【完結】―僕と2人の幼馴染の遠い記憶―   作:kielly

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今回の話は

主人公の記憶喪失になったこと、彼のコンプレックスについてのこと

この2つをメインに書いています。

申し訳ないですが、希、穂乃果以外のμ'sメンバーは今回も出ません。

しかも、この2人も過去の話でのみ出てきます。

あと、多少暴力的な描写がありますので、気を付けていただきたいです。


長く続いている真面目編も、そろそろ終わりに近づいてきました。


9話 喪失の理由

「なに、これ」

 

突然、アルバムから落ちたその写真には

制服姿の穂乃果が、病衣姿の僕の頬にキスをしているところが写されていた。

 

あの穂乃果からの頬キス、すごく照れくさくなる。

それを覚えていないことがすごく悔やまれるよ・・・

 

でも、なぜだろう。

 

僕はこの写真にいくつかの疑問を覚えた。

 

このアルバムの写真たちはどれも幼いころのものばかりなのに

どうしてこの写真だけ、成長した僕らの写真が写っているのか。

 

なぜ穂乃果が僕にキスをしているのか。

 

なぜこの写真にはのんちゃんはいないのか。

 

そして

 

 

なぜ、僕は病衣姿なのか。

 

 

病衣姿。

病院に入院していたのだろうか。

そしてそのことは、記憶を失ったことに関係があるのだろうか。

もしくは別の理由が?

 

いつもの頭痛もおこらない

思い出そうとしてもモヤモヤするだけ。

 

考えるだけ時間がもったいないと思って、またアルバムをめくっていく。

他にも成長した僕らが写ってる写真がないか、そう思って。

 

しかし

 

「ん~、ないかぁ」

 

見つけられなかった。

疑問は深まるばかり。

 

のんちゃんに会う前に、お母さんに穂乃果のことを聞いてみたが、隠された。

でも、お母さんから話を聞くことができれば、穂乃果のことを思い出せるかもしれない。

無理やりにでも、聞きだしてみようかな。

 

「お母さん、ちょっといいかな?」

「えっ?え、えぇ、いいけど」

「いきなりなんだけど、僕さ、記憶失ってたんでしょ?」

「っ!?どうして、そのことを?」

「アルバム、見つけたんだ。それを見てたら、ね。」

「・・・そう、見つけちゃったのね。」

 

お母さんが少しの動揺を見せたのち、落ち着いて様子で僕を見る。

 

「そう、あなたは記憶を失っちゃってたのよ。」

「うん、分かってる。だから、さっきのんちゃんに会いに行って、謝ったんだ。」

「・・・じゃあ、すべてのことを思い出してしまったのね?」

「ううん、実はそのことで話があって」

 

今なら、穂乃果のことを聞き出せるかもしれない。

チャンスかな。

 

「穂乃果のこと、まだ思い出せないんだ。何でもいいから、穂乃果のこと教えてくれないかな?」

「えっ?」

 

困惑した様子で、僕を見つめる。

 

「穂乃果ちゃんのことはまだ思い出してないの?」

「うん、のんちゃんから話聞いたんだけど、どうしても思い出せなくて。」

「そうなの・・・。なぜかしらね」

「分からない。でもね?」

 

「僕と穂乃果には大切な思い出があること、僕が入院してたことがあったってことは知ったよ?」

 

「っ!?」

 

さっきより、動揺している。

やっぱり、何かあったんだろうか。

 

「ねぇ、なんで僕は入院してたの?」

 

そう尋ねると、お母さんは悩むような表情を見せる。

 

 

「お願い。どうしても思い出さなきゃいけないんだ。そして、穂乃果に謝らなきゃいけないんだ。」

 

 

「もう一度、あのころのように3人で笑いあいたいんだ!だからお願いお母さん!」

 

 

思いの丈をぶつける。

 

最後まで悩むような表情を見せていたが、やがて

 

「あなたには、昔のこと、記憶を失った原因を話す必要がありそうね。」

 

口を開いた。

 

「正直、この記憶は思い出させたくないの。だからアルバムも隠していたつもり。でも、あなたは見つけてしまった。そして、希ちゃんや穂乃果ちゃんのことを思い出そうとした。自分で昔のことを思い出そうとした。」

 

一呼吸。

 

「今からあなたに話すことは、あなたにとってすごくつらいことなの。もしかしたら、思い出したことを後悔するかもしれない。でも、あなたが必死になって思い出そうとしてることが分かった。大切なお友達のために必死になって。だから、私は話すわ、昔のこと。穂乃果ちゃんは記憶を失った原因自体には関係ないけれど、入院したことに関しては無関係ってわけでもないの。だったら、何かしら思い出せるかもしれないからね。」

 

思い出させたくない、そう言った。

でも、話を聞けば、穂乃果のこと、そして昔のことすべてのことを思い出せるチャンスかもしれない。

今じゃなきゃ、話してくれないかもしれない。

だから

 

