ハイスクールD×D 人間は現代兵器と戦法で勝る 作:BroBro
ダダダダダダダダ!!
スコーピオンが鉛弾を吐き出す。
それを空中で旋回しながら躱していく堕天使のレイナーレ。その両腕には数発の弾痕があるものの、直ぐに跡形もなく消えて行っていた。
進展のない攻防に晴心は焦りもしない。冷静に柱に隠れ、スキを見てスコーピオンを連射すると言うヒットアンドアウェイの戦法を繰り広げていた。
レイナーレが晴心が隠れている柱に向けて光の槍を連続で投げ付け、晴心が隠れている柱を破壊する。
「ふっ!」
崩れる柱の隙間から銃撃する。
だが、レイナーレには当たらず、まるで見切られている様に躱された。
「ふふ、もっとよ。もっと私を楽しませて見なさい!」
高笑いをしながら晴心に光の槍を投げる。晴心は体勢を低くしながら移動し、次の柱へと移っていく。
そしてまた銃撃。既に何回も行っているこの攻防に終わりが見えなかった。救いは、木場達が一誠を追いかけ、部屋から出ていった事で暴れやすくなった事だろうか。
だが、それでも基本スペックにより、晴心は窮地に立たされていた。
(もう少し……もう少しでレベルが上がる……!)
晴心は半透明の青いモニターの様な物を目の前に出現させ、画面上部のバーを確認する。
このバーは、RPGゲームで言うレベルアップまでの経験値数の様なもので、晴心は敵の武器を回収する事でこのゲージが貯まっていく。
ゲージが貯まると新たな兵器がアンロックし、即座に使用可能になる。因みに、前回のレベルアップは戦闘ヘリ召喚の際の体力消費を軽減すると言うものだった。
今回は何が来るか分からない。だが、この戦況の晴心には、このレベルアップに縋るしか無い。
(さっき殺した悪魔祓い達の武器はまだ落ちている。あれを回収するには奴の正面に出なくてはならないか……)
あと1つの武器でレベルが上がるのだが、経験値と言える敵の武器はレイナーレの目の前にあった。武器をとるには、レイナーレに自分の姿を晒さなければならない。
はっきり言って自殺行為だ。
「まだ、その時じゃない!」
晴心はレイナーレに向けて更にスコーピオンを撃つ。それも簡単に躱された。
レイナーレが晴心に光の槍の切っ先を向ける。
「芸が無いわね。つまらないわ」
瞬間、レイナーレが突撃してきた。
10mあった2人の距離は一瞬で2mに縮まり、光の槍が晴心の目の前に迫る。
「………!!」
体を捻る。
光の槍は晴心の頬を掠め、レイナーレと一緒に晴心を追い越した。
(今だ!)
チャンスと見て、晴心は前方にある悪魔祓いの武器へと走る。
だが、
「ぐがッ……!」
晴心の右肩を光の槍が貫いた。
右半身の感覚が消えたのと同時に、晴心は近くにあった瓦礫の山へと身を潜める。
「私から逃げられると思っていたのかしら?」
「クソが……うぅ!」
右肩が痛む。右手が飾りの様にプラプラと揺れ、骨が繋がっていない様に見えた。
右肩を貫いた光の槍は弾丸の3倍位の大きさだ。貫通したのは嬉しいが、弾丸より傷口が深く、ボタボタと血が溢れ出してくる。
幸い晴心は左利きのため、銃を撃つことに支障はない。だがそれでも出血量は多い。
時間が無い。
(うぐぅ……!)
少しづつ迫ってくるレイナーレに対してスコーピオンを連射する。
数発の弾丸はヒットしたが、その傷は直ぐに復元させられた。
晴心は腰ぐらいの高さの瓦礫の山に身を隠し、次のチャンスを待つ。
(もう少しなのに!)
生物の核となる部分は心臓では無く脳だ。いくら回復が出来るからと言っても頭を撃ち抜けば即死し、回復も出来なくなる。晴心もそれを理解しており、積極的に頭を狙っていた。
だが、頭部狙いの銃弾は全て避けられ、代わりに体への銃弾は命中している。レイナーレは頭狙いの攻撃だけを躱しているのだ。
体の銃弾を躱すのは容易では無いが、頭だけとなれば話は別。宙に浮く能力と堕天使の反射神経ならば簡単に躱せられる。
それに対して晴心は地を這うただの人間。体の何処かに一撃でも喰らえば体力と気力は一気に落ちる。回復できるレイナーレに比べれば天と地程の差があった。
(このまま戦っていても勝てない…)
晴心が大きな舌打ちをする。
やはりレベルアップにかけるしか無い。ヘリのサポートは出来ないし、閉鎖空間のため装甲車も出せない。
(なんとか注意を逸らさねば……)
膝に銃身を乗せ、左手でスコーピオンをリロードする。
瓦礫から上半身だけを出し、レイナーレに銃撃するが、致命傷には至らず、お返しと言わんばかりに晴心に光の槍を5本投げつけてきた。
(……ここだな!)
