マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 「キャラ崩壊」等の要素が含まれています。ご注意ください


 ……といいますか、今回は ほとんど勢いで書いたので ちょっと大変なことになりました。…でも、書くのは過去最高に凄く楽したっかです


1年目:イクセル「ある日の『サンライズ食堂』」

***サンライズ食堂***

 

 

 俺はイクセル・ヤーン。アーランドの街にある『サンライズ食堂』を任されているコックだ

 

 『サンライズ食堂』は 少し前に内装を改装して 全体的に明るく・おしゃれな感じになっていて、数年前とは随分 雰囲気が変わった

 まあ、出してる料理は 特別高いものじゃない、昔のまま リーズナブルな価格のものばかりだ。お客さん方に満足してもらえるように 尽力している

 

 

 

 っと、まあ そんな感じで ウチの店は繁盛している……が、当然 年中毎日ずっと満員御礼ってわけじゃない。客が少ない時だってある

 

 ちょうど今なんかが そうだ。陽が暮れきった…夜。いうなれば「大人の時間」

 普段ならもうちょっと客が入ってて 俺もこんなにヒマはしないし、店の人間としては 客が少ないことを(なげ)くべきだろうが……まあ、今日ばかりは 客が少ないことに感謝している

 

 

 何故って、そりゃあ……

 

 

 

「「かんぱーい」」

 

 店の出入り口から見て 一番奥の角のテーブル席。そこで 乾杯の声があがった……これこそ俺が「客が少なくて良かった」と思っている原因だ

 

 そこに座っているのは、酒癖の悪さがハンパないティファナさん……ではないが、()()()()(あつか)いが難しいふたり組だ

 

 

「あははは、今日も随分とお疲れみたいだね……大丈夫、クーデリア?」

 

「んー…まあ いうほどでもないわ。マイスこそどうなの?この間の 久々の冒険の疲れは ちゃんと抜けてる?」

 

 

 奥のテーブルのふたり組…そう、それは俺が昔から知ってるマイスとクーデリアだ

 何が問題かというと……

 

マイス   ←151cm

クーデリア ←139.8cm

 

 …で、ふたりが飲んでるのは『()』だ。そう『酒』なんだ

 

 ふたりのことを知ってる俺なんかなら問題無いんだが、何も知らないヤツが見れば 今 俺の目の前にある光景は「未成年(こども)が ふたりしてアルコールを飲んでる」というとんでもないものに見えるわけだ

 ふたりして…というか、特にマイスが童顔(どうがん)なことも 勘違いに拍車(はくしゃ)をかけるに違いないだろう

 

 そして、もし誰かが「子供がお酒を飲んだらダメじゃないか!」とか言ったりしたら……キレて店にも被害が出る…誰がキレるとは言わねぇけどよ

 

 

 まあ このふたりがウチに飲みに来るのは初めてな訳でも無いし、客は客だ。面倒事はゴメンだが 注文されたものは出すし、ちゃんとしたサービスをするのが俺のつとめだ。やれるだけの事をやるだけだ

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「じゃあ、やっぱり 仕事は(いそが)しいんだ。休みはちゃんと取れてる?」

 

「仕事の合間に休憩をちょっと入れるくらいなら出来るんだけど、丸1日休みなんかは取り辛いわね。通常の業務に冒険者制度の改善案…そんで 問題はいつも唐突に出てくるわけで……」

 

「今度 また村から人を何人か 手伝いに行かせようか?」

 

「それは有り難いわー…あっ、この前 来てくれた子、正式にギルドで働いたりしてくれないかしら?あの子、結構 見込みがありそうなのよ」

 

「それは本人に聞いてみないと。それじゃあ とりあえず、今度『青の農村』からギルドに手伝いに行く人数についてなんだけど…」

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「んで、冒険者登録に来たバカが言ってきたのよ「ママのお手伝いかな?お(じょう)ちゃん 偉いね~」って……ヒック」

 

「あー…あるよね、そういうこと。僕も 村長に会いたいって家に来た旅の人に「お家の人はいるかな?」って言われてさ……」

 

 

 

「……やっぱ こうなっちまったか…」

 

 こいつら、最初のうちは 真面目に仕事の話なんかしてたりするんだが、酒が進むにつれて 愚痴っぽくなり、最後には 決まって自分たちの身長に関する話で悪酔いしだすのだ

 そして、その悪酔いは ティファナさんのソレとはまた別の意味で対処し辛い。下手に触れようものなら 俺に風穴が空いちまう…

 

 マイスも クーデリアも、他のヤツと飲んでるときには こんなことになったりしないんだけどなぁ……?

