マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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※2019年工事内容※
 途中…………


マイス「ロロナとステルクさんと」

 ロロナことロロライナ・フリクセル。アーランドの街でアトリエを経営する錬金術士で、錬金術で作成したアイテムの納品等の依頼をこなしたりしている

 

 その錬金術の素材を得るために 街の外の採取地へと行くことがあるのだけど、その際に護衛として 誰かに一緒についてきてもらうのが大抵だ

 もちろん、僕もロロナの採取につき合ったことも何度もある。ただ僕の場合、畑の都合で 遠くの採取地までは付いて行くことはあまりできなかったりする

 

 

――――――――――――

***旅人の街道***

 

 

 そして、今日、僕はロロナの採取に同行しているんだけど…

 

 

「ステルクさん、今日はあんまり無理しないでくださいね。怪我治ったばかりですし」

 

 そうロロナが言う相手は、ごく最近 退院したばかりのステルクさん

 僕は 何度も彼の病室に足を運んでいたから、ステルクさんの身体が快復し、腕の(なま)りはあるものの すこぶる調子がいいのは知っている。だけどロロナは やっぱり心配なようだ

 

 僕はといえば、並んで歩く二人の後ろをついていっている。うーん……ロロナたち、僕の事をすっかり忘れてる気がする…

 

 

「いや、大丈夫だ。手伝う以上は 全力で仕事にあたらせてもらう」

 

「ダメですって。今日はずっと私の後ろにいてください。いいですね」

 

「それでは本末転倒だ。私はキミを護るために同行しているんだぞ」

 

 うん、二人が言っていることはわかる

 けど、街を出発してから、そして採取地近くに着いても ずっとこの調子で、時々立ち止まって言い合うものだから なかなか前に進まず 予定よりも遅くなってしまってるのはよろしくない

 

 

「そんなこと言って、また 怪我しちゃったら大変じゃないですか!とにかく今日はダメです!」

 

「なら、最初から声をかけなければいいだろう。そっちから誘っておいて 後ろに控えていろなど理不尽極まりない」

 

 ステルクさんが怪我を負った出来事である ドラゴン討伐の時の事を思い出しているのだろうロロナが 少し声を強くして言うけど、ステルクさんも「それじゃあ」と引き下がるわけもなく、こちらも少しずつ声色が強くなってきた

 

 

「そ、それは……いいじゃないですか!誘いたかったんですから!でも 戦うのはダメです!!」

 

 言い争いは言い争い、ケンカみたいなものだ……でも、二人とも言い争いをしてるはずなんだけど、何故か ギスギスしている感じはしない。どうしてだろう?

 

 声は張り上げ合いだしてるのに、なんというか…その……よそから見ていると 気迫というか怖さがほとんど感じられない気がする

 

 

「言っていることが滅茶苦茶だな。アストリッドに似てきたんじゃないか」

 

「なっ……それはあんまりです!師匠と似てるなんて!」

 

 アストリッドさんに対する ロロナの評価が非常に気になるところだけど、それ以上に僕は 畑のことが気になり出した

 大体のものは収穫してしまい、残りも 一応 ウォルフにお願いしておいたけど、モンスターのウォルフが出来ることは限られている。これ以上 変に時間をとってしまうのは あまりよろしくない

 

 もう、こうなったら……

 

 周囲にモンスターの気配が全く無いことを確認した僕は、二人に気づかれないように そっとその場から離れた

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ふぅ、このくらいでいいかな?」

 

 辺りを見渡しながら僕は呟いた

 

 ロロナとステルクさんが言い合ってる場所から離れたのは、採取地に先回りして モンスターを追い払っておこうと思ったからだ。で、あらかた追い払い終わったから確認をしてたんだけど……

 

 

「それにしても 遅いな?」

 

 先回りしたからといっても、あれはもう採取地にほど近い地点だった。そんなに時間がかかるとは思えない

 

「様子を見てこよう」

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 街道脇の木の陰に隠れ、街道の様子を見ながら逆走していたんだけど…

 

 

「絶対、ぜーったい!ステルクさんは私の後ろにいてください!!」

 

「それはできない相談だ。私はキミの前に出させてもらう!」

 

