ゼロの使い魔~逝ッテイーヨされた天才科学者~ 作:ゴルドドライブ様
『ギーシュ二股騒動』から数日後。騒動の舞台となったヴェストリの広場に出来上がったクレーターは埋め立てられ、学院本塔にロイミュードが突き刺さった際の傷にも応急処置がなされ、まるで何事もなかったかのように魔法学院は日常を取り戻した。
騒動の当事者の一人である平賀才人も例外ではない。散々痛めつけられていた彼であるが、水の秘薬を用いた魔法による治療を受けたことで、たったの数日寝込んだだけで元の健康な姿を取り戻したのだった。
そして今日も使い魔の仕事として、
対するシエスタは、才人に色々入り混じった複雑な感情を抱いている。それは使い魔になってしまった彼への憐憫の感情と、いやに戦い慣れていて傷だらけでも戦い続けた彼へ感じてしまった畏怖、それに加えほとんど見かけることのない黒髪黒目から何故か懐かしさを覚えたのだが、気のせいだろうと思い抱いた疑問を頭の隅に追いやった。
互いに無言のまま、衣服を手洗いする音だけが辺りに響く。朝も早く、学院の生徒の多数はまだ夢の中。才人の洗濯物の、軽く数倍はあるそれらを洗い終えると、手伝いをしようかと横を振り向き硬直した。
「な!?」
「ん?」
なぜなら、上半身の服を脱ぎ出す才人がいたから。思わず声を上げてしまい、声に反応して振り向いた才人と目が合った。
「な、ななななにしてるんですか!?」
「なにって……これも洗わないと」
挙動不審な様子で赤面しながら問い詰めてくるシエスタに対し、才人は脱いだ服を見せつける。飛び散った血の跡が点々と生々しく残ったそれは、今は傷痕一つ残っていない才人が戦っていた証拠に他ならない。
「この血痕……落ちるかなぁ」
そう呟き、鼻歌を歌いながら服を洗い始める才人にシエスタは何も言えなくなってしまう。自業自得……と言い切ることは容易い。だけども彼が怪物と戦ってくれたおかげで、今こうしていられる。被害者であり加害者の生徒も目を覚まして元の生活に戻っている。結果でいえば最上のものなのだろう。
学院の厨房を預かるマルトーが才人のことを『我らの剣』と言っているのは、彼がそう呼ばれても図に乗ったりしない人格だとなんとなく悟ってのこともあるだろうが、やはり自分の作った料理を食べてくれる生徒が無事であったことも関係しているのかもしれない。マルトーは貴族嫌いではあるが、料理人なのだから。
そんなことを思いながら才人の引き締まった肉体を、顔を赤らめてガン見するシエスタ。
父と弟の体しか見たことのないシエスタがはじめて見る同年代の男の肉体は、思春期真っ只中の彼女には刺激が強すぎて最早毒だろう。
「だーびーえっー、フフンフーフ――」
「あのサイトさん、わたしもう行きますね」
「ん?おぅ」
「厨房まで来てくだされば賄いもありますので、ではまた」
言いたいことだけを言ったシエスタは洗濯かごを抱えると、そそくさと立ち去っていった。
その後一時間ほど、服の血痕と格闘を続けた才人であったが、結局諦めてルイズの部屋に戻るのであった。
才人が洗濯物と悪戦苦闘していた一方その頃、ルイズの部屋では。
『ルイズ嬢起きたまえ。ルイズ嬢起きたまえ』
「うへへ……わたしは偉大なメイジ、ルイズ・フランソーズよー」
机の上でバイブレーションしながら軽快な音楽――ドライブが変身するときのアレ――を流す、目覚まし時計と化した蛮野天十郎がそこにいた。
一体どんな夢を見ているのか、余程夢見がいいらしく全くと言っていいほど目覚める気配を見せない。
『チッ……!ルイズジョウオキタマエ、るいずじょうおきたまえ』
「うぅん……もうすこし」
寝言に殊更やる気をなくした蛮野。勿論やりたくてやっている訳ではないため、非常にやる気なさげに目覚まし時計を続ける。「寝起き悪いから朝は起こしてね」と、学院に入学したその日に頼まれた仕事。当然ながら蛮野は抗議した。だけども杖を突きつけられながら
「あんたの服と武器を買いに行くわよ」
