マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 「捏造設定」「独自解釈」等の要素が多分に含まれております


 ……試合後の話を書こうとしていたのに、いつの間にか翌日の話になっていました。…試合直後だと、色々 都合が悪かったんです






1年目:マイス「酒場でノンビリ」

 メルヴィアさんと試合をした その翌日。僕は午前中から酒場…『バー・ゲラルド』のテーブルひとつを占領していた

 テーブルの上には ふたまとまりの紙束(かみたば)とペン。それと飲み物がある

 

 別に はやくからお酒を飲んでいたりするわけではない。ただ、トトリちゃんが村の外に出る前には ここに立ち寄るだろうなーと思ったからいるだけだ

 もちろん ただいるだけじゃあお店に悪いので、たびたびお酒以外の飲み物を注文したりはしている

 

 

 

カランカランッ

 

「いらっしゃ……なんだメルヴィアか」

 

「ちぇーゲラルドさんは冷たいなー。ツェツィ、何か飲み物ちょーだーい!」

 

「はいはい、ちょっと待ってて」

 

 そんな会話を遠くに聞きながら 僕は紙にペンを走らせる

 えーっと…ここがこーだから、こっちがこーなって…

 

 

「あれ?マイス こんなところで何してるのー?」

 

 声をかけられたのに気がつき 顔をあげてみると、恐らく先程酒場に入ってきたのであろう 『アランヤ村』出身 冒険者・メルヴィアだった

 

 メルヴィアとは昨日の試合の後、お互い気軽に話すようになった

 

 …というのも、最初 僕が「メルヴィアさん」って呼んだら「なんか違和感が…」って言われて、次にメルヴィアが「マイスさん」って呼んできたんだけど「なんか違うよね…?」って思っちゃって……

 で、そうこう話しているうちに なんとなく呼び捨てで落ち着き、お互いの話し方も 幾分フランクな感じになったのだ

 

 

 

「なにって、少し 時間つぶしに『錬金術』のレシピを自作してるところだよ」

 

「『錬金術』の…?ああ そういえば昨日、トトリが言ってたっけ「マイスさんは『錬金術』のことも知ってるんだよ」って」

 

 僕の向かいの席に座りながらメルヴィアは 興味深そうにコッチを見てきた。だけど、その顔は すぐに苦虫を噛み潰したような顔に変わった

 

「うわぁ……遠目からチラッって見ただけでわかる。あたしには読むだけでも無理なヤツだわ、それは…」

 

「あははは…。まあ、今書いてるのはまだ仮のレシピだから 余計にグチャグチャしてるしね」

 

「やっぱり、イヤだわ そういうのは……そうだ。せっかくヒマしてるなら、あたしと何か話さない?」

 

 

 そんなことをしていると、カウンターのほうからツェツィさんが飲み物を持ってやってきた

 

「はい、メルヴィ。 マイスさんは おかわりいかが?」

 

「それじゃあ よろしくお願いします、ツェツィさん」

 

 僕の返事に「わかったわ」と言って ツェツィさんは再びカウンターのほうへとむかう

 その様子を見ていたメルヴィアが、ジロジロこっちを見てきた

 

「ツェツィとは お互い「さん」付けのままなのね。いや、確かに マイスがツェツィに言うのは違和感ないけど……さ」

 

「それって、僕のほうが年下に見えるってことだよね?」

 

「否定できる?」

 

「……そのあたりのことは、5歳年下の子に身長を抜かれた頃に 色々(あきら)めたよ…」

 

「あ…うん、なんかゴメン」

 

 

 

 本当に申し訳なさそうに言うメルヴィアを見て、なんとなく 逆にこっちが申し訳なくなってきたので、早急に 別の話題をあげることにした

 

「そ、そういえば、昨日は聞けなかったけど、なんでいきなり 僕に勝負を仕掛けてきたの?」

 

「なんでって……」

 

 メルヴィアはチラリと酒場の出入り口を見た後、やや声を小さくして答えた

 

「ギゼラさんが、よく言ってたのよ「マイスはアタシの次ぐらいに強い!」って。そんなこと 聞いてたら、やっぱり気になるじゃない!」

 

