マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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1年目:トトリ「マイスさんとの冒険」

 

 アーランドの街からアランヤ村を目指し、街を出て 南方向へ進みはじめて4日ほど経ったある日の朝

 

 

「ねぇ、ジーノくん」

 

「ん?どうした?」

 

 朝起きてから マイスさんが用意してくれた朝ゴハンを食べ終え、出発する準備をしている途中に、あることが気になってジーノ君に問いかけてみる

 

「わたしたちが昨日寝たのって、こんなところだっけ?」

 

「何言ってんだ?街道のわきの樹のそばで寝てただろ?」

 

「でも、道を挟んだ向こうに あんな岩あったっけ?」

 

 指で 人の腰くらいの高さがある岩を指し示しながら聞いてみると、ジーノ君は少し首をかしげたけど、そう間を開けずに言葉を返してきた

 

「きっと気のせいだって。ほら、昨日は暗くなってから野宿の準備しただろ。焚火(たきび)くらいしか灯りが無かったから、岩に気づかなかったんじゃないか?」

 

「そうかなぁ…?ジーノ君はともかく、普通は気づくと思うんだけど……」

 

 うーん……やっぱり、昨日寝た時には無かったような気がする

 

 

 それに、気になることといったら 実はもう一つある

 

 それは、アーランドの街を出て 南へ進んでいって 最初にたどり着く採取地『旧街道』についた時に少し気になったこと

 支給品の地図とこれまでの経験を照らし合わせて 街からは約3日で『旧街道』に到着する予測だったんだけど、わたしたちが実際に着いたのは1日と半日くらいしかかからなかった

 予測の方法が間違ってたのかって思ってたけど、よくよく考えてみたら いくらなんでも1日以上の誤差は大き過ぎると思う

 

 

 

「うーん……?」

 

「トトリちゃん、どうかしたの?」

 

 ひとりで唸っていると、そんなわたしを心配してか 野宿の片づけを終えたマイスさんが聞いてきた

 

「あっ その、実は 少し気になることがあって……」

 

 

 マイスさんにもジーノ君に言ったことと同じことを聞いてみた。そしたら……

 

 

「それは まあ、寝たのは『旧街道』を出て 1日歩いて行ったところで、今いるのは あと少しで『埋もれた遺跡』に着く場所だからね」

 

「えっ」

 

 マイスさんは、ここが寝た場所じゃないってことを いきなり言ってきたんだけど…って、えっ!?

 これには 話を聞いてたジーノ君も驚いたみたいで、驚いた顔をして マイスさんに詰め寄っていた

 

「どういうことだよ!?俺が寝てる間に何があったんだ?」

 

「何がって、寝てる2人を 運んだよ。ほら、錬金術士って調合に時間かかっちゃうから こういう移動で時間短縮したほうがいいかなって思って」

 

「運んだって……全然気づかなかった」

 

「わたしも……っていうか、マイスさんって小さいのに、同じくらいの大きさの わたしとジーノ君を運べるのかな?」

 

 そう言いながら マイスさんを頭から足までジィーっと見てみる

 身長は 本当にわたしたちと変わらないくらいで、別に腕も特別ガッシリしてはいない。……仮に人をふたり(かつ)げるほどの力持ちだったとしても、寝ていた わたしにも ジーノ君にも気づかれないように運ぶなんて……

 

 

 

 そう考えてたら、マイスさんが なんだかすごく心配そうな顔になった

 

「もしかして、途中に寄りたいところとかあった!?」

 

「いえ、ありませんよ?むしろ 次の採取地に早く着くんだから ありがたいくらいです!……でも、本当に どうやって運んだんですか?」

 

 わたしの問いかけにジーノ君も頷いて マイスさんのほうを見る。そのマイスさんはというと、「あははは…」と笑いながら 手を軽くパタパタと振った

 

「『アクティブシード』って、言ってね。今は休ませてあるからね。また後の機会に紹介するよ」

 

「「休ませてる?」」

 

「それじゃあ 行こうか」

 

 色々 すごく気になるけど……まあ、後で教えてもらえるならいいかな?

 ジーノ君も 一応は納得したみたいで、一緒に歩き出した

 

 

 

 

 

――――――――――――

***埋もれた遺跡***

 

 

 

「うわぁー、すげーデケーな」

 

「本当…こんなのどうやって造ったんだろう?」

 

 ジーノ君と一緒に見上げるのは 大きな鋼の塊。この採取地の名称の由来にもなっている『遺跡』だ。大きな邸宅ほどありそうな大きさだけど、地面に埋もれてる部分よりも下があるんだとすれば、もっと大きいのかもしれない

 

「ほら アーランドの街にあった『機械』ってあったよね?アレは こういった『遺跡』から発掘されたものなんだよ」

 

 そうマイスさんが 軽く教えてくれた。

 『機械』はアーランドの街の発展に大きく関わっているものだとは 聞いたことがある。 実際に動いているのは見たことは無いし、街のいたるところにあったわけじゃないけど、街の広場とかで 見かけた覚えがあったから「なるほど」と納得することが出来た

 

 

「それじゃあ、ここにあるものを持って帰ったら 何かに使えたりするのか?」

 

 ジーノ君の問いに マイスさんが首を振った

 

「難しいと思うよ。もしここに使える『機械』があったとしたら もう持ち出されてるだろうし、パッと見でわかる 壊れたやつの部品のほうも、そういう専門の人じゃないと価値は無いかな」

 

「なら、ここで 採取しても あんまり意味無いのかな…?」

 

「そんなことはないよ!ここにあった『機械』で使ったのか、それともたまたまなのか 『フロジストン』や『(はず)む石』なんかが採れるからね」

 

 『フロジストン』は火薬になる鉱石の一種で、これまでにも爆弾の調合に使ったことがある

 『弾む石』は……一回も見たことが無いから 何もわかんないや…。名前のままだとすれば、弾むんだろうな……石が。自分で言ってて よくわからない。そんなものが『錬金術』に使えるのかな?

