設定としては《前》の話から飛んで、本編『ロロナのアトリエ編』のエピローグ後の時間軸となっています
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ロロナが3年間『王国依頼』を達成し終え、マイスが旅行を終えて他の人たちに農業を教え始めてから、少し経たったころ
マイスのもとに集まってきた人たちは性別も年齢も様々であったが、みんな多少の差はあれど、マイスが教えてくれる農業に対しての熱意は確かなもので皆頑張っていっていた……のだが、肉体労働であり、その上『アーランドの街』で暮らしていた彼らにとっては初めてのこと・慣れないことばかりで、肉体的にも精神的にも疲労は蓄積されていくのは当然のことだった
もちろん、マイスもそれをわかっていないわけじゃない。様子を見て作業量を減らしたりして適度に休憩を作ったりしていた。その他にも、腕によりをかけた料理を振るまったりと彼らのことを気遣う面も多くあった
実際のところは「上手くできた作物だから、皆に食べてほしい」というのがマイスの本音だったりしたのだが……食べた人たちは「こんな美味しい料理を作れる作物を、これから自分たちは作るんだ!」とさらに農業への熱意が増したので、結果的には良かったと言えるかもしれない
そして、他にも彼らの休息中の癒しとも言えるものがあった……
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***マイスの家の前***
野菜の青々とした葉が茂った畑。マイスの家の前にある畑で、人々が農業を学びに来るようになってからは新たに周囲の木々を切り拓き、その人たちが実戦経験を積むための土地として広げられたのだが……
普段のこの場所で聞こえる、『クワ』でザクザクと土を
畑のそば……とは言っても少し離れた何も無い開けた場なのだが……そこでは、何も知らない人であれば驚いてしまうような不思議な光景が広がっていた
その人形をまるで見えない糸で操るかのように、指を、手首を、腕を、時に踊りのように体ごと動かす少女
二体の猫の人形の『役者』と、踊り子のような少女の『
マイスの家の前で時折行われるその人形劇は、農業を学びに来ている人たちにとって、息抜きであり、楽しみのひとつであった
その証拠に、人形劇が行われている場所を半円状に取り囲むような形で、人々が人形劇を観ている。その人たちの手元には、マイスが用意したのであろう軽食と飲み物があり、
「……こうして、女の子とその友達は、妖精に導かれるように闇深い夜の森へと足を踏み入れていくのでした」
少女……リオネラがそう語ると、先程まで役を演じていた二体の猫の人形……アラーニャとホロホロは浮遊したままスゥーっと彼女の左右に移動した
「女の子たちの旅はまだ続いて行きますが……これにて、本日の演目はお終いです。最後までありがとうございました」
そう言ってリオネラはお辞儀をし、それに続いてアラーニャとホロホロもつられるように頭を下げた
そんなリオネラたちを包み込んだのは、沢山の拍手……観てくれていた人たちの満足の証だ
拍手に応えるように何度も頭をさげたり軽く手を振ったりするリオネラ
拍手がある程度収まってきたところで、もう一度だけお辞儀をした後、控え室代わりに使わせてもらっているマイスの家の『作業場』へと続く、家の裏口へ向かって歩き出そうとしたのだが……
「ねぇねぇ! 人形のお姉ちゃん!」
人形劇を一番前で観ていた子供……農業を学びに来ている人の中でも最年少で、マイスよりも2,3歳年下の女の子がリオネラに声をかけた
「主人公の女の子はその後どうなったの!? 妖精さんの住んでるお家を見つけられたの!?」
先程までのめり込んで観ていた人形劇での興奮がおさまっていないのだろう。興奮気味に少し声を荒げながら物語の続きを催促した
その勢いに少し押されてしまい最初はビクリと驚いたリオネラだったが、微笑みを浮かべその子に言った
「えっと、今回のは続き物だから……そのお話はまた今度なの」
「えー? 私、もっとみてたいのにー」
「ごめんね。そのかわり……って言っていいかはわからないけど、次はふたりももっと頑張るから」
リオネラがそう言うとホロホロが女の子のほうへ飛んでいき、女の子の頭を軽く撫で、女の子の周りを一回まわってから再びリオネラの元へと戻っていった
予想外だったのか数秒間ポカンとしていた女の子だったが、また満面の笑みになって「またねー!」と、『作業場』のほうへと行くリオネラに大きく手を振った
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***マイスの家・作業場***
「ふぅ……」
『作業場』に入り裏口の扉を閉めたところでようやく劇での緊張が解けたのか、リオネラは大きく息を吐いた
「お疲れ様です、リオネラさん、ホロホロ、アラーニャ。喉、
「あっ、マイスくん……うん、ありがとう」
おそらく、劇の終盤あたりで『作業場』に先回りしていたのだろうマイス。そのマイスから差し出された飲み水とタオルをリオネラは受け取り、お礼を言った
外の様子を『作業場』にある小窓から見ながら、マイスが口を開く
