ついに絵里が加入します。
「じゃあ、いくわよ?」
矢澤先輩の声に、みんなが頷く。
コンコンッ...
生徒会室のドアをノックする
が、反応がない
「・・・ふんっ、いいわ。許可なんか待たずに入っちゃうから!」
少し乱暴に、先輩がドアを開けた
しかしそこには――――
生徒会長の姿は、なかった
鎖からの開放
「絵里ち!?な、なんでや...いつもならここにずっとおるはずなんに...」
いつも生徒会長が座ってる席に、その彼女の姿はなかった。
「のんちゃん、他に生徒会長が行きそうな場所とかないの?」
のんちゃんは生徒会長のことをよく知っているはず。
そう思って僕は、尋ねてみた。
「ん〜?そやね...絵里ちが何もなしに席を立つわけないしなぁ...お花摘みに行ってるんちゃうかな?」
「...それもそうだね、単純にそういうことなのかもしれないし、ちょっと待っててみようか」
しかし、5分待っても10分待っても戻ってくることは無かった。
「ん〜、違うみたいやね」
「μ'sに入ってもらうために来たのに、その本人いないんじゃ意味ないじゃない...」
「・・・のんちゃん、なにか無い?」
「そうやね〜...あとは―――――――」
絢瀬絵里は1人、風も吹かない屋上で空を見上げていた。
しかし風など吹かずとも、彼女の心はすでに吹き荒んでいた。
「・・・・・・」
彼女は思う
この空に浮かぶ雲のように、ただただ何も考えずに流れるだけだったらどれだけ楽だったのだろうか。
この空を自由に羽ばたく鳥のように、何も気にせずに自由にいられたら、こんな自分にならずに済んだのだろうか。
でも、もう遅い
「あぁ――――もし、もしも神様が本当にいるのなら――――」
「私を―――――」
「絵里ち!!!」
風吹かぬ屋上に、暖かな風が吹き始める
「絵里ち!!!」
「希...?そしてみんなも...」
生徒会長が居そうな場所として、のんちゃんが最後にあげたのがこの屋上。
どうやら、正解みたいだね
「絵里ち!お願いがあってきたんや!!」
「・・・・・・」
恐らく僕らが何を言いたいかは分かっているのだろう。無言のまま、僕らを見つめる生徒会長。
そんな生徒会長に、僕らは声を揃えてお願いする。
『 μ'sに入ってください!』
「...っ!」
単純な言葉。
でも僕らが言いたかった確かな言葉。
生徒会長の、顔が歪む。
「絵里ちはアイドル好きなんやろ?また踊りたいんやろ!?生徒会長やからっていつも言ってるけど、生徒会長やから好きな事をしちゃいけないなんて誰も言うてへんはずや!せっかくの学生生活なんやで?それくらい自分の好きにしたらええやん!絵里ちはもう1人で頑張る必要なんてないんやから!」
のんちゃんは自分の思いを伝える。
これは僕らの想いでもある。
"1人で頑張る必要なんてない"
なぜかこの言葉は、僕の胸にも響いた。
「なによ...」
生徒会長が――――――心の内を叫ぶ
「・・・なんとかしなくちゃいけなんだからしょうがないじゃない!
私だって好きなことだけやって!それだけでなんとかなるならそうしたいわよ!
自分が不器用なのはわかってるっ。でも―――――
今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う?」
「え、絵里ち・・・」
大粒の涙を流しながら、それを隠そうともせず、ただただこちらを見つめる生徒会長。
「あなたたちが学校を救うためにアイドル活動を始めたことはわかってる。私と—―――生徒会と同じ考え方をもって行動してるのはわかってる。私だってアイドルが好き、だから私だって踊りたいわよ!!でもっ!!・・・それでもし、この学校の廃校が確定したら?そんなの—―――生徒会長である、私の責任じゃない。」
涙を流して告げる会長の一言は、これ以上になく重たかった。
「絵里ち・・・」
のんちゃんはただただ、見たことないものを見るかのような目で生徒会長を見つめる。
言葉もなく、ただただ見つめる。
やはり、生徒会長は"生徒会長"であることが相当な重みになっているみたい。
でも、答えはやっぱり、単純なんだ。
「絵里先輩、μ'sに入ってください!」
話の内容なんて関係なしと言わんばかりに穂乃果は言う。
そう、そういう単純な言葉でいいんだ
あとは、穂乃果に任せよう――――
「無理よ!!!だって私は生徒会長なんだから!!」
「無理じゃありません!生徒会長だからしちゃいけない、なんて校則はありません!!」
「っ!そうじゃない、あなたたちが失敗したら、誰がこの学校を守れるのよ!?」
「私たちは失敗なんてしません!!!」
「・・・はぁ!?その根拠は何よ!?」
「"失敗すること"なんて恐れてないからです、"成功する"ってことしか考えてないからです!!そして―――――」
