マイスのファーム~アーランドの農夫~【公開再開】   作:小実

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 『サンライズ食堂』回 再び。…これからも 何度かあるかもしれません


 そして、最近スランプ気味です
 理由は 主に原作『トトリのアトリエ』未登場キャラたちの扱いに関することで、「登場させたいけど、本編に絡ませ過ぎずにマイスとはいい感じに…」っていうのが思ったよりもできなくて、ちょっと 困り気味です。『ロロナのアトリエ・番外編』の執筆もゆっくりになってしまっています

 …難しく考えず、気楽にやってみようかと思います




2年目:イクセル「また ある日の『サンライズ食堂』」

***サンライズ食堂***

 

 

 俺はイクセル・ヤーン。アーランドの街にある『サンライズ食堂』を任されているコックだ

 

 『サンライズ食堂』は 少し前に内装を改装して 全体的に明るく・おしゃれな感じになっていて、数年前とは随分 雰囲気が変わった

 まあ、出してる料理は 特別高いものじゃない、昔のまま リーズナブルな価格のものばかりだ。お客さん方に満足してもらえるように 尽力している

 

 …っと、こういう紹介は なんか前にもした気がするな…。まあいいか

 

 

 

 今日も もう日が沈んでしまい 薄暗くなった街だが、当店『サンライズ食堂』には それなりの数の客が入っていて そこそこの賑やかさが店を包み込んでいる

 

 …で、今日の『サンライズ食堂』には 久々にマイスが来ている。もちろん 一人でじゃない。が、連れはクーデリアではない

 

 今日 マイスと一緒に来ているのは……

 

 

「かんぱーい」「…乾杯」

 

「ステルクさん、先日のお祭りの時は お世話になりました!」

 

「その礼なら 当日に十分貰った。それに、気にすることじゃない。あれは私にも良い息抜きになったからな」

 

 今回のマイスの連れ…ステルクさんは、グラスを少しかたむけて 水でノドを潤しながら マイスの言葉に答えていた

 その表情は普段通りの仏頂面にも見えなくはないけど、ステルクさんをよく知る人が見れば 彼の口元が軽く緩んでいるのを認識できるだろう。俺も 数年前から付き合いがあるから、なんとなくだけど判別が出来るようになった

 

 

「それにしても…」

 

 ステルクさんが見つめる先は マイスが持っているグラス。そのグラスには 酒がなみなみに注がれてある

 

「あまり飲みすぎるんじゃないぞ。キミはこの後 村まで帰らねばならんのだからな」

 

「わかってますよ。それに、僕が度をこえて飲み過ぎることなんて まずありませんからー」

 

 そう言うマイスに 俺は「前回 クーデリアと飲んでた時のアレは、度をこえてなかったか?」と言いたかったが、残念なことに 他の席の客が注文した料理を作っている最中で 言う余裕がなかった…

 

 

「あれ?そういえば ステルクさんは水ですね。今日は飲まないんですか?」

 

「ああ、明日の朝には 街を()つ予定だからな。大事をとって 今日は酒を飲まないことにしたんだ」

 

「そうだったんですか…。僕につき合わせちゃったみたいで 何だかすみません」

 

「かまわん。本当に余裕がないなら 最初から断っているさ」

 

 「気にするな」と言って 料理に手を付け始めるステルクさん。それにつられるようにマイスも料理を口にしはじめた

 

 

 うん、この様子なら 前回のマイスとクーデリアの時のように 俺が気にかけたりする必要はないだろうな

 そう思い、俺は さっきから次々に入ってくる 料理の注文をこなすことに集中することにした

 

 

 

――――――――――――

 

 

 あれから少し()って 料理の注文がひと段落し、少し息をつく。テーブル席にいる例のふたりは、一度マイスが酒の追加を頼んだぐらいで 別段大きな動きはなかったが……

 少し気になり、再びふたりの会話に 再び耳をかたむけてみることにした

 

 

「それでは、次回の祭りは…」

 

「来月は 毎年恒例の『冬の野菜コンテスト』ですよ!」

 

「では、とりあえずは今回の『カブ合戦』のような 私が手伝いとして必要になりそうな内容ではないのだな?」

 

「はい、そうなりますね……ついでに言うと、その次は 去年好評だった『大漁!釣り大会』の予定で企画を進行させてます。コッチも特別手伝いは必要じゃありませんから」

 

 どうやら、『青の農村』でのイベントの予定について話していたみたいだった。おそらく、イベントの内容によっては ステルクさんはその時期に帰ってくるつもりだったのだろう

 

 

 

 …それにしても、『野菜コンテスト』に『釣り大会』か。両方 『サンライズ食堂(ウチ)』に 結構な影響がある祭じゃねぇか

 

 まずは『野菜コンテスト』だが、その時期の野菜のデキがわかるのはもちろん、最近の各農家の状態を確認することが出来る。それで、マイスに常に一定量の出荷を依頼している 年中使う野菜のいくつか以外の、店で使う季節の野菜の取引先を決めたりするのに役立つイベントだ

 

