そして、サブタイトルが やっぱり迷走しています
※2019年工事内容※
途中…………
カンッ! カンッ! カンッ!
僕が金槌を振り下ろすたび音が響きわたる作業場。『炉』の中には煌々とした炎が見えていて、熱気が漏れ出している
「ごめんね。あと、少しで終わるから」
僕がそう言うと 『炉』から少し離れた位置でイスに座っている二人が言葉をかえしてきた
「私たちは大丈夫だから、焦らなくていいよ、マイスくん」
「うん。それに、マイス君が鍛冶仕事してるの見るの初めてだから、これはこれで……」
イスに座っているのは、さっき遊びに来てくれたリオネラさんとフィリーさん。もちろん リオネラさんのそばには 黒猫と虎猫の喋る人形・ホロホロとアラーニャがフワフワと浮いている
うーん、やっぱり見られているのは慣れないし、少し気にはなるけど……今は目の前のことを しっかりとしてしまおう
――――――
「よしっ、できた!」
そう言って僕は完成した杖『シルバーロッド』を手に持った。…うん、とりあえずは問題はなさそうだ
「すっごくキレイ……だけど、ここまで銀一色だと『杖』っていうよりも芸術品ぽいかも…」
「うん、フィリーちゃんの気持ち わかるよ。なんていうか、釜をかき混ぜるのに使うのは勿体ない気がする…」
「でも、まっ
「そもそも そんな杖はないでしょ」
離れて様子を見ていたみんなの声が聞こえたので、『シルバーロッド』を持ってそっちへと向かう。そして、ちょっと訂正をした
「これは 『錬金術』のときに釜をかき混ぜるための杖として作ったわけじゃないんだ」
「えっ、それじゃあ 戦う時に使うの?」
リオネラさんがそう聞いてきて、その隣のフィリーさんも首をかしげて こっちを見てきた
「戦闘に使えるには使えるけど……いうならば、実験のため、かな?」
「「実験?」」
「うん。僕の知ってる『魔法』をアーランドの人も使えるのか、っていう実験。それの第一段階なんだ」
「魔法って、あの?」
リオネラさんが言っている「あの」っていうのは、以前、お互いに自分の秘密を話した時に 目の前で使って見せた『リターンの魔法』のことだろう。 フィリーさんのほうは、話はしたけど 実際に『魔法』を使って見せたことが無いから、簡単なイメージくらいしか思い浮かんでいないかもしれない
「前に話したように、帰還用の『リターン』以外にも 色んな属性の攻撃用魔法とか回復の魔法なんかがあるんだけど、それらの『魔法』って 『シアレンス』とかでは大抵の人が使えるものなんだ」
そう、『魔法』は才能の有無はあるものの、簡単なものならほとんどの人が使えるのだ。全く使えない人もいるらしいけど、とりあえず『シアレンス』には一人もいなかった
そして、使うのが苦手な人でも『杖』があれば ある程度は安定して使えるようになる。ただし この場合、作った『杖』の種類や、強化する際の素材によって使用できる魔法は限定されてしまうが…
「それで、誰でも使えるのか確かめるために 杖を作ってみたんだ」
「それじゃあ、私もその杖持ったら 絵本に出てくる魔法使いみたいに色々できちゃうの!?」
「その「色々」っていうのがよくわからないけど……とりあえず、この『シルバーロッド』なら闇属性の魔法が使える様にはなるよ」
『シルバーロッド』は何も強化していない基本的な状態であれば、相手の体力を吸収する闇の球体を放つ…魔法で言うと『ダークボール』のような魔法を使える
体力を吸収する効果がある分、球体自体の動きが遅いという欠点があったりもするので 現時点では使い道はとても限られたものだけど、アーランドの人でも使えるかどうかを確認するだけだから 気にする必要はないだろう
「ね、ねぇマイス君」
フィリーさんがおずおずと呼んできたが、その目からは期待の色が見て取れるほどキラキラしていた
「その杖、私が使ってみたらダメ、かな…?」
「いいよ。っていうか、僕のほうからお願いしたいくらいだよ!」
「うへへ、やったー!」
喜ぶフィリーさんを見ながらも、僕はチラリとリオネラさんのほうへも目を向けた
リオネラさんは
―――――――――