「えっ!?」

 

 ギゼラさんが色々と言ってたであろうということは、グイードさんと話した時にわかっていた。いや、だけど……

 

「さすがにそれは過大評価すぎるよ……僕より強い人って普通にいるし…」

 

 ステルクさんとか、ジオさんとか……それに、僕に勝ったステルクさんに勝ったロロナも、きっと僕よりも強いのだろう

 

 

「でも、ギゼラさんはそう言ってたんだもの。それに、事実 あたしはロクに手も足も出なかったわけだし」

 

「そうね。メルヴィが あんなあっさり負けちゃうなんて、思っても見なかったわ」

 

 おかわりを持ってきてくれたツェツィさんが メルヴィアにそう言いながら僕に飲み物を差し出してくれた

 言われたメルヴィアは「どーせ あたしは弱っちいですよーだ」と少し口をとがらせていたけど、ツェツィさんの微笑みに対して 微笑み返していたので、ふたりなりのコミュニケーションなのだと 僕は判断した

 

 

 

―――――――――

 

カランカラン

 

「こんにちはー…あっ、マイスさん ここにいたんですね……って、あれ?おねえちゃんとメルおねえちゃんも一緒にいる…何してるの?」

 

 依頼を受けに来たのだろうか、酒場に入ってきたのはトトリちゃんだった

 トトリちゃんの言葉に 僕は軽く手をあげて応え、ツェツィさんは「いらっしゃい」と笑顔で出迎え、メルヴィアは ニコニコ笑いながら手招きをした

 

「いやね、マイスが ひとり(さみ)しそうにしてたから、あたしがお喋りにつき合ってあげてたの」

 

「メルヴィったら、ウソは言わないの。本当はね お仕事してたマイスさんのところに きまぐれなメルヴィが邪魔しに入ってたの」

 

「あははは…、仕事ではないんだけど…まあ 大体合ってるかな」

 

 

 

 僕たちがいるテーブルのそばまで来たトトリちゃんは、僕たちの話を聞いて疑問符を浮かべ 小首をかしげた

 

「えっと…それで 結局マイスさんは何をしていたんですか?」

 

「『錬金術』のレシピを自作していたんだ。ほら、こんな感じに」

 

 そう言いながら 僕は片一方の紙束をトトリちゃんの方へと差し出す。すると、トトリちゃんは その紙面に目を通しはじめる

 

「……これって『錬金術』のレシピ!?マイスさんって、『錬金術』のレシピを作れるんですか!」

 

「とは言っても、まだ それは未完成で、実際に何回か調合してみて書き直さないといけないんだけどね。…それに、そのレシピは(いち)から作ったわけじゃないんだ」

 

「…?どういうことですか?」

 

 問いかけてくるトトリちゃんに、僕は 僕の手元に残ってあるほうの紙束を指で軽くつついて(しめ)

 

「こっちの紙に 僕が昔からやってる『薬学台』での調合…『錬金術』を使わない 薬の調合方法を書き留めてあるんだ」

 

「『錬金術』を使わない?」

 

「そう。街の病院のお医者さんなんかが薬を調合するのと 似たものだって思ってくれたらいいかな。…まあ、アーランドの一般的な方式とは違うものなんだけど……そのあたりは ちょっとややこしくなるからね」

 

 

 僕のすぐそばまで来て 興味深そうに紙束を見つめるトトリちゃんのために、今さっき 僕がしていたことを説明する

 

「トトリちゃん、そっちの紙束の上から5枚目を出してくれるかな?」

 

「あっ、はい!わかりました」

 

 トトリちゃんが『錬金術のレシピ(仮)』の中から 指定した紙を抜き出しているうちに、僕も それと連動する部分が書かれている紙を コッチの紙束から抜き出しておく

 

「これですね」

 

「うん、ありがとう!…で、ソッチの紙とコッチの紙に書かれているのは、どっちも同じ薬の調合方法なんだ。違いは『錬金術』と『薬学台』、どっちで調合するかってだけだね」

 

「そのふたつって、そんなに違うものなんですか?」

 

「うーん。もとになる素材は一緒だけど、作業の工程(こうてい)なんかは色々違うね。そうだな……例えば、ここの工程なんだけど」

 

