マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 『青の農村』での話になりますので、「捏造設定」等の要素が多々含まれます

 また、原作に登場しない名無しのモブが少し登場し 喋ったりしますので、ご注意ください。…登場させた理由は「一応 村なのだから、村人を少しだけ出してみたりして、村で暮らす人がいる ということを書いてみたかったから」…という、私のわがままです。おそらく 今後 再び登場したりはしませんので、ご勘弁を……


1年目:クーデリア「あいつに聞いてみよう」

***青の農村・集会場***

 

 

 『青の農村』の中心。そこからすぐに見える 他よりもひときわ大きな建物…とは言っても2階建ての家がふたつくっついたくらいの大きさだから、街の建物と比べると ちょっと横広く感じるくらいで 特別大きいというわけではない

 

 他に特徴をあげるとすれば、外からも見える 人の頭がスッポリ入る大きさの(かね)が 屋根の上にあることだろう。 下から階段で上がれる小さなスペースがあり、そこに鐘が設置されているらしい。そして、その鐘は 決まった時間に打ち鳴らされるそうだ

 

 

 「らしい」「そうだ」っていうのには理由がある

 まぁ、ただ単純に あたしがこれまで この『集会場』に来ることも、興味を持つことも無かったというだけなんだけど…

 

 

 

 

「で、あの子たちは ここにいるの?」

 

 あたしは、あたしをここまで連れてきたマイスに問いかける

 

 「あの子たち」っていうのは、このあいだ『冒険者ギルド』の仕事の手伝いをしてくれたひとたちのことだ。久々の休みに なんとなく立ち寄ったマイスの家で「そういえば『冒険者ギルド(ウチ)』に来てくれた子たちって、普段何してるの?」と聞いたら『集会場(ここ)』に案内してきたのだ

 

 

「うん。ほら、あの奥のカウンターに…」

 

 マイスが指差すほうへ つられるように視線をむけてみると……確かに そこに『冒険者ギルド(ウチ)』に手伝いに来てくれた子たちがいた

 

 

 奥に設置されているカウンターの 内側に3人、外側に1人。全員 見覚えのある顔だった

 

 内側にいる3人は何かの書類の束に目を通しながら ペンを走らせている。…そのうちの1人は、他の2人とは 何故か服装がずいぶんと違っているのが ちょっと気になった

 外側にいた1人の子は 内側にいる子たちよりも少し歳が低い子で、ヒマそうに立っていた。けど、あたしとマイスに気がついたようで、笑顔で会釈をしてくれた後 コッチに歩み寄ってきた

 

 

「いらっしゃいませ、クーデリアさん!何のご用事ですか?視察か何かのお仕事ですかー?」

 

 にこやかに聞いてくるのに対し、少し「どうしたものか…」と思いながらも 言葉を返す

 

「別に大した用は無いわ。ただ ちょっと立ち寄っただけよ。……で、ここで何してるの?」

 

「私ですかー?私はこの『集会場』で給仕をしてます!お姉ちゃんはコックさんです!」

 

 おそらく、会話が聞こえていたのだと思う。カウンターの内側にいたうちの1人…服装が他の2人とは違っていた子が「どうも…」といった感じで 書類から目を離し、コッチを見ながら 軽く頭を下げてきた

 

 

 「なるほど、ひとりだけコックだったから 服装が違ってたのか」と思いながらも 周りを見渡し、色々と納得する

 

 出入り口の扉から見て 奥にあるのがカウンター。そして 2階に上がるための階段や、倉庫か何かがあるのであろう扉がカウンターのそのまた奥にあるものの、それ以外にこの建物内にあるものといえば いくつものテーブルとイスだけだ

 

 おそらく『集会場(ここ)』は その呼ばれ方とはまた別に「食堂」や「酒場」といった機能があるのだろう

 …で、今はお昼にしては少々早く、どこのテーブルもスッカラカンだ。だから コックが書類仕事を手伝い、給仕がヒマそうにしていたのだろう

 

