今回から遠い記憶編のスタートです
初めは真姫ちゃん
なぜ、本編でああいう終わり方をしたのか
そして、真姫ちゃんは・・・?
遠い記憶ー西木野真姫ー
私が穂乃果を初めてみたのは、私が音楽室でピアノを弾いていたときだった
「アイドルやりませんか!?」
息も荒くして、穂乃果はスクールアイドルに誘ってきたわ
私はそのときこそ断ったものの、作曲のお手伝いや花陽や凛と話している間にいつの間にかメンバーの1人になっていた
そんなときだった、瑞希が"初めて"転校してきたのは。
時季外れの転校
入学や始業に合わせての転校ならまだしも、彼は5月半ばでうちの高校にやってきた
どうやら、穂乃果と希の幼馴染だったらしい
穂乃果と希は大喜びで彼を迎え入れ、彼もまた、いつの間にかμ'sのメンバーの1人となっていた
メンバーの仲も良好、ダンスや歌の出来も上々
言うこと無しだった
あの時が来るまでは
「瑞希!ねえ起きなさいよ瑞希いいい!!!」
「みーくん・・・うぅっ」
「みーちゃん、そんな・・・うそやん」
瑞希が下校中、事故に遭った
うちの病院に運ばれたものの、即死だったらしい
そのまま瑞希は帰らぬ人となってしまったの
通夜が終わってすぐ、私は穂乃果に呼び出された
「お願い真姫ちゃん、みーくんに・・・みーくんにもう一度会わせて・・・っ」
血走った目で穂乃果は私を見てきた
穂乃果は瑞希が亡くなってしまって、壊れてしまったらしい
"できないと分かっているはずのこと"を私にお願いしてきた
「ねえ!医者の娘でしょ!?できるでしょ!?」
そんなことを言っては、私の胸倉をつかんで身体を揺さぶる
死んだ人間は生き返らない
そんなの当たり前だ、1+1は2になることくらい当たり前だ
でも穂乃果はそれでも求めてきた
狂った穂乃果を見てたら、なぜか私も「もう一度瑞希に会える方法はないか」なんて考え始めたの
・・・馬鹿よね。分かってる、それでも私は狂った穂乃果に影響されてしまっていて、そんなことを考え続けた
「え?死んだ人間に会う方法?」
医者であるお父さんにすら聞いてしまった
お父さんは名医として名高い有名な医者、だから私のそんな戯言なんて軽く流される
そう思ってた
「真姫」
お父さんが私の名を呼ぶ
「実は――――――――こんなものを預かっててな」
「・・・え?」
真剣な顔をしたお父さんから渡されたのは、一つの袋
「今、世界の医者たちの中でひそかに話題になっているものなんだが・・・」
お父さんが説明を始めた
「ある国で、とある実験が行われたんだ。"タイムスリップ"、それをやるための方法が何かないか、とな。そして完成したこの薬、これを飲めばタイムスリップができる、という結果が得られたらしい」
お父さんの口から信じられない言葉が飛び出してきて、私は困惑する
タイムスリップするための薬が開発された・・・?そして結果が得られた・・・?
それってつまりは、成功した、ってことよね?
「罪人を利用して実験を行ったらしいんだが、これを飲んだ罪人の姿が5分後には消えたらしい。ちゃんと拘束しておいて、薬を飲ませて放置しておいただけなのに、5分後にはまるでそこには誰もいなかったかのように姿を消したらしい。研究段階でのシミュレーションと実験結果が合致したといって、今医学界をにぎわせている・・・もっとも、一部の医者にしか知られてはいないトップシークレットなんだがね」
私はお父さんの言った事を頭の中で整理する
つまりは、罪人に飲ませた結果シミュレーション通りの結果が得られたから、タイムスリップは成功した、ってこと?
だけど私は、ここで1つ疑問を憶えた
姿を消したからって、本当に成功した、本当にタイムスリップしたと言えるのかしら?
「・・・タイムスリップした人間は、姿を消してしまっていて、本当に成功したのかどうかを証明できるすべがない。だから本当にタイムスリップできた、なんてはっきりとしたことは言えない。ただ、シミュレーション通りに姿を消しただけなんだ。だからこの薬はタイムスリップできる薬じゃなくて、"タイムスリップできる可能性を秘めた"薬なんだ」
証明できる術もない
その言葉を聞いて、言いようのない不安に駆られる
でも、もしもこの薬を飲むことで本当にタイムスリップできるとしたら・・・?
