ハイスクールD×D 人間は現代兵器と戦法で勝る   作:BroBro

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堕天使の目的

 

 

 

堕天使に捕らえられた翌日、俺、晴心は1日の日記を付ける事にした。様々な事を忘れないようにだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

1日目

 

今日は一日中暇な日だった。昨日と変わった所は全くなく、殆ど昨日と同じ1日。唯一違うのはアーシアとの接触だろう。

 

彼女は予想以上に物覚えがいい。俺が教えた単語を1回で覚え、反復練習をする必要が無かった。この調子なら3日ぐらいで日常会話を完璧にする事が出来るだろう。

 

アーシアも少しずつ覚えていく自分に歓喜している様で、1日中元気に過ごしていた。楽しむことはいい事だ。俺もそろそろ硬いことは置いといて遊んで見るかと考えて見るが、元45歳のおじさんが何で遊ぶと言うんだ。手毬ぐらいしか思いつかん。

 

アーシアに手毬で遊ぼうとか言いたくもない。体は高校生、頭脳はおっさんとか笑えない冗談だ。

 

どっちにしても、今日は何の進展のない一日だったと言う事に変わりは無いだろう。

 

 

 

 

 

2日目

 

今日もアーシアに日本語を教える。

 

二日目にして恐ろしく記憶力のいいアーシアは、俺に数日前に買い物帰りで出会った人の事を日本語で話して来た。

 

どうやら高校生位の男に道を教えて貰い、買い物にも付き合って貰ったとか。どうやらアーシアには道も教えなければいけないようだ。明日あたり道を教えてみるとしよう。

 

日本語の進歩だが、今日で主語動詞等の事を教えた。更には四字熟語や偉人の名言等も教えるハメになった。学校に行けば相当ランクが上になるだろう。年齢も丁度同い年位だ。普通に生きていたら同じ学校に入っていたのだろうか。

 

アーシアも学校に行きたいとか言っていたし、コイツも苦労したのだろうな。

 

そして堕天使達の動きだが、今日も特に怪しい所は無かった。

 

あぁ、そう言えば堕天使が2人か3人ほど増えたな。アーシアは全員の名前を知っている様だから最初からいたのだろうが、あんな黒ずくめの怪しい連中を俺が見逃す訳がない。

 

恐らく何処かに隠れていたか、外にでも出ていたか……。どっちにしろ、今後の警戒を強める必要がある。

 

 

 

 

 

3日目

 

今日も堕天使に大した動きは無い。

 

アーシアに行き付けのスーパーからの帰り道を教えてやった。「うぅ…すいません」とか言いながら涙目になってしまったが、俺の馬鹿な友達の話をしたら直ぐに笑顔になった。とてもネガティブな少女だが、切り替えが速い所は超人並みだ。

 

考えてみたら捕まってから外出したのは初めてだった。それになかなか街の中をゆっくり見る時間は無かったので、こういう時間は俺にとって重要なんだろう。

 

……周りからはどう見られたのだろうか。カップルと言う風に見られていたらやだなぁ。でも実際男女で2人で出歩くなんてデート見たいなものなんじゃ無いのか?これは他人からの目が痛いな…。

 

そう言えば今日からアーシアがフリード神父って奴と一緒に悪魔退治に行くらしいが、大丈夫なのだろうか?アーシアはまだ純粋だし、回復の能力もあまり上手く扱えていない。足でまといではないのか?

 

まぁ、初めての戦闘の感想は明日本人に聞いてみよう。過去を振り返る事は重要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4日目。時刻は既に午後の6時を過ぎ、闇が街を侵食し始める時間。

 

俺は個室を抜け出し、今日もどこかへ出掛けたアーシアとフリード神父を追いかけて見る事にした。

 

ストーカーじゃない。ただアーシアから怪しい事を聞いたのだ。

 

 

 

『何をしていたのか分からなかった?』

 

『はい。フリード神父がマンションに入って行く所までは一緒だったのですが、中には居れて貰えなくて…』

 

『そのフリード神父に怪しい所はなかったか?』

 