目覚めるなりルイズはそう言った。髪はボサボサで寝巻姿のため、実に締まらない。ご主人サマとして威厳を出そうとベッドの上に立ち上がっているのだが、年下の子が見栄を張っているように見えてしまった才人は近寄って頭を撫でる。誠に失礼ながら、妹がいたらこんな感じなのかなぁと思いながら。
「ちょっと!?なんで頭撫でてんの!」
「あ、つい」
「『つい』ってなによ、『つい』って!もう少しご主人サマを敬いなさい!」
荒い息を吐くルイズであったが元の用件を思い出す。
「とにかく、今日は『虚無の曜日』だから王都まで行くわよ。馬に乗ったことは?」
「いや、ないんけど……」
とにかく、才人としては願ってもないこと。血痕が落ちなくてどうしようかと思っていたところだったから。
ハルケギニアは一週間八日、『虚無の曜日』は休日のことである。
閑話休題。
「さ、行くわよ!」
着替えていつも通り学院の制服を身に纏ったルイズの後を追って、学院を後にした。
馬に乗ること二時間、ルイズと才人、ついでに蛮野は何事もなく王都トリスタニアに到着した。道中については特筆すべきこともないため割愛させていただく。
「あぁ……尻が痛い」
「……大丈夫?」
『大丈夫かい』
そこには尻を押さえながら歩く才人の姿が。なんということはない、はじめて馬に乗って使い慣れない筋肉を使った結果とだけ言っておく。
「……で?どこ行くんだ」
物珍しげに、周りを見渡しながら歩く。
「そうね……。まずはあんたの服の注文をしに行って、それから武器屋にでも――」
『ルイズ嬢』
話を遮り、ルイズに話しかける蛮野。なにか火急の用でもあるのだろうか。
「なによバンノ」
『なに、スリから財布を掠め取った』
さらっと、とんでもないことを言う蛮野であったが。
「そんなくだらないことで、いちいち呼ばないで」
「はっ!?」
冷静に返すルイズに、才人の頭はもう混乱の真っ只中。この一人と一本は一体なんの話をしているのか。今さらっとスリから財布を掠め取ったとか言わなかっただろうか。もしかしなくて、この一人と一本はかなりの大物なのではないだろうか。そう思うも口には出さない。流石は空気を読むという特殊技能を持つ日本人。
ルイズもルイズで、今日はなんだか人通りが多いと感じながら歩く。ただでさえ人で混雑している通りが常より歩きづらい。
そんな時だ。通行人の話が聞こえたのは。
「魔法衛士隊の隊員を騙った阿呆が捕まったらしいぜ」
「まじかよ。今時はそんな奴までいるのか」
「いくら春だからって頭沸きすぎだろ」
「チェルノボーグ監獄送りって聞いたぜ?」
「お?そろそろ時間みたいだぞ」
通行人が一斉に一つの角方向に振り向く。つられて振り向くと、周囲を兵士で囲まれた馬車が向かってくるところだった。
そして馬車が通過する瞬間、窓から外を見る髭モジャの罪人と目が合った気がした。
「そこにいるのはまさか!?ルイズぅぅうううわぁああああああああ――」
「うるさい黙ってろ!」
「ゲピェ」
唐突に騒ぎ出す罪人とそれを気絶させる兵士。世も末だと思いながら服飾店に歩みを進めるのだった。
服飾店から出た才人は疲労困憊といった様子。対するルイズは、今にも倒れそうなサイトを脇から支えながらである。
才人に何があったかは言うまでもない。途中まではごく普通に採寸されていたのだが、店の服飾職人がハルケギニアでは有り得ない現代地球の服飾技術で縫製された大手量販店の服に目を付けてしまったのだ。採寸の時点で気疲れを感じていた才人にとっては地獄の質問地獄がはじまったのだ。どの市場手に入れたのか?幾らで買ったのか?などと延々と続けられる質問に誤魔化し誤魔化しの回答を続けるのはまさに精神的拷問。馬鹿正直に答える訳にはいかないため服飾職人が諦めるまでその質問地獄は続いたのだった。
「ちょっと、本当に大丈夫なの?」
「おぉ……大丈夫大丈夫」