また瑞希に会える
楽しかったμ'sのみんなとまた話せる
そう思うと、試してみないわけにはいかなくなった
でも話を聞いただけじゃ、私は怖くてできなかった
だから――――――――
「これが、飲めばタイムスリップできる薬、なんですね?」
「あぁ。あくまで可能性の話だけどね」
私はお父さんのところに穂乃果を呼んだ
狂った穂乃果は、きっと試してくれると思ったから
要は、私は穂乃果を"実験台"にしたんだ
最低だ、何度もそう思った
けど、それでもまた、楽しかったあの頃に戻れるのなら、と。
「私、またみーくんに会いたい・・・ゴクッ」
薬を受け取った穂乃果は、それを勢いよく飲み干した
――――――――5分くらい経った頃だった
「うっ!!!」
「穂乃果!?」
「あっああっ!!っ――――――――」
「穂乃果!ほのk・・・穂乃果?穂乃果!?」
突然穂乃果が苦しみだし、うずくまる
私は穂乃果を必死に呼んだ
その瞬間、瞬きした瞬間にだろうか
穂乃果の姿が、消えた
部屋のどこを見渡してもいない
ドアを開け、部屋の外まで見渡したけど、いない
そう、実験通りの結果が出たんだ
「こ、これは・・・」
お父さんも心底驚いたと言わんばかりの表情でキョロキョロしている
研究の結果通りなら、穂乃果は今、タイムスリップしているはず
ということは、瑞希や昔のみんなと再び会えた可能性がある
瑞希がいなくなった、この世界のμ'sはもう、在って無いようなもの
――――――――私だって、瑞希やあのころのみんなに会いたい
私はお父さんに隠れて、袋から薬を取り出し
「んっ」
飲み込んだ
私はお花を摘みに行くと言い残して、お父さんの元を離れる
時間まで、あと3分――――――――
2分――――――――
1分――――――――――――――――
「ううっ!?」
来た
突然の頭の痛みに思わずうずくまる
「あぁっ・・・ああ!!」
意識が、遠のく――――――――――――――――
「はっ!?はぁ・・・はぁ・・・」
気が付くと私は、私の部屋のベッドの上で寝ていた
息が荒れ、汗が流れ落ちる
私はさっき、お父さんの仕事部屋にいたはず・・・
「っ!!日付!!!」
私は急いでスマホに表示される時間・日にちを確認しようとした
「あ、あれ?このスマホ、確か前に変えたはずなのに」
いつも机の上に置いているスマホを見て、驚く
私はいつもスマホを2~3か月に1度は交換する
だから、常に最新の機種を使っているのだけど・・・
「こ、これって確か、1年前の機種・・・」
懐かしいそのスマホを手に取り、形を確認する
・・・間違いない、これって1年前に出た機種のスマホ
だとしたら?
私は慌ててスマホの電源を入れた
「う・・・うそ・・・でしょ」
日付を確認して、愕然とする
表示されていたのは、1年前の今日の日付だった
つまり私はμ's加入はおろか、まだ音ノ木坂生ですらないのだ
だけどまだ信じられない私は、"あるもの"を探す
「音ノ木坂・・・音ノ木坂の制服・・・」
本当に1年前にタイムスリップしたのか、それが信じられずにいる私は、いつも制服をかけている場所を見た
「ちゅ、中学校の・・・制服・・・」
しかしそこにあったのは、確かに中学の頃の私の制服
見渡しても、音ノ木坂の制服らしき服は見つからない
私は確信した
「タイムスリップ・・・しちゃったんだ」
部屋を見渡しても、どう考えてもスクールアイドルをやっていたときの面影はない
飾られているのはμ'sのみんなとの思い出の写真たちではなく、ピアノコンクールでもらった賞状だけ
そして、私が寝ていたベッドの枕元
そこにはさっきお父さんからもらった薬の袋が1つ――――――――
タイムスリップに成功したことをお父さんに伝えた
「ははっ、真姫はタイムスリップなんてものを信じてるのかい?まだまだ可愛い子供なんだね」
でも結果は、タイムスリップ前にお父さんに話したときに予想した返事そのものだった
タイムスリップなんて非科学的なものは信じない、それがうちのお父さん
いつも通り、知ってる通りのお父さんだけど、なぜか納得できない自分がいた
私はそれから、タイムスリップしたという事実をこの身をもって体感しながら、時間が経つのを待った
そして迎えた音ノ木坂入学の時
私は迷わず、穂乃果のところへ向かった
「穂乃果!」
穂乃果のいるはずの教室に、柄にもなく大声で穂乃果を呼んだ
すると、いつもの席に座っていた穂乃果が、ことりと海未を置いて私のところへ向かってきて、そのまま私の手を引いて屋上へ向かっていった
「・・・西木野さん、でしたよね?どうして穂乃果の名前を?」
最初の言葉はそれだった
この言葉を聞いて、もしかしたらこの穂乃果はタイムスリップとは関係ない"この世界の"穂乃果なのかもしれないと思ったが、試してみなければ分からないと思い、聞いてみた
