そんなわけでくっすんの誕生日記念なのですが、今回はのんちゃんの誕生日という設定で書いています。
割と今回の話は、本編の方の関係・設定を使っていますので、できれば本編の方も読んでいただけると嬉しいです。
昨日はうちの誕生日!
昨日部室に入ったら、いきなり『おめでとう!』だなんて言われて、始めは何のことか分からなかったんけどうちの誕生日やって聞いて思わず泣いてしまったわ!
でも、ひとつだけ残念なことがあったんよ。
みーちゃんが、いなかったん。
うちにとってはかけがえのない大事な幼馴染で、誰よりも先にお祝いされたかったんやけどな。
でも、そんなみーちゃんからお出かけのお誘いがきた。
今日の話は、そんなみーちゃんと、うちのお話。
おでかけ
「はぁ・・・はぁ・・・遅れてごめん・・・のんちゃん・・・っ」
「もうっ!みーちゃんから約束してきたんやろ!」
「ご、ごめんのんちゃん!」
「・・・言い訳に逃げないところはいいのになぁ」
「えっ?なんか言った?」
「う、ううん、何も言ってへんよ。さ、早速行こう?」
「あ、うん。ほんとにごめんね?」
お出かけの始まりはこんな感じ。
いつもみーちゃんは遅れてくる。確かにいつものこと。
でも、今日くらいは先に待っててくれるくらいはしててほしかった。
1時間もまえから待ってたうちがバカみたいやん。
「のんちゃん、最初に行きたい場所があるんだ。いいかな?」
「え?うん、いいけど・・・」
唐突にみーちゃんが『行きたい場所がある』なんて言ってきた。
自分からこうやってしたいことを言ってくるのは初めてかもしれない。
・・・うちの前でだけかもしれないけど。
「のんちゃん、本当に遅れてごめん。」
「・・・そのことはもうええよ。」
「違うんだ、今日のこともだけど、昨日のこと。幼馴染なのに誕生日を祝ってあげられなくて。」
「っ!! ・・・・・・」
「本当にごめんね。」
ひたすらに、申し訳なさそうに謝るみーちゃん。
でも、これだけはちゃんと祝ってほしかったな。
うちは、一回たりとも忘れたり祝えなかったりはしなかったんよ?
みーちゃんにとってうちなんて、"その程度"でしかなかったのかな。
うちにとっては、"かけがえのない存在"なのに。
みーちゃんに連れられ、来たのは公園。
それも、ただの公園じゃなくて―――
「この公園って・・・」
「うん、僕が記憶を取り戻したって、のんちゃんに伝えた場所。」
いつもの公園だった。
ここに来ることは最近は少なくなったけど、たまに来るとき、どうしても思い出してしまう。
あの時の、嬉しそうな、悲しそうなあの表情を。
あれは確かにうちに向けてくれてたもの。
あの嬉しそうな笑顔、最近じゃ見ることはあまりない。
どうして?
他のメンバーの前じゃ平然と"あの笑顔"を振りまいているのに。
うちの前では真面目な顔しか見せない。それも、どこかぎこちない。
もしかして、うちはみーくんに嫌われてるんじゃないんだろうか。
一抹の不安が、頭をよぎる。
いや、一抹どころじゃない。
頭がその不安の色一色に染められていくのが自分自身でもわかる。
思えば、心当たりなんていくらでもあった。
笑顔の件もそうだし、ここ最近は避けられてるようにも感じた。
メンバーに聞いてみても、『知らない』か『そんなことない』の回答しか来ない。
みーちゃんは、うちのことどう思ってるんだろう。
もし、本当に嫌われてなんてしたら、うちは――――
「のんちゃ~ん?」
「えっ!?ど、どしたん?」
「何度も呼んでるのに・・・のんちゃん、何か考え事してる?」
「・・・違うよ。みーちゃんには関係ないから。」
「そっか・・・」
たぶん悩んでいたことは、もうばれてる。
みーちゃんは人の心を表情一つで読み取ってしまう変な力が昔からある。
うちが嘘ついてることくらい、お見通しだと思う。
でも、こんなこと直接聞けるわけないやん
「場所、変えてもいい?」
「うん」
特に会話もないまま次の場所に行こうと促してくるみーちゃん。
やっぱり、うちとの会話は楽しくないのかな。嫌われてるのかな。
でも、だったらなんで今日誘ってきたんだろう?
「ここ、懐かしいよね」
「・・・うん」
来たのは、穂乃果ちゃんと、そしてみーちゃんと初めて会った、思い出の木のある公園。
小さいころはよく、この木に登って遊んでいたのを覚えている。
そのときは必ずと言ってもいいほど、穂乃果ちゃん、みーちゃんがいてくれた。
確かに、今もそのはず。
そのはず、なんや。
「のんちゃん!」
「ど、どしたん?」
急に大きい声でうちを呼ぶみーちゃん。
動揺と、さっきから留まることなく溢れてくる不安を必死に隠しながら、いつも通りのうちを演じる。
「のんちゃん、ごめん」
「え?だから今日のことも、昨日のことも気にしてへんから・・・」
「ごめん」
「だからもうええんやって!!」
「!?の、のんちゃん・・・?」
いつも通りを演じていた、はずだったのに。
思わず声を張り上げてしまった。
いきなりのことにみーちゃんは動揺している。
でも、さすがにくどい。
それに、どうせみーちゃんは――――
「みーちゃんはうちのこと、嫌いなんやろ!?なんで謝るの!!!」
「っ!!」
嫌ってるのなら、中途半端に接してくれようしてくれなくていい。
いっそのこと、突き放してくれたらいいのに。
もう、いいや。
みーちゃんから背を向けて、その場を立ち去ろうとした。
「まって!」
腕を強くつかまれて、立ち去ろうとする足を止められた。
なんで・・・!!