『怪しい所ですか……あ、そう言えば部屋から出てきた時に何故かとても楽しそうな顔をしていました』

 

『楽しそうな顔、ねぇ……何かあったら教えてくれ。もしもの時は守る』

 

 

楽しそうな顔、と言うのが怪しい。下手したら快楽殺人と言う可能性も有り得る。例え殺しているのが人外でも1つの命を消している事に変わりはないのだ。それ相応の誠意を持って殺すのが道理のはず。

 

殺すのはいいとしても、楽しみながら命を奪う事は許されない。もしフリード神父と言う男が快楽殺人鬼だとしたら、少し教育しなければならないだろう。

 

それにどうやらアーシアには目的は悪魔退治だと言う事を聞かせてはいない様だ。それにも何かの理由があるのだろう。ここで見極める必要がある。

 

もしもの時は俺が守ると言ってしまった以上、約束は果たさなくてはならない。例え履き違えても約束した事は守る。それが俺のモットーだ。

 

 

教会から出て数分。フリード神父とアーシアが足を止めたのは1つの一軒家だった。フリード神父は家の中へと入っていき、アーシアは外で待たされている。

 

数分後、気になったのかアーシアが家の中に入って行った。家の中では何が起きているか分からない。そろそろ俺も攻めるべきかな。

 

そう考え、隠れていた電柱から身を乗り出した。

 

奴が来たのはその時だった。

 

 

「あれは……?」

 

 

暗闇から出てきた自転車。それに乗る1人の男。この男を、俺は知っている。

 

 

「兵藤先輩……」

 

 

兵藤一誠。俺が通っている学校の先輩であり悪魔だ。その人物が今回は口笛を吹きながら1人でやってきた。これ程好都合な事はない。

 

俺はL96AWS(スナイパーライフル)を構える。ゆっくりと狙いを付け、スコープの中心が一誠先輩の頭に重なった。

 

 

「……いや、今は様子を見るか」

 

 

今一番優先する事はフリード神父の実態とアーシアの安全確保。悪魔退治はその後だ。俺は一誠先輩がアーシア達がいる一軒家を過ぎるのを待つ。

 

だが、ここでまたもう一つ問題が出てきた。

 

一誠先輩がアーシア達の居る一軒家の前に止まり、インターホンを押したのだ。その動作に慌てて俺はライフルのスコープを除く。

 

 

「……ちわース。グレモリーさまの使いの悪魔ですけど……。依頼者の方、いらっしゃいます?」

 

 

だが時既に遅し。一誠先輩は自信なさ気な声を出しながら玄関の扉を開けていた。

 

やばい。

 

中の人とフリード神父が襲われる可能性がある。

 

俺は大急ぎで民家の中に飛び込んだ。

 

民家の中は殆ど明かりがついてなく、とても薄暗くなっていた。俺は暗視カメラを出現させ、暗闇の中を人部屋ずつクリアリングしていく。

 

そして二階を残し、残る一室以外全ての部屋のクリアを確認する。残る一室、そこだけ扉が開いており、中から蝋燭の物であろう光が不気味に部屋の中を灯していた。

 

俺はその部屋の中に入ろうとドアノブに手をかける。

 

だが木製の扉を開けようとした瞬間、部屋の中から2人の男の声が聞こえた。

 

 

『人間が人間を殺すってのはどうなんだよ!お前らが殺すのは悪魔だけじゃないのか?』

 

『はぁぁ!?悪魔の分際で俺に説教ですか?いいかクソ悪魔。悪魔と契約しようとする人間なんてクズなんですよ。人間として終わった証拠なんです。だから俺が殺してあげたのさ〜』

 

 

声の正体。それは直ぐに分かった。

 

一つは一誠先輩。もう一つはフリード神父の声だ。そしてフリード神父から発せられる不気味な単語。『人間』『殺した』の2つの単語に、俺は冷や汗が出てきた。

 

ゆっくりと部屋の中を覗く。

 

そこにはニヤニヤと不気味な笑みを浮かべるフリード神父と、それに対峙する一誠先輩。

 

そして、フリード神父の後ろにある、磔にされた男の遺体。

 

