ゼロの使い魔~逝ッテイーヨされた天才科学者~ 作:ゴルドドライブ様
蛮野天十郎はどこへ向かうのか
特殊状況下防衛センター、それはかつてグローバルフリーズ――二〇一四年四月八日火曜日の夜に機械生命体ロイミュード達の起こした大規模な破壊活動であり、その規模は世界全土の四分の一にも及んだ――その跡地に建てられたビルである。
そして、何故ここまでグローバルフリーズによる被害が拡大したのか。原因は二つある。
一つ目は、緑の体表を持つ人型怪物による世界征服宣言。それとほぼ同時に起こった謎の植物と無数の怪物たちによる世界侵略。その世界侵略も、唐突に空に現れた『穴』に植物と怪物の両方が吸い込まれたことで終焉を迎える。そして世界各国が復興作業を開始しようとした矢先の出来事であったため。
二つ目は、彼らロイミュードが引き起こす現象、通称・重加速である。これは時間の流れが変わったかのように身体を動かすことが困難になる怪奇現象であり、一部の例外を除きまともに動くことができなくなるのだ。
重加速を引き起こせたからこそ、これだけの被害を齎すことができたのであり、「ロイミュードが人間に代わって地上の支配者となる」という目的を果たすためロイミュードは一致団結して事に当たっていた。
だがそれも、たった一人の戦士によって阻止される。その名は、黒の戦士プロトドライブ。
彼の活躍によりロイミュードの大部分は退けられ、その野望は頓挫したかに思われた……。
しかし、その半年後にロイミュードは再び動き出す。目的は「第二のグローバルフリーズ」である。
そしてプロトドライブはロイミュードの手に落ちており、野望を阻むものは既にいないと思われていた。
しかし、プロトドライブの変身ベルトであり科学者でもあるクリム・スタインベルトは無事であったため、新たなパワードスーツを完成させる。泊進ノ介という警察官にベルトを託し、戦士ドライブとしてロイミュードの野望を砕くため、所属している警察庁特殊状況課とともに活動を開始する。
戦いの中、同じく特殊状況課所属の詩島霧子、その実の弟である詩島剛。アメリカから来日した彼は仮面ライダーマッハとして、特殊状況課に協力していくことになる。
敵として現れていた魔進チェイサー。その正体はプロトドライブであり、「000」のナンバーを持つロイミュードだったのだ。
そして、戦士ドライブ改め仮面ライダードライブはついに魔進チェイサーを討つ。
だが、辛うじて生きていた魔進チェイサー――人間名チェイスは、かつてプロトドライブに助けられたことのある詩島霧子が看病。
そしてチェイスは仮面ライダーチェイサーとして復活、特殊状況課の仲間となった。
続く戦いの中、詩島剛のロイミュード側への裏切り……に見せかけたスパイ活動により、電子頭脳となった父である蛮野天十郎をロイミュード側から強奪。
詩島剛及び特殊状況課に協力する姿を見せる蛮野天十郎だったのだが、それは全て自分を信用させるための演技だったのだ。
蛮野天十郎は仮面ライダー達に攻撃を加え独自に活動を開始。手始めにクリム・スタインベルトの作ったベルト――ドライブドライバーを模したバンノドライバーを作り上げそれに意識を移す。
その後、手頃なロイミュードにバンノドライバーを装着させて体を奪い、ゴルドドライブとなった蛮野天十郎。彼は「世界と全人類を支配するため」、ロイミュードに無理矢理協力させ第二のグローバルフリーズを起こすために必要な手段――シグマサーキュラーを手に入れる。その際、ハートロイミュードの腹心的存在だったブレンロイミュードが命を落とす。そのことに涙を流すハートロイミュードとメディックロイミュード。
特殊状況下防衛センターを占拠した蛮野天十郎を討つため、一時的に手を組んだ仮面ライダードライブ、マッハ、チェイサーとハートロイミュード、メディックロイミュード。
ドライブとハートロイミュード、メディックロイミュードはシグマサーキュラー破壊のため最上階を目指し、マッハとチェイサーは蛮野天十郎と戦うもゴルドドライブに手も足も出ず……チェイスが死亡してしまう。
ダチであるチェイスを殺され怒りの炎を燃え上がらせた剛は、残されたチェイスの変身アイテム――シグナルチェイサーを使い変身。