 

 

「まあ、とりあえず 座ろうよ」

 

 マイスがそう(うなが)し、あたしとマイスは手近なテーブルのイスへと座る

 

 

 そして、給仕の子はあたしたちが座ったテーブルのそばに立ち、ニッコリと笑いながら 聞いてきた

 

「ちょっと早いですけど、お昼を食べていきませんか?」

 

 その提案に あたしとマイスは顔を見合わせて頷き、給仕の子のほうを再び向く

 

「それじゃあ、そうしようかな」

 

「ええ。マイスが奢ってくれるみたいだし……何かオススメのをお願いするわ」

 

 あたしの言葉に マイスが苦笑いするのが横目に見えたけど、あたしはそれをスルーする。給仕の子も 特に気にした様子も無く、にこやかなまま頷いた

 

「わかりました!それじゃあ クーデリアさん、マイス、今から お姉ちゃんに作ってもらいますから、ちょっと待っててくださいねー!」

 

 「ではではー!」と言いながら 給仕の子はカウンターのほうへとテッテと歩いていった

 

 

 ……あたしは気になったことがあったから、少し声を(おさ)えながらマイスに問いかけてみた

 

「ねぇ、あんたって 普通に「マイス」って呼ばれてるの…?」

 

「そうだけど?」

 

 「それがどうかしたの?」といった様子で 首をかしげるマイス

 

「いや、あの給仕の子、あんたよりも幼いわよね?」

 

 あたしがそう言うと、マイスは 何故か首を振った

 …まさか、あの子 実は結構な歳なの……!?

 

「あのね クーデリア…」

 

「な、なによ」

 

 

 

 

 

 

 

「僕を「さん」付けで呼ぶのは、トトリちゃんと そのお姉さんのツェツィさんくらいだよ」

 

「……あんた、一応は この村の村長よね?」

 

 それはまあ 「(した)しみやすい」ってことだと考えたら、良い事かもしれないけれど…。でも、『青の農村』の誰にもっていうのは いくらなんでも……

 いや、マイスらしいといえばマイスらしいけど……それでいいの?

 

 

 

 

 

 …まあ、マイス自身が そこまで気にしている様子もなかったから、このことは 一旦 スルーすることにし、別の話題をきり出すことにした

 

 

「ねえ、あの子たちがやってる書類って何なの?」

 

 あたしが目をやるのは、カウンターで 何かの書類にペンを走らせている2人。…おそらく、ああした書類作業は これまでにも何度もやってきているんだと思う。だから『冒険者ギルド』に手伝いにきた時も、十分に仕事をこなせたのだろう

 

 けど、ここは『青の農村』。「『アーランドの街』から徒歩2,3時間の近場だから」という理由で、『アランヤ村』とかみたいに わざわざギルドが扱う仕事や冒険者用の依頼を斡旋(あっせん)していたりはしなかったはず…。すると、あの書類は何かしら?

 

 

「あれは、各農家が「ここ一週間で何をどのくらいつくったか」って言うのを書いたヤツを まとめたものだよ」

 

「…それって、全部 管理されてるってこと?」

 

「ううん、別にそういうわけじゃないよ。自分の畑で何を育てるかは 全部個人の自由だし…」

 

 「ただ…」と、マイスは言葉を続けた

 

「ある一種の作物が大量に市場に出回ったりしたら 価格が崩れちゃうから、もし過多に生産された作物があったら事前にいくらか買い取って ウチで加工したりするようにしてるんだ」

 

「じゃあ、逆に誰も育ててなくて 足りなくなりそうな作物があったら?」

 

「そういうのは、僕のほうに報告が入って 僕がウチの畑で作るんだ。そうやって なんとか間に合わせるんだよ」

 

 