俺は一瞬で状況を把握した。

 

逆十字架の形で磔にしたのは悪魔である一誠先輩……ではなくフリード神父だろう。悪魔は逆であろうと十字架を作ることは無い。そして死体の横にある文字は良く教会で見た文字だ。

 

この惨状を生み出したのはフリード神父で間違いないだろう。

 

 

ヴゥゥゥン……。

 

 

俺が考察をしている中、部屋の中から不可解な音が聞こえてきた。例えるならGUN〇AMのビームサーベルの様な……。

 

そして中から聞こえてくるフリードのいかれた声と一誠先輩の呻き声。

 

見ると、一誠先輩が膝から血を出して倒れていた。

 

 

『どうよ!光の弾丸を放つエクソシストの祓魔弾は!』

 

 

フリードが一誠先輩に銀色の拳銃が向けられていた。銃口からは煙が上がっている。銃弾を発射した証拠だ。

 

発射音がしなかった?奴の銃にはサプレッサーの様な消音機能を持つ物は無いように見える。これが奴が言っていた光の弾丸なのか?

 

 

「…攻撃目標を変更する必要がある」

 

 

部屋の中の状況を見た俺はグレネードランチャーバレルとダッドサイトを装着したM4マシンガンを構える。

 

狙いはフリード神父。俺はダッドサイトでフリード神父の頭に標準を合わせる。引き金に力を入れる。

 

だが、またここで邪魔が入った。俺の背後からドタバタと二階から降りてくる音が聞こえたのだ。

 

俺は急いで風呂場に隠れる。

 

二階から降りてきた者は一誠先輩とフリードが居る部屋の扉を開けた。

 

 

『やめてください!』

 

 

二階から降りて来たのはアーシアだった。アーシアの叫びに、フリードと一誠先輩は行動を止める。

 

このままでは撃つに撃てない。流れ弾がアーシアに当たる可能性がある。どうする……このまま様子を見るか、それとも一気に攻め込むか……。

 

俺が考えてる間も時間は進む。

 

死体を見て叫ぶアーシア。そしてアーシアは一誠先輩の姿を見つけ、驚愕に目を見開く。どうやらアーシアと一誠先輩は知り合いの様だ。

 

そして、フリード神父とアーシアの会話が続いた。

 

 

『……フリード神父……その人は……』

『人?違う違う。コイツはクソの悪魔くんだよ。何を勘違いしているのかな?』

『イッセーさんが……悪魔……?』

『なになに?君ら知り合い?わーお、これは驚き大革命。シスターと悪魔の許されざる恋とかそういう感じ?マジ?マジ?』

 

 

実に楽しそうに、フリードは一誠先輩とアーシアを交互にみる。

 

悔しそうに顔を伏せる一誠先輩。その姿は、今まで見た悪魔とは違う人間じみた姿だった。

 

 

『まあまあ、どっちにしても俺的にはこのクズ悪魔さんを斬らないとお仕事が終わりませんので、ちょちょいといきますかね』

 

 

フリードが一誠先輩の喉にビームサーベルの様な光で出来た剣を突き立てる。

 

瞬間、アーシアが一誠先輩とフリードの間に割って入り、庇うように両手を広げた。そのアーシアの姿に、フリードは舌打ちをした。

 

 

『フリード神父……お願いです。この方を見逃して下さい。お願いします』

 

 

涙を流しながら、吐き出すようにゆっくりとフリードに告げる。

 

 

『もう嫌です……悪魔に魅入られたからって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりして、こんな事間違っています!』

 

『はぁぁぁああああぁぁ!?バカこいてんじゃねぇよクソアマがぁ!悪魔はクソだって教会で習っただろうがぁ!』

 

 

フリードの怒号。それに怯まずに自分の思想を、悪魔にも良い者は居ると発し続けるアーシア。

 

ここまで強い少女だとは思わなかった。教会からの道を教えた時も、良く涙目になって自分に自信が持てないと言っていた少女が、良くここまで強くなったものだ。

 

少女の微かな成長を感じると共に、俺に1つの憎悪が生み出される。 フリード神父…奴は罪無き男を殺し、俺の教え子とも言えるアーシアに罵声を浴びせ続けている。

 

手に力が入る。そろそろ見ているのも我慢の限界だ。コイツだけは許してはおけない。

 

扉のドアノブが軋む音が聞こえる。自分の気をおさめる為に深呼吸をする。

 

その時だった。

 

 

バキッ!