「うん。覚悟は、できてるよ。」

 

聞きたい。

 

「本当に、いいのね?」

「もちろん。」

 

聞かなきゃ、いけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ白河君!この髪飾り、つけてみて?』

 

『え?でもこんな可愛いの、僕に似合うかなぁ?』

 

『絶対似合うよ~!ね、だからつけてみて?』

 

『う、うん。・・・どうかな?』

 

『わぁ!すっごく似合ってる!かわいいっ♪』

 

『えへへ、そうかな♪』

 

 

 

『白河の奴、最近調子乗ってるよな?』

 

『あぁ。男のくせに女みてえな顔しやがって、女子に好かれようなんてさ。』

 

『だよな。・・・ちょっとしめてやるか』

 

 

 

『白河君っ!次これつけてみて♪』

 

『可愛いねこれ、ちょっと恥ずかしいなぁ』

 

『白河君ってほんと可愛いよね~♪』

 

 

『おい白河』

 

『え?』

 

『ちょっと、俺らについてこいよ。』

 

『え?うん、わかった・・・じゃあ、ちょっと行ってくるね?』

 

『うん、行ってらっしゃい♪』

 

 

 

『どうしたの?こんなところに呼び出して』

 

『おい・・・てめえ最近調子乗ってるよなぁ?』

 

『え?そんなことないと思うけど』

 

『はぁ?調子乗ってんじゃねぇよ!』

 

バキッ

 

『がはっ!?っ、いきなり・・・殴らないでよ』

 

『はっ!そうやってまた女ぶってんのかよ、気持ちわりいんだよぉ!』

 

『っ!?』

 

ドガッ

 

『うぐっ!ぁっ』

 

『てめぇみてえな女々しいやつなんかいらねえんだよぉ!』

 

『うぅ・・・ぁ』

 

『・・・は?もう気失ったのかよ。身体も女の子ってわけかよ!ははっくだらねえ!』

 

 

『おいっ!そこでなにやってんだお前ら!』

 

 

『ちっ、先生のお出まし、ですかい。』

 

 

 

 

 

 

『先生っ!瑞希は!?』

 

『お母さん、落ち着いて聞いてください。』

 

『・・・はい?』

 

『息子さんのことですが、物理的なショックにより、記憶に障害がある可能性があります。最悪の場合、記憶喪失、という可能性も。』

 

『えっ、そんな・・・』

 

 

 

ガラッ

 

『おばさん!』

 

『あ、希ちゃん・・・お久しぶりね。』

 

『みーちゃんが倒れたって本当ですか!?』

 

『・・・えぇ。今、寝てるわ。』

 

『みーちゃんに、何があったんですか?無事なんですか?』

 

『命に別状はないわ。でもね』

 

『え?』

 

 

 

『そんな・・・ことが・・・』

 

『えぇ。担任の先生が気づいてくれて、救急車をよんでくれたらしいんだけど・・・』

 

『物理的なショックで、記憶喪失の可能性・・・』

 

『えぇ。どうやら、容姿のことでいじめにあったらしくてね。』

 

『容姿・・・』

 

『精神的なショックも大きい、そう、医者の先生がおっしゃってたわ。』

 

『・・・許せない。』

 

『希ちゃんが、気にすることではないわ。』

 

『でもっ!』

 

『希ちゃんは何も悪くないじゃない。悪いのは、そんな風にいじめられてしまう子に産んでしまった私よ。』

 

『そんなことっ!』

 

 

ガラッ

 

『はぁはぁ・・・お母さん、希ちゃん!みーくんは!?』

 

『穂乃果ちゃん・・・みーちゃんはそこに・・・』

 

『あ・・・寝てるんだ・・・無事なんですか?』

 

『ええ。さっき希ちゃんにも言ったところだけど、外傷については問題ないわ。』

 

『外傷については、って?』

 

『瑞希、もしかしたら記憶喪失になってるかもしれないって。』

 

『えっ・・・!?ど、どうして!?』

 

『実はね、学校で『階段で足滑らして、頭を強く打っちゃったらしいんよ』・・・希ちゃん?』

 

『頭を打って記憶喪失。そんな、ことって。』

 

『うちも信じられへんのやけどな?ほんとのことらしいんよ。』

 

『っ・・・じゃあ、昔のこととか、忘れてるかもしれない、そういうこと?』

 

『そういう、ことや。』

 

『そんな・・・ことって・・・っ・・・!』

 

 

 

『んっ・・・』

 

 

 

『みーちゃん!?』『みーくん!』『瑞希!』

 

『んぁ、あれ、母さん。』

 

『起きたのね。体調はどう?』

 

『あぁ、悪くはないよ。それよりさ』

 

 

『そこの女子2人は誰?俺の知り合い?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・ぁ・・・」

 

「瑞希!大丈夫!?」

 

あぁ、思い出した。

 

