マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 いきなりの展開
 そのうえ ちょっとぼかして書いている部分もあり、話が見え辛い……次の話で補完される予定です

 おそらくトトリちゃん視点での話は、しばらく無いです


1年目:トトリ「マイスさんとメルお姉ちゃん」

 今 わたしがいるのは村のそばにある開けた空き地。わたし以外にも ジーノ君やお姉ちゃん、ゲラルドさんまでいる

 そして わたしたちが見つめる先には、ポーチを漁っているマイスさんと 軽く準備運動をするメルお姉ちゃん……そう、何故か このふたりが勝負することになったのだ

 

「ううっ……なんで こんなことに…」

 

 マイスさんと別れてから、ゲラルドさんの酒場で依頼の報告をし、そのままそこでお喋りをしていた

 ちょうどそこに 冒険から帰ってきたメルお姉ちゃんが来て、お喋りに参加。マイスさんと一緒に冒険をして『アランヤ村』まで帰ってきた っていう話をしたあたりで、メルおねえちゃんが「そのマイスは今どこにいるの!?」って聞いてきて、酒場を飛び出して行って、追いかけてみたら…………なんでか知らないけど、マイスさんとメルお姉ちゃんが勝負することになっていた

 

 

「それにしても、どうして勝負なんかを…?」

 

「それはメルヴィアからだろう。腕試しにって感じだと思うが…」

 

 わたしの呟きに答えたのはゲラルドさんだった

 

「メルお姉ちゃんが?なんでマイスさんに?」

 

「何故って、それは……」

 

 何かを言おうとしていたゲラルドさんが不意にその口を止めて、困ったような顔をして明後日方向を向いてしまった

 ゲラルドさんの様子を不思議に思ったわたしが そのことを問いかけるよりも先に、また別の声が耳に入ってきた

 

「それは彼が 一流冒険者の中でもトップクラスの実力者だからだろうね」

 

「きゃぁ!?お、お父さん?いつからいたの!?……って、え? トップクラス…!?」

 

 いつの間にかそばにいたお父さんに驚いたけど、そのお父さんが口にした言葉に さらに驚かされた

 ジーノ君も わたしと同じようで「はぁ!?本当かよ!?」とすっごく驚いていた

 

 そんなわたしたちに、軽く笑いながらお父さんが。続いて、少し呆れたようにゲラルドさんが言ってきた

 

「本当さ。何年も前だが、その時 聞いたときには、もう 最高ランクの一歩手前の冒険者だったんだ」

 

「お前たち、アーランドからこの村まで 一緒に冒険してきたんじゃないのか?」

 

 

 い、言われてみて 改めてマイスさんとの冒険を思い返してみたら、マイスさんは いつも一撃でモンスターを倒してた。それに あの眼鏡の人と会ったときなんて、わたしが目で追えないくらいのスピードで モンスターをバシュン!って…

 でも……

 

「確かに、マイスさんは強かったんだけど…だけど…」

 

「ああ。なんか、強いって印象は無いんだよな…」

 

 ジーノ君も わたしと同じことを考えてたみたいで、「うーん…」と悩みながら わたしの言ったことに頷いて 言葉を続けてくれた

 

「それじゃあ、ふたりから見て 彼はどんな人に見えたんだい?」

 

 

「いつもニコニコしてて、素材の…特に植物のことに詳しくて、『黄金平原』と『自然庭園』にいた人たちと凄く仲が良い……えっと 農家さん?」

 

「見たことねぇ赤と青の剣持ってて、動く植物 使う変わった人。あっ、あと 作ってくれる料理がすっげえウマいんだ!冒険中の野宿(のじゅく)であんなウマいの食えるなんて思ってなかったぜ!」

 

 わたしたちの話を聞いたゲラルドさん、お父さん、おねえちゃんは、首をかしげて「どういうこと?」と いまいち理解できてないようだった

 

 

 

 

「っお!始まるみたいだ」

 

 ジーノ君の言葉に、みんなが メルお姉ちゃんとマイスさんがいる方へと向く

 

 