「"アイドルが好きだから"です!!!」
「っ!!!」
そう。
"アイドルが好きだから"
そんな簡単なことなんだ。
「で、でも私は生徒会長で、学校を守らなくちゃいけなくて・・・」
「生徒会長って言っても、学校から見たら"ただの一生徒"でしかありません。それに、学校は私たちが絶対に守ります!!!でも!!!そのためには絵里先輩の力が必要なんです!!だからお願いしますっ!!」
『お願いします!』
「っ・・・」
穂乃果の言葉に合わせ、僕らもお願いする。
会長は必死に、一言ずつ言葉を紡ぐ
「い、一度は断ってるのよ・・・?」
「それでもええやん!うちらは絵里ちと一緒に活動したいだけなんやから♪」
「私、こんなに冷たいのよ・・・?」
「そんなことありません!むしろすごく温かい人だと思います!」
「わ、私は生徒会だから、練習にあんまり参加できないかもしれないのよ・・・?」
その言葉を聞いて、僕は、僕なりに導き出した解決案を口に出す
「生徒会長。僕を――――――生徒会に入れてください」
「えっ・・・?」
「みーくん・・・?」
戸惑う会長と、なぜか一緒になって困惑している穂乃果。
でもこれが、僕が僕なりに導き出した"答え"なんだ
「生徒会は実質2人で活動しているようなもの。確かにそのままだと練習に参加なんてしてる暇もないかもしれません。だから、それのサポートをさせてください。μ'sのメンバーのサポートは全力でしたいんです。だって僕は――――――」
「μ'sのファンであり、マネージャー。なんですから。」
マネージャーなら、ファンなら
好きなアイドルグループの応援ならいくらだってやってやれる
そうでしょ?
「ほ、本当に―――――私もアイドル活動してもいいの・・・?」
「もちろんです」
「"生徒会長"だからって、諦める必要はないの・・・?」
「そんなこと誰も求めてません。」
「この学校は――――音ノ木坂は、廃校から阻止できるの?」
「穂乃果が言うんです、だから大丈夫です。」
「本当に私もアイドル――――μ'sに入っても、いいの?」
「もちろんです。だってあなたは、もうすでにメンバーですから。」
「っ!ぅ・・・ぅぁ・・・うわああああああああっ!!」
会長は力が抜けたようにその場にへたり込み、大声で泣き叫んだ。
"生徒会長"という固い鎖に縛られていた1人の少女が、自由を得た瞬間だった。
「ごめんなさい、急に泣き出したりして・・・」
「ふふっ、絵里ちのあんなところ見たの、初めてやで♪」
「えっ!?東條先輩も初めてだったんですか!?」
「うわぁ♪ことりたち、珍しいものみちゃったんだ♪」
「も、もう、やめてよ南さん・・・」
「絵里先輩が本当に入ってくれるんなんて、夢みたいですっ!」
「凛もまだ信じられないにゃ~っ」
「心強いメンバーが増えたわね♪」
「とにかく、絵里先輩が入ってくれてよかったよ・・・もし入ってくれなかったら、穂乃果は・・・」
「そんなことはどうでもいいわ。・・・メンバーに入るんだったら、まずは自己紹介くらいしなさいよ、生徒会長さん――――――"絵里"。」
「それもそうね。ふふっ♪」
「私は、絢瀬絵里って言います。これからよろしくね!」
生徒会長――――"絵里先輩"が加わり、μ'sは9人になった。
前に、"μ's"とは何が元となっているのかを検索したことがあった。
確か、"9人の芸術の女神様"、だった気がする。
絵里先輩が加わって、μ'sは9人になった。
これって、運命なのかな―――――――
「――――、あれじゃだめだよ。結局こうなっちゃったじゃん。」
「ごめん――――。失敗しちゃった。」
「もうっ。まぁ、こういうところも――――は好きだからいいんだけどね。状況悪化しちゃったけど、大丈夫?」
「うん、こうなることも想像してたからね。」
「ふふっ、そっか。」
「でも、次も失敗しないように――――が――――に色々教えてあげるね」
絢瀬絵里は、固く縛られた拘束から自由を得た
だが、それと同時に
何かが、始まった
いかがでしたでしょうか?
ついに絵里が加入しました。
ここから、物語が大幅にペースをあげて進んでいきます。
絵里加入時、原作のセリフをそのまま引用しました。
このセリフだけは、どうしても使いたかったんです。
16.5話をお読みくださった方、そうでない方で、彼女たちの言葉の意味の解釈の仕方がが大きく変わると思います。
そして今回の最後に、何やら意味深なやりとりがあります。
一体、誰と誰の会話なのでしょうか。
予告。
バレンタイン記念回、この回においては、次の章の1話目に持ってきます。
というのもちょっとした理由がありまして。
これからの展開に大きくかかわってくる話になってきますので、ぜひお楽しみに。