 

 

何かを殴った音が聞こえた。

 

音と共に倒れるアーシア。

 

その顔からは、

 

血が垂れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BataBataBataBataBataBataBataBataBataBataBataBataBata!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の扉が吹き飛んだ。

 

そして飛び出す黒い影。その影は一直線にフリードへと向かっていき、フリードの顔面に左ストレートを繰り出した。

 

 

ドゴッ!!

 

 

鈍い音と共に吹き飛ぶフリード。フリードは壁にぶつかり、壁を崩壊させていく。

 

 

「外に逃げろ。バックアップは安心してもいい」

 

 

何が起きたかわからず、呆けていた一誠とアーシアにフリードを殴った晴心が声をかける。

 

 

「あ、あんたは……?」

 

「俺の名を聞いている暇があるのならアーシアを連れて逃げろ」

 

 

ドスの聞いた声に一誠は急いでアーシアを抱え、外へと向かった。

 

 

「クッッソがぁぁぁぁ!!誰だぁぁ!!」

 

 

激高しながら瓦礫から姿を現すフリード。そしてフリードは晴心を見つけ、苛立ちを見せる。

 

 

「おぉおぉ、新人さんがしゃしゃり出て来てんじゃねぇぞ。仕事の邪魔をすんなら例え堕天使の命令であっても殺す!!」

 

 

フリードが銃口を晴心に向ける。

 

瞬間、フリードの銃が数発の銃弾により弾けた。フリードの銃を晴心の44マグナムが破壊した。

 

晴心は速撃ちもそれなりに得意としていた。フリードが銃を晴心に向けた瞬間、認知出来ないくらいの速さで腿のホルスターから44マグナムを取り出し、フリードの銃に3発の鉛玉をぶち込んだのだ。

 

 

「銃の扱い方がなってない。構え方も雑だ」

 

「説教ですか?残念だけど俺にはまだお前をぶった斬る選択が残ってるんだよぉ!!」

 

 

フリードかま晴心に斬りかかる。上段からの1光。重力と運動エネルギーを生かした攻撃は、見事晴心の真上を捉えていた。

 

だが晴心もただでは殺されない。晴心の頭に光の剣が接触しようとした瞬間、晴心は腰からサバイバルナイフを取り出し真正面から攻撃を受ける。

 

 

バキバキキキキッ!!

 

 

火花が散り、金属音が鳴り響く。

 

数秒のつばぜり合い。力量の差ならば運動エネルギーを味方にしているフリードが勝るだろう。このままつばぜり合いをしていたら晴心が押し負ける。

 

フリードがその事実に気付かないはずも無く、ここぞとばかりに剣に力を入れる。

 

もう少しで晴心のナイフにフリードの剣が押し勝つ。フリードに勝利が見えた瞬間、晴心が体を回転させた。

 

力を入れる為に上半身の体重を全て晴心のナイフに委ねていたフリードは、前のめりに倒れる。

 

この好奇を逃す訳も無く、晴心は横回転による運動エネルギーと遠心力を生かし、ナイフを裏手に持ち替えフリードの鎖骨にナイフ突き立てた。

 

フリードが吐血する。

 

 

「ぐおぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

絶叫し、体に刺さったナイフを取ろうと必死にもがく。だが、このサバイバルナイフには返しがついており、1回刺さったらなかなか取れない仕様になっている。

 

取れないと諦めたフリードは、屈辱による意地か、体力も無いにも関わらず声にならない声を上げながら再度上段から斬りかかる。

 

ナイフを手放した晴心は今は無防備。だが晴心は余裕の動作で一歩前に出た。

 

