回収できるか分からないような伏線めいたものをばら
さて、どうなることやら……
※2019年工事内容※
途中…………
「はぁ…」
「オイオイ、にいちゃん。商売話してるときにそんな陰気なため息吐くなよな」
「あっゴメン!?……ため息でてた?」
「ああ、しっかりとな」
僕が今いるのは自分の家の中、相対しているのは行商人のコオル
いつからか度々家に来るようになり、そのたびに僕は何かしら買い物をしている。以前に頼んだことがある作物の種の他にも 「あ、コレちょうどほしかったんだ」というものが思った以上にあったりして よく利用させてもらってる
「別に にいちゃんの悩みに首つっこむつもりは無いけどよ、前みたいな状態にならないでくれよ?あれじゃ 商売しようが無いからさ」
「前って……ああ、あの時かな」
思い出すのは、『シアレンス』へと帰る手段が失われて すっごく落ち込んでいた時のこと。ある人には「死んだ魚の目をしてた」なんて言われたりもした
確かにあの時は、コオルの行商をほとんど利用しなかったなぁ
「……今回も あの時と同じで、「できないことはできない」んだって割り切らなきゃいけないんだろうな…」
――――――
「うっし、こんなもんかな」
僕が買い物を終えた後、見せてもらっていた商品をコオルが片付け終えてひとつ息をついていた
「お疲れ様、今日も色々買わせてくれて ありがとう」
「いいって、こっちも商売だからな」
そう言ったコオルが「ところで…」と 話をきりだした
「にいちゃんは、街の店に品物卸したりしてるんだろ?どんな物出してるんだ?」
「えっと、『キャベツ』とか『ニンジン』みたいな野菜を食堂に、草花や調合した日用の薬を雑貨屋さんに 定期的に買ってもらってるよ。他にも、最近は依頼で注文がくることもあるかな」
依頼で注文が来始めたのは 去年の『王国祭』が終わった後からだ
『王宮受付』に行った際にエスティさんに「マイス君名指しの依頼が結構きてるわよー」って依頼書の厚い束を見せられた時は驚いたものだ…………全部受けて、翌日に全部納品したら、今度はエスティさんが驚いたけど
そんなことを コオルにも軽く説明すると、何だかニヤニヤ笑いながら頷いていた
「にいちゃん、良くも悪くも『武闘大会』で目立ってたからな。そりゃあ依頼も来るだろうし街の噂にもなるか」
「えっ、噂って」
「聞きたいか?」
「いや、遠慮しとくよ…」
あの『武闘大会』の後、街を歩いていたら『おたまの人』とか呼ばれたりしたし、半分もう知ってるようなものだ、きっと 尾ヒレもいっぱい付いてしまってるだろう……
『武闘大会』については 以前からの知り合いの人たちにも色々言われたりもした。イクセルさんには「フライパンもいいぞ」なんて言われたし、アストリッドさんには
そういえば、ステルクさんからは「あのような危ない勝ち方をしてしまい、申し訳なかった」と謝られて、その後「今度、キミが時間がある時でいいから 鍛練につき合ってはくれないか?」と頼みこまれたりもした
何度か手合せもしたけど、計3勝6敗1引き分け。ただ、いつもどっちが勝っても お互いに肩で息をするほどギリギリの勝負だったりする
おっと、今はコオルとの話しの途中だった
「えっと、それじゃあ 何をお店に卸してるか聞いたのは、何かの噂を聞いたから?」
ちょっと気になったことを聞いてみると、コオルは首を振った
「いや、そういうわけじゃなくてさ……いろんな物があるし オレもこうして結構立ち寄るようになったから、何か ここで仕入れて街で売るもんでもあってもいいかなって思ったんだが…」
何を考えているのか、コオルは何かを指折り数えながら首をかしげたりしながら 言葉を続ける
「もうそんだけの物を売ってるなら必要なさそうか。もう、安定して卸されてるんなら 俺が今から割り込んでもリスクが高いだけだしな」
さすが商売人といったところだろうか。現状と後々の事とを色々と考えながら話してたんだなーっと僕は感心したんだけど……
「でも、ここで諦めるのも 何だかもったいない気もするなー…」
「そう思えるかもしれないけど、商売ってそんなもんだぜ。リスクを極力避けて利益を得るに越したことはないさ」
