マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 エイプリル・フールだからといって、なにかあるわけじゃないです







※2019年工事内容※
 途中…………


マイス「何事もほどほどに」

***職人通り***

 

「ふぅ、もうこんなに遅くなっちゃった」

 

 『職人通り』を歩く僕は、頭上へと目を向けた。街を照らしていた陽は ついさっき沈みきり、空には星々が輝いている

 

 

 なぜ 今日はこんな時間に街にいるのか、それには ちょっとした理由があった

 

 それは先日タントさんから聞いていた、僕の農場への視察が 午前中からあったからだ

 タントさんのお父さん…このアーランドの大臣という役職の人なんだけど、その人が 以前に『王宮受付』のそばで出会ったことがあった人だったり、用意していた昼食を 大臣さん、タントさん ともにとっても気に入ってもらえたり、色々と質問攻めにあったり……ちょっと忙しかった

 

 で、視察が全て終わってから 街での用を片付けていたら こんな時間になってしまったのだ

 

 

「あとは……『サンライズ食堂』で、この間 新しく(おろ)させてもらった野菜の評判と、次の仕入れの予定を聞いてこないと。 今日はそれで全部終わりかな?」

 

 もう一度、思い返して 自分の頭の中で確認してみる。…うん、もう他にはなかったに違いない

 それじゃあ『サンライズ食堂』に寄って、その後は そのまま家に一直線に帰ろう。暗くなっているし、それがいいだろう

 

 

 

 『サンライズ食堂』が見える位置あたりまで来た ちょうどその時、『サンライズ食堂』から出てくる人影があった

 

 最初は ただのお客さんかと思ったが、どうも様子がおかしかった

 よくわからないけど、慌てているようで、全力疾走…ってほどではないけど小走りでこちらのほうへときていた

 

 食い逃げか何かか?と思って、一度立ち止まり 警戒態勢をとった……けど

 

「あれ?エスティさん、どうしたんですか?」

 

 人影の正体が 僕もよく知るエスティさんだったので、ひとまず警戒を解いた

 

 けど、エスティさんは止まる気配は無く、走りながら

 

「ゴメン、ちょっと急いでるの!…あっ、『食堂』には今は入っちゃダメだからねー!」

 

 と言い、僕の横を通り過ぎていった

 

 

「お酒のにおいがしたけど、あんなに走っても大丈夫なのかな…?」

 

 エスティさんのことは少し心配だけど、いまさらどうしようもない

 

 それにしても「入っちゃいけない」って……『サンライズ食堂』で何かあったのだろうか?

 とは言っても 用もあるし、もし何か大変なのだとしたら イクセルさんのことが心配だ。それに僕に何か手伝えることもあるかもしれない

 

 そう考え、止めていた足を 再び『サンライズ食堂』へと動かした

 

 

 

――――――――――――

***サンライズ食堂***

 

 

 

 あくまで僕個人の感覚でだけど、夜より昼のほうが客が多い『サンライズ食堂』は いつもと違う騒がしさが…

 

「うっふっふっふっふっふ……ロロナちゃああああん!!」

 

「きゃあああ!?てぃ、ティファナさん?」

 

 騒ぎの中心になっているのは、ティファナさんとロロナのようだった。ふたりは僕がお店に入ってきたのに気がついていないようだった。…それにしても、なんだかティファナさんの様子がいつもと違うような……?

 そんなことを考えている間にも、ティファナさんがロロナに近づき、密着していって…

 

「やだちょっと、抱きつかないでくださいー!」

 

「だーめ。エスティには逃げられちゃったから、ロロナちゃんは絶対離さなーい」

 

 ここで ふとあることに思い当たった。そう エスティさんだ

 エスティさんからはお酒のにおいがしていた。そして、よくよく見ると ティファナさんの顔はほんのり赤く染まっている。 つまり、ティファナさんは酔払って人に絡むようになり、エスティさんは逃げ出し ロロナが被害を受けてる…そういうことだと思う

 

 

「そ、そんな…わひゃあ!?へ、へんなところ触らないでー!」

 

 困惑しながらも なんとか抵抗をしようとしていたロロナだったけど、ティファナさんの手がロロナの服の隙間から入り込み……

 

 ここで僕は「見ちゃいけない!」と思って顔をそらした。僕の顔は 火が出そうなくらい熱くなってしまっていた

 そして、僕が目をそらしたところで、当然 状況は変わらないわけで……

 

「ロロナちゃん やわらかーい。やっぱり若いっていいわー…」

 

「やめてー!お願いですから―!」

 

 ロロナの服の下に潜りこんだ ティファナさんの手が、ドコでナニをしているのかはわからないけど、ロロナの声が店に響いていた

 

 

 

「…おーい。店の中で変な声出さないでくれるか」

 

 ここで声をかけたのが、『サンライズ食堂』のコックのイクセルさんだった

 

 自分のことで一杯一杯だったのであろうロロナが、このお店にイクセルさんがいることを やっと思い出したようだった。そしてロロナは、半分泣きながら幼馴染のイクセルさんに救いの手を求めた

 

「イクセくん!助けて!ティファナさんが、ティファナさんがー!!」

 

「今お前を助けると被害が店全体に広がるんだ。なんとかお前一人で食い止めてくれ!」

 

「そ、そんな!?イクセくん!イクセくんってばー!」

 

 非情にも思えるけど、イクセルさんの対応は お店を背負っている人としては間違ってはいない……いや、でも やっぱり……

 

 