フリードの剣は宙を切り、晴心の肩にフリードの肘が当たる。剣の刃は晴心の肩の先。完全に無防備になったフリードの胴体。晴心はそこに次々と拳をぶつけていく。

 

その攻撃にフリードは後方へと押され、光の剣を落とす。

 

 

「終わりだ……」

 

 

一言呟き、渾身の左ストレートをフリードの顔面に食らわした。拳は見事顎に命中。顎は衝撃を受ければ脳に大きな影響を及ぼす。そんな部位をフリードは全力で殴られた。自分の体に何が起こったか分からず、神父は意識を闇に落とした。

 

 

「ろくに訓練も受けていない奴が、俺に勝てる訳がない」

 

 

過酷な訓練を過ごし、1年間の戦場を体験した晴心に、ただ戦闘を楽しんでいるフリードが勝てる訳もなかった。

 

フローリングに伏しているフリードを一瞥し、晴心は戦闘ヘリがいるであろう外へと向かった。

 

 

 

 

BataBataBataBata!

 

 

聞こえてくるヘリボーン。その音と共に更に聞こえるM230 30mmチェーンガンの銃撃音。

 

外に出ると、上空にはEC655(タイガー)がホバリングしながら一点を銃撃していた。

 

その先には黒いカラスの様な羽を生やした男女がタイガーに向けて光の槍を放っている。

 

数発の光の槍の内の一発がエンジン部に直撃する。

 

そして起こるタイガーの爆発。晴心はまさかここまで簡単に戦闘ヘリが落ちるとは思っていなかった。

 

それに、堕天使が自ら出てくる事も。

 

 

「王生晴心」

 

 

男の堕天使が晴心に声を掛ける。

 

 

「俺は熊谷謙太郎と言う名なのだが?」

 

「そんな嘘が我々に通用すると思っていたのか?お前が最初から我々に刃向かう事は分かっていたぞ」

 

 

やはりバレていたか。と晴心は思うが、それほど焦ってはいなかった。偽名だとバレている事は晴心も分かっていたからだ。

 

男に続き、他の女の堕天使2人も晴心を囲む様に地に足をつける。

 

 

「ゾロゾロと人間1人の為にご苦労な事だな」

 

「お前の強さは既に知っている。それでも我々が出る事も無かったのだが、お前に加え悪魔とシスターが加わるとしたら話は別だ」

 

「……やはり目的はアーシアか。貴様らの目的はなんだ?」

 

「お前が気にする必要は無い。シスターもお前も、結局は同じ所に行くのだからな」

 

 

同じところ?

 

意味深げな単語に晴心は眉を細める。一体どこに行くと言うのだろうか?

 

晴心が考えている時も、堕天使は不敵な笑みを浮かべている。何を企んでいると言うのだろうか?

 

晴心が考えている時も、時間は進む。

 

晴心の目の前で、数人の悪魔祓いに囲まれる一誠とアーシア。一誠はアーシアを庇い、自分の背後にアーシアを回す。

 

 

「あの男とシスターを無傷で帰して欲しければ、大人しく我々の元に来い。抵抗すれば、あの男の命は無い。それに、お前もシスターも五体満足に生きられなくなるぞ?」

 

 

背後には堕天使が2人。二人とも戦闘体制に入っている。男堕天使も、光の槍を創り出している。

 

今ここで暴れるとしても直ぐに取り押さえられるか、手足を切り落とされるのが関の山だ。

 

何よりも教え子であるアーシアと、安全な悪魔だと分かった一誠が自分のせいで怪我をするのは考えたくは無かった。

 

基本、晴心は他人優先の人間だ。敵を制圧出来ないと分かった以上、敵が提示してきた条件を飲むのは当たり前としている。

 

だが、今回は迷っていた。

 

 

(俺とアーシアが堕天使に捕らえられたとしてもその後は確実に安全なのか?堕天使を信用できるのか?だがここで従わなければ確実に危機に瀕する。ならばその後の安全に賭けるのか?危険すぎる賭けになるが、確実よりはマシなのか?)

