マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 まず、はじめに

 おそらく、『トトリのアトリエ編』では 最初の方はトトリ目線の話が多くなると思います。説明を混ぜながら進んでいくことになり、今回のような形が多くなると思われます

 あと、まだトトリの地の文が安定してません。ご了承ください



 


1年目:トトリ「ランクアップと紹介」

***冒険者ギルド***

 

 

 わたし、トトゥーリア・ヘルモルトが 冒険者になって初めての冒険者免許のランクアップ

 三年間のうちに このランクが一定以上になっていないと『冒険者免許』を取り上げられて二度と『冒険者』になれなくなるらしいから、このランクアップは すごく緊張して…

 

 ちゃんとランクポイントを溜めることができている、と頭ではわかっていても 胸がドキドキするのを止めることは出来なかった。けど、提出した免許は 無事ランクアップした状態で わたしの手元に戻ってきました

 

 

―――――――――

 

 

「さて、これで手続きはお終いっと。これからどうするの?」

 

 

 そうわたしに聞いてきたのは、『冒険者ギルド』の受付嬢のクーデリアさん

 

 わたしが『冒険者免許』を貰いに来た時からお世話になっている人で、わたしよりも背は小さいんだけど……

 って、そんなことを考えてるとクーデリアさんにジロリッと見られた気が…

 

 

「え、えっと、あんまり考えてないですけど……買い物とか、近くの探索とかしてから帰ろうかと」

 

「そう…考えてみたら大変よね。免許の更新のために、わざわざこんな遠くまで来て。 いっそ、アーランドに住んじゃったほうが楽なんじゃない?」

 

 わたしの家のある『アランヤ村』から『アーランドの街』に来るためには 馬車でも二週間くらいかかってしまうから大変なんだよね……わたし、馬車の旅自体 ちょっと苦手だし…

 でも……

 

 

「住むって言っても、そんなにお金ないですし。それに わたし、アトリエがないと冒険者らしいこと何もできないから…」

 

「まあ、そうよね。ロロナだって錬金術が使えなければ、ひ弱で役立たずで ちょっとおバカな女の子ってだけだし」

 

「それは…さすがに言い過ぎかも…」

 

 クーデリアさんは わたしの『錬金術』の先生…ロロナ先生の幼馴染らしくて、初めて会った時も わたしの持っている杖がロロナ先生から貰った物だとすぐに気づいて…あの時は ちょっとビックリしたなぁ…

 

 

「ああ、そうだ!ロロナのアトリエがあるじゃない。あそこを使えばいいのよ!」

 

「えっ、先生のアトリエを?」

 

「ええ。あそこならお金はかからないし、錬金術もできるでしょ。まさに一石二鳥だわ」

 

 たしかに、アトリエがあれば錬金術ができるから 冒険も依頼の仕事も 手持ちの道具の数を気にせずに出来るようになるから、すごく助かる

 

「で、でも、勝手に使ったら怒られるんじゃ…」

 

「あたしがいいって言ってんだからいいの。大体、あの子が怒るわけないでしょ」

 

 クーデリアさんは そう断言したけど……あっ、でも たしかにロロナ先生が本気で怒ってる姿って想像できないや…

 

 

「はぁ…あの、すごく嬉しいんですけど、なんでクーデリアさん、わたしのためにそこまで…」

 

「別にあんたのためじゃないわよ。 あんたがこの街で働いてれば、ロロナもたまには戻ってくるようになるんじゃないかなとか、別に期待してないし…」

 

「え?あの、最後の方、よく聞き取れなかったんですけど…」

 

 うまく聞き取れなくて聞き返してみたんだけど、クーデリアさんは「あーっもう!」って声をあげたかと思ったら、どこからかゴソゴソと『(かぎ)』を取り出して わたしに押し付けてきた

 えっと、たしかこの鍵は 前にも貸してもらったことがあるけど、ロロナ先生のアトリエの鍵だったっけ?

 

「何もいってないわよ!ほら、そうと決まれば さっさとアトリエに行く!色々準備もあるでしょ!」

 

「は、はい!…って、本当に良いのかな…?」

 

 

 

 

 ロロナ先生のアトリエに行って……あっ、その前にジーノくんとミミちゃんに アトリエのことを話しておかないと

 そんなことを考えながら 『冒険者ギルド』のある王宮から外へと歩きだそうと、後ろから クーデリアさんの声が響いてきた

 

「っと、そうだ。ちょっと待って、一つ言い忘れてたことがあったわ」

 

「えっ、なんですか?」

 

 わたしが振り向いて 再び受付のカウンターへと歩いて行くと、クーデリアさんは 冒険者に支給される簡易の地図を取り出してカウンターの上に広げてみせてきた

 

「この街から出て少し行ったところに『青の農村』って村があるの」

 

 そう言いながら クーデリアさんは地図の一点…『アーランドの街』を指で指し示した後、ツツーッと指を(すべ)らせて 今度は別の場所を指し示しトントンと指先で叩いた

 

「そこにマイスってヤツがいるから、もし何か助けが必要なら 会いに行くといいわ。あいつ お人好しだし、あんたがロロナの弟子だってわかれば何でも手伝ってくれると思うわよ」

 

「マイスさん…ですか」

 

 その名前を頭の中で数回繰り返して 憶えることにしたんだけど……あれ?マイス…?なんだかわかんないけど、聞いたことがあるような……うーん、気のせいかな?

