マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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※2019年工事内容※
 誤字脱字修正、細かい描写の追加、特殊タグ追加、句読点、行間……


マイス「モコモコ・1」

✳︎✳︎✳︎マイスの家✳︎✳︎✳︎

 

 

 目の前にあるのは扉、背伸びをしないと手が届かない位置にドアノブがある。

 察しが良ければわかるのかも知れないけど、今 僕はモコモコの姿になっている。そして、この扉は僕の家の玄関の扉だ。

 

 今の状況はさして珍しいことじゃない。

 今日はフィリーさんとリオネラさんたちが遊びに来ている。フィリーさんはモコモコ相手以外にもお喋りができるようにはなってきていて、モコモコがいない状態でも僕の家に遊びに来たりするようになった。それはリオネラさんの存在も大きかったんじゃないかな?

 

 だけど やっぱり時折寂しそうにするので、以前と同じように 人の状態の僕が外に出かけるフリをして『モコモコ』に変身し入れ替わるよに家に入る、今ちょうどその時なのだ。

 

 

ガチャ キィ………

 

「あっ! モコちゃん、ひさしぶり!」

 

「モコッ!」

 

 真っ先に僕に気がついたのはフィリーさん。僕は片手をビシッと挙げながら返事をする。

 

「いらっしゃい……モコちゃん」

 

「まぁ「いらっしゃい」っつっても……」

「わたしたちの家じゃないんだけどね」

 

「モコ~」

 

 リオネラさんの挨拶にホロホロとアラーニャがちょっとした口出しをするのを聞きながらも、僕はリオネラさんに挨拶を返した。

 

 そして扉を閉めた後、いつものように流しの方へと行き 手を洗う。

 元々は、初めてモコモコの姿でフィリーさんに会う際に、「彼女の警戒心を少しでも解ければ」と思いはじめたこの手洗いだけど、すっかり身に染みついてしまっていた。別に悪い事ではないからいいんだけどね。

 

 

 

 ソファーに並んで座るフィリーさんとリオネラさん。ホロホロとアラーニャはリオネラさんの隣に一緒に座っていて、僕はといえば…………

 

「ふふっ、ひさしぶりのモコちゃんのモフモフ……!」

 

「も、モコォゥ……」

 

 フィリーさんの膝の上に座らされて、もの凄くモフモフされてます。

ときどきほおずりされたり、ほっぺをフニフニ触ってきて こそばゆくてしかたがない……というか、顔は確認できないけど声はとろけてしまってるよ?

 そんな様子を見ているリオネラさんが「加減してあげてね? フィリーちゃん」て言ってくれたんだけど、フィリーさんは「あとちょっとー……」としか言わない…………どうしてこうなった。

 

 

 フィリーさんを止めるのを諦めたリオネラさんだったけど、「あっ、そうだ!」と何やらゴソゴソしだした。

 

 「どうしたんだろう?」と、モフモフされながらも そっちをみると、ちょうど僕の目の前に何かが差し出された。

 

「あの……これ、おみあげ」

 

 リオネラさんから差し出されたものは『虹珊瑚』。その名の通り、虹色に輝くサンゴで 『ネーベル湖畔』で採れる希少なものだ。

 

「あのね、私 このあいだ『ネーベル湖畔』に行ってきたの。知ってる? 『ネーベル湖畔』?」

 

「モコッ」

 

 リオネラさんの問いかけに、僕は頷きながら返事をする。

 

 

「えっ……避けられーー!?」

 

 頷いた時に、ちょうどフィリーさんが 頭をなでようとしていたみたいで、偶然にもその手を避けてしまったらしい。フィリーさんがショックを受けていた……けど、それはスルー。相手をしてたらキリが無い予感がしたからだ。

 

 

「その『ネーベル湖畔』で採れた『虹珊瑚』っていうものなんだけど……モコちゃん、ハイどうぞ」

 

「モコッコ、モーコ!」

 

「あのアストリッドって ロロナの師匠が言うには、結構貴重なもんらしいけど……まあオレたちにゃあ関係ねぇけどな」

「これだけキレイなだけでも、十分に価値があるでしょ」

 

 受け取った『虹珊瑚』を見つめる。

 このままでも綺麗だけど、装飾品なんかに使ってみるのもいいってリオネラさんが言ってたね……実のところ人間時のときにもお土産として同じく『虹珊瑚』を受け取って、簡単な説明も聞いていたからおおよそわかっている。

 

 

「それで、『ネーベル湖畔』に行ったときのことなんだけど、パメラさんっていう――――――」

 

 そこからはリオネラさんによる土産話が始まった。

 僕をモフモフするのを満足し終えたフィリーさんも途中から会話に混ざったり、賑やかなのを聞きつけたウォルフが背中にこなーを乗っけた状態で来たりと、かなり賑やかになった。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 「そろそろ戻ろうかな?」そう思い、外の林の中で人の姿に変身するためにフィリーさんとリオネラさんに「またね」の挨拶のをして外に出ようとしたときだ。

 

「モコちゃん、ちょっといいかな?」

 

「モコ?」

 

 フィリーさんの声に立ち止まり振り返る。どうしたんだろうか?

 

「あのね、ここにねモンスターさん用のお家ができんだけど……モコちゃん住んでみたくないかな って」

 

「……それ、いいと思う!やっぱり、外で暮らすのは色々危ないよ。モコちゃんやウォルフくんみたいに優しい子に 襲いかかってくるようなモンスターもいると思うし……」

 

 フィリーさんの提案にリオネラさんが頷く。

 

「私たちも一緒にマイス君にお願いするよ…!どう、かな?」

 

 ふたりは顔を見合わせた後 再び僕に顔を向け、問いかけてきた。

 …………もちろん、僕の返事は決まっている。

 

 

「モコ、モコモー」

 

 僕は首を横に振った。そして、いつものように笑顔で手を振りながら 林の中へと入っていく。ふたりが何か言う声が聞こえるけど、それには耳をかたむけずに歩いていく。

 「どうして」と理由を聞かれたら何も言えない。言うということは、僕が 人とモンスターのハーフであることをばらしてしまうことになるからだ。……これは『シアレンス』にいたころからだけど、やっぱり他人と違うのは受け入れてもらえるか不安で怖くて仕方がない……。

 

 

 あっでも、新しいモンスターをウチに招待してみるのは悪くないかもしれない。こなーや今いる『ウォルフ』と仲良くなれそうな子がいたらいいんだけど……。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

「どこにいくんだろう?」

 

「『近くの森』のどこかにお家があるのかな……?」

 

「…………どうすんだ これ?」

「さあ?」

 

 

≪続く…≫


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