 

 

目の前で一誠とアーシアが追い込まれていく。一誠は右手に装着している紅い篭手の様な物で抵抗しているが、まだ戦闘になれていないのか、振るう拳は空を切るばかりだ。

 

後少しで、確実に殺されるだろう。

 

 

「さあどうする?私達に手段問わず無理矢理連行されるか、それとも素直に従うか。どちらでも構わないが、後者の選択は賢いと言えんな」

 

 

堕天使が急かす。堪忍袋の尾が切れるのも時間の問題だろう。

 

数秒の迷い。

 

 

「……分かった。貴様らに従おう」

 

 

晴心は遂に答えを出した。ゆっくりと一歩ずつ堕天使に近づいて行く。

 

その行為に、堕天使は満足したように笑った。

 

 

「利口な答えだ。お前は頭がいい」

 

「いいから早くしろ。どこへなりとも連れていくが良い」

 

「慌てるな。今連れて行ってやる」

 

 

堕天使の1人が一誠達を囲んでいる悪魔祓いに合図を出す。

 

悪魔祓いの1人がその合図を確認し、一誠に銃を構え、

 

光の銃弾を放った。

 

 

「ぐあぁ……!」

 

 

腹部から鮮血が流れ出し、一誠は地に膝をつける。

 

その一誠に、アーシアは悲鳴を上げながら駆け寄った。

 

 

「貴様! 話が違うぞ!!」

 

「私達堕天使は悪魔と違い人間と取引はしない。それを知らなかった貴様が悪いと知れ」

 

 

激高する晴心に、女堕天使が手刀を放つ。

 

 

「グゥッ………!」

 

 

見事な角度で放たれた手刀。晴心は自身の力の無さを呪いながら、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁ……!」

 

 

嘔吐する様に息を吐いた。口の中には血の味が広がる。

 

 

「イッセーさん!」

 

 

吐血し、倒れた一誠にアーシアが涙目で駆け寄った。アーシアは自身の治癒の力で一生懸命一誠の傷を治す。

 

徐々に塞がっていく一誠の傷。それだけでアーシアの能力の凄さが分かる。

 

そんな緊迫した2人に、女の堕天使、レイナーレが舞い降りる。

 

 

「レイナーレさま……」

 

「帰るわよアーシア」

 

 

唐突に発せられたレイナーレの言葉。その言葉はつまり、一誠との別れを意味していた。

 

アーシアはあの教会へ戻りたくは無い。その旨をレイナーレに伝えようとするが、それを阻むようにレイナーレが口を開いた。

 

 

「大人しく来ないならそこの悪魔の子と、貴方のお友達を殺すわ」

 

 

レイナーレが仲間の堕天使に合図を送る。

 

そして仲間の堕天使が"持って"きたのは、力無く肩を下げ気絶している晴心だった。

 

その首には堕天使の光の槍が突き立てられている。

 

 

「晴心さん……!」

 

 

驚愕に目を見開き、悲鳴に似た声で晴心の名を発した。レイナーレが味を占める。

 

 

「この子を殺す事は簡単よ。貴方と同じ神器持ちでも、私は確実に肉塊に出来る。そこに無様に転がっている悪魔と同じでね」

 

 

今まで自分を犠牲にしてきたアーシアは、自分のせいで他人が傷つく事に耐えられなかった。

 

アーシアは一誠から手を離し、レイナーレの元へと歩き出す。

 

 

「待てっ……行くなアーシア!」

 

 

だが、未だ意識が残っていた一誠がアーシアを呼び止める。アーシアの足が止まった。

 

 

「アーシアをどうする気だ!」

 

 

残った気力を振り絞り、レイナーレに問いただす。

 

 

「下級悪魔が私に気安く声をかけるな」

 

 

一誠の問に、レイナーレは答えることもなくゴミを見るような目で一誠を見下す。

 

 

「あなたにも神器がある様だけど、その篭手は『龍の手(トウワイス・クリティカル)』と呼ばれる有り触れた神器の1つよ。ただ所有者の力を倍にするだけ。今のあなたの力が倍になったとしても、私には脅威にもならない。そんな下級な存在が私に話しかけるなど、堕天使の名が汚れるわ」

