それと、評価に一言コメントという機能があることに 今日初めて気づきました
※2019年工事内容※
途中…………
「うーん……どうしてだろう?」
僕が見つめる先には、ちょっと前に 新しく拓いた畑。以前からある畑とは違い、主に 新しい作物を試験的に育てるために使っている
植えられているものの中には『錬金術』で偶然できたものもあって、色んな種類が入り乱れている
そして、今、僕が見ているのは 枯れかけの弱々しいツル。本来ならばもっとしっかりとしていて ドンドン実が大きくなっていくはずなのだが……
「アーランドの気候が合っていないのか…そもそもの種自体がまだ弱いのか……」
畑の一角に9本のツルが生えたのに 実ができたのは2本だけ、残りの7本は 花が咲いていた場所に小さな球はできたものの成長することは無かった。しかも、できた2本も 実はそれぞれ最低限のサイズで1つだけ
手にしたピンク地に網目のはった実を見る
本来なら 僕の顔よりも大きくなるくらいなはずだが、今回できたのは手のひらと同じくらいの直径しかない……
「根本から見直さないといけないかな、この『オトメロン』」
さて……それじゃあ この今回できた『オトメロン』はどうしようか…?
――――――――――――
***とある病室***
「……それで、何故 私のところにきたんだ?」
「ステルクさん、寝たきりで退屈なんじゃないかなーって思って」
「確かに退屈はしているが…」
僕は ステルクさんの病室のベッドのそばのイスに座って話しかけている。ステルクさんは首と目をわずかにこちらに向けている
「はい、切り終えました。これが最近新しく育てはじめた『オトメロン』です」
「いや ちょっと待て」
一口サイズに切り終え 皿に盛りつけた『オトメロン』の内の一切れを フォークを使ってステルクさんの口元に近づけたのだが、ステルクさんが制止をかけてきた
どうかしたのだろうか?と首をかしげていると、ステルクさんはモゾモゾと体を動かし 金属の擦れる音をたてながら言ってきた
「『コレ』を解いてくれ。そうすれば自分の手で食べれる」
「ああ…でも ごめんなさい、『
「そ、そうか……」
そう、今 ベッドに寝ているステルクさんの身体は 怪我を覆う包帯の他に、動けないようにするために鎖で縛られているのだ
何故ステルクさんが怪我をしているのか。何故鎖で縛られているのか…………まあ、これには色々と理由があるのだけど……
「とりあえず一口どうぞ」
そう言って、もう一度一口サイズの『オトメロン』を ステルクさんの口元へと運ぶ
「はぁ…どうしてキミは そこまで自分の作った作物を食べさせたがるんだ」
驚いた、ステルクさんから 僕はそういう認識をされていたのか。……いや まあ、ステルクさんの鍛練につき合う際に いつも色々差し入れを持って行ったりもしたけど…
「ステルクさんが ヒマがあれば剣の鍛練をしようとするのと同じだと思ってください」
「……そういう、ものなのか?」
「そうですよ、極めたものや新しいものの 他の人からの意見や感想が欲しいものなんです」
「それは、まあ……わからんでもないか…」と言ったステルクさんは、難しい顔をしたままだったけど やっと『オトメロン』を口にしてくれた。そして、口にしてすぐにステルクさんの表情が変わった
「……美味いな。味自体は強いが口当たりは良く、むしろスッキリとした印象だ」
「良かったです!前の街で育てた時よりも小さくしか出来なかったから、ちょっと心配だったんですけど、ひと安心しました」
もしかしたら 小さく、数も少ない代わりに、その分 凝縮されたものになったのかもしれない。もっとしっかり 調べてみる必要がありそうだ
―――――――――
「本当なら、ロロナもここで一緒に食べてみて欲しかったんだけど…」
「……何かあったのか?」
「ロロナに「一緒にお見舞い行かない?」って聞いたら、「エスティさんに、会ったらダメって言われた」って言ってました。……確かに、ドラゴンから守ってくれた人が 鎖でグルグル巻きだと、ロロナも反応に困りそうですね…」