ふらふらと歩く二人がたどり着いたのは武器屋。所謂裏通りに位置するその店は、今にも潰れそうなほどにボロボロの外見を晒している。ルイズも「あれ?本当に此処なの?だけど掘り出し物が有りそうな雰囲気はあるわね」と言っていることからどれ程のものなのかは想像がつくだろう。
軋む扉を開け店に入る。
「らっしゃーせ……――ってこれこれは貴族サマ!なにか御所望の品でも?」
やる気なさげな店主であったが、貴族の象徴であるマントを見た途端に表情を変え、胡散臭い笑みを浮かべながら揉み手ですり寄る。
「わたしの使い魔……じゃなくて従者に持たせる武器を探してるのよ」
ルイズは店主の余りの掌の返しようにドン引きしながらも用件を伝える。人間が使い魔というのは前例がほぼないため、従者とわざわざ言い直してまで。
「へっへっへ。最近じゃあ『土くれのフーケ』っていう泥棒が貴族サマの溜めこんだお宝を盗んでるって話で、従者に武器を持たせる貴族サマが増えてるんでさぁ。さてさて貴方サマの従者は……あまり力があるようには見えないですねぇ」
話をしながら、この従者に相応しいと思われる武器を頭の中で選別していく。この体つきなら大剣は持っていても使えないだろうからレイピアが良いだろうか。見栄えもいいし装飾過多な品が多いから、この魔法学院の生徒には粗悪品でも高く売れるだろう。わざわざ学院にまで従者を連れているのだから相当の見栄っ張りで金持ち貴族なんだろうと頭を回転させながら。
「あっ言うの忘れてたけど、こう見えても『メイジ殺し』だから。……いい加減なモノを選んだら、分かってるわよね?」
「も、もちろんでさぁ……この従者サマに一番合う武器を選んでみせますよ」
『メイジ殺し』とは、魔法を使わずに己の身体能力と技術のみでメイジを打ち倒すことのできる存在に与えられる称号のようなものである。平民視点で『メイジ殺し』を分かりやすく言うならば、メイジという人外の存在をブチ殺せる平民である。
だから店主は焦る。この魔法学院生徒が言っていることが本当かどうか分からないから。だけど言われてみれば口では言い表せられない凄味のようなものを感じ取れる。もっともそれは店主の勘違い。見事に口車に乗せられた形である。
そしてルイズの言っていることも強ち嘘ではない。実際に、学院生徒とはいえドットのメイジを打ち倒したのだから、メイジ殺しを名乗っても問題はないだろうとの判断である。
ルイズと店主との間で駆け引きのようなものが行われるなか、当の本人はというと……。
「……えぇっと、これは両刃の直剣。構造的に脆い粗悪品、と」
『なんとも興味深い……武器の扱いが達人級になり、さらに鑑定も可能なのか』
勝手に店内の武器を手に取り、自分に合いそうなものを探していた。
ついでとばかりに才人の腰に引っ付いている蛮野は、才人の持つ能力についての考察をしていた。
「なら……これならどうでしょう!かの有名なツェペー卿の作品である大剣です。なんと鉄を斬ることが可能!いつもならお値段五〇〇〇エキューのところ……なんと四五〇〇でご提供致します」
「うぅーん……なんだかこれも装飾過多じゃない?」
「いやいや、元の値段でも赤字覚悟……!それがさらに安くなるんです……!これはお買い得……!今しかない……!」
「そうねぇ……そこまで言うなら……――」
『ハッ!そんな大層な武器がこんな寂れた店にあるわきゃねえだろ。法螺吹くのもいい加減にしやがれ』
「黙ってろデルフ!今丁度うまい商談が纏まりそうなんだからよぉ!!」
商談を続けるルイズと物色を続ける才人たちに聞こえたのは聞き覚えのない声。店主だけは、その声の主に怒鳴り返している。
何事かと店主と言い争ってる声の主を探すと、店の一角『お買い得品コーナー』銘打たれた、剣が詰め込まれた樽から声が聞こえていた。
才人が声の主を探し樽を漁ると、鍔を鳴らしながら喋る錆び塗れの片刃の大剣があった。
喋る剣という、
『んだよ、この餓鬼……いや、おめぇさん使い手か!なら俺っちを買え』