 

 

レイナーレの言葉に、一誠は悔しそうに顔を顰める。自分の神器に自信があったからこそ、このカミングアウトは一誠の心に深く傷をつけた。

 

だが、それでも一誠は諦めない。自分の右手に神器を出現させ、抗戦体制に入る。

 

 

「うぅ……くっ……」

 

 

だが足が立たない。アーシアのお陰で傷は塞がっているものの、出血し過ぎていた。既に体に力が入らず、目眩すら引き起こす。

 

その姿を滑稽と見たレイナーレは、とても愉快そうに笑いながら一誠に更に言葉を発す。

 

 

「この子の『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』はあなたの神器よりも希少なの。あなたにこの子は渡さないわ」

 

 

ふざけるなと心で叫ぶ。意地でも行かせるものかと立ち上がろうと足に力を入れる。

 

自分がなんとかしなければならない。さっき助けてくれた男も、既に堕天使達の手中。命の恩人であるあの男も、自分の友達であるアーシアも俺が助ける!

 

明確な決意と力を胸に、最後の力で立ち上がる。

 

だが、

 

 

「イッセーさん。ありがとうございました。私はもう大丈夫です!」

 

 

アーシアが満面の笑みで一誠に振り返る。そしてアーシアは新たに一歩ずつレイナーレに歩む。

 

 

「いい子ねアーシア。それでいいのよ、今日の儀式であなたの苦悩は消えるのだから」

 

 

いやらしい笑みを浮かべるレイナーレ。そんな時でもアーシアはレイナーレに確実に歩んで行く。

 

一誠がその姿を黙って見守るはずもなく、大声を上げた。

 

 

「アーシア! 待てよ、俺達友達だろ!」

 

「こんな私と友達になってくれてありがとうございました」

 

 

アーシアにとって初めての友達。それが一誠だった。

 

出来れば離れたくない。出来るだけ一緒にいたい。

 

だが、それでも一誠が無事で生きていける事ほど嬉しい事は無い。だから、アーシアは一誠の言葉を退き、レイナーレの方へと歩む。

 

 

「お、俺がアーシアを!」

 

 

アーシアは自分を頼りにしてくれた友達。

 

だからこそ一誠はアーシアを守ると誓った。男として、友達として。

 

それでも、目の前にいるのに。守ると誓った大切な人が目の前にいるのに、守るどころか迷惑をかけてばかり。

 

悔しい。自分が守ると言ったのに、なんてザマだ。

 

心の中でどれだけ自分を罵っても、アーシアは歩みを止めない。

 

遂に、アーシアがレイナーレの元へとたどり着いた。

 

 

「さようなら」

 

 

それがアーシアの最後の言葉だった。

 

アーシアを黒い翼が覆う。

 

 

「下級悪魔。この子のお陰で命拾いしたわね。次に邪魔をしたら、その時は本当に殺すわ。じゃあね、イッセーくん」

 

 

最後に言葉を残し、レイナーレはアーシアを抱いたまま空高く舞い上がった。晴心を捉えていた堕天使も、空の闇へと消えた。

 

 

---何も出来なかった。

 

 

守ると誓ったのに。

 

自分が未熟なばっかりに。

 

悔しくて涙が出てくる。

 

 

それは、晴心も同じだった。

 

 

意識は朦朧としていた。会話も全て聞いていた。

 

腸が煮えくり返る思いだった。

 

直ぐにでもアーシアを自由にしたかった。

 

だが体が動かない。体の力が入らない。脳がグラグラと動いて自由がきかない。ただ見ていただけだった。

 

何が守るだ。所詮口先だけだった。

 

 

頼ってくれた友達を失った。頼ってくれた教え子を失った。

 

2人に残ったのは、底なしの虚しさと、燃える様な悔しさだけだった。

 

一誠の元にグレモリーが来たのは、その数秒後だった。




シリアスになる…と思っていたのか?

この作品は原作様々な時間を逆にしてお送りしております。

原作崩壊?そんなもの豚に食わせろ!二次創作作者舐めんじゃねぇぇぇ!!
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