ハイスクールD×D 人間は現代兵器と戦法で勝る 作:BroBro
「う、あぁ……?」
ジメジメと湿ったとある一室。その部屋で晴心は肌寒さに震えながら目を覚ました。
その部屋の壁は岩で出来ており、四角形型の部屋の1つの辺に鉄格子がついている。
誰が見ても一瞬で分かる程有りがちな牢獄だった。
(ここは……俺は確かアーシアと一緒に堕天使に連れて行かれたんだったか。となるとここは奴らの牢獄か。この湿気は地下だろうな。さて、どうするか……)
牢獄の中で寝ながら晴心は思考する。
(独房と言う事は恐らく敵基地の真ん中の可能性が高い。これくらいの鉄格子ならTNTで爆破は簡単だが、その爆発音で敵が来てしまってはタコ殴りに会う。だが、アーシアが心配だ。もたもたしては居られない)
時刻は夜の10時。あの戦闘から約3時間が経っている。これくらいの時間なら出来る事は限られるが、相手は堕天使、人間の常識は通用しない。
出来るだけ見つからず、檻を破壊し、アーシアを連れ出し、敵を殺す。
どうにかしなければ……
「ようやくお目覚めか。たかが気絶だけに3時間も眠るとは、所詮は人間か」
急に晴心に声がかかる。晴心はその声を知っていた。
「お前か……」
「ほう、人間でも覚えていたか」
「俺が知る中ではお前は唯一の男堕天使だからな」
「人間にもそれくらいの知識と記憶力はあるのか。予想外だな」
男堕天使は心底驚いた様な目で晴心を見る。一体どこまで人間を下に見ていたのだろうか。
明らかに晴心を馬鹿にしている。だが慣れている晴心はそんな事気にせずに男堕天使に話を続けた。
「俺をどうするつもりだ?わざわざ悪口を言うためにここまで来た訳ではあるまい?」
「ああ、肝心な事を忘れてたな。お前に伝える事があって来たのだ」
「伝えたい事?」
「少ししたらここを出る。準備しておけ。以上だ」
「待て、何をするかも分からないのに準備は出来ない。何が始まるんだ?」
晴心の問。それに堕天使は邪悪な笑みを浮かべながら答えた。
「いいだろう、冥土の土産に教えてやる。お前の神器を取り出す。我々にとって驚異ではないが、お前の神器は過去に類を見ないタイプだ。我々はそれを取り出し、研究材料に使う」
「俺が研究材料になるだと?」
「お前だけではない。あの女の神器もだ。あの女の神器は他の者も所持していたが、我々堕天使や悪魔さえも治癒できる者は今までいなかった。だから奴の神器を取り出しているのだ」
「……神器を取り出すと、どうなるんだ?」
「ただの肉塊になる」
瞬間、晴心は鉄格子に飛びついた。
肉塊になる。動く事の無いただの肉、つまり死ぬと言う事だ。
そして、堕天使の言うあの女とは恐らくアーシアの事だろう。男の言い方だと、もう神器を取り出している様だ。
呑気に考えている暇は無かった。
考えが甘かったと自分を呪いながら、晴心は堕天使に更に詳細を聞き出す。
「アーシアは?今あいつは何処にいるんだ!」
「そこまで言う気は無い。お前は死ぬ準備だけしていればいいのだ」
晴心の勢いにびくともせず、男堕天使は晴心に背を向け歩き出した。
「待て!」
晴心が呼び止める。だが男は歩みを止めず、最後に捨て台詞の様に晴心に言葉を発した。
「時が来たら呼びに来る。まぁ、その時はあの女は死んでいるがな」
それだけ言い残し、男は晴心の前から消えた。
廊下と晴心の檻に、堕天使の高笑いが響く。
「クソッ!増援が来ても構うものか!」
今回の敵は堕天使と悪魔祓いだけでなく、時間さえも敵になる。
今の所一番危険なのは時間だ。コイツを克服するべく、晴心は檻の左右上下にc4爆弾を仕掛ける。
手に持つのは筒状の起爆スイッチ。それをなるべく離れた所で爆発させた。
ドゴォン!!
巨大な爆発音と共に檻が弾け飛ぶ。
檻だった部屋から出て、周囲の安全を確認する。今の所敵に動きは無い。結構鈍感なのか、それとも待っているのか。どっちにしてもこの時間は晴心にとってはチャンスタイムだ。
晴心は自分の知識から、市街地や屋内で取り扱いがしやすく、殺傷率の高い装備を取り出す。
「……こんな物か」
黒い渦の中から取り出したのはスコーピオンと言う短機関銃だ。
このサブマシンガンは45口径拳銃の大きさ(27cm)と同じであり、サブマシンガンと言う種類の中ならば最も小型の銃がこのスコーピオンだ。本銃の特徴は銃床が折り畳み式である事だ。これにより片手での取り回しも可能になっている。命中率は落ちるが、とても取り回しのいい銃だ。
サブウェポンはコンバットデルタと呼ばれるハンドガンを二丁。グレネード、スモークグレネード、スペナイツナイフ。
日頃鍛えている晴心はこの位の装備なら山登りすら出来る。機動力を重視した装備だ。
「行くか、間に合うかどうか……」
装備を自らの体に装備させた晴心はダッシュで階段をかけ登る。
タイムリミットが迫っていた。
◇
数分後、晴心は地上に到着した。
晴心は急ぎながらも周りを的確にクリアリングして行き、周囲の安全を確実な物にしていく。
今の所敵に遭遇はしていない。嬉しい話だが、それが晴心に不信感を与えていた。
(おかしい……ここまで敵がいないものか?敵の数はそれほど少なくは無い。だから俺に監視をつける位はするもんだと思っていたが、杞憂だったか?)