 

 

 

 

 それじゃあモンスターに気をつけながら 採取していこうか……って、そうなろうとしたときに、『遺跡』の陰から 人影がフラリと出てきた

 

「ほう、こんなところに キミみたいなお嬢さんがいるなんて(めずら)しいね」

 

 リュックサックを背負ったモジャモジャ頭の眼鏡の人は、そう言って わたしを見た後、そのままの流れで わたしの隣にいたジーノ君を見て……その後ろのマイスさんに目をやったかと思えば、その眼鏡の人は ため息をついた

 

 

「なんだ、キミのお()れさんか…」

 

「お連れさんっていうか、僕が連れられて来たんですけどね」

 

 残念そうに言う 眼鏡の人に対し、マイスさんは ちょっと困ったように笑って返した

 

「いや そこはあんまり重要じゃないんだけど……まあいいか、ある意味タイミングがいいわけだし」

 

 …よくわからないけど、ふたりは顔見知りなのかな? 話すふたりを見て、なんとなく そう思った

 ジーノ君はといえば、どうしてればいいのかわからず 立ち止まりながらも、早く冒険を再開したいのかウズウズしだしていた

 

 

 

「あの、マイスさん。この人は マイスさんのお友達ですか?」

 

 気になったから聞いてみたんだけど、それに答えたのは マイスさんじゃなくて、眼鏡の人のほうだった

 

「いやぁ、別にそんなに深い仲じゃないし、僕個人としては―――」

 

 話す眼鏡の人の後ろ……さっき眼鏡の人が出てきた『遺跡』の陰のほうから 見たことの無いモンスターが3体出てきた

 

 羽根をはばたかせ、頭に2本の角を生やした その小さな悪魔のようなモンスターは、わたしがこれまで戦ったことのある『ぷに』や『ウォルフ』たちよりも 威圧感があって、未知の強さを持っていることが感じられた

 

 

 「後ろにモンスターが!!」って、わたしが注意をとばす、それよりも先に……

 

 

 

 

赤と青の線が 3体のモンスターに×(クロス)するように走り、淡い光を放った

 

 

 

 わたしとジーノ君、それに 振り返った眼鏡の人が目にしたのは、 綺麗サッパリいなくなったモンスターと、モンスターのいた位置まで いつの間にか移動していたマイスさん。…その両手には 赤の刀身と青の刀身の剣が握ってあった

 

 『旧街道』でモンスターと戦ったときに マイスさんが持っていたのは、ごく普通の剣だったはず……

 

 そんなことを考えてるなか、最初に口を開いたのは 眼鏡の人だった

 

「さすがだねぇ。こういう仕事の早さは 素直に称賛するよ」

 

「なに呑気なこと言ってるんですか!あんなモンスター、こんな所にまで連れこんだらダメじゃないですか!」

 

「誤解だっ、僕も あんなモンスターがこんな所にいるとは思ってなくてね。だけど、キミのおかげで『遺跡』の調査が再開できるよ。それじゃ!」

 

 珍しく怒り気味なマイスさんから逃げるように、眼鏡の人は『遺跡』のほうへと走って行ってしまった

 

 

 

 

「えっと……今の人は?」

 

 走っていった人を追いかけることもせずに、困った顔をしていたマイスさんに 聞いてみた

 そしたらマイスさんは「ああっ、まだ紹介してなかったね」と思い出したように言い、剣をバッグに入れながら教えてくれた

 

「アーランドでも指折り…というかトップクラスの機械技師のマーク・マクブラインさん。別名『異能の天才 プロフェッサー・マクブライン』……だったっけ?」

 

「いのーの?」

 

「あははは…、気にしないで。そのあたりは僕もわかってないから……。まあ、とりあえずは「『機械』に詳しい人」って憶えておけばいいよ」

 

 なんだか凄そうな感じがするけど……さっきの飄々(ひょうひょう)とした様子を見た後だと、どうしても凄い人には思えないなぁ…

 

 

 

 

 その後、改めて採取を始めたんだけど……

 

「なあなあ!さっきの赤と青の剣、なんだったんだよ!?ズバズバーって!!もう一回見せてくれってばー!」

 

「ええっ、あれは『フォースディバイド』っていう 火と水の力を持った双剣で……今はブランクを取り戻したいから、なるべく 追加効果の無い剣を使いたいんだけど…」

 

「いいじゃんかー!ケチー!!」

 

 ジーノ君にずっと詰め寄られてて、マイスさんがちょっと大変そうでした…

 

 






 マイス君が ある種の便利キャラに。そして、またマイス君と謎の関係を持っているキャラが登場しました



 もし、実際にマイス君がキャラとしていたら…

 HP・MPはそこそこ、攻撃力がかなりあって、防御力が低い、そして素早さがトップレベル。ただ、スキルに範囲技が全く無い……みたいな?
 あとは…錬金術士じゃないけどアイテム使える……かも?

 そんなのだったら、アイテム投げる作業する人になること間違いなしな気がする

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