 準備運動を終えたメルおねえちゃんが 身の丈ほどある愛用の(おの)を手にして、軽く振り回した後 肩にかつぐような形の構えに入った

 

 対して ポーチを漁っていたマイスさんは、ポーチから何かを2本取り出して 両手に1本ずつ持った

 

「えっ」

 

 白く伸びるそれは 先端のあたりで二股になっていて、そのあたりは鮮やかな緑色だ……

 そう、マイスさんが両手に持っているのは、間違いなく『()()』だった

 

 

「それじゃあ、はじめようか!」

 

「え、いや、ちょっと待って」

 

 意気揚々と言うマイスさんだったけど、メルお姉ちゃんがそれを止める

 

「えーっと…ソレでやるの?」

 

「うん。普通の剣使って 怪我でもさせちゃったら悪いからね」

 

 どうやら マイスさんなりの配慮だったみたい……だけど、『ネギ』って どう考えても剣の代わりにはならないと思うんだけど…

 

 わたし以外のみんなも 当然 同じように考えているみたいで、「大丈夫なのか?」と不安そうに見ている

 

 

「あー うん。ソレでやれるならいいんだけど……」

 

 ため息を吐きながらも もう一度 戦闘態勢に入るメルお姉ちゃん。それを見たマイスさんもかまえる……

 

 

 

 

 先に動いたのは メルお姉ちゃんだった

 マイスさんへと突っ込んでいき 斧を豪快に振り下ろす。それは 直線的な攻撃だったけど、斧の重さを活かした 一撃必殺の一撃だ

 

 これはあくまでも勝負なので メルお姉ちゃんも直撃を避けるようにしたり手加減をしているとは思う。でも、このままだと 大ダメージは必至。マイスさんは身を捩ってかわそうとする……そう思ってた

 

 

ポコッ!

 ポコォ!

 

 

 メルお姉ちゃんの顔が驚愕に変わる。たぶん、わたしたちも似たような顔をしていると思う

 

 マイスさんは ()けようともせず、一対の『ネギ』で せまりくる斧を迎撃…はじき返して見せたのだ……斧とネギがぶつかった音が 何だかマヌケな音だったのは気にしないことにする…

 

 

 攻撃を弾かれたメルお姉ちゃんは 体勢を立て直し、今度は斧を横に振るい 自身を軸にしてそのままマイスさんのほうへと突っ込む

 しかし、それも 振り回す斧の横っ腹を見事に『ネギ』でカチ上げられ、メルお姉ちゃんは斧に引っ張られるように後ろに体勢を崩してしまう

 

 

 

「なあ、トトリ」

 

 そんな様子を見ていたジーノ君が目を丸くさせて言う

 

「『ネギ』って、強いんだな…!」

 

「うん……って、いや、アレが特別凄いだけだと思うよ…?」

 

 でも、アレが本当にわたしの知ってる『ネギ』なのか疑問ではある

 斧が振り下ろされたときには ヘニョって折れてしまうと思ったのに、折られることも切られることも無く、普通にピンっとしたままだし……

 

 

 わたしとジーノ君がそんな話をしている間も 勝負は続いている

 

 ネギが斧を弾き、そらし、受け流し……攻めているのはメルお姉ちゃんなんだけど、いっこうに メルお姉ちゃんの一撃がマイスさんに入りそうはなかった

 そして、マイスさんのほうはといえば、自分から攻めたりはしてないんだけど、よくよく見れば 斧での攻撃をさばいた後に、メルお姉ちゃんを『ネギ』で軽く叩いているのがわかる

 

 つまり、これって……

 

 

「マイスがその気なら、とっくに勝負はついてるな」

 

 わたしの考えを代弁するようにゲラルドさんが言った。そして、その言葉を聞いて驚いた顔をしたのが 戦闘に関して知識や経験が全く無い おねえちゃん

 

「マイスさんって、メルヴィより そんなに強いんですか!?」

 

「相性の良し悪しも当然あるが、あれは完全に遊ばれてる。…メルヴィアのやつ、そろそろ しびれを切らすぞ」

 

 

 ゲラルドさんの予想は 間違っていなかった

 