どっちにしろ危機感を捨ててはならない。敵の策略と言う可能性もありえるからだ。
少し長い廊下を歩いていく。
廊下を抜けた先は広い空間だった。ステンドグラス。大きな十字架に貼り付けにされている頭の無い男の彫刻。聖堂と呼ばれる場所なのだろう。
何故か煙が立ち込めている。何かを焼いた様な臭いはしない。恐らく煙幕の類だろう。
そんな薄暗く視界が悪い聖堂の中に、3人の人影があった。
「動くな!」
晴心がスコーピオンを構えながら3人に警告の声を出す。
瞬間、3人は驚いた様に辺りを見渡す。
その内の1人が、晴心に気がついた。
「あ、お前は!」
兵藤一誠だ。その周りの2人は晴心の先輩と同級生の木場祐斗と塔城小猫だった。
一誠の目からは驚愕と安堵の色が見えた。
それが逆に不信だったのか、周りの祐斗と小猫は一誠に目の前で銃を構えている男について聞いていた。
「…一誠さん、あの人は?」
「俺を助けてくれた人だよ。アーシアと一緒に連れて行かれたはずなんだけど、なんとか脱出出来ていたみたいだ」
「でも、どうやら完全に味方と言う訳では無い様だね。それに彼、多分だけど……」
「先日私達を襲った人……」
向こうの3人の会話が聞こえる。
今の晴心はパーカーのフードを深く被り、ネックウォーマーを鼻の上まで上げている。
顔で誰かバレる事はないが、この格好は一誠達を襲った時と同じ格好。顔はバレないとしても、晴心は一誠達に敵視される事は分かっていた。
だが、少なくとも堕天使達より交渉の余地はある。流石の晴心も3人で一斉に攻撃されたらたまったもんじゃない。
今は、アーシア奪還と言う共通の目的を持った仲間が必要だった。
「おい、お前ら!」
突然銃を向けて来ている男が声をかけて来た事もあってか、一誠達は一瞬で戦闘体制に入った。
その中で、一誠は晴心に返答した。
「な、なんだ!」
「お前らはアーシアを助けに来たんだろう?俺もお前らと同じだ。だからここは手を組もう!」
「いきなり僕達を攻撃して来た貴方を僕達が信用できると思っているんですか?」
木場が話に介入してきた。と予想通り、木場は晴心を完璧に敵視している様だ。
「あの時はバイザーの援軍かと思ったんだ。同じ悪魔だったらしかったしな。あの件に関しては俺に非がある。あの時は悪かった」
「それを証明できるものは?」
「無い。だが、証拠にはならないがこれから俺はお前達を支援する。行動制限や監視をつけてもらっても構わない。だからここは手を組んでくれ!時間が無いんだ!」
必死に説得する晴心。
晴心は一誠達に捕らえられても安全だろうと予想している。晴心自身も理由は分からないが、少なくとも堕天使達の所にいるよりはマシだと考えていた。
数秒の沈黙。ここで、一誠の口が開いた。
「1つ、聞いていいか?」
「もちろん」
「お前は敵なのか?それとも味方なのか?」
「今は味方でも敵でも無い。だが、この返答によって俺は敵にもなるし味方にもなる」
更なる沈黙。
そして、一誠 ではなく木場が晴心に答えた。
「良いでしょう。一先ず、手を組みます。ですが今だけです。その後の処遇はこちらで決めさせて貰います」
「それでいい。感謝する」
同盟が決まった。
晴心はスコーピオンを下げ、一誠達のそばに行く。
一誠が晴心に問いかけた。
「アーシアの場所はわかるのか?」
「いや、俺は牢獄に入れられていてアーシアの場所は分からない。ここに攻め込んで来たお前らは大方の予想はついているんじゃないか?」
「多分ですが地下に居ると思っています。はぐれ悪魔祓いは良く地下で儀式を行いますから」
「地下なら聖堂の先だ。祭壇の下に階段があり、その奥に大き目の部屋があったのを覚えている」
「じゃあアーシアはそこにいるんだな!?」
「俺は見てないから分からない。だが、可能性は高い」
この聖堂は晴心が3日間行き来した場所だ。この教会内部についてはそれなりの知識がある。
晴心が知っている地下と言えば聖堂の正面しか無い。かなり大人数が入る位の大きさだ。
恐らくそこにアーシアはいる。
「時間が無い。場所が分かったなら急ぐぞ!」
「分かった!待ってろアーシア!!」
