マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 フラグ回収回







※2019年工事内容※
 途中…………


ホム「モフモフしたあの子」

 街から伸びる街道を ホムはひとり歩いています

 

 今日はマスターから休暇を貰いましたので、なー に会いに おにいちゃんの家へとむかっています。手に持つカゴには マスターから「マイス君によろしくね!」と預かっている『ベリーパイ』が入っています

 

 

 街道からそれていく 林へと続く舗装されていない小道へと入り、その道をどんどん進んでいきます

 木々に囲まれた小道を少し行くと、切り開かれた土地が見えてきて、おにいちゃんの家と その陰に半分隠れるように『離れ』と『モンスター小屋』が見えてきました

 

 小道が木々の間を抜けると 目に留まるのは、おにいちゃんが毎日のように世話をして育てている作物が育っている畑。まだ 芽だけのものや 花が咲いているもの、小さな実が()り始めているものもあります。当然、種類も様々です

 

「さて、おにいちゃんとなーは元気にしているでしょうか」

 

 

―――――――――

***マイスの家***

 

 

「「あっ……!?」」

 

 ホムが玄関の戸を開けて 家の中に入ると、あまり聞きなれない声が重なって聞こえました

 

 声のした方へと目を向けてみると、そこには ソファーに座った女性がふたり

 ひとりは見覚えがあり、マスターに会いにアトリエに来ることがあるリオネラという旅芸人、そのそばには二匹のネコの人形がフワフワ浮いています。もうひとりは誰だか知りませんが……そのふたりがこちらを見て驚いていました

 

 それにしても、なんで驚いているのでしょうか…?

 ホムは少し考え、あることを思い出しました。以前おにいちゃんが「ウチは別にいいけど、他の家にお邪魔するときは ちゃんとノックしてから入るんだよ」と言っていました

 ……でも、ここはおにいちゃんの家、なんの問題も無いはずです

 

 

「おじゃまします」

 

「「ど、どうぞー…」」

 

 何故か ソファーに座るふたりが返事をしてきましたが、気にする必要はないでしょう

 改めて ちゃんと家に入り、玄関の戸を閉めます。……お客様はいるのに、おにいちゃんは見当たりません

 

「…キッチンのほうでしょうか?」

 

 そう思い 少し覗いてみますが、キッチンにもいませんでした

 

 

 まぁ、おにいちゃんが出かけていることは(たま)にあることなので、今日もそんな日なのでしょう。気を取り直して なーと遊びましょう……

 

「……あっ」

 

 ここでホムはあることに気付きました

 

 何故かコソコソ話していたり、目が泳いでいたりする ソファーに座るふたりの膝の上

 その片方には なーが丸くなっていました。そして もう片方に座っていたのは、以前ホムが道に迷った際に アーランドの街までの道案内をしてくれた 金色の毛のあのモンスターさんでした

 

 おにいちゃんの家にいるウォルフと似た 青の布を巻いているので、何か関係があるとは思っていましたが、こうして会えるとは…

 

 

 

「あの時のモンスターさんですか?」

 

 ソファーのへと近づいてホムが訪ねると、モンスターさんは膝上から床へと飛び降り……

 

「モコ」

 

 と、言いながら頷いてきました。間違いないようです

 

「あの時はありがとうございました。おかげでホムは 無事帰宅することができました」

 

「モコ~、モコッコ」

 

 恐らく「いやあ、無事に帰れたなら良かったよ」みたいなことを言っていると ホムは判断します。前にも思いましたが、この子はちゃんとホムの言っていることがわかるみたいですね……

 

 

 ホムはあることを思いつき、自分のカゴをテーブルの上に置いて 中をあさります

 預かりものの『ベリーパイ』をテーブルに置いて……そして、ホムが以前におにいちゃんから貰った『ブラシ』を カゴから取り出します

 

 そして、もう一度 金色の毛のモンスターさんの近くまで行き、床に腰を下ろします

 …それにしても、モンスターさんは小さいです。床に座ったホムと あまり目線が変わりません……それがちょうどいいとも思えなくもないですが

 

「あの時のお礼と言ってはなんですが、ホムがブラッシングとマッサージをしてあげます」

 

「「ええっ!?」」

 

「モコッ!?」

 

 

「なぜ、そんなに驚くのですか?」

 

 それも、モンスターさん以外のふたりまで……そんなにおかしなことを言ってしまったのでしょうか?