 斧の一撃をそらし、『ネギ』でメルお姉ちゃんのわき腹をポカリッと叩いたマイスさんが、メルお姉ちゃんから距離をとった……その時

 

「ああー!もうっ!!」

 

 距離をとったマイスさんにむかって メルお姉ちゃんが斧を投げ放った

 メルおねえちゃんと冒険に行った時に何度か見たことのある『アクスストライク』っていう 敵に斧を投げ、それが手元に戻ってくる技だ

 

 

 メルお姉ちゃんが切りかかるのとは 比べ物にならないスピードで飛ぶ斧。当然、当たったら 大怪我すること間違いなしだ

 

 

 

「ウソっ!?」

 

 そう驚いたのはメルお姉ちゃんだった

 何が起きたのかといえば、マイスさんが一瞬で迫ってきたのだ。飛来(ひらい)する斧の下を凄く低い姿勢で わたしがギリギリ目で追えるくらいのスピードで突進してきたのだ

 もしかしたら、メルお姉ちゃんの位置からだったら 一瞬マイスさんが消えたように見えたかもしれない

 

 でも、メルお姉ちゃんも凄かった

 驚愕の声をあげるのとほぼ同時に 低姿勢で突進してくるマイスさんにむかって()りをくりだしたのだ…………だけど、ここから わたしには理解のできないことがおきた

 

 

 蹴りをしたメルお姉ちゃんが 次の瞬間 浮き上がり、そこからまた一瞬おいて 背中から地面に叩きつけられた

 そして、いつの間に そこに立っていたのか、倒れるメルお姉ちゃんのそばに立つマイスさんが 回転しながら戻ってくる斧をキャッチした

 

 

 

「勝負あり…かな」

 

 自分の背丈に 負けずとも劣らない大きさの斧を肩でかついだマイスさんが爽やかに笑いながら言った

 

「あははー…とっさの蹴りで 片足浮かしちゃったのはマズかったかー……それ以前の問題な気もするけど」

 

 上半身を起こしたメルお姉ちゃんの顔は 思いの(ほか) 明るかった

 

 立ち上がろうとするメルお姉ちゃんに、斧を地面に突き刺したマイスさんが手を差し伸べた。「ん、ありがと」と言いながらメルお姉ちゃんはその手を取った

 

 

 

「しかし、最後のほうは まるでわからんかったな…」

 

 ゲラルドさんの言葉に わたしたちは頷いた

 

「俺もよくわかんねぇ…ビューっていったらドンってなった!」

 

「私も何が何だか……トトリちゃんはわかった?」

 

「飛んでく斧の下を通ってたのが ギリギリわかったくらい。でも、いつの間に『ネギ』を腰のベルトに収めたのかが……それに、メルお姉ちゃんが何で負けたのかもわからなかったよ…」

 

 

「何でって、それはあたしがブン投げられたからよ」

 

 わたしの疑問に答えたのは、戻ってきたメルお姉ちゃんだった

 そのすぐそばには ポーチに『ネギ』を片付けているマイスさんもいる

 

 

「投げられた?」

 

「そっ!あたしが蹴ろうと動かした脚を(つか)みあげてね。掴まれたって思った 次の瞬間には身体が浮かんで……でもって、体勢立て直すヒマも無く叩きつけられたってワケ。突進してきた速度も合わさって、一瞬で 対応のしようがなかったわ あれは」

 

 困ったように言うメルお姉ちゃん

 とりあえず、怪我もなさそうで 元気だったから一安心した

 

「にしても、メル(ねえ)でも負けたりすんだな…」

 

「あら?ジーノ坊はあたしを最強だと思っててくれたのかしら?ごめんねー期待にそえなくてー。って、こんなとことで立ち話もなんだし、とりあえず酒場に行かない?」

 

 メルお姉ちゃんの提案にみんなが頷いた





 単純なパワーだけなら

メルヴィア≧マイス君(金モコ状態)>マイス君

だと思っています。ただ、素早さに大きく差があったため 今回のような結果になりました


 ……『武闘大会』のころから思っていたけれど、『RF』と『アトリエ』双方のバトルシステムを無視した戦闘描写ですが、ご了承ください

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