仮面ライダーチェイサーマッハとなりゴルドドライブを圧倒、止めを刺した。
そしてこの特殊状況下防衛センターの駐車場では一つの決着が付こうとしていた。
バンノドライバーとしてまだ息のある蛮野天十郎。しかしその姿はボロボロでガタクタ当然の有様。だが蛮野は意識をベルトに移した身、だからこそデータを再構築し、復活を図ろうとしていた。
『よし、今なら消えかかっているデータの再構築を……』
しかしそれを見逃す詩島剛ではない。
歩行者信号を模した斧――シンゴウアックスを手に蛮野の元へ歩み寄り、シグナルチェイサーをシンゴウアックスに装填。
【マッテローヨ!】
という音声とともにレッドランプが発光、エネルギーチャージが開始される。
『待て!待つのだ剛!』
これに慌てたのは蛮野だ。それを見て逃げようと必死にもがくもベルトであるため動くに動けない。
『い、偉大な私の頭脳をこの世から消してはならない』
情けなく命乞いをする蛮野。今までやってきたことへの謝罪は一つもなく、あくまでも自身のために命乞いをする。どこまでも哀れで救えない男の姿がそこにはあった。
【イッテイーヨ!】
音声ともにシンゴウアックスのグリーンランプが発光し、エネルギーチャージが完了したことを告げる。
『剛!』
「いっていい…ってさ」
『待ってくれ!剛ォオオ!待て!落ち着け、やめろぉ!」
振りかぶられるシンゴウアックス。
『やめろ!剛!あぁ…ぬぁあああああ』
ガタガタと震え、もはやただ絶叫するだけの蛮野の姿はひたすらに惨め。
そしてついに、諸悪の根源へとシンゴウアックスが振り下ろされた。
――ぬぉおおおおおおおおおおおおおおぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!
こうしてバンノドライバーは砕け散り、蛮野天十郎は死を迎える……はずだった。
蛮野の作りだした最高傑作たるシグマが倒されたその数時間後、特殊状況下防衛センターの駐車場にて蠢くモノがあった。
それはバンノドライバーの残骸。そう、直撃したシンゴウアックスの一撃は僅かながらに中枢部から外れていたのだ。ために、蛮野は意識が段々と薄れてゆく中で生き延びようと自己修復プログラムを走らせ必死に足掻く。
『ワ……わタ……シ…………まダ…………オワら………………』
ひび割れた声を出しながら自身のパーツになりそうなものを集めるその姿のなんと醜いことか。この時蛮野の心の内を占めていたのは、唯々生き延びたいという浅ましい願望。――そして自信を破滅に追いやった者達へのどす黒い復讐心。
『くリ……む……は……ート……とくじ……ョウカ…………ソシテ……剛!実験材料の分際で……よくもこの私を!必ずこの報いを――!!』
復讐心のままに吠える蛮野。しかし悲しいかな、熱くなったことで回路の一部がショートし煙を上げて沈黙してしまう。このままでは復讐どころではないと悟り、万全の状態になるまでは大人しくしていようと前向きに後ろ向きなことを考える。最低限単独で動けるまで回復さえすれば動力源たるコア・ドライビアが半壊状態とはいえ、辛うじて自己修復が可能な以上、逃げ続けることなどは実に容易いのだから。
その後数時間を費やし何とかしてバックルとしての体裁を整えた蛮野であったが、前触れもなく現れた光る鏡のようなものに吸い込まれ、この地球上から消失した。
ところ変わり、ここは地球とは異なる世界ハルケギニア。そこに存在するトリステイン王国のトリステイン魔法学院。ここでは概ねティーンエイジャーの貴族の子弟に対し、魔法をはじめとしたメイジとして必要な教育を行なう教育機関である。
学院を覆う外壁の外にある平原に生徒たちと多種多様な生物がピンク髪の少女を遠巻きに見つめていた。度々少女の付近から爆発が起こり、彼らは辟易としているようだ。
ピンク髪の少女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。非常に長たらしい……もとい実に貴族的な名前である。
ルイズはそれらの視線を、色々と小さな体に受けながら呟く。
「また失敗……ね」
肩を落として落ち込む彼女を宥めるように近寄るのは、中年の冴えない男性教師ジャン・コルベール。今日も禿げた頭が陽光を反射して眩しい。