「あはははっ。熱がおさまらないみたいで、みんな楽しそうにさっきの劇のお話をしてるみたいだよ」
「ほ、本当?」
「嘘なんかじゃないよ。やっぱり、リオネラさんの人形劇は凄いね!」
そう言って小窓から目を離し、リオネラに笑いかけるマイス。そんな爽やかな笑顔にリオネラはつい顔を赤らめてしまっていた
「そんなこと……! でも、良かった……少し心配だったから…………」
「そうね。でも、さっきの女の子の様子も含めて考えれば、そこそこは好評って思っていいんじゃないかしら?」
「まっ、続き物は二回目からが本番だけどな。一回目を観てなくても楽しめる様にしてねぇと客はどんどん離れちまうからよ、ちゃんとストーリーを練らないとな」
「へえ、そんなことも色々考えないといけないんだね」
感心するようにそう呟いていたマイスだったが、ふと「あれ?」と声をあげ首をかしげたかと思うと、そのままリオネラたちに問いかけていった
「そう言えば、劇のお話って三人で考えてるの?」
「う、うん。ふたりの動きとか、色々考えながら……人形劇って、物語に合わせて動かして表現するから」
「全部が全部オリジナルじゃないけどね。大抵は絵本とか有名なお話を元に、ワタシたちふたりで演じられるように内容をちょっと変えちゃったりしてるんだけど」
「まあ、たまに緊張で必死に練った話が頭から飛んでいって、アドリブだけでやってグダグダになっちまうこともあったりするんだけどな。そん時は目も当てらんねぇくらいヒデェもんだぜ? リオネラも顔真っ赤でアワアワしだすしよ」
呆れ気味に、かつ面白おかしく言うホロホロに、リオネラが「そ、その話はしないで~……!」と非難の声をあげていた
その様子をどうしたものかと見ていたマイスだったが、そんなマイスにアラーニャが
「とはいっても、今回のはいちおう最初っから最後までリオネラが考えた話なのよ。元となるものが全く無いってわけでもないんだけど」
「へえ、そうだったんだ! さっき、外でリオネラさんに聞いてた子じゃないけど……そう聞いちゃうと、なんだか僕もお話の先が凄く気になってきちゃったなぁ」
そう言って、ひとり腕を組み「うーん」と考え込みだしたマイス
「主人公の女の子とそのお友達。どんな道具でも作ってくれる不思議なお店の店主さんに、人里離れた場所に住む少し変わってるけど優しい男の子。それと、気まぐれだけど困った人を助けてくれる謎の妖精…………色々あってたけど、今回の最後は女の子とお友達が妖精のあとを追いかけて夜の森に入っていったんだよね」
「う……うん」
目を
「……女の子二人で夜の森に入っていくのは危なくないかな? その森にモンスターが出るかはわからないけど、もしマネする子がいたら大変……って、そんな悪い子はアーランドにはいないか。……あれ? でも、やっぱり主人公とお友達は危ない? それって大丈夫なの!?」
ひとりで自己解決したかと思うと、目を開けて少し焦った様子でリオネラに問いだしたマイス
「そ、それも含めて、次回のお楽しみだから……ね?」
「そうよ。せかさないの」
「明かしちまったら、面白く無いだろ?」
「ううっ……そっか、そうだよね。……でも、やっぱり心配だなぁ」
物語の登場人物のことを心配して「うーん、うーん」
……その様子を見ていたリオネラが「クスリ」と小さく笑い、比較的耳の良いマイスでも聞き取れないほどの小声で呟いた
「……心配しなくても、大丈夫。危なくなった二人は
「……? リオネラさん?」
「ふぇっ……う、ううん!? 楽しみにしてくれてるみんなやマイスくんのためにも、次の劇の練習頑張らないとって思って」
Q,結局、リオネラはマイス君に例の事を話したの?
A,話しました
マイス君の反応についてはご想像にお任せします。が、結果的にはこれまでと変わらずホロホロとアラーニャとも友達でおり、リオネラとも良好な関係のままでいます。……このあたりのことをガチで書き過ぎて激重シリアスになってしまったのが『リオネラ編』の初期原稿だったりします
リオネラとマイス君は、本編中の秘密の共有で一気に距離が縮まった感じがありますが、それでもなかなか関係は進展しそうにない気がします。やっぱり原因はマイス君が草食系過ぎるからなような……
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詳しくは活動報告に書きますが、とりあえずこれで『ロロナのアトリエ・番外編』は一段落ということで終了ということにしようと思います
番外編を掻こうと考えた当初はもっとイチャイチャさせる予定だったんですが……いかんせん、本編中でそこまで親密と言える関係になったりしてなかったうえ、『トトリのアトリエ編』を同時進行で書いていたこともあって、そっちとの整合性があまりにも合わない感じになるほどイチャイチャさせていると、書いている途中に作者自身違和感に飲み込まれて筆が進まなくなったり……結果、このような感じになりました
途中に期間があいたりしましたが、お付き合いいただき、ありがとうございました!
……苦手意識がありますが、今度、どこかのタイミングでイチャイチャを書いてみたいです