そうだ、そうだったんだ。

 

僕は、女の子のような容姿がコンプレックスだなんて思ってなかったんだ。

むしろ、チャームポイント、そう思ってたのに。

 

あの日、クラスの奴に暴力振るわれて、容姿のことを責められて。

 

 

気づいたら、記憶をなくしていたんだ。

 

 

そして気づけば、男らしい言葉を話すようになっていた。

だから僕の口調、一人称、いろんなものが変わったんだ。

 

変わるよう、自分で無意識に行動してたんだ。

 

かわいいだなんて言われないように。

 

 

「・・・お母さん、話してくれてありがとう。おかげで、思い出せたよ。昔のこと。」

 

「・・・そう。ごめんなさい、やっぱりまだ話すべきじゃなかったかもね。」

 

「ううん、むしろ話してくれてありがとう。それとね?」

 

確かに、この容姿のせいで散々な目にあった。

苦しい思いもしたし、幼馴染に寂しい思いをさせてしまった。

 

でも。

 

彼女ら、μ'sに会って。

明るい笑顔に元気づけられて。

外見のことでコンプレックスを抱く先輩と気持ちを共有できて。

 

そして、寂しい思いをさせて、辛かったはずの幼馴染に支えられて。

 

「僕、女の子らしい容姿に産まれて辛かったこともあったけど、今は、そんなことないから」

 

 

「それに、この容姿のおかげでいろんな人と話せたし」

 

 

「ずっと僕のことを思ってくれてた幼馴染2人に出会えてよかった。だからね?」

 

 

「産まれなきゃよかった、なんて思ったこと、1度もないよ?だから、ありがとう。お母さん。」

 

 

「っ!う、うん・・・っ!」

 

 

すすり泣くお母さん。

お母さんにもつらい思いをさせたはず。

お母さんにも、謝らなきゃね。

 

 

でも、まだだ。

 

 

問題はまだ、解決していない。

 

 

穂乃果との大切な思い出。

 

 

これはまだ、思い出せていない。

 

 

 

お母さんに話を聞き終わったあと、時間も遅くなっていたのでそのままベットに横になった。

 

大切な思い出。

 

のんちゃんにも教えていないという、そんな思い出。

 

あの写真に関係があるのだろうか。

 

分からない。

 

どうすれば思い出せるんだろう・・・

 

 

 

気づけば、意識を失うように寝てしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

『こんにちわっみーくん!』

 

『えっ?あぁ、この前の人ですか。どうしたんですか、おひとりで?』

 

『え・・・あ、うん!穂乃果ね、どうしても言いたいことがあってきたの!』

 

『言いたいこと、ですか?』

 

『うん。とっても、大切なことだよ。』

 

『大切な、こと?』

 

『うん、今言いたくて、だから一人で来ちゃったの。』

 

『・・・なんでしょうか?』

 

『あのね・・・』

 

 

 

 

 

「っ!」

 

ガバッ

 

「・・・今の、夢、かな?」

 

病室に、穂乃果が一人で僕のところに来て

 

そこで、何かを言おうとしていた。

 

「あの夢のつづき、見れてたら、思い出してたのかな。」

 

もう少しで思い出せていたかもしれない。

そんな、惜しいところで目を覚ましてしまったようだ。

 

時間を見れば、朝の4時を示している。

μ'sの練習があるまでまだ、時間はある。

しかし、今日の練習から生徒会長が見てくれるはず。遅刻なんて許されない。

このまま起きていようかな。でなきゃ寝坊しそうだし。

 

 

μ'sの練習開始は7時。土曜なのに。すごく早いじゃないか。

でも、それだけ本気なんだろう。

ファンとしては、嬉しく思う。

ましてやその練習に招待されたのだ。嬉しくないはずがない。

 

でも、残りの3時間、どうしよう

・・・たまには、朝早くから散歩、なんていうのもいいかな?

 

 

 

準備を整え、時間は朝の5時。

靴を履き、外へ出た。

 

 

目的はなく。

 

記憶を早く戻して、穂乃果に謝りたい

 

そしてまた、3人で笑いたい。

 

ただただ、そんなことを想いながら、歩き出した。

 

まだまだ寒さが肌を刺す、心までもが冷たくなるような、そんな朝に。

 

 

 

 

 

 

 




今回は主人公の過去メインの話だったので、重い話になってしまいました。
タグの「残酷な描写」というのが保険ではなくなってしまいましたね。

ただ、今回で結構進めることができたので、もう少しで絵里ち、希加入まで進められるのではないかと思います。
予定より長くなってしまいましたが、ようやくですね。




穂乃果ちゃんが幼馴染だったら、どれだけ幸せなことでしょうか

毎日「ファイトだよっ!」なんて言われてたら
その言葉だけで疲れなんて感じないくらいにうごけそうです。

あぁ、尊い・・・ホノカチャン・・・(*・8・*)
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