確かに その通りなんだろうけど、せっかくなら何かやってみたいと思ってしまっている僕がいるのも事実だ
そこで、ふと思いついたことをコオルに言ってみた
「ねえ、最近の街の人たち……というかコオルのお客さんたちが求めてる物って、何があるのか わかったりする?」
「だいたいの傾向とかあったりはするけど…そりゃ 人それぞれ色々あるぜ?それがどうかしたのか?」
「ある人が欲しがった物って、その人だけが欲しがるってことは少ないんじゃないかな?もしかしたら、気づいてないだけで他の人にとっても有益な物だったりするだろうし……なら、誰かが欲しがった物を商品として生み出すのも有りなのかなって」
「……つまり、商品を一から開発するってことか?リスクとかの前に、そもそもそんな市場があるか?」
「たとえば、旅をする人たち向けの物とかは まだまだ開発の余地はあると思うんだけど……自分で仕入れしてるコオルも 何か思い当たったりしない?」
そう僕が聞くと、コオル腕を組んで「うーん」とうなった
「あるにはあるけどさ……一から何か作るってのは時間も労力も、金だってかかるぜ?大丈夫なのか?」
「そのあたりは、ある程度はどうにでもなるから心配ないよ」
時間も労力も、『離れ』と『モンスター小屋』を建て終えてから 持て余してしまっている部分が多い。それに、お金だっていつの間にか結構な額が貯まっていたので大丈夫だと思う
「わかった。オレがやれることは限られるけど 協力するぜ」
「ありがとう! それじゃあ早速、最近の傾向についてなんだけど……」
―――――――――――――――
***王宮受付***
また別のある日のこと。『王宮受付』に依頼品の納品と 新しい依頼を受けに来たんだけど……
「はあぁー……」
「こんにちは、エスティさん。……どうしたんですか?元気が無いですけど…」
「あぁ、マイス君。その…ちょっとね」
力無く手をヒラヒラさせて挨拶に応えたエスティさんだったけど、やっぱり元気が無かった。本当にどうしたんだろう……?
「その様子だと、マイス君はまだロロナちゃんに会ってないのね」
「えっ、そうですけど……!?ロロナに何かあったんですか!!」
カウンターの向こう側にいるエスティさんに詰め寄ると、エスティさんはギョッとした顔をして驚いていた
「ちょっ!?お、落ち着いて!落ち着きなさいってば!!」
「あっ、う…ご、ごめんなさい……」
つい焦ってしまい、エスティさんに叱られてしまった
だけど、ロロナにいったい何が…
「実はね……」
――――――
エスティさんが教えてくれた話はこうだ
ロロナを助けてあげたいと思っていたクーデリアが、内容に対して不釣り合いな高額報酬の依頼を、自分の名前を隠し ロロナ名指しでエスティさんにお願いしていたそうだ
当然、ロロナは「こんなに受け取れない」って言っていたけど、エスティさんが「ちゃんと達成した依頼の報酬なんだから」と受け取らせていたらしい
正式に出された依頼だから、困ってる人がいるから出てるんだ…と考えるロロナは その高額依頼をこなしていくわけだが、不当な高額報酬を受け取っているロロナは 周りからあまり良い視線を向けられなかった。そして、ロロナ自身もそれを感じ取っていたそうだ
ある日、ロロナがエスティさんに問い詰めたらしい「あの依頼を出した人をしってるんですか」って
そして……
――――――
「その後は ロロナとクーデリアがケンカをしたってことを聞いて、実際 次に会った時にはロロナがすっごく落ち込んでいた、と」
「そうなの。そのあたりは詳しくは知らないんだけど……はぁ、私がよかれと思って話したことが こんなことになっちゃうなんて…」
「でも、ずっと隠し続けるのは難しいことだと思いますし、遅かれ早かれ きっとロロナも知ることになったと思います。…それよりも今は、ロロナとクーデリアが仲直りできるかどうかですね」
そのケンカのことも知らないし、まだ ふたりに合ってもいないから何とも言えないけど、 やっぱり仲直りしてほしいとは思う
でも、僕にできることはあるんだろうか?
「……とりあえず、後でアトリエの様子を見に行ってきますね」
「うん、よろしくね。私もふたりに会った時に なんとかできないか探ってみるから」