「タイムスリップ、成功したの?」
「っ!!」
私にはこの時点で、少しだけ確信していることがあった
穂乃果とは今日初めて出会ったはず
なのになぜ、穂乃果は私の苗字が"西木野"だと知っていたのか
それはおそらく、タイムスリップが関係している、と。
正解だった
「真姫ちゃん・・・それじゃあまさか・・・」
「私も、タイムスリップしたのよ」
私の言葉に、穂乃果は驚きとほんのわずかな喜びを秘めた表情で私を見る
「真姫ちゃんも、来たんだね」
「ええ、そうよ――――――――」
これが、私たち最初の、タイムスリップだった
このタイムスリップで、前の世界の失敗は覆せる
そう思っていた
瑞希が自殺した
原因は、親からの暴力に耐え切れなかったこと
瑞希の身体に痣があることは、みんな知っていた
でも、聞くたびに彼は「あはは、ころんじゃうんだよね~」などと言って誤魔化し、私たちに悟られないようにしてたらしい
これでまた、前の世界で起こったときとほぼ変わらない状況に陥ってしまった
だけど今回は1つ、違うことがある
お薬
成功すると証明されたこの薬が、今は私の手の中にある
それはどうやら穂乃果も知っていたらしく
「真姫ちゃん、それちょうだいよ」
またも狂った様子の穂乃果が、私に迫った
私も私で狂っているのか、それを拒もうともせず、穂乃果と私の2人分の薬を袋から取り出す
そして、口元へ――――――――
その時だった
「ねえ2人とも、何してるの?」
「「ことり(ちゃん)っ!?」」
前回と違うことがもう一つ
ことりに見つかったのだ
「2人でどこかに行くのが見えたから追ってきたんだけど、それ、なに?」
口元に運ぼうとしていた薬をみて、ことりは不審げに私たちを見る
それに対し、穂乃果はまったく隠そうともせずに答える
「これはタイムスリップできる薬だよ」
「たいむ・・・すりっぷ?」
「そうだよ、これで穂乃果と真姫ちゃんはまた、過去に帰るんだ。みーくんのいた、あのころに。」
穂乃果は感情の無い声でことりに伝える
普通ならこの様子を見れば、止めにくるはず
でも、ことりもことりで狂っていたのだった
「へぇ~、ならことりも穂乃果ちゃんについていっちゃおうかな~」
「・・・ことりちゃんは、それでいいの?」
「うんっ、だってみっくんもいない、穂乃果ちゃんもいない世界なんてつまらないもん♪」
瑞希と穂乃果のいない世界なんてつまらない、そう吐き捨てたことりは、私の持つ薬を奪うような形で手に取り、穂乃果に前に立つ
「・・・本当に、いいんだね?」
「うんっ!ことりは、いつでも穂乃果ちゃんと一緒に!」
そういうと2人は、ほぼ同時に薬を飲みこんだ。そして――――――――
2人同時に、姿を消した
後を追う形で、私も飲み込み、意識を失った
これが、2度目のタイムスリップ――――――――
その後幾度となくタイムスリップを繰り返すも、失敗を繰り返した
瑞希が別の形で死亡、瑞希は救えたが代わりに海未やほかのメンバーが死亡
さまざまな形で失敗を繰り返すうちに、気づいた
瑞希を救うには、何かしらを犠牲にしなきゃいけない
穂乃果はそれに気づいたとき、こう言った
「えへへ、みーくんさえ生き残ってくれればそれでいいや♪」
幾度となくタイムスリップを繰り返した穂乃果の精神はもう、とっくに別の人格へと変化していた
しかし、そんな穂乃果の前に壁が立ちはだかった
東條希
どういうわけか、瑞希の死のそばには必ずと言ってもいいほど希がいた
瑞希の幼馴染である希も、穂乃果のように狂っているのではないが、彼女もまた、瑞希に好意を寄せていた
そしていつしか、瑞希の横には必ず希の姿が見えるようになった
その姿を何度も見てきた穂乃果の目的が少しづつ変わっていった
「希ちゃんからみーくんを取り上げたい・・・そしてみーくんを穂乃果だけのモノに・・・」
瑞希だけを生存させるという考え方から一転、希から瑞希を奪うという考えに変わっていった
そして、何度目かのタイムスリップしたとき
ついに希から瑞希を奪えるチャンスが訪れた
しかし結果は
「お願い、"また"戻りたいの」
失敗して、いつものように私の元を訪れる穂乃果、そして
「穂乃果ちゃんの想いを、叶えなくちゃいけないから」
これまたいつものように、穂乃果の後を追うことりの姿があった
何度も何度もタイムスリップを繰り返す私たち
終わりの見えない戦いは、いつになったら終わるのか
それは私には――――――――分からない
西木野真姫編
いかがでしたでしょうか?
本編で明かされていなかったところを、徐々に明らかにしていく
それが"遠い記憶編"
スタートは真姫ちゃんからでした
タイムスリップをするための術を持った真姫は、穂乃果たちと共にタイムスリップを繰り返す