 

 

「村の人に聞けば きっとすぐわかるわ。…まあ、注意することがあるとすれば、村の中で武器をかまえたりしないことぐらいかしら…?あとは……そう!マイスも『錬金術』を(あつか)えるはずだから、何か分からないことがあったら聞いてみるのもいいかもしれないわね」

 

「へぇ…『錬金術』を……って、あれ?」

 

「ん?どうかした?」

 

「あの…『冒険者免許』を貰った時に、クーデリアさん「この国に三人しかいない貴重な『錬金術士』」だって言ってた気がするんですけど……そのマイスさんって人は『錬金術士』じゃないんですか?」

 

 わたしと、ロロナ先生と、ロロナ先生の先生の三人だって言ってたはず。ロロナ先生の先生の名前は、たしか ア…アス……なんだったっけ? と、とにかく、マイスって名前じゃなかった気がする!

 でも、そうなると なんで……?

 

 

「ああ、そういえば そんな話もしたわね。……ねえ、あんたは料理って出来る?」

 

「え?ええっと、おねえちゃんのお手伝いをするくらいで、その…あんまり……」

 

「そう。なら、お姉さんは料理が出来るのよね。お姉さんって何処かでコックとして働いてたりする?」

 

「いえ、別にそういうわけじゃないですけど…?」

 

 えっと…それが 今さっきの話と何の関係があるんだろう…?

 そう考えているのが クーデリアさんに通じてか通じずかはわからないけど、クーデリアさんは一度大きく頷いてきた

 

「マイスもそういうことよ」

 

「…?どういうことですか?」

 

「『錬金術』はできるけど『錬金術士』として活動しているわけじゃないってこと。…とはいっても『錬金術士』以外で『錬金術』ができるのなんて あいつ位じゃないかしら?」

 

 その後、クーデリアさんは「まてよ…この場合、ホムンクルスは含むべきかしら?」って、小声で言ってるけど……ほむんくるすってなんだろう?職業か何かかな?

 

 

「とにかく、何かあったら そいつに会ってみるといいわ。もちろん、あたしでもいいわよ」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「って ことで、わたしはこれから 先生のアトリエで ちょっと調合してから、『青の農村』ってところに マイスさんって人に会いに行こうと思ってるんだけど…」

 

 冒険者ギルドの受付から離れた場所で、ここまで一緒に来ていた二人に これからのことを話した

 

 

 最初に反応を返してきたのは、わたしの幼馴染のジーノくんだった

 

「よくわかんねえけど、とりあえず俺は 街をブラブラしたりするから。 外に行くときには声をかけろよな!」

 

 うん、ジーノくんは いつも通りジーノくんだ。…まぁ、ジーノくんは アトリエの場所も知ってるから問題無いかな?

 

 

 そして、もう一人……冒険者免許を貰いに行った時に知り合った ミミちゃんなんだけど…

 

「そう、まあ ちょうどいいかしら? 私はこの街を拠点にして『冒険者』の活動をしていくから。手を貸してほしい時は 頼みに来なさい」

 

「えっ!? 」

 

「なんで驚くのよ。私はアーランド出身なんだから別におかしくないでしょ?それに、冒険者活動においては 何かと街のほうが勝手がいいし」

 

 そういえば ミミちゃんはアーランドの貴族の家出身で、いちおうは お嬢様なんだった

 ……ただ、わたしは貴族のこととか あんまり知らないから、どう凄いのかは よくわからない。『アランヤ村』って田舎だから、そういう話にも疎いんだよね…

 

 

 

 

「あっ、それと」

 

「え?なに、ミミちゃん」

 

 王宮の外で 解散になろうとした時に、ミミちゃんが思い出したように声をあげた

 

「私は絶対に『青の農村』には行かないし、マイスにも会わないんだからね!いい?絶対、ぜぇーったいよ!!」

 

「え、ええ!?」

 

 理由を聞く前に ミミちゃんは街のほうへと歩いて行ってしまっていて、何も聞けなかった

 

「どうしたんだろう?怒ってるのとは ちょっと違った気が……うーん?もしかして、何か知ってたのかな?」

 

 よくわからないけど、とりあえず『青の農村』に行くときは ミミちゃんには声をかけないようにしとこう






 別に3人以上で冒険してもいいとは考えていますが、諸事情によりミミちゃんの本格的な出番は 後になります
 ミミちゃんファンの方々には大変申し訳ありませんが、少々お待ちください

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