 

「ホムが上手くできるか心配なのですか?大丈夫です。なーとおにいちゃんのお墨付きですよ」

 

「な~ぅ」

 

 ホムの言葉を肯定するように なーが鳴いてくれました。そう、ホムのブラッシングは おにいちゃんに教えてもらった後、なーを満足させるに至りました。なんの問題もありません

 

「どうぞ こちらへ」

 

 床に座ったホムの、スカート越しの膝の上をポンポンっと軽く叩きながら モンスターさんに手招きをします

 

「も、モコー…」

 

 モンスターさんは ようやくホムの膝の上に座ってくれました

 …思った以上に軽いです。このフワフワな毛で大きく見えていて、実際はもう少し小さいのかもしれません

 

 

 さて、なんとなく「嫌々」といった様子で座ったモンスターさんですが、このブラッシングが終わった時には ホムに任せて良かったと思えるほど満足してくれるに違いありません。ホムにはその自信があります

 

「では、始めます」

 

「モコッ」

 

 モンスターさんが軽く返事をして……

 

「「…………っ(どきどき」」

 

 ソファーに座るふたりは 何故かこちらジッっと見てきています……ホムにはよくわかりませんし、気にせずいきましょう

 

 

 

「……よーしよし」

 

 モンスターさんの金色の毛は、触ると 見た目通りの凄いモフモフです。しかし、よくよく見れば 毛には流れがあり、それに合わせてブラシをかければ 毛がからまることはありませんでした

 

「モコ~…」

 

 モンスターさんも いい感じにチカラが抜け、その小さな体をホムに預けてリラックスしています。この もたれかかってくる重さが、ホムには不思議な安心感を感じられます

 というか、この安心感には覚えが…

 

 これは……

 

 

「…におい?」

 

「モコ?」

 

 気づけば、無意識のうちに止めてしまった『ブラシ』を不思議に思ったのか、モンスターさんが振り返って ホムの顔を見上げてきていました

 

 

 ……それにしても、気になります

 ホムは『ブラシ』を床に置き、膝の上のモンスターさんの脇に手を入れて ホムの顔の高さまで抱え上げます…

 

「……モコ…?」

 

 抱え上げたモンスターさんが どうしたのかと振り返って見てきますが……

 

「少し、失礼します」モフッ

 

 そう言って モンスターさんを抱き締め、背中に顔をうずめます。もちろん背中もモフモフです

 

「モコモコッ!?」

 

「ひゃっ!?」

 

「なにしてんだ ありゃ」

「さぁ…?」

 

「っちちち、ちょっとー!?」

 

 周りの人たちが騒がしいですが、それよりも……やっぱり このにおいは…

 ホムはモンスターさんの背中から顔を離し、モンスターさんをクルリッと反転させて 向かい合わせにし 顔を見つめます

 

 

 

 

 

「おにいちゃん?」

 

 

 

 

 

 モンスターさんも、騒がしかった周りもピタリと止まり 一気に静かになりました

 

 モンスターさんを抱き上げている手から伝わってくる 熱が少し高くなった気がしたかと思えば、わずかながら 顔に少し冷や汗らしきものが確認できるようになっていました

 

「も、モコ?」

 

「その 困った時の目のそらし方もそっくりそのままです」

 

「うっ…」

 

 ……少しプルプルと震えだしてきました。これは動揺しているサインだと ホムは判断します

 

 

「「うっ」って、「うっ」て言っちまったぞ、あいつ」

「言っちゃったわねー…」

 

「ふ、ふたりとも静かに…聞こえちゃう」

 

「あわわわわ……」

 

 

 そんな会話が続いてる中、ホムがモンスターさんの顔をジッと見つめ続けていると、やっと目があったモンスターさんが 少し困ったように笑いながら口を開きました

 

「えっと……その、どうして気づいたの?」

 

「おにいちゃんと同じにおいがしました」

 

「におっ…そんなに僕って臭いんだ……」

 

「いえ、別にそういうわけでは。あえていうなら…」

 

 

 思い出すのは、初めておにいちゃんの家にお泊まりした時のこと

 時間を気にせず なーと遊べて あの時 ホムは嬉しかったのだと思います。気づけば ホムは限界まできていて、眠気で意識はうっすらとしていて 思うように力が入りませんでした

 

 ふと、浮遊感が感じられ必死に意識を手繰り寄せようとすると、ホムが抱き抱えられていることが、うっすらとわかり、抱えてくれている人のにおいがしました

 なんだか温かくて、少しの青い草のにおいと 土のにおいがして……

 

 朝 目が覚めると、なーとウォルフと一緒に おにいちゃんのベッドに寝ていて…

 そして、わずかに聞こえてくる音を感じ、窓から外を見てみると…そこからは『ジョウロ』で水を撒くおにいちゃんが見えました

 

 

「畑のにおいです。なんというか、畑に埋められたら こんなにおいがするだろうなーという感じの」

 

「その表現の仕方はどうかと思うけど…」

 

 そうでしょうか?我ながら 上手く表現できたと思いましたが、あまり 好評ではないようです

 

 

「あの、ホムもおにいちゃんに色々と聞きたいのですが……」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 その後、たくさんお話を聞きました

 人とモンスターの『ハーフ』であること。元いた町は別世界、とてつもなく遠い場所だということ。さきにいた ふたりはすでに知っていたということ……

 

 ですが、ホムにとっては大した問題ではありません。むしろ、おにいちゃんが なーのように可愛かったというだけのことです

 なので、おにいちゃんとも これまで通りで大丈夫だと話しました

 

 

 

ただ、おにいちゃんとホムとの共通意見で、グランドマスターには極力『ハーフ』であることは隠すべきだ ということになりました

 

「もう すでに知られていても驚きはしないけどね……ハハハハハ」

 

 と、おにいちゃんがもらしていましたが……グランドマスターならありえそうです…


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