マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 今回はほぼ完全に作者のお休み回……と いいますか、原作『トトリのアトリエ』で未登場のキャラやサブキャラを ちょっと顔を出させたりしてみて、今後の登場させる際の足掛かりになるように……登場するかなぁ…?


1年目:マイス「帰宅、そして挨拶まわり」

 

 あれから 一度『アランヤ村』周辺の冒険を手伝った後、トトリちゃんに『青の農村』に帰る事と 何かあったら遠慮なく来てほしいことを伝え、僕は『青の農村』へと帰った

 

 『青の農村』から『アランヤ村』へと行くのに2週間近くかかったのに対し、帰るのは一瞬ですむ。いわずもがな『魔法』でだ

 そして、もし 僕の家に誰かいたとしても問題は無い。驚くべきことに『錬金術』のなかには 指定した場所に瞬間移動できるアイテムがあるそうなのだ。……そのうち 調合してみたいものだ

 

 

 ……と、色々とあった 僕の久々の遠出は、難なく終わりを告げたのであった

 

 

 

――――――――――――

***マイスの家***

 

 

 帰ってきたことを伝えるのも()ねて 村の人たちに挨拶してまわった後、ひと段落した僕は 家で香茶を飲んで一服しながら、これからどうしていくか考えていた

 

「畑のことは明日からでいいとして……そうだ、冒険の最中(さいちゅう)とかに『秘密バッグ』で色々取り出したコンテナの中を、一度整理したほうがいいよね」

 

 「そうと決まれば、さっそく!」と、香茶を飲み干し作業へ移ろうとしたちょうどその時

 

 

コンコンッ

 

 

「はーい!」

 

 玄関の扉に駆け寄って開けてみると、そこには大きな荷物をしょった赤髪の男の人……僕の見知った顔がいた

 

「よう、にいちゃん!」

 

「コオル!元気そうで良かったよ。 ちょっと前に村の中を探した時には見かけなかったけど…どこか行ってたの?」

 

「まあ、野暮用で 少しだけ出てたんだ」

 

 そう言って軽く笑うのは 行商人のコオル

 

 昔から 僕のところに売買に来ていたけど、『青の農村』ができた頃に「んじゃあ、これからはオレもここを拠点に活動すっか」とか言って、農村の一員となったのだ

 とは言っても、相変わらず いろんなところを(めぐ)って商品を集めたりもしているから、いつも村にいるとは限らないのが現状だ

 

 

「僕がいない間、村は何か問題がおきたりした?」

 

「そのあたりは他のヤツのほうが知ってるし、もう聞いてるだろ? 例のアレも問題無かったぜ……ちょっと盛り上がりに欠けたけどな」

 

 苦笑いしながら 言うコオル

 「例のアレ」についても、盛り上がりに欠けたってところは気になるけど……まあ、その場にいたコオルが「問題なかった」って言ってるなら 本当に大丈夫なのだろう

 

「そうそう。にいちゃんがいない間に客が2人来てたぜ」

 

「客?」

 

「にいちゃんが出かけてから5日経ったころに元国王さんが来て、その1週間後くらいに 人形使いのねえちゃんが来たんだ。どっちも マイスがいないことを伝えたら凄い寂しそうにしてたぜ」

 

 ジオさんにリオネラさんか。間が悪かったなぁ……今度来た時は 最大限のおもてなしをしよう…

 それに、僕もふたりには会いたかったからなぁ……特にジオさんが来てくれるのは 久々なのだ。僕の外出の理由が理由なので、仕方ないと思うのだけど やっぱり少し残念に思ってしまう

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 コオルと一通り話した後、彼は自分の商売のほうに戻り、僕も整理の作業を始めた 

 ……だけど、思っていたよりは ()らかっていなかった上に、そもそも いっぱい()めていたので 今回の消費分を(おぎな)う作業も必要なさそうだった

 

 

 そうなると 次に僕がすべきことは……アーランドの街へ行くことだろうか

 街の人たちへの挨拶は明日でいいだろうと思っていたけど、時間に余裕があるなら 今から行っておいた方がいいだろう

 

 

――――――――――――

***職人通り***

 

 

 街の景色は 6年前とは大きくは変わっていない。橋が架かったり、パメラさんのお店だったところが 空き家になったりはしているが、その程度だ

 

 パメラさんといえば、なぜか『アランヤ村』にいたのには驚かされた

 前にフラ~っとどこかへ行ってしまったのは知ってたし、ロロナから「元気にしてるよー」と聞いたことがあったので そこまで心配はしていなかった……けど、幽霊だったはずなのに生身になっていたのは、どうしてなのだろう?

 

 

 ……と、そんなことを考えているうちに 最初の目的地にたどり着いた

 

 僕はその店へと入った

 

 

――――――――――――

***ロウとティファの雑貨屋***

 

 

 雑貨屋という名に恥じない 様々な品が取り揃えられた店内。その店内には どこかで見たことのある顔の男性客が3人、商品を見るふりをしながら 別のものを見ている

 その3人の目線の先…レジカウンターの向こう側にその人はいた

 

 

「いらっしゃい。…って、あら マイス君。なら「お帰りなさい」って言ったほうがいいかしら?」

 

「こんにちは、ティファナさん!…あれ?僕が出掛けてたこと 知ってるんですか?」

 

「それはフィリーちゃんに教えてもらったというか…」

 

 このお店の店主をしているティファナさん。いつもの柔和な笑みを浮かべている テファナさんが「そういえば……」と小首をかしげて問いかけてきた

 

「帰ってきてからフィリーちゃんには会いに行った?」

 

「えっと、今朝帰って来たばかりだから まだ会ってませんけど……何かあったんですか!?」

 

「そういうわけじゃないんだけど……うーん、やっぱり こういうのは話さないほうがいいわよね?」

 

「いや、ひとりで納得されても 困るんですけど…」

 

 よくわからないけど……とりあえず スル―すればいいのだろうか?いや、でも フィリーさんのことだし、かなり気になるんだけど…

 

「えーっと、そうね……マイス君が会いに行ってくれれば何の問題も無いってことだけ言っておくわ」

 

「はあ…?まあ 『職人通り』のお店の人たちに挨拶してまわった後に、『冒険者ギルド』には行く予定でしたから 会いには行きますけど……」

 

 なんだか気になるなぁ……?

