてもらうぞ」

 

 

 

 『面白いもの』を探しに家の中に入って行こうとしていたアストリッドさんの後をついていっていたのだが、不意にアストリッドさんの動きが止まった。

 

 何事かとアストリッドさんの視線をたどってみると、家の前にある畑の方だった。

 畑に何か興味が引かれるものでもあったのだろうか? 目立つものといえば、先日コオル君から買い付けた『小麦』だが……こういった穀物を育てるのは初めてだったので手探りだったのだが、何かおかしいところがあったりしたのかもしれない。

 

 アストリッドさんが歩き出し、『小麦』よりも向こう側で育てていたものの方へと向かって行った。

 

 

「おい、コレはなんだ?」

 

「それは 前に錬金術でつくった種が育った植物から種を取って増やして育ててるものです」

 

 そう、前にホムちゃんがお泊りに来た時に僕の『テキトー錬金術』(ホムちゃん命名)で偶然つくられたものだ。まさか、『シアレンス』にいた頃によく見ていた植物が生えてくるとは思いもしなかったが。

 

「参考までに聞きたいのだが、材料はなんだ?」

 

「えっと『マンドラゴラの根』と『コバルトベリー』それに『マジックグラス』です」

 

「なんだそれは!? 『ヒーリングサルヴ』の材料じゃないか!?」

 

「そうですね、本当は『ヒーリングサルヴ』を調合しようとしてましたし……」

 

「どういうことだ……!? コレは限りなく『アレ』に近い性質を持っているのに……そんな簡単な材料でできてしまうというのか? いや、しかし――

 

 あれ?何やら一人で呟き、考え込みはじめている。

 

 

 

 

「……一応聞くが、コレには名前があったりするのか?」

 

「ありますよ? 『()()()』っていうんです」

 

「……………」

 

「……………?」

 

「『えりくさ』?」

 

「はい、『エリ草』です」

 

「……『()()()()()』?」

 

「だから『エリ草』ですって」

 

 

 

「「………………」」

 

 

 

「ふざけているのかー!!」

 

「えぇ!? ふ、ふざけてなんていませんよ!? それに、『シアレンス』だと雑貨屋で普通に売ってる植物ですよ『エリ草』って」

 

「はあー!?」

 

 いきなりどうしたんだろう? こんな風に叫ぶアストリッドさんなんて、見たことが無い……というか、想像も出来なかったんだけど……

 

 

 

 その数分後、落ち着きを取り戻したアストリッドさんが「『エリ草』を数本持ち帰りたい」と言ってきたので、分けてあげた。ひとつでもあれば種はつくれるので全然問題は無い。

 

 それと、僕が「今、『エリ草』で 新しい薬が作れないか試してるんです」と言うと、アストリッドさんは「ああ、それはできるだろうな。とんでもなく凄い薬が……」と笑いながら言ってくれた

 けど、何故かアストリッドさんの目は笑ってなかった……どうしてだろう?




 ……アストリッドさんなら何とか出来そうな気もしますけど……そしたら話が
 というわけで、こんなことになりました



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