「ミス・ヴァリエール、大丈夫です、次はうまくいきますよ」
「……それ、何度も聞きましたミスタ・コルベール」
「は、ははは。続けてください」
半目で見てくるルイズから、誤魔化すように笑いながらコルベールは生徒たちの輪に入っていく。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール――」
彼女が今行なっているのは使い魔召喚の儀式。使い魔とはメイジにとって一生のパートナーとなる存在であるため、非常に重要な授業でもある。
もっとも、召喚呪文サモン・サーバントを失敗することがほとんどない、または数回やって成功するような簡単な呪文なため、この授業はただの第二学年に進級するための通過儀礼なのである。
またしても爆発。ちなみに、ルイズはこれで都合二十三回目の失敗である。そう、彼女は魔法が使えないのだ。成功率が低いとかそんなレベルではなく、全ての魔法が失敗する。故に『ゼロのルイズ』という蔑称を与えられている。
「こうなったら!成功するまで何回でもやってやるわ!!」
「……あぁ~、ミス・ヴァリエール。非常に言いづらいのですが、私も他の授業もありますので次で最後にしましょう」
振り上げられた手から杖が滑り落ちる。
「次で最後……最後……落第……退学……実家……」
「えっと……あの?」
「やってやるわよ…………成功させりゃいいんでしょ!?」
「いや、あの投げやりにならなくても補講の時間くらいは取れるよう掛け合いますから……」
コルベールがそう付け加えるも……。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール――」
なかば自暴自棄になった彼女はそんなもの聞いちゃいねぇとばかりに、「これに失敗したら退学」という背水の陣で呪文を唱え始める。
「――宇宙の果てのどこかにいるわたしの下僕よ!!」
独自性溢れるも、最低限のルールにのっとった詠唱が紡がれる。
「光り輝き、気高い最強の使い魔よ、わたしは心より求めるわ!我が導きに応じなさい!!」
万感の思いをのせられ最終節を迎えたその呪文は完成する。杖先に直視するのが辛いほどの光が集まり、そして……――。
今までのものとは比べ物にならないほどに大規模な爆発が巻き起こる。それが収まるとともに姿を見せたのは、うつ伏せに倒れた一人の少年。
呪文を成功させたことに喜ぶルイズだったが、待てども待てどもピクリとも動かない少年に怪訝そうな顔をする。
ゼロのルイズが呪文を成功させたことに驚きの声を上げていた生徒たちも静かになっていき、誰が小さな声で呟いた「ゼロのルイズが人を殺したぞ」という言葉。
それは波のように伝播し、騒ぎ出す生徒。
「静まりなさい!私が確認しますのでくれぐれも静かにお願いします」
コルベールの一声で静まり返る広場。それをを確認し、杖を構えながらじりじりと少年に近寄り足で仰向けに転がす。
「……彼は寝てるだけのようですね。さぁ、ミス・ヴァリエール続きを」
「え、でも」
惚けた声を上げるルイズは、ちらりと召喚された人物を見る。
幸せそうな顔で眠る彼の腕が抱えているのはタブレット型のPC。彼女達ハルケギニアの住人からすれば理解不能の品物である。
――なんだか、すっごい馬鹿そう。涎も垂らしてるし……。こんなのにハジメテを捧げるなんて……。
第一印象は最悪。本当にこんなのを使い魔にしないといけないのかとコルベールに抗議の視線を向けるも、彼の視線は少年の抱えている物に向けられていて気付く様子もない。
退学になるよりかはマシ……いや相手は平民かもしれないからノーカンと、溜め息をつきながら使い魔との契約を結ぶコントラクト・サーバントの呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
少年に口づけを落とすと、少年の左手の甲に文字が浮かび上がってくる。
「あついっ!?いてええええええええ!!」
あまりの激痛に飛び起き、熱を持った左手を押さえながらのたうちまわる少年。
痛みはすぐに引いたのか、どっかりと座りこんで荒い息をつきながら周りを見てギョッとした表情を浮かべている少年に、ルイズが声をかける。