 つづいて『釣り大会』だが、…いくつかの魚の値段が下がったりはするが、そう大きくなく 誤差の範囲内だ。これは店の取引に直接関係してくるわけではない。じゃあ どういう影響があるのかといえば……単純にその日は『サンライズ食堂(ウチ)』に食べに来る客が大幅に減るということだ。参加者がいる家庭や 参加者がおすそわけを持って行った家庭では何処も『魚料理』を自分たちの家で作るのだから、ある意味当然かもしれないがな

 

 

 まぁ、2つのイベントの詳細は そのうち俺の手元に来るだろうから、今から そう深く考えなくてもいいか

 

 

 俺は 『青の農村』の祭のことを 『青の農村』の人間の次くらいに知ることが出来る

 

 理由は簡単だ。この街の中での 『青の農村』の祭の告知・宣伝を 『サンライズ食堂(ウチ)』でやっているからだ

 正確には 『サンライズ食堂(ウチ)』以外にも『ロウとティファの雑貨屋』や『冒険者ギルド』なんかにも告知用のポスターが掲示されていたりする。…最近 店の主人がいないが、前は『ロロナのアトリエ(ロロナんところ)』でも告知があったりしてたんだが、今は そのあたりがどうなっているのかは知らない

 

 

 

「イクセルさん、お酒のおかわりくださーい」

 

「ん…?ああ!?お、おう、ちょっと待ってろよ!」

 

 マイスの声で 思考から引き戻され、慌てて返事をしながら 新しいグラスと酒を用意する

 

 

「…大丈夫か?飲み過ぎてはいないか?」

 

「いえいえ、全然大丈夫ですよ」

 

 心配そうにするステルクさんをよそに、マイスは軽く返事をする。そこに俺は 注文された酒の入ったグラスを持っていき、そして ふたりに声をかける

 

「いやぁー、いちおうはまだ許容範囲だと思いますよ、ステルクさん。マイスが本当に酔払ったら、なんかこう…間の伸びた喋り方になりますから」

 

「そうなのか?」

 

 おそらく、マイスが本当に酔っぱらった その姿を見たことが無いのだろうステルクさんが、俺の顔を見た後 意外そうにマイスのほうへと視線を移した。……クーデリアと飲んでいた時のマイスを見たら、ステルクさんは何というだろうか…

 

 

「そうっすね…酔った時だと さっきマイスが言ってた「全然大丈夫ですよ」が「じぇんじぇんだいじょーぶですよー」ぐらいにはなりますね」

 

 マイスの前に酒の入ったグラスを置きながら そうステルクさんに言った後、今度はマイスのほうを向き 言う

 

「つっても、今日はこんくらいにしとけよ?いっぱい注文してくれるのは(ウチ)的には嬉しいけど、連れに心配させちゃあ悪いぜ」

 

「そうですね。今日はこのくらいにしといて、僕も 明日の早朝の畑仕事に備えることにします!」

 

 良い笑顔でそう答えるマイスに、俺はもちろん、ステルクさんもどこか安心した顔をして「それがいいだろうな」と呟いていた

 

 

 このとおり、マイスは基本的には 人の話は素直に聞くし、普通に良い奴なんだよなぁ。時々、突拍子のないことをしでかしたり、制御が効かなくなることがあったり、どこか常識がズレてたりもするが……基本は良い奴なんだ、基本は

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「それじゃあ、ご馳走さまでした!」

 

「また街に帰ってきた時には 立ち寄らせてもらう」

 

「おう、またな!それじゃあ、おふたりとも 気をつけて帰りなよー」

 

 食事を終えて 会計を済ませたふたりに、そう声をかけて カウンター内側の調理場から見送る

 店から出ていく そんなふたりの背中ごしに、ふたりの会話が聞こえてきた

 

 

「…ちゃんと ひとりで帰れるか?」

 

「大丈夫ですよ。見ての通り、足取りもしっかりしてますから」

 

「ふっ、ならいい。……そういえば、今回は()()をしていなかったな」

 

「ああ、そういえば()() やってないんですね。それじゃあ明日の……」

 

ガチャン…

 

 会話の途中で店の扉が 自然に閉まりきってしまい、その後 ふたりがどういう会話をしたのかは聞き取ることが出来なかった…

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 翌日の早朝に、『アーランドの街』の入り口である門から少し離れた場所で、なにやら (すさ)まじい戦闘があったそうだ

 

 目撃者の冒険者(いわ)く、黒い服の 目つきの悪い男と 金髪の少年が、もの凄い剣げきのやりとりをしていたらしい

 目撃者の冒険者が「レベルが違い過ぎる…!近くにいて巻き込まれでもしたら、死んじまう!?」と 一目散に街へと逃げ帰ったため、その勝負の勝敗は不明のままだそうだ




 3~5月を「春」、6~8月を「夏」、9~11を「秋」、12~2月を「冬」 という感覚で考えて書いています

 …でも、アーランドって、『ロロナのアトリエ』のとある『王国依頼』のイベント関連くらいしか「暑い」とか「涼しい」とかいった季節の変わり目の描写がないんですよね
 変化が全く無いわけではないみたいだけれど、『RFシリーズ』のように目に見えては変わらないのかもしれません。……季節ごとに葉の色が変わる木がある『RFシリーズ』が、特別変化がわかりやすいってだけの話かもしれませんが

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