 マイスの説明を聞いて あたしは「なるほど」と納得した。確かに それなら市場価格を常に安定させながら 『青の農村』の農家の人たちも生活が十分にできるだろう

 それに、生産量が少ない作物を マイスがフォローするというのも、間違っていない対応だろう。『青の農村』の中で 最も作物を育てるのが上手いのはマイスだろうし、持っている畑が 一番広いのもマイスだ。おそらく、他の農家に頼むよりも早く・多く 作物を育ててくれるだろう

 

 そして、そうやって各農家の生産量や全体の統計をとって まとめて記録し保存しておけば、そのデータは後々役立つことだろう。その作業を あのカウンターにいる子たちはしているのだ

 

 

 ……でも

 

「それって、あんたが考えて 始めたんじゃないでしょ?」

 

 あたしがそう言うと、マイスは驚き 不思議そうな顔をしながらも頷いてきた

 

「そうだけど……なんでわかったの?」

 

「だって、そういう計算しつくした考えって あんたには出来そうにないもの。それこそ ロロナと同じくらいに、ね」

 

 そう、マイスはロロナと同じで、「なんとなく こっちのほうがよさそう~」といった感じに物事を選択する、直感タイプとでも言うべき種類だと思う

 いくら作物のことに関してはは余念の無いマイスであっても、そんな 他の人にまで情報を求めて集めるなんていうのは、絶対と言っていいほど しそうにないことだ

 

 

「クーデリアの言う通り、あれはコオルが中心になって始めたことなんだ。……僕が知らないうちに」

 

 コオルっていうと、あの赤毛の行商人の。たしかに あのあたりの人間が考えそうなことではあるかしら……

 …っていうか

 

「あんたって、この村で何してるの?」

 

「作物育てて、薬調合して、武器とか農具作って、あとは…」

 

 

 

 ……村長って、なんだったかしら?

 

 

 あたしがそんなことを考えてるうちに、給仕の子が 料理を運んできているのが 視界の端に見えた。なので、一旦(いったん) 区切りをつけ、少し早めの昼食にすることにした…

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 あたしたちのところに料理が来た直後、『集会場』には 別の客たちが来た。彼らはマイスに軽く挨拶をした後 別のテーブルへといった

 

 

 そして、食事を始めて少ししたところで あたしはあることを思い出し、一旦 手を止めてマイスに話しかけた

 

「そういえば、あんたって あいつとは顔見知りなのよね?」

 

「あいつ?」

 

「ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングって貴族の子よ。ほら、黒髪を横に結んでる…」

 

 あたしがそう言うと マイスは「ああ!」と やはり何か思い当たったようで、頷いてきた

 

 

「今の髪型は知らないけど、シュヴァルツラング()の女の子なら 僕の知り合い、というか友達……いや、向こうが僕のことをどう思ってるかは わからないけど…」

 

 

 

 珍しく歯切れの悪い物言いのマイスを 少し不思議に思いつつも、あたしは 次の疑問を投げかける

 

「「今の髪型は知らない」ってことは、最近は会ってないの?」

 

「うん…。何年か前に色々あって、それ以降 ちゃんと会えてないんだ」

 

 「色々あって」ね……。それが この前あの高飛車娘が言ってた 貸し借り云々(うんぬん)のことなのかしら?それに、それ以降会ってないってことは、もしかして……

 

 

「…もしかして、あの子が『冒険者』になったの 知らなかったりする?」

 

「えっ!?それ ホント!? 大丈夫かな…?怪我したり、大変な目にあったりして 泣いちゃったりしてないかな!?ど、どうしよう!ちゃんと『冒険者』としてやっていけそうか 見に行ったほうが……」

 

 アワアワと(あわ)てだすマイス。その様子は そう短くは無い付き合いのあたしが 初めて見るほどの狼狽(ろうばい)ぶりだった

 

「……あんた、トトリからも何も聞いてないの?」

 

「え?なんで トトリちゃん?」

 

「何でも何も、『冒険者』登録がほぼ同時期だったりもして、何度も一緒に冒険してたりするのよ」

 

「そ、そういえば、トトリちゃんが「ミミちゃんって娘と一緒に~」って話してたことがあった気が……もしかして、あの時の「ミミちゃん」って…」

 

「ええ、あんたの知ってる「ミミちゃん」でしょうね」

 

 

 「そうだったんだ…」と驚いているマイスだけど、その様子は なんとなくだけど落ち込み気味に見える気がした

 

 マイスは、自分が 何も知らなかったことに気を落としているのかしら?