「ルイズー!俺この剣が気に入った。見た目だけ立派な剣に比べたらこの剣の方が百倍頑丈だ」
『才人くん正気かい!?いくらこの店の品揃えが悪く、装飾過多な飾り剣が多く、打ち合わせただけで折れそうな得物が殆どとはいえ、頑丈さだけで選ぶなんて早計過ぎはしないかね!?』
漫才染みたやり取りを繰り広げる一人と一本。出会って間もないというのに息ピッタリ。店主は崩れ落ちている。
「あんたの意見を尊重するわ。見せてもらった剣も、剣の値段というより宝石の値段と言った方がピッタリな品ばかりだったもの!……で、これは幾らなの?」
「……これなら、二〇〇になりまさぁ…………」
「ちょっと高くないかしら?こんな錆びだらけの剣が二〇〇だなんて……」
「ぐっ……、なら投げナイフを三本にコイツの鞘を付けましょう。コイツが煩いときは鞘に入れとけば声が聞こえなくなりますので」
「…………まぁいいわ」
どこか納得していない様子のルイズであったが、元々今回は勉強させてもらうつもりで強気な態度で武器の購入に臨んでいたのだ。だから懐から取り出したエキュー金貨二〇〇枚が詰められた袋を店のカウンターに置く。
袋の口を開け勘定を始める店主を横目に才人を見る。
『よろしくな相棒。俺っちはデルフリンガー様だ』
「分かったぜデルフ。俺は平賀才人だ」
既に意気投合したのか、購入した剣と自己紹介をしている才人を引っ張って店から出るルイズなのであった。
おまけ。キュルケさんとタバサさん。
「タバサ、いる!?」
大声を上げながら部屋に入ったのはキュルケ。ゲルマニアからの留学生である。
部屋には鍵がかかっていたのだが、『アンロック』の魔法を使っての侵入である。無論校則違反であるであるが、恋する乙女に常識は通用しないのだ。
そんな彼女が恋しているのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール――以下、ヴァリエールと呼称する――の使い魔、ヒラガ・サイト。
彼女たちのヴァリエール家とツェルプストー家は国境で遮られているお隣り同士。戦争の際は真っ先に戦う立場にある。
そんな家同士に歴史があるもので……、ヴァリエール家はツェルプストー家に恋人を寝取られ、ツェルプストー家はヴァリエール家の恋人を寝取るという筆舌に尽くし難い因縁があるのだが今回は割愛。
キュルケはサイトにアタックをかけようとしたのだが、既に部屋にいなかったため、友人のタバサに助けを求めた訳である。
キュルケがタバサに訳を話すと、凄く嫌々と頼みを聞いて自身の使い魔である竜を呼び、二人して背に乗るとヴァリエールとサイトの乗った馬の捜索を命じ、竜は空を飛んだ。
王都に辿り着いたキュルケとタバサの二人は、ヴァリエールと才人の二人を尾行。武器屋に入った二人が出てくるのを待ち、キュルケとタバサは武器屋に入る。
店内では、店主が泣きながら酒を飲んでいた。「デルフ……デルフゥ……」と言っていることから、嫁にでも逃げられたのだろうとキュルケは判断した。
そこからは早かった。ちょっと肌を見せるだけで大げさに反応し、はじめは五〇〇〇と言っていたツェペー卿作の豪華な大剣を二〇〇〇まで値切りそれを購入。ホクホク顔で店を後にした。
そしてタバサは友人の浮かれ様に溜め息を一つ吐くと、読んでいる本のページを捲り後を追うのであった。
【仮面ライダーディケイド 作者が思う3つのアレな点】
ラ イ ダ ー 裁 判(龍騎)←作品の魅力である人間としての欲望&絶望感が消え失せた。
不死の存在であるアンデッドが爆死(剣)←ダディェ……殺したいほど憎い井坂を封印せざるを得なかった葛藤。
……通称遺影フォーム←コンプリートフォームより覚えやすい訴訟。
注:これは作者個人の感想であり、アンチではありません。不快に思われた方には個別で謝罪致します。
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