「なんで!?うちのこと嫌いなんやろ!?行かせてよ!!」
「嫌い・・・?」
「うちの誕生日も忘れて、うちとの待ち合わせも自分で誘っておきながら遅れて、この頃うちに対して冷たい態度取ってるしっ!嫌いなら嫌いって言ってくれればいいのに!!」
「・・・・・・」
否定もせずに、ただただ黙っているみーちゃん。
ふふっ、本当に嫌いなんやな。否定してくれないなんて。
スッと、つかまれていた手が、離された。
きっと、これがみーちゃんに最後に言う言葉
「さよなら。今までありがとうな。」
泣きそうになりながら、震える声を必死に抑えながら、崩れそうになる顔を、みーちゃんに背を向けつつも、必死に抑える。
じゃあね、"瑞希くん"
「嫌だっ!!」
「っ!?」
手を離されて、本当に捨てられたんだと思っていたのに。
うちの手をつかんでいた手は、うちの身体を後ろから包み込んだ。
「な・・・んで・・・?」
「さっきから僕、"ごめん"って何度も言ってるでしょ?そのことを謝ろうと思ってたんだ」
「あや・・・まる?」
「・・・昨日、誕生日を祝ってあげられなくてごめん。それに併せて、最近あんまり話せてなくてごめん。そして今日、遅刻してごめん。」
「え・・・えっ・・・?」
急な謝罪にうちは戸惑う。
嫌いなんやったら、謝ったりはしないはずじゃ・・・
「僕、のんちゃんのこと、一度も嫌いになったことなんてないんだ。むしろ逆、どんどん好きになっていったんだ。僕は、のんちゃんが大好きなんだ。」
「え・・・?」
「それで・・・その、遅れちゃった理由がこれなんだけど・・・」
そう言ってみーちゃんは、うちを包んでいた手を離して、ポケットから何かをとりだした。
「こ、これ、ブレスレット、なんだけどさ。」
「えっ・・・?」
「のんちゃんの誕生日が近くなってから、今年は飛び切り思い出に残るようなものをプレゼントしたいって思ってて、みんなに聞いたら"手作りのもの"っていうのが多くてさ。だから絵里さんに教わりながら、すこしづつやってみたんだけど、僕不器用だから必要以上に時間かかっちゃってさ。あはは・・・」
「あ・・・あっ・・・」
「今日遅れたのも、これをギリギリまで作ってたから・・・ってこれ言い訳になっちゃうよね。ごめん。でもどうしても言葉だけじゃなくて、完成したこれを渡したかったから」
「じゃ、じゃあ最近あんまりかまってくれなかったのは・・・?」
「のんちゃんと話してたら、うっかり言いそうになっちゃうからっていうのもあるし・・・それに――――」
「僕、のんちゃんが好きなんだ。一人の女の子として。だから、緊張して話すのがぎこちなくなっちゃってたかもね。それも併せて、"ごめんね"。本当は、昨日告白しようとしてて、でもブレスレットと一緒に告白したかったから。だから昨日は、言えなかったんだ。」
「だからのんちゃん!遅くなっちゃったけど、誕生日おめでとう!!そして、僕と・・・お付き合いを――――え?」
「み、みーちゃん・・・っ!うぅっ・・・」
「の、のんちゃん!?ご、ごめんっ、遅くなりすぎちゃったよね!!ごめんっ!!」
「うぅっ・・・っ・・・」
みーちゃんは、うちのことが嫌いではなかった。
それどころか、一人の女の子として好き、とまで言ってくれた。
それがあまりにも嬉しくて。
そして、溢れ出していた不安もなくなって、安心して。
気づけば、みーちゃんに抱き着きながら泣いてしまっていた。
「・・・っく・・・ぅぅ・・・」
「のんちゃん、本当にごめんね?」
「もうっ、ええんよ・・・っ」
「・・・そっか」
泣いてしまってからどれくらい経ったのかな。
抱き着いたままずっと泣き続けていたけど、さすがにもう治まってきたみたい。
今はそれよりも、嬉しい気持ちでいっぱいだから。
「みーちゃん」
「ん?どうしたの?」
「えへへ、本当にうちのこと、好きなん?」
「っ!もちろんっ、好き・・・だよ・・・っ」
「ん~?最後の方聞こえんかったな~♪もう一回言ってみ?」
「えっ!?き、聞こえてたでしょ?」
「・・・やっぱりうちのこと嫌いなんや」
「ち、違うってば!!ああもうっ!好き!大好き!!」
「もう一回、言って?」
「だいす――――っん!?」
「ん――――」
"大好き"
そう言ってくれたみーちゃんの口を、私の口で塞いだ。
恥ずかしかったから。でも、嬉しかったから。
照れくさくって、でも嬉しくて、頬を伝う涙と一緒に味わった初めてのキスの味は
どこかしょっぱくて、とても甘かった。
と、ところで、そのブレスレットどうかな??頑張ったんだけど
ふふっ!何この不格好なブレスレット!
なっ!?ひどいよのんちゃん!!
ふふっ♪
みーちゃんっ!うちもみーちゃんのこと、大好きやでっ!
うちの初恋は、とっても甘かった。
これからも一緒に、いつまでも―――――
くっすん、誕生日おめでとう!!