 

 気にするほどのことなのかしら?別に仲が良い感じじゃあ無さそうだったし…。いや、マイスは「友達」だと言おうとしてた……何故か 断言はしなくて迷ってる感じはあったけど…

 でも、高飛車娘(ミミ)のほうは ほぼ確実にマイスを()けている。意図的(いとてき)に、だ

 

 

 

 

「いったい、あんたとあの子の間で 何があったのよ」

 

「さ、さあ…?」

 

 マイスの返答に 少しイラッときたけど、その顔を見ると「心底わからない」といった様子で、眉間にシワを寄せながら首をひねっていた。こんなマイスがウソを言っているとは さすがに思えない

 

 

「……そもそも、いつ知り合ったの?」

 

「えっと、たしか 6年前の1月ごろ…ちょうど前の年の終わりの『王国祭』の『武闘大会』に出場した後くらいだったね」

 

「ああ…、確かに あんたってあの頃からドンドン注目されるようになっていったわよね」

 

 さすがは国主催のお祭りのイベントと言うべき効果だった。あれでマイスとマイスが作るものは 一躍(いちやく)有名になったと言えると思う

 

「…あっ、そういえば その年の3月くらいに街の『広場』であんたが『貴族』の子たちと遊んでたことあったじゃない。ほら、あたしがペンダントの作り方教わったころ。 もしかして、あの中にあの子がいたりした?」

 

「いや?たぶんいなかったと思う…。そもそも 自分から外に出てきて遊ぼうとするような活発な子じゃなかったし」

 

 

 

「それじゃあ 何処でどう知り合ったのよ」

 

 「活発な子じゃなかった」っていうのが少し引っかかるが、今はとりあえず どういう経緯で知り合ったのかを知るほうが先決だと思い、マイスにそのことについて問いかけたのだけど……

 

「それはー…まあ、色々あって……」

 

 マイスは おもいっっっきり言葉を(にご)してきた。その上 視線が明後日の方向をむいてる。これはもはや「すっごく隠し事してますよ!」と声を大にして言っているようなものだ…

 

 

「チャッチャと言っちゃいなさい!……て、言いたいところだけど……ハァ、あんたが そこまでして言わないってことは、それ相応の理由があるのよね?」

 

「あはは…まあ、ちょっと、ね」

 

「わかったわ、これ以上は聞かないであげる。…さっ、冷めてしまわないうちに 食べてしまいましょう」

 

 そう言って あたしは食事の手を再開する

 

 

 

 マイスとあの子の間で何があったのか……それは、今 無理矢理聞き出すべきじゃないと感じた

 

 もちろん、気にならないわけじゃない

 でも まあ、「いつか聞けたらいいなぁ」程度の感覚でいよう。話せる時がくれば マイスのほうから話してくれるはずだろう





 『集会場』のイメージは、『メルルのアトリエ』の『酒場』を倍大きくした感じです



ロロナ→まだ登場できる時期じゃない

エスティ→原作『トトリのアトリエ』で名前でしか登場しない

リオネラ→上に同じ


 ……ということもあって、『ロロナのアトリエ編』登場女性キャラの中で積極的にマイス君に絡めるのがクーデリアぐらいという事態。結果、マイス君とクーデリアが 特別仲が良いように見えてきてしまっている気がします…

 …あれ?フィリーは普通にアーランドの街にいるんだけどなぁ?それにティファナさんも……と、自分で自分にツッコんでおきます
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