「ところで……あんた誰?」
「俺?俺は平賀才人」
「ヒラガサイト……変な名前ね。まぁいいわ、これからよろしく頼むわね――わたしの使い魔さん」
「は……今なんて?」
才人は、一瞬何を言われたか理解できずに問いかける。
「言い方が悪かったのかしら……?わたしがご主人様で、あなたは下僕。これで理解できるかしら?」
「お、おう」
この時初めてルイズの姿を見た才人は言葉を失った。やや吊り目がちな鳶色の瞳に筋の通った美麗な鼻筋、艶々とした唇。体のラインも細身で実にスレンダー。かと言って子供体型という訳でもなく、最低限の胸の膨らみや腰のくびれが見て取れる。こんな時に自分の語彙の無さが嫌になってくる才人。そう……有体に言えば才人は彼女に見惚れてしまっていたのだ。あまりに現実離れした人形じみたその姿に。
そして、いきなりの下僕宣言にも思わずうなずいてしまう。それは最近の日本で不可解な事件が立て続けに起こって感覚が若干ながら麻痺していたのと、彼女の顔が何故か今にも泣きだしそうなものに見えたからか。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「ルイズ・フラ……なんだって?」
純粋な日本人である才人にとって、彼女の名前はひどく覚えづらいものらしい。
「そうそう。わたしのことは、ご主人様と呼びなさい」
「わかったぜ、ルイズ……痛ッ!?」
無言でサイトの頭を平手で叩く。才人には、なぜ叩かれたのか理解できない。だけどもルイズが何故か不機嫌そうになっている、ということだけは理解できた。
「……はぁ、行くわよサイト」
座り込んだままの才人を無視し、ルイズは学院へと歩き出す。
「おい。置いていくなよ」
才人は立ち上がり、全身に付いた草を軽く払うと小走りでルイズを追いかける。無論、最近買ったばかりのタブレットPCを落とさないように、腕に抱えて。
学院にある女子寮、その自分の部屋のドアを開けたルイズは、机に積み上げられた本の山と立てかけられた一冊のページが捲られているのを務めて無視するとベッドに腰掛ける。
「まずは何から話そうかしら……。あ、座ってもいいわよ」
小首を傾げながら考えを巡らせるルイズ。才人は部屋の片隅に藁束を見つけ、それに嫌な予感を感じつつもその上に腰を下ろす。
「使い魔っていうのは主人と視界を共有できるらしいのよ」
目を閉じ眉根を寄せ、数秒ほどで目を開け溜め息をひとつ。
「……だめね。ところでサイト、わたしを守れる?使い魔は主人を守ることも仕事のうちなんだけど」
「まぁ……喧嘩程度ならなんとか」
「そ、ならあんまり期待しないで置くわね」
そのセリフに才人はひどく男として傷ついた。だけどもあまり言い返せないのも事実。痛いほどの沈黙が訪れる中、才人は非常に気になっていたことを問う。
「あのさ、机の上の本なんだけど――なんで勝手にページが捲られてるんだ?」
それを耳に入れたルイズの顔は筆舌に尽くし難いもので、ひどく言いよどんでいた。
「えぇと……その、アレよ。魔法的な何かよきっと」
「……きっと?」
立ち上がり、ルイズからの静止の声を無視し本の向こう側を覗き見ると、ガラクタにしか見えないベルトらしきものが本を読んでいた。
『ふむ……
「……魔法的な……何か?」
明らかに知性ある存在であることに驚き、思わず声を漏らす。
「んんっ!紹介が遅れたわね。こいつはバンノよ!」
つかつかと机まで歩み寄ると、バンノと呼んだガラクタを掴み上げる。
「ほら、自己紹介しなさい」
『
「えっ……と、よろしくお願いします蛮野さん」
こうして、ひとつの物語にエンジンがかかった。彼らはどのような
Q.なんかさらっとヘルヘイム侵食してるんですが?
A.仕様です。映画フルスロットルで分かりやすくユグドラシルタワーが見えたので。
Q.コア・ドライビアってなんぞ?
A.詳細不明(のはず)。本作では、非常に小型のエネルギー発生装置として定義しております。なにせシフトカーにも使われているらしいので。
Q.蛮野なんでスペアベルトもしくは人格のバックアップ用意しなかったん?
A.天才ゆえの慢心じゃないの。本編中でも「データの再構築」とかほざいてたので、生半可なダメージだと修復できるものだと思った結果が本作です。