 

 

 

 

――――――――――――

***職人通り***

 

 

 心に多少のモヤモヤを残しながらも雑貨屋さんを後にした僕は、次に立ち寄る店へと歩き出した

 …とは言っても、場所は雑貨屋さんのすぐそば。間に階段があるとはいえ すぐ隣なのだ

 

「あっ、でも アトリエには誰もいないかも……」

 

 

 店主であるロロナは諸事情もあって放浪の旅に出ていて、ここ最近は なかなかアトリエに帰って来ないのだ

 

 「ロロナが旅に出てるだけなら、他の人が残ってるんじゃ…」と思いたいところではあるけど、そうはいかない

 ロロナが3年間の『王国依頼』を完遂したころ旅に出た先代店主アストリッドさんだが、1年ほどで帰ってきたかと思えば、その数年後にまた旅に出ていってしまったのだ。ついでと言ってはなんだけど、ホムちゃんはアストリッドさんが連れて行ってしまってる

 

 そんなアストリッドさんの捜索も ロロナが旅をしている理由だったりするのだが……

 

 

 話を戻すが、今のアトリエは完全に無人状態……

 いや、この前トトリちゃんから聞いた話だと、今『ロロナのアトリエ』は トトリちゃんの臨時のアーランドの拠点として使い出したとか言ってたっけ?

 

 

 まあ、トトリちゃんは『アランヤ村』にいるわけだし、どちらにしても 今は誰もいないはず……

 

「…なんだろ あれ?」

 

 

 階段を上って見えた(とお)り…そのアトリエの扉前には あからさまに怪しいローブをまとった人。その身長からしてロロナでもアストリッドさんでもない、別の人だろう

 

「今日もいない、か……さて、どうしたものか…」

 

 最初は アトリエに依頼に来た人かと思ったけど、その人物の(つぶや)きを耳して 声の主が誰なのか僕は理解し声をかけた

 

「何してるんですか ()()()()()さん」

 

「げぇ!? き、キミか……いやぁ、アトリエにロロナが帰ってきてないか気になってね。そのあたりの確認も 僕の重要な仕事だから…ね?」

 

「そんなこと言って、また大臣の職務から逃げてきたんですよね?メリオダスさんから いつも愚痴(ぐち)を聞いてるからわかりますよ」

 

 そう言うと 昔はタントリスという偽名を使ってロロナの手伝いをしていたトリスタンさんが、苦虫を噛み潰したような顔をしたけど いつもの軽い笑みに戻り 首を横に振った

 

「どうせなら愚痴だけじゃなくて説教も代わりに聞いてもらいたいくらいだね……ついでに大臣の仕事もどうかな?」

 

「トリスタンさんが畑仕事を代わりにやれるって言うなら考えますよ?」

 

「いやぁ…それは無理だね。どう考えても僕の(しょう)に合わないだろうさ」

 

 ヤレヤレ…と首をすくめながら トリスタンさんは僕のほうを向いていた顔をアトリエのほうへと向けた

 

 

「それにしても、今日もロロナがいないことからして、先日 煙突からケムリが出てるように見えたのは 僕の見間違いだったのかな…?」

 

「先日って……1ヶ月くらい前じゃないですか?」

 

「そうだよ。本当なら 見えたその日にアトリエに行きたかったんだけど、親父が離してくれなくてね……今日 こうして抜け出したのも、色々とギリギリだったんだよ?」

 

 「僕の苦労、わかるかな?」って感じに聞かれても、正直 困る……

 というか、元国王にも 後任を任せた息子にもフラフラ逃げられるメリオダス前大臣の心労が心配でならないのだけど……今度、お薬持って行ってあげたほうがいいかな…?

 

 そんな考えを(めぐ)らせながら、トリスタンさんが見たっていうケムリについて 彼に教えてあげることにした

 

「そのケムリは ロロナの弟子のトトリちゃんが『錬金術』をしていた時のものだと思いますよ?」

 

「ロロナの弟子?」

 

「はい。村に来たロロナに『錬金術』を教わったそうです。…で、『冒険者』になってアーランドで活動する際に 『合鍵』を持ってたクーデリアが 「アトリエくらい 別に使っちゃっていいんじゃない?あの子は怒ったりしないだろうし」って許可を出したらしいですよ」

 

「へぇ、『錬金術士』…そして『冒険者』にね。それはちょっと会ってみたいなぁ…」

 

 

 興味あり気に話を聞くトリスタンさん

 

 と、その後方から 見知った顔がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた……なんと言うか、もうお約束であるがメリオダス前大臣だ

 

 

 その後 どうなったか。 それはもうご察しのとおりだった






 6/3(金)に『ロロナのアトリエ・番外編』を更新する予定です
 更新される場所は 最新話では無く、『ロロナのアトリエ・番外編』の「ロロナ編《後》」の下ですのでご注意ください

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