久しぶりのトトリ登場です
『ロロナのアトリエ・番外編』と並行して書いているのですが、番外編のほうが中々書き進められない事態に陥っております…。が、ガンバリマス…
***アランヤ村***
「おっし!んじゃ、またなトトリ!」
「あ、うん。手伝ってくれてありがと……って、もう行っちゃった」
『錬金術』の材料集めも
「どうかしたのかな…?」
「んー?よくわかんないけど、かなり 熱が入ってるみたいだし、『冒険者』としての自覚がでてきたとか……無いわね、あのジーノ坊やだもの」
「メルお姉ちゃん。メルお姉ちゃんも手伝ってくれてありがとうね!」
私の後ろをノンビリついて来ていたメルお姉ちゃんに お礼を言うと、メルお姉ちゃんは手をパタパタと振りながら 軽く笑いかけてきてくれた
「いいの いいの。あたしは普段から 仕事をキッチリ詰め込んだりしないでノンビリするタイプだから。トトリの手伝いついでにちょっとやるくらいでちょうどいいのよ」
「ああ…そっか、メルお姉ちゃんが『冒険者』になった頃は 免許は最初から永久資格だったんだよね。いいなぁ…」
「あはは、それをあたしに言われてもね……でもまあ、免許貰うだけ貰って 全く活動しない奴らがいたんだから、『冒険者ギルド』が制度の改正をして期限を作ったのは 当然の対応よね」
でも、なんだか
「ううっ…私、取得から3年で ちゃんと目標ランクに到達できるかな…?」
免許更新に必要な冒険者ランクは7。今 私のランクは3……ランクが高くなるほど上げ
「なにショボくれた顔してるの。そんなんじゃあ 出来ることも出来なくなっちゃうわよ? ほらほら、まずは受けてた依頼を報告しに行くわよー」
「う、うん」
――――――――――――
***バー・ゲラルド***
「ふう~」
ゲラルドさんのお店で、達成した依頼の報告 そして新しく受ける依頼を探す……そのふたつを終えて、先に座っていたメルお姉ちゃんと同じテーブルのイスに座って 息をつく
そこに、飲み物を持ってきてくれたおねえちゃんが来た
「トトリちゃんもメルヴィも お疲れ様。ゆっくりしていってね」
「うん、ありがとう おねえちゃん!」
「あら、村に帰ってきた時はショボくれてたのに ずいぶん元気になったわね。何かいいことでもあった?」
テーブルを挟んで向こう側に座っているメルお姉ちゃんが不思議そうに首をかしげながら、私に聞いてきた
「えっとね、さっき達成した依頼で冒険者ポイントがたまったみたいで、次のランクにランクアップ出来そうなの!」
「へぇ、心配してたわりには早いわね ランクアップ。これは さっきの心配も
「えへへっ…だといいなぁ」
っと、喜んでいるのもいいけど、冒険者免許のランクアップができるくらいにポイントがたまったってことは、そろそろ また『冒険者ギルド』に行かないといけないってことだよね?
なら、必要なものを調合したりしないと……あっ、でも、馬車で『アーランドの街』まで行くんだったら そんなに調合しなくても大丈夫かな?
パリンッ!