 2枚の紙をテーブルに並べて、『薬学台』での調合が書かれてあるほうの紙の一部を指で()(しめ)した後に、『錬金術』での調合が書かれてあるほうの紙の ひとつの図解を指し示してみせる

 

「この 2種類の草を(せん)じて混ぜあわせる部分だけど、『錬金術』のほうだと ここの工程の中に組み込まれてるんだ」

 

「あぁ、ソコの図はそういう意味だったんですね!…だとすると、ココの工程は…なるほど、そういうことなんだ」

 

 これまでの錬金術士としての活動の中で(つちか)われてきたものなのだろう。『錬金術』のレシピのほうは 僕の汚い殴り書きでも トトリちゃんは読み解くことが出来るようだ

 

「えっと、それじゃあココの図のわきに書いてある 3種類の植物の名前と「要検証(ようけんしょう)」っていうのは 何なんですか? 」

 

「そこに書いてある植物には どれにもこの薬の効果の主成分が(ふく)まれてるんだけど、その量がそれぞれ違ってね。どれを素材として使うかによって 効果が左右されるかもしれないから「要検証」なんだ」

 

 実際のところは、元の薬のレシピに書いてある素材が『アーランド』周辺には存在しないものだから、代用できそうな素材をいくつか検討しないといけなかったりもする…という部分もあったりするんだけど、説明が大変になるから スルーすることにした

 

 

「なるほど…!『錬金術』のレシピを作るのって 色々考えないといけないんですね!」

 

「元になる調合があるだけ まだマシなんだけどね。一から作るのは もっと難しいんだけど……でも、ロロナはそのあたりもパパッ!って感覚でやっちゃうから。さすが本職の人だなーって感じだよ」

 

 「ロロナ先生って やっぱりすごい人なんだー」と 嬉しそうにするトトリちゃんは、どことなく誇らしげだった

 

 

 

 

 と、そんなトトリちゃんのことを見つめている人が 僕以外にふたり。僕が気づいた その少し後にトトリちゃんもその視線を感じとったようで、レシピから目を離し そちらを向いた

 

「えっ?おねえちゃんとメルおねえちゃん、どうかしたの?」

 

 そう、トトリちゃんのことを見ていたのは、他ならぬ テーブルそばにいたツェツィさんとメルヴィア。ふたりは口をポカンと開けて 驚いた表情をしていた

 

「うそ…!!」

 

「トトリが難しそうな話をしてる…!?」

 

「ちょっ!?そんなに驚かなくても!わたしだって 立派な錬金術士になるんだから、これくらいできるようにならないといけないんだよ!」

 

 ふたりの驚きように 非難の声をあげるトトリちゃん。そんなトトリちゃんをツェツィさんとメルヴィアは 軽くなだめながら微笑んだ

 

「冗談よ。でも、あのトトリちゃんがねぇ…」

 

「そうよね。全然 驚いてないって言ったらウソになっちゃうわー」

 

「うう……あんまり()められてる気がしない。むしろ からかわれてる気が…」

 

 だからといって、僕のほうへ助けを求めるような視線を投げかけないでほしい。正直、対応に困る…

 

 

 

―――――――――

 

 

「そういえば、トトリちゃんは何の用で酒場に来たのかしら?お買い物?それとも依頼のほう?」

 

 ツェツィさんの問いを聞いたトトリちゃんは ハッっとしたような顔をした後、首を振った

 

「ううん。どれくらいここにいられるのか、予定をマイスさんに聞こうと思って……」

 

 トトリちゃんはそう言って僕をチラリと見てきた

 

 

「そうだなぁ…あと数日はここに(とど)まるつもりだよ。もし、何かあるんだったら もう少しは滞在期間を延ばせるけど…」

 

「いえ!そのくらいあれば十分です!…それで、ちょっと手伝ってほしいことがあって……」

 

「うん、何かな?」

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 そんなふうに 新しく始まる冒険

 たぶん これからはこんな感じにトトリちゃんのお手伝いをしながら過ごしていくのだと思う

 

 新しい日常のカタチを感じながら、僕は明日からの予定を考え始めた……

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