僕の家は 林に囲まれた場所にある。僕が住みはじめてから 街道への道のりをわかりやすくしたり、木を切って土地を広げて 畑を作ったり『離れ』や『モンスター小屋』をつくったりしてきた
そんな家の外の、畑からも少し離れていて 空いているスペースに僕らは出てきた
『シルバーロッド』をフィリーさんに手渡しながら 僕は言う
「大丈夫だとは思うんだけど、いちおう 人に向けては打たないでね?誰もいない方向に振ってくれればいいよ」
「もー、マイス君。そんなことは さすがにわかってるよ~」
上機嫌に言うフィリーさんは 受け取った『シルバーロッド』を「ここくらい…いや、この位置のほうがいいかなぁ?」と呟きながら持つ位置をいろいろと確かめだした
そして僕はフィリーさんから少し離れて、家の近くにいるリオネラさんたちのそばに行った
「んで、どうなんだ。マイスの予想では フィリーは『魔法』を使えそうなのか?」
そばに来た僕に ホロホロが問いかけてきた
「たぶん このままだと無理かな」
「あら意外ね。できそうだから渡したんだと思ったんだけど…」
アラーニャがそう言うが、僕からしてみれば当然のことだった
「ほら、ロロナが戦闘で光の玉を打ち出したりするよね。アレは『魔法』じゃなくて武器の機能の一部らしいけど、『杖』は『魔法』だけどアレに近い感覚なんだ」
だからロロナのような武器での戦闘経験のある人なら、たぶん問題無く一発で『杖』での魔法使用ができると思う。……まあ、そもそも アーランドの人が『魔法』を使えない可能性はまだあるから絶対とは言えないけど
「だから、コツ…っていうか使う感覚を教えたりするまでは たぶん使えないんじゃないかな」
「え、えっと、マイスくん。『魔法』を使うために
「えっ?」
リオネラさんが不思議なことを言ったから、何事かと思ったけど……
「て~い!はぁぁぁ…ほーぅ!!」
ちょっと目を離していた内に フィリーさんは『シルバーロッド』を持ってクルクルと 変な動きをしだしていた
「ちょっと、早くフィリーに ちゃんと教えてあげなさいよ…」
「見てるコッチがなんか恥ずかしくなってくるぜ」
これはアラーニャとホロホロの意見に 僕も大賛成だった。リオネラさんも同じようで、すごく頷いていた
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フィリーのほうへと駆け寄るマイスの背中を見ながら、リオネラはひとり思いふけっていた
そんなリオネラに声をかけるのは そばにいるホロホロとアラーニャだった
「んー、お前の考えてることも大体わかるけどよ……実現できるかどうかは置いといて、オレはいいと思うぜ?誰でも『魔法』が使える世界ってのも」
「うん……でも…」
リオネラには少し理解し辛かった
「魔法だ」「魔女だ」と白い目で見られ虐げられてきた過去を持つリオネラは、もしマイスの使う『魔法』が世間に知れ渡っても 受け入れられるものなのかどうか不安だった。そして、「誰でも使える」なんて言っても不思議なチカラには変わりないから、マイスも虐げられてしまうのでは……と
「まぁ、オレたちがどうこう言ったところで、マイスのヤツが止まるとも思えねぇしな」
「そうね。それに……」
ホロホロに続いて喋り出したアラーニャは ひと息置いて自身の考えを口にした
「…やっぱり、マイスは懐かしいんじゃないかしら?『シアレンス』のことが。帰れないってわかってても、わかってるからこそ 忘れたくないって思ってるんだと思うわ」
ギュオォ……
「わっ!できた!!」
その声と聞きなれない音に気付き リオネラがそちらを見てみると、そこには 人の顔よりも少し大きいくらいの少しモヤモヤした球体がゆっくり移動していた。 そして、そうたたずに球体は霧散してしまった
「リオネラちゃんっ、見てたー!?」
興奮気味のフィリーが リオネラにむかって大きく手を振って猛アピールしていた。そして その近くには、フィリーにも負けず劣らずの喜びようのマイスがいた
「ふふっ…見てたよ、フィリーちゃん」
そんな様子を見たリオネラは、色々と考えている自分が 何だかおかしく思えてきて、いつの間にか笑っていた