「うふふふふー…邪魔者は消えたわぁ。これで遠慮なく……うりうりうりー」

 

 目で見てないので どうなっているかはわからないけど ティファナさんはヒートアップしてきたみたいで、比例するようにロロナの声もあがっていく

 

「うひゃー!だ、ダメ、そんな……も、もういやー!誰か助けてー!!」

 

 

 

 ……うん、さすがにこれは なんとかしてあげないといけないだろう

 ロロナを助ける時に何か色々と見えてしまうかもしれないけど……こう、パッとやってパッと終わらせれば大丈夫だと思う…たぶん

 

「…そうだ!アレならティファナさんを止められるはず…!」

 

 

 カゴから『秘密バッグ』を取り出す

 二足歩行のネコキャラのような見た目の『秘密バッグ』の本体のファスナーを開き、バッグの中に手を入れる。すると、その中の空間は家のコンテナへと繋がっているので 目当てのものを探す

 

「あった!」

 

 目当てのものを手探りで探し当て、僕の身長とさほど変わらない大きさのものを引き抜き かまえる

 僕と、僕の取り出したものに気がついた周りのお客さんが にわかにざわめくのがわかった

 

「ちょっ!?おま…!」

 

 イクセルさんも驚いたように声をあげたけど、僕は止まらずに 手にしたもの…『ピコピコハンマー』をティファナさんに向かって叩きつけた

 

「手加減は……しますから!」

 

ピコッ!!

 

「きゃん!?」

 

 気の抜ける音と共に ティファナさんがふらりと倒れた

 

 

「ふえぇ…た、助かった……?」

 

 僕は、その場にへたり込んでしまうロロナに目をやりながらも、倒れてしまったティファナさんのほうへと 駆け寄った

 

「大丈夫なのか…?」

 

 そう僕に聞いてきたのは、さっきまで「我関せず」とカウンター越しにある調理場にいたイクセルさん

 

「ちょっと気絶して眠ってもらってるだけです。これ、痛くないけど 叩くと気絶させやすいハンマーなんですよ」

 

 そう言って僕は手に持つ『ピコピコハンマー』を軽々と持ち上げてみせた

 すると、イクセルさんは「ちょっと貸してみろ」と言ってきたので、特に断る理由も無いので 素直に渡した

 

「うわっ、なんだこれ!?こんなにデカいのにフライパンより軽いぞ」

 

 『ピコピコハンマー』をダンベルのようにヒョイヒョイ動かすイクセルさんだった

 

 

「そんなことより、ひどいよイクセくん!私のこと 助けてくれなかったっ!」

 

「つったてよ、こっちにも色々事情があったわけだしよ…結果的に助かったんだから良かったじゃねえか」

 

「助かったのは マイス君のおかげなんだけど…」

 

 いつの間にか復活したロロナがイクセルさんに非難を浴びせながら頬を膨らませ、それに対してイクセルさんは「わるいわるい」と軽く謝っていた

 

 

 

「ふたりとも。今はティファナさんのことをどうにかしないと」

 

 僕がそう言うと、ロロナとイクセルさんは一緒に頷いた

 

「確かに そうだよね」

 

「店の床で寝させるわけにはいかないし、酔払いだからといって さすがに外にほっぽりだすわけにも……」

 

「僕が抱えて ティファナさんの家まで送っていってもいいんだけど、家に鍵がかかってるだろうから…」

 

 どうしたものかと 僕を含めた三人が頭を悩ませていた……と、その時 お店のドアが開く音が聞こえた

 

 

「……そろーり」

 

「あっー!!エスティさん!」

 

「ぎくっ!?ろ、ロロナちゃん!こここ こんばんはー!って、あれ?」

 

 お店に こっそりと入ろうとしていたエスティさんが、ロロナの声に驚いたかと思えば、急に間の抜けた声を出した

 

「よかったー。ティファナ 寝ちゃったのね」

 

「よかったー、じゃないですよ!マイス君が来てくれてなかったら、すっごく大変なことになってたかもしれないのにー!」

 

「ご、ごめんね。ティファナがこんなになっちゃうの久しぶりだったから つい…」

 

 以前にも こんなふうになったことがあるなら、お酒を控えさせるなり何なりするべきだと思うけど……まあ、過ぎたことを今言うよりも…

 

 

「あの エスティさん。ティファナさんをティファナさんの家まで送っていきたいんですけど……鍵、持ってたりしませんか?」

 

「ええ、ちょうど合鍵を持ってるわよ。 それじゃあ 私もついていくわ」

 

 

 

 そう言ったエスティさんは、支払いを済ませにいった

 

 

 

―――――――――

 

***ロウとティファの雑貨店***

 

 時々エスティさんの手を借りながら 僕がティファナさんを抱え、雑貨屋さんの二階の寝室まで運んだ

 

「それじゃあ、マイス君は もう『サンライズ食堂』に戻っていいわよ。何か用があったから 私が忠告したのに行ったんでしょ?」

 

「はい。…エスティさんはどうするんですか?」

 

「私は一通り戸締りを確認してから 家に帰るわ」

 

「わかりました。あとは よろしくお願いします」

 

 そう言って僕は頭を下げて 雑貨屋さんをあとにした

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 翌日、僕の家に遊びに来たフィリーさんに エスティさんがちゃんと帰り着いたか聞いたら……

 

「えっと よくわからないけど、なんだかすごく疲れた顔して 今日の朝に帰ってきたよ…?」

 

 ……何かあったのかな?





 原作のCEROレーティングはAだから、R-15でもR-18でもないですよね!ね…?
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