書いているうちに思ったこと。
ロロナが『トトリのアトリエ』時のロロナ先生に引っ張られている、そして変なテンションになってしまった。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、細かい描写の追加、句読点、行間……
温かい日差しに青い空。形がどんどん変わる雲はまばらで、今日はとってもひなたぼっこ日和。
「あ! マイス君、街が見えてきたよ!」
採取した素材の入ったカゴはちょこっと重いけど、マイス君にも半分持っててもらっちゃってるんだし、あと少しだから私もがんばれるよ。
私は四日くらい前からマイス君と一緒に『近くの森』へ探索に行っていて、今はちょうどその帰り道。
マイス君が頑張ってくれたから探索もすごくスムーズにできて、依頼品の調合もゆっくり落ち着いてできるくらい時間に余裕ができちゃった!
そうだなー、帰ったらお礼もかねてマイス君にパイをご馳走しちゃおっと!
それと、探索中にも少し聞いた、マイス君自身のお話もゆっくり聞いてみたいなー。
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✳︎✳︎✳︎アーランドの街✳︎✳︎✳︎
「ついたー!」
街へと入る大きな門をこえて、ちょっとおおげさにばんざいをする。
「おつかれさま」
マイス君はニコニコしながら言ってる……けど、そうじゃない。
せっかくの初めての探索だったんだから、もっとはしゃいでも良いと思うんだ。
「マイス君も!」
「えっ!?」
「ほらほら」
手に持っていた荷物を地面に置かせて、さっきみたいにもう一度ばんざいをする。
「ついたー!」
「つ、ついたー……?」
「もっとしっかり腕をのばして! もう一回!!」
「何をしているんだ、君たちは……」
「あっ! ステルクさん」
知らないうちにステルクさんが私たちのそばに来てた。
ばんざいのポーズをさせるために掴んでいたマイス君の腕を離すと、マイス君は周りをキョロキョロした後うつむいちゃった。
顔がなんだか赤い気がしたけど、どうかしたのかな?
「私たちは今ちょうど探索から帰ってきたところなんですけど、ステルクさんはお仕事ですか?」
騎士のお仕事ってよく知らないからわからないけど…。この門の前まで来るってことは、外になのかなぁ?
「仕事では無いのだが……さっきのやりとりを見た後では少々気も失せたがな」
なんだろう? だんだん小声になってあんまり聞き取れなかったけど……。
目を瞑ってため息をつくステルクさんは、いつも以上に眉間にシワが寄っている。
「とりあえず一言言わせてもらうが、気を失って倒れていた人間を目覚めたその日に探索に行かせるのは褒められたことではないぞ」
「うぅ……そ、それはー……」
「あの、それは僕から頼んだことで」
「わかっている。話はエスティ先輩から聞いているから経緯はわかってはいるが、一応注意はしておこうと思っただけだ。とりあえず、なんともなさそうで安心した」
そう言ったステルクさんはマイス君に向き、いつも通りのピンとした姿勢で軽く礼をした。
「こうして話すのは初めてだな、私はステルケンブルク・クラナッハ。このアーランド王国に騎士として仕えている」
「僕はマイスっていいます。あの、ロロナさんと一緒に僕を助けてくれたと聞きました。ほんとうにありがとうございました!」
「騎士として当然のことだ」
ステルクさんはいつも通りの仏頂面で、感情がよく出るニコニコ笑顔のマイス君がそばにいるとその仏頂面加減がすっごく際立って見える気がする。
ステルクさんもマイス君みたいにニコニコ笑顔でいれば……うー、なんでかな、ぜんぜん想像できない……
「どうかしたか? 私の顔をずっと見ているようだが……」
「え、あ、いやっ別になんにも……! そっそういえば、マイス君がエスティさんに報告しないといけない依頼があったなーって!」
「む、そういえば先輩が「探索に行かせる際に依頼をいくつか頼んだ」と言っていたな。では一度王宮受付に行くのか」
「私も採取物の納品がありますから案内もかねて、一緒に行こうと思って。それじゃいこっか」
「その前に、依頼に必要なもの以外アトリエに置いてきませんか?」
「それもそうだね」
「私も王宮へ帰ろうと思うが…せっかくだ、荷物運びを手伝うとしよう」
そう言ったステルクさんがカゴをひとつ持ってくれた。
あれ? それで……結局ステルクさんは何の用事でココにきたのかな?
私たちに注意を言うため? でも、予定よりも早く帰ってこれたから、ちょうど会ったりはしないと思うけど……。
――――――――――――
✳︎✳︎✳︎王宮受付✳︎✳︎✳︎
「はい、これで依頼は達成ね。おつかれさまマイス君」
「ありがとうございます!」
「うんうん、元気で何より。っと、ロロナちゃんもこっちで受けてた依頼はこれで全部達成かな」
「そうですねー、あとは王国依頼だけですね」
その王国依頼も今回の探索で素材をたっぷり採取してきたので、全部失敗したり時間を余計に使ったりしない限り、達成できる状態だからそんなに焦ったりはしなくていいかな。
それじゃあ、帰って依頼品の調合……の前に。
「ねぇねぇマイス君、探索おつかれさまって意味合いで、このあとパイをごちそうしたいんだけど……大丈夫かな?」
「僕、予定とかは何もないから、およばれしてもいいかな?」
「もちろんだよ! ふふん! パイの腕には自信があるから楽しみにしてね!」
いろいろ失敗しがちな私だけど、パイ作りはそう失敗せず自信がある。
あの師匠にも「うまい」と言わせるパイ、マイス君も喜んでくれるといいな。
「ロロナちゃんにパイごちそうしてもらえるなんて、うらやましいわねー」
「先輩、仕事中ですし昼休みは十分取ったでしょう」
「…どこかに少しの時間、受付の仕事かわってくれる優しい後輩はいないものかしら」
「いませんね。それにこちらはこちらでこれから別の用がありますので」
「ちぇー」
「えっと、後でおすそわけ持っていきますよ?」
「あら本当? ありがとねロロナちゃん!」
そう言ってエスティさんはカウンターを挟んだ先にいた私に抱きついてきた。
と、なぜか小声で私に問いかけてきた。
「そういえば、マイス君はどうだった?」
「マイス君ですか?」
目を向けてみると、なにやら周りを興味深そうに見ていた。
探索中も時折ある行動で、なんでも「知らないものや知っているもののようで違うものが沢山あって気になる」なんて言ってた。
「ちょっと気の抜けてそうなところはありますけど、でも元気で素直で優しくて…いい子だと思いますよ?」
「戦闘とかはどうだった?」
「んーと、なんだかビクビクしてて怖いのかなーなんて思ったけど、それはホント最初だけで、あとはみんな一人で倒しちゃってモンスターの素材もいつの間にか採っててくれたりしてて、とってもえらかったですよ!」
「へぇ……、私の見込みも間違っていなかったってことね。最初のほうのことはちょっとわからないけど」
「あとは、敬語つかわなくていいよって話をしたり……あっ! それとマイス君のあだ名が決まらなかったんです!!」
「ステルク君みたいに長い名前じゃないから別に決めなくても問題ないんじゃない?」
でもせっかくだし……マーくん、マイくん、マスくん、イスくん……なんでだろう、しっくりこない。
そんな話をエスティさんと少しした後、エスティさんとステルクさんに別れを告げ、パイをごちそうするべくマイス君を連れてアトリエへと帰った。