「えっ?」
何かが割れたような音が聞こえたから そっちのほうへ顔を向けてみた
その方向はお店のカウンターがある方向。そこにいたのは おねえちゃんだった。なんだかよくわからないけど、こっちを向いて呆然としていた
「おねえちゃん!?どうかしたの?大丈夫?」
呆然としているおねえちゃんのことが心配になって、私は立ち上がって おねえちゃんのいるカウンターのそばまで駆け寄った。そして、私が声をかけたら おねえちゃんは「ハッ!?」とした様子で私の顔を見てきた
「だ、大丈夫よ。うん、なんでもないから 心配しないで!」
「でも……」
本当にどうしたんだろう?なんだかいつものおねえちゃんと違うような気がするんだけど……
「本当に大丈夫だから、ね?」
「…うん、わかった」
…でも、やっぱり気になる
席に戻って 飲み物をちょっと口にしながらチラリとおねえちゃんの様子を確認してみる。……うーん、気のせいじゃないと思うんだけど…
「…ふたりしてお互いのことを心配し合って……はたから見てるあたしたちから教えたくなるわね、これは…(ボソリ」
「えっ? メルお姉ちゃん、何か言った?」
「ううん、なーんにも言ってないわよー?」
「そう…?」
――――――――――――
飲み物を飲み終えて、『アーランドの街』へ行く準備を始めようかな…と思った時、ふと あることが私の頭をよぎった
「ねえ、メルお姉ちゃん」
「ん?なあに?」
「このあいだ マイスさんと数年ぶりに会ったって感じだったけど、メルお姉ちゃんって 私が冒険者になる前から冒険者で、街方面にも行ってたんだよね? その時にマイスさんと会ったりはしてなかったの?」
私に対して メルお姉ちゃんは「あぁ、そのことねー」と、まるで前々から聞かれることを 半分予想していたかのように淡々とした様子で答えてきた
「ほら、あたしって免許に期限がないから そんなにランクアップのことを気にしなくてもよかったわけ。そんなこともあって あたしは『アランヤ村』周辺を中心に活動してて、あんまり街には行ってないのよ」
「それに…」とメルお姉ちゃんは言葉を続けた
「『青の農村』については色々話では聞いてたけど、特別 行きたいとは思ったりしなかったのよ。…まあ、そこにマイスがいるって知ってれば 立ち寄ったりはしたかもしれないけど。でもなぁ…」
「でも?」
「冒険者の中では有名な話なんだけどね、『青の農村』で仲良くなった
なんとなくわかるけど……それって どういう事なんだろう?
そう思ってしまい 首をかしげていると、メルお姉ちゃんは私の疑問を察してくれたみたいで、軽く頷いて 説明してくれた
「あたしが聞いたことがあるのは、『ウォルフ』と仲良くなった冒険者が 戦闘中に野生の『ウォルフ』をモフモフしたくてたまらなくなって、まともな戦闘にならなかった…っていうやつ。他にも似たような話もあるんだけどね」
「なるほど…確かに気持ち良さそうだったもんね…」
「…トトリはもう手遅れかしら?」
「そ、そんなことないよ!……たぶん」
……実は、前々から 今度『青の農村』に行った時には 寝転んでる『ウォルフ』をモフモフしたいって思ってたんだけど……やめておいたほうがいいのかなぁ?
「もしかして、他にも『青の農村』の噂ってあるの?」
「色々あるわよ?本当のことっぽいのから まるっきりウソっぽいのまで」
目をつむって腕を組み「そうねー…」と、噂を思い出そうとしているような仕草をとったメルお姉ちゃんは、腕を組んだまま ピンッと人差指を立ててフリフリと振った
「全12の農家だけど、その気になれば『アーランド共和国』の全人口が食べていけるほどの生産量だ…とか。村で暮らしていたら そのうちモンスターの言いたいことがなんとなくわかるようになる…とか。幸せを呼ぶ金色のモンスター…とか。戦闘訓練を受けていないはずの農家が『クワ』で『グリフォン』を追い払った…とか」
「『グリフォン』!?『グリフォン』って あの!?」
『グリフォン』っていったら、「新米冒険者が最初にぶつかる大きな壁」として話に聞く、
『アーランドの街』からほど遠くはない採取地にも生息していて、前に ちょっとだけ見かけたことがある……全然勝てる気がしなかったから、気づかれる前に すぐに逃げたんだけどね…
「そっ、あの『グリフォン』。信じられないでしょ?」
「うん。……あっでも…」
ふと思い出したのは、メルお姉ちゃんとマイスさんの勝負
私が知っている人の中では一番強かったメルお姉ちゃんに 少々の余裕をみせながら勝ったマイスさん…。そのマイスさんが使っていたのは『ネギ』だった
……後で聞いた話だと、『ツインネッギ』という れっきとした武器らしかった。…なお、その見た目通り 野菜の『ネギ』を加工したものだそうだ
「あんなおかしな武器でも強いマイスさんがいる村だから、その村の農家さんが強くても なんだか納得しちゃいそう……」
「まあ、『クワ』で戦うってのは 『ネギ』よりはマトモそうよねぇ…」
メルお姉ちゃんも私と同じことを考えていたみたいで、苦笑いをしながら 私の言うことに同意してくれた
トトリが街に行ってしまい、また当分会えなくなることに動揺する姉・ツェツィ
ツェツィの妹離れはまだ先のようです