真っ直ぐに向かってくる光の槍を右にスライディングする事で躱し、同時にレイナーレの真上の天井の亀裂にグレネードを放り投げた。
グレネードは亀裂の間に挟まり、数秒後、
ドオォォォォンン!!
爆発を起こした。
グレネードが起こした爆発が天井の亀裂を更に伸ばしていき、レイナーレの上に天井の一部が降り注ぐ。
「な!?」
突然の爆発に驚きながらも、レイナーレは自分に降り注ぐ天井の瓦礫を冷静に光の槍で切断していく。
「もらった!!」
レイナーレが瓦礫に集中している隙に、晴心は堕天使の武器の元へと走る。
そして、悪魔祓いが持っていた光を打ち出す銃を足ですくい上げ、自分の手中に収めた。
銃が瞬く間に白くなり、光の粒となって晴心の左手に吸収されていった。これでレベルが上がる。
はずだった。
「……あ」
晴心の体に異変は無く、開いた半透明のモニターのゲージも溜まってはいなかった。
残り1cmの隙間を残し、ゲージが停止していた。
ザシュッ!
晴心の腹に衝撃が走り抜ける。
「ゴフッ……が……」
晴心は膝を着き、天を仰いだ。
その視線の先には黒い翼を羽ばたかせたレイナーレが槍を構え、笑っていた。
「いいザマね。人間如き下級生物の中では、よく頑張った方だと思うわ」
「………」
腹部に空いた大きな穴から滝の様に血が溢れてくる。足に力が入らなく、上半身しか動かなかった。
スコーピオンが手からこぼれ落ちる。
瞳からは少しづつ光が消えていく。その暗い瞳は、しっかりとレイナーレを捉えていた。
「でも、もうおしまい。光栄に思いなさい。あなたは私自らトドメを刺してあげるのだから」
レイナーレが振りかぶり、晴心に向けて槍を投げた。
(………まだ)
晴心の手が、ゆっくりと上がる。
(………死ねない)
猛スピードで迫る槍。その光景を晴心は放心状態で見ていた。
(俺は……まだ………)
上げた手を、自分の顔の前に出す。
(………いきる………)
槍は既に晴心の目の前にまで接近していた。大人の拳程の大きさの槍が、晴心の顔面に直撃
する事はなかった。
パシ……
上げた手が、レイナーレの槍を捉え、取り押さえた。
光の槍が、白い粒となって晴心の左手に吸収されていく。
瞬間、晴心の周りに6つの光が出現した。
◇
レイナーレは何が起こったのか一瞬分からなかった。
出血多量で放心状態。地に膝をつき、武器を取りこぼした。
明らかに戦意は消えていた。正確な判断が下せない状態の筈だった。
だから、ただ何の芸も付けず、頭部に向けて槍を投げたのだ。
狙いは完璧。槍は晴心の眉間に吸い込まれる様に直進していき、見事に頭部を砕く筈だった。
だが晴心は虚ろに上げた左手で高速の槍を掴み、自らの中に吸い込んだ。
そして晴心を囲む様に現れる6つの光の柱。その柱は少しづつ形を変えていき、とても身近な形に変わって行った。
「ムーブ!」
形を成した光の柱が叫んだ。
ババババババババババ!!
瞬間、周囲の光がレイナーレに向けて銃弾を撃ち出す。
「くッ……なに!?」
6つの光からの一方的な攻撃。流石のレイナーレも音速並の銃弾を何発も避けられず、柱の影に避難する。
「カバー!」
「リロード!」
光から様々な声が飛び交う。
その光に色が付いていき、遂に完全に形を成した。
「あれは……人間?」
その形は人形で、デジタル迷彩の戦闘服を着用。ゴーグルにマスク、防弾チョッキを装備し、M4マシンガンを持っていた。
その軍隊の様な格好の6人は瓦礫や柱の裏などに身を隠しながらレイナーレのいる柱に向けて銃撃する。
「弾が尽きた!リロード!カバー頼む!」
「了解!」
3人同時に柱に向けて銃弾を放ち、3人の弾が尽きたら他の3人が柱に向けて銃撃する。この戦法は殆ど反撃の隙が無く、レイナーレは柱から出ることが出来なかった。
「α3は隊長を確保しろ!α2はα3の援護!」
「「了解!!」」
レイナーレが動けない時、光のα3と呼ばれた兵は晴心の確保へと向かう。
それに続いてα2がレイナーレの方向にM4を向けながら晴心の方へと向かう。
「チッ!」
その姿を見たレイナーレは柱から体をだし、光の槍をは晴心に投げようと振りかぶる。
ドガガガガガガガ!!