 マイスは、ステルクさんや前大臣なんかと ふたりで飲みに来ることがあるが、そんな時は むしろストッパーになっている。クーデリアも、前にロロナと飲みに来た時は 別段 酔払ったりしてなかったし……

 

 

「ちょっと~ おかわり頂戴(ちょうだい)~!」

 

「僕にも さっきと同じの一杯追加でー」

 

「はーい、わかったわかった。大人しく待ってろー!」

 

 料理とは違って、酒を出すのは そう時間はかからないのが(さいわ)いだ。酔払いふたりを 変に待たせて機嫌を(そこ)ねる心配がないからだ

 

 用意した二杯の酒をテーブルへ運び、ふたりの前に置く

 

沢山(たくさん)注文してくれるのは 店的には嬉しいんだが……酔いつぶれて 店の床で寝だしたりしないでくれよ?」

 

「だいじょーぶですよーイクセルさーん!飲む量はちゃんと抑えてますからー」

 

「そ~よ~?こんくらい にょんだうちにもはいらないわ~!」

 

 ……ふたりの言葉が本当であることを祈りつつ、俺は調理場に戻る……やばい、不安でしょうがない…

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「んー?しぇが低いことが りてんになりゅこと?」

 

「ほらー想像してみてー。憧れの人に 全身を包まれるよーに だきかかえられるクーデリア自身をー」

 

「……ふふっ、ふへへへ~じおしゃま~!たしかに それは悪くにゃいかも~……じゃあ…あんたにゃんかにも 何かりてんって……」

 

「なーんにもなーい!だってー、仮に 160より大きい女の子を ぼくが「お姫様抱っこ」したとするでしょー?」

 

「……あぁ…にゃんかアンバランスねー。でも、あんたなら 倍くりゃい大きい子でもヨユーでしょー?」

 

「まー…5クーデリアくらいはラークラクですねー」

 

「にゃによ、5クーデリアって……10くらいいきにゃしゃいよ~」

 

 

「「あははははー!」」

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ぼくだって4年くらい前に 7cmくらいピョンと伸びたことがあったんですよー?でも、年下のコオルに しんちょーぬかれたときは、イッシューまわって笑っちゃいましたよー」

 

「わかりゅわー…あたしも仕事がら ここ6年くらいで色んな人に会ってて「ああ、あにょこがこんなにおーきく…」って思っちゃりすりゅのよ~……もしかして、アレが『親の気持ち』ってヤツ!?」

 

「それは ちょっと違うんじゃー?…あっ、そう言えば 僕の知ってる人に、お姉ちゃんなのに弟よりも小さくて (なら)んでると妹だと思われるーって(なげ)いてた娘がいて…」

 

「なにしょれ~?あたし、兄弟なんていにゃいけど 何だか他人事に思えにゃいわ~……にゃんでだりょ?」

 

「「あーはっはっはー!!」」

 

 

 

 誰か助けてくれ…。話している本人たちは いたって楽しそうなんだが、なんか 聞いてる俺のほうが いたたまれない気持ちになってきた……

 

 これは 俺が何か言って(しず)められるレベルじゃなくなってる

 「身長なんて気にすんな」なんてことを言ったら「しっかりデカく育ったヤツが何言ってるんだコラー!」と言い返されてしまうのは目に見えてる……というか、経験がある

 

 もはや 酔いつぶれて寝てくれた方が良いんじゃねぇか、って気がしてきた……ちょっと度数高めな酒を出してみるか…?

 

 

 「サービスだ(建前)」と言って出すための 度数高めな酒をジョッキについで、あいつらのテーブルへと運ぶ……

 

 

「れも マイスの背が低めにゃのって、親の影響が大きいんじゃにゃい?」

 

「あー、確かにー。なんだか そんな気がするー…というか、ほぼ 確実にそーかなー?」

 

 

「マイスの親?そんな話、俺は初めて聞くんだが…?」

 

 俺は、思ったことを つい口にしてしまったんだが、その発言で ふたりが俺がテーブルまで来たことに気がつき、コッチを向いてきた

 そして 俺の言葉に先に答えたのは 上手く呂律(ろれつ)が回ってないクーデリアだった

 

「あたしも マイスから話で聞いたらけらけろねー。れも、間違いにゃく ちーしゃいわ~ヒック…」

 

「…そうなのか、マイス?」

 

「そーれすよー? まー…少なくとも 今の僕よりちーさい よー」

 

 マイスも答えてくれたが、コイツもコイツで 間が伸びてるし呂律も怪しくなってきている

 

 

 ……色々と気になるところだが、とりあえず今は このふたりを大人しくさせるのが最重要事項だ

 

「ほら、サービスだ。飲んできな」

 

 ふたりの前に酒を置いて、飲むように促す

 

「あー…じゃー、コレ飲んだらお開きってことで、帰りましょーかー」

 

「しょうね~ヒック…今日はいちゅもより楽しくにょめたよーにゃ気がすりゅわ~」

 

 

 ふたりは(すす)められるまま 酒を飲んでいってくれた。そして 飲み干し……

 

 

「イクセルさーん、おかいけー お願いしまー」

 

「あいよー」

 

 

「それじゃー ごちそーさまでしたー!」

 

「ごっちょ~しゃま~!」

 

「おう、気をつけて帰れよー」

 

 

 ……って、あれ?てっきり、あの酒で寝ちまうもんだって思ってたんだが、普通に帰っちまったぞ?

 

 まあ、ちゃんと帰ってくれるなら いいんだが……あの最後の酒のせいで 夜道の途中でぶっ倒れてしまったりしねえだろうか…。そういや、クーデリアのほうなんか かなり足がふらつき気味だったような……

 

 

 

 その後、閉店の時間までの短い営業時間中、俺が仕事に集中できなかったのは言うまでもない

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 翌日の早朝に街で 二日酔い気味のマイスをみかけた

 そう遠くはないとはいえ、こんな朝早くから『青の農村』から街に来るだなんて。ちょっとぐらい休んでもいいんじゃないだろうか?仕事馬鹿のマイスらしいといえばらしいし、きっと あいつも忙しいんだろうけど…

 

 ……俺も疲れてるんだ、そう 思わせてくれ…


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