晴心と一誠が先陣を切って走る。後を追うように子猫と木場がついてきた。
タイムリミットは、過ぎていた。
◇
地下の一本道を進み、大きな扉が晴心達の前に立ちはだかった。
中から大勢の人間の気配がする。恐らくここにアーシアが居るのだろう。晴心はスコーピオンを扉に構え、戦闘体制に入る。
「ここか」
「恐らく、ここに堕天使と悪魔祓いの大群が居ると思う。覚悟はいいかい?」
木場の言葉に小猫と一誠が頷き、晴心がスコーピオンを構え直す事で答える。
「ああ、それじゃあ扉を----」
一誠が扉を開けようとした時、扉が勝手に開いた。
「いらっしゃい、悪魔の皆さん。そしてか弱き人間くん」
部屋の奥からレイナーレの声が聞こえた。
部屋の中には神父が大量に居て、全員光の剣を装備していた。既に戦闘体制を整えていた様だ。
そしてその奥に、目的の少女がいた。
「アーシアァァ!!」
一誠が叫ぶ。
十字架に磔にされているアーシアは、一誠の声に顔を上げる。
「アーシア、助けに来たぞ!」
「イッセーさん……」
アーシアが涙を流す。
一誠とアーシアの感動の再開。それを邪魔するような声が2人を遮る。
「遅かったわね。もう儀式は終わる所よ」
瞬間、アーシアの体を眩い光が覆った。
「……あぁあ、いやぁぁぁぁぁッッ!!」
アーシアが苦しげに叫ぶ。
その姿を見て、一誠がアーシアの名を叫びながらアーシアの元へ駆け寄る。
「行かせるか!」
「悪魔め、滅してくれる!」
だがそれを邪魔しようと一誠の前に悪魔祓いが立ちはだかった。
「どけクソ神父共!お前らに構っている暇は無いんだ!」
構わず、一誠は悪魔祓いに特攻する。その一誠の行動に、悪魔祓いは光の剣を奮った。
「伏せろ一誠!」
一誠に声がかかった。その声に応えるべく一誠はその場に伏せる。
ドガガガガガガガガ!!
瞬間、一誠の前にいた悪魔祓いの体が弾けた。
悪魔祓いを弾けさせたのは、入口に固定砲台型の機関砲を構えている晴心だ。
「ソイツに構っている暇があるならこっちに来い!俺が戦い方を教えてやる!」
晴心が叫び、更に機関砲をぶちまける。
肉片を飛ばしながら、瞬時に死んでいく悪魔祓い達。
それとは別に、悪魔祓いが1人1人と事切れていっている。
「……触らないでください」
「最初から最大で行かせて貰おうかな。僕、神父は嫌いだからさ」
木場が闇を纏っている様な黒い剣を悪魔祓いに振るい、小猫が鉄拳で悪魔祓いを吹き飛ばす。
3人の援護により、一誠の前に道が出来上がった。
「行け、一誠!俺が援護する!後方は任せろ!」
晴心がTNT爆弾をつけた機関砲を敵に投げつけ、一誠の後ろにつく。
2人はアーシアの元へと走った。
「いやぁぁぁぁ……」
アーシアの胸からから大きな光が飛び出した。その光をレイナーレが掴む。
その光を、レイナーレは抱きとめた。緑色の光が地下の儀式場を包み込んだ。
光が止んだ時、レイナーレの体が緑色に発光していた。まるで先の光を支配した様な姿だ。
「アハハハハ!ついに手に入れた!至高の力!これで、これで私は至高の堕天使となれる!」
高笑いするレイナーレを他所に、一誠は磔にされたままぐったりとしているアーシアを抱き、十字架から開放する。
「貴様!」
晴心はレイナーレの胸にに単発で鉛玉一発を発射した。
弾は命中。レイナーレの胸に深々と穴を開ける。
「うふふ……」
だが、その胸の穴に緑色の光が覆い、穴が何も無かった様に塞がった。
「どうかしら、彼女の治癒能力は?これでもう貴方の神器は必要が無くなった。ここで終わりにしてあげる!」
「終わるのは貴様だ!ここで俺が貴様を屠る!」
晴心がスコーピオンをレイナーレに構える。レイナーレが晴心に光の槍を向ける。
「一誠!アーシアを連れて逃げろ!まだ息があるなら助かる見込みはある!」
「お前は!?」
「俺はコイツを足止めする!」
晴心の言葉に一誠が頷き、木場と子猫の援護の元、アーシアを抱き抱えて儀式場の外へと出た。
「無駄よ、神器が無い者は生きられない。あの子は確実に死ぬ」
「まだ分からん。俺は最後まで諦めんぞ!」
「無駄な事を……貴方も楽にしてあげるわ!」
「死ぬのはお前だ。これ以上犠牲者は出させん!」
晴心がスコーピオンを連射した。