だが、槍を持つ手を5人の兵達に撃ち抜かれ、槍を落とす。それだけでは終わらず、更に足や胸に数多の銃弾を浴びた。
直ぐに元の柱に身を隠す。ものの1秒ほど体を出しただけなのに、レイナーレの体には何十個もの銃痕が残されていた。
痛みに顔を歪めながら、体の傷を治していく。
その内に、α3が晴心の元にたどり着いた。
「な……なんだ……?」
「話は後です。今応急処置しますので、動かないで下さい」
α3は腰に下げていた箱を取り出すと、中から注射針、止血剤、消毒液、包帯等などを広げ、それぞれの負傷部位に的確に処置していく。
最後に鎮痛剤をぶち込んで応急処置は終了。この間約3分と言う驚異的なスピードで応急処置を終わらせた。
「……完了しました。仲間が援護してくれますから安全な場所に移りましょう」
「あ…あぁ……」
α3に肩を支えられ、レイナーレと対格になる様にあった柱の影に身を潜める。
鎮痛剤と止血剤を使っていると言っても、晴心は既に相当な量の血を流している。まだ自力で歩けるほど回復してはいない。
それでも、晴心は連発する銃声をBGMに、α3に詳細を聞いた。
「それで……お前らは?」
「我々は貴方が呼び出した『α分隊』です。貴方で言うレベルアップ報酬のような物と思ってもらって良いでしょう」
「俺が生き物を呼び寄せた?」
「我々は戦死者の魂をベースに作成されたAIの様なものです。肉体は只の人間と酷似していますが、我々は人間では無く無機質の動く物体です」
「お前達は、俺の仲間と言う事になるのか?」
「そのような解釈で間違いないかと。ですので、我々には隊長である貴方の指示が必要です。重傷の状態で申し訳ないのですが、どうか我々に最初の任務を…」
周りで銃撃戦をしている者全てが味方。この事実は今まで一人で戦ってきた晴心にとってはとても心強い事だった。
それに加え、晴心は実戦経験がある。仲間と連携を取りながら敵を暗殺するのは得意中の得意だった。
「確かα分隊と言ったな。お前のコードネームは?」
「α3です。そこで援護しているのがα2です」
「……了解した。α3はα2と共に俺を援護してくれ。他の者はこのまま撃ち続けてろ!」
「「「「「了解!」」」」」
痛む体をなんとか制御し、晴心は立ち上がる。
そして、α2、3と共に部屋の壁をなぞる様に移動した。その間他の者達はM4を撃ち続ける。
レイナーレがいる柱の横の柱についた晴心は、自身のホルスターからコンバットデルタを取り出した。
まだ弾が入っている弾倉を落とし、新たに赤い弾が入った弾倉をこめる。
「ムーブ!」
晴心が叫び、α3とα2が柱から飛び出した。
それと同時に、α1、4、5、6が撃ちながら前進する。
「チィッ!!」
大きな舌打ちをしながら、レイナーレは光の槍を作り出し、α3に向かって振りかぶった。
ダダダダダダダダダ!!
だが、反対側の柱から出てきたα2が光の槍を撃ち落とす。
α3がレイナーレに銃口を向け、黒い羽の付け根に数十発の弾丸を食らわせる。
羽根が引きちぎれ、レイナーレは地面に落下した。地に堕ちたレイナーレを取り囲む様にα分隊が銃口を向けた。
「ぐぅっ……私が、人間如きに……!」
羽根を治す為に翠の光を背中に纏わせるが、羽根が元に戻る事はなかった。千切れた物は治せないのだろう。
そんな哀れにのたうち回るレイナーレの頭部に、晴心はコンバットデルタを向けた。
「人間殺しを生かしておく訳には行かなくてな。残念だろうが、ここで終了だ」
「ま、待って! もう私は人間を殺さないわ!だから……!」
声色を変え、レイナーレは必死に命乞いをする。
その姿が敵ながら、なんとも哀れにに見えた。
「……先に地獄に行っていろ」
ダアァン!
敵にやる慈悲は無い。敵にくれてやるのは弾丸だけだ。
晴心は米軍時代の教訓にしてきた言葉に従い、引き金を引いた。
一誠の覚醒イベント?知らない子ですね