「ぐぅ…!」
そう、ステルクさんが怪我をした理由。僕は直接その場にいた訳ではないので詳しくは知らないが、少し前に とある採取地に現れた『ドラゴン』をロロナと討伐しに行った際、ドラゴンの不意打ちからロロナをかばって怪我を負ったそうだ
その時のロロナは「ステルクさんが怪我したのは私のせいだー」と言って泣き止まなかったりと大変だったらしい。僕が会った時も、落ち着いたかと思えば 思い出し泣きだして、また落ち着いたかと思えば……と言った具合だった
「……で、ちょっと動けるようになったからって病室を抜け出して剣の鍛練して、お医者さんから鎖でベッドに縛りつけられて…。物語の騎士そのものーとか言ってた人とは思えませんね」
「なっ!?ななな、何故その話を知っている!?」
これまでに見たこと無いほど顔を真っ赤にして狼狽えるステルクさん。でも、「その話」ってどれのことかわからないし、それにこれは…
「えっ?エスティさんが「マイス君からも言ってあげてー」ってメモ用紙を渡してきて……この『物語の騎士』って何のことなんですか?」
「忘れろ!今の話や エスティ先輩が言ったことは忘れてしまえ!!いいな!」
「は、はいっ!?ステルクさんがそんなに嫌がることなら、それはまぁ忘れますけど…」
いきなり傷に響かないか心配なほどの大声を張り上げるステルクさん。その目つきはいつもの数倍怖かった
ステルクさんに要求され、エスティさんから渡されたメモ用紙を ステルクさんが見える位置でビリビリに破いてみせた。そして それを丸めながら 僕は口を開く
「誰にも話しませんし、忘れる努力もしますけど……怪我が治って お医者さんがOKを出すまで、ちゃんと安静にしてくださいよ?そうじゃないと、ロロナがまた「私のせいでステルクさんに我慢させてるんだー!」って自分を責めちゃいますから」
「ムゥ……わかった」
少し間を置いてだったけど、ステルクさんは頷いてくれた
でも実際のところ、ステルクさんが剣の鍛練を我慢するのは本当に大変だろう。……僕だって「農作業をしてはいけない」なんて言われても 素直に頷けない
「…やっぱり、ずっとベッドの上っていうのも退屈そうだし……何か本とか欲しい物はないですか?読書のためって言えば 手だけくらいなら鎖を取ってもらえそうですし」
「確かに あるとありがたいが…。それよりも、キミはこういった怪我を治せる薬は作れたりはしないのか?」
「病気とかは専門外で無理ですけど、そういった傷を治す薬は色々ありますよ」
そう僕が言うと ステルクさんが少し嬉しそうに「ならば…」を口を開いたんだけど、その続きを言わせないように 僕が先に言う
「だけど、使いませんよ?僕よりも凄い薬を作るアストリッドさんが治してないんですから、きっと薬よりも自然回復のほうが良いんだと思います」
ステルクさんの治療を最初にしたのはアストリッドさんだということは エスティさんから聞いていた。なら、僕の出る幕なんてありはしないだろう
しかし、ステルクさんは苦い顔をしていた
「あいつは昔から 人をからかうために何かをしでかす奴だから、いまいち信用が足りんというか 釈然としないというか…」
「さすがに人の命に関わることで そんな気は起こさないとは思うけど……」
ロロナが幼い頃、ロロナの両親が流行り病で大変だった時にロロナが助けを求め 両親を治したのはアストリッドさんだったって聞いてるし、そういう真面目な時はちゃんとするのだと思う
……まあ、その時の料金(?)としてロロナをアトリエ住み込みの弟子にしたそうだが、そのまま何年も『錬金術』の「れ」の字も教わること無く、いいようにいじられ続けたらしいから何とも言えない…
「でも たしかに時々困ったこともするかも…」
「キミも何かされたのか?」
「ちょっと前から『ちょっと借りるぞ』って書置きと入れ替わるように 家に置いてたものが無くなったりしてて、結局返ってこないで 次のものがなくなったり……この前は依頼のために用意してたものが…」
「それは完全に泥棒行為じゃないか!」