 なんと、道中にモンスターと出くわしたとか 何かあったとかではなくて、ただ単に 言い合いながら歩いていて遅くなっていただけだったみたいだ。……よく飽きないものだ

 

 

「そろそろ採取地に入るぞ。私が前に出る、いいな」

 

「もう!ステルクさんの分からず屋!!本当に……って…あれ?」

 

 (ほお)を膨らませたロロナが、プイっとステルクさんから そっぽをむいたんだけど、ちょうどその時 後ろが少し見えたのだろう。一瞬 固まったかと思えば、そのまま振り向いてキョロキョロあたりを見渡して…

 

「すすす、ステルクさん!?」

 

「ハァ…、今度は何だ」

 

 ロロナの声に、振り返らずに 少し呆れ気味に返答するステルクさん

 

「もう一度言っておくが、私は後ろに控えたりは……」

 

「そうじゃなくて!!いないんですよっ!マイス君が!!」

 

「なっ、なにぃ!?」

 

 

 ……ゴメン、一言言ってもいいかな?「いまさら!?」って…

 

 

「どこかではぐれてしまったのか!?」

 

「わかんないです!ずっと、私たちの後ろをついてきてたはずなんですけど」

 

 

 

 慌てだす二人を遠目で見ていたけど、引き返して探そうとしだしそうになったから、僕は木の陰から出ることにした

 

「二人とも、僕はここにいますよ」

 

 そう言って 僕が顔を出すと、二人そろってバッっとコッチを向いてきた

 

「マイス君!なんでそんなところにいるの!?」

 

「いったい何処へ行っていたんだ!」

 

 

「二人が「どっちが前にでるか」で言い争ってたんで、争う理由を無くしに行ってました」

 

 二人のいる街道のほうへ歩み寄りながらの 僕の言葉に ステルクさんもロロナも「どういうことだ」と首をかしげてしまったので、僕は説明を付け足すことにした

 

「この採取地のモンスターはすでに僕が全部倒してしまったから 戦闘は起きませんよ、ってことです」

 

「いつの間に……じゃなくて! マイス君、ひとりで勝手にどこか行ったら危ないよ!」

 

「そうだぞ!キミとはいえ、こういったところでは 「一人で出来る」といった少しの気の緩みが危険につながるんだ!!」

 

 ロロナとステルクさんが 僕に詰め寄りながら(しか)ってきたけど、僕としても色々と思うところはあるわけで…

 

「ふたりなんて、ついさっきまで 僕がいないことに気づかないくらいお喋りに熱中していたじゃないですか」

 

「うぅ…えっと…」

 

「グッ…それは、だな…」

 

「入院中会えなくて 久しぶりに話せるのが嬉しいのかもしれませんけど、ちゃんとしてないと また入院なんてことになっちゃうかもしれないんですよ」

 

「「はい…」」

 

 

 バツが悪そうにする二人だったけど、ふいにロロナが「そっか!」と声をあげた。僕とステルクさんはいきなりのことに少し驚いていたが、ロロナはそんなの気にせずに口を開いた

 

「ゴメンね!マイス君もステルクさんとお喋りしたかったんだよね!」

 

「えっ」

 

「だって ほら、ステルクさんと病室で色々お喋りしてたってエスティさんが言ってたし……あっ、そういえば その時何のお話してたの?」

 

 いや、ちょっと待って!?何がどうして、そうなるの!?なんだか、話が全く別の方向へ飛んでいってしまったような…

 

 

「もう、どうでもいいか…」

 

「…どうかしたか?」

 

 小声でステルクさんが聞いてきたけど、答える気力もあんまりない

 

「なんというか ずっと言い合いをしてたステルクさんたちを見てたからか、二人に対しては早めにこっちから折れた方が(こと)がスムーズに進むんじゃないかって思って」

 

「……?よくわからないが…」

 

「マイス君とステルクさん、何のお話ししてたんですか?」

 

 

 今回は なんだか異常に疲れる気がするよ…




 マイス君は ほどほどに鈍感。某ドワーフの鍛冶屋さんくらい あからさまなら察するけど……ってくらいだと思っています



 でも、『ロロナのアトリエ』でのこのイベント、くーちゃんやタントさんみたいな人たちだけでなく リオネラにまで「イチャイチャしてる」って言われるくらいだから、かなりイイ感じの雰囲気なんだろうなぁ……

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