ハイスクールD×D 人間は現代兵器と戦法で勝る 作:BroBro
今回から新章です。何なりとご覧下さい。
月光
「……はい、お嬢様は駒王学園におられます。明日には駒王学園へと起てるかと。お嬢様には一声かけてあります」
「……ええ、恐らく直ぐには承諾しないでしょう。その為の『レーティング・ゲーム』ですから」
「駒王学園には昼頃に向かいます。一般人は我々の事を認知出来ない時間帯です。人目を気にせず、話し合いが出来ます」
「障害になる物はほとんど無し。ですが、1つ駒王学園のある駒王町についての噂がありまして……」
「最近、主の元を離れた悪魔(はぐれ悪魔)が人間界に着いて1日足らずで息絶えると言う現象が相次いで起こっています」
「中にはそれなりの実力を持っていた者もいた様ですが、それらも全て一夜で殺されている様です」
「その者は夜にしか姿を現さず、朝には何事も無かったかのように忽然と姿を晦ますとか」
「悪魔の中でもこの噂が広がっており、この者の事を『月光』と呼ぶ輩が増えてきています」
「……はい、全て同一人物による犯行です。中には別人の犯行と思わしき死体もあるのですが、大半が同じ人物と思われます」
「……そうです。はぐれ悪魔達の死因は数発の攻撃。その攻撃方法は銃撃です」
「殆どの死体が、眉間に一発を入れられ、即死しています。争った後が無い事から、完璧な不意打ちと見て間違いないでしょう」
「ライザー様の足元にも及ばない様な者ですが、充分警戒を。その者が、本当に独りで行動しているとは限りませんので」
「……はい、では予定通りに。明日出発いたします」
「ライザー・フェニックス様」
◇
「この1週間で、我々の監視対象である悪魔『リアス・グレモリー』とその下僕と呼ばれる仲間達が人間を襲っていると言う情報はありません。また、彼等の仕事である契約についても調べましたが、契約者本人の同意の元、合法的に契約を行っているようです。そして現在も、中佐が危惧している事態には至っておりません」
「一応聞いておくが、連中の芝居と言う可能性はあると思うか?」
「ハッキリ言って、無いと思います」
「ふむ……」
王生家、晴心部屋。
無駄な物が少なく、綺麗すぎる程の部屋の真ん中に置いてある机で、向かい合う様に座っている晴心とα1がいた。
机にはレポートの様な物が8枚置いてあり、晴心はそれを見て深く考え込む様に顔を下げる。
「やはり、まだ彼等を信用出来ませんか?」
「今までの私の経験のせいか、信用する為の決定的な物が欲しくなってしまってね。まぁ、恐らく心配は無いとは思うが、念のためもう少し悪魔達を警戒しておいて欲しい」
「了解です!中佐」
「うん。それで、これからの活動の詳細だが……」
とても重圧感のある口振りで、晴心はα1に今後の活動を話す。今の晴心は、この世界に来る前の人間だ。今まで学園生活に馴染む為に一人称を変えていたが、本当は既に50を過ぎたおっさんである。
つい数日前に16歳の誕生日(経験年齢61)を迎えたばかりのこの男は、毎日の生活に少々無理をしていた。
元は一時期ではあるものの3000人規模の人間を率いて来た総督だ。口振りも完全には変えられないため、オフの時間だけ一人称を『私』に戻している。
「万が一敵対した時の為に悪魔達の力が知りたい。探ってこれるかな?」
「それならば、既に調査済みです」
「仕事が早い様で嬉しいよ。それで、彼等に有効な手段は?」
「リアス・グレモリー達は完全なパワータイプです。リアス・グレモリーは破滅の力を、木場佑斗は剣さばきとスピードを、塔城子猫は爆発的な筋力と防御力を、兵藤一誠は自身の攻撃力を倍加する神器を、姫島朱乃は雷撃の力を。これら攻撃部隊を支援するのが、回復スキルを持つアーシア・アルジェントです。兵藤一誠はこれと言って目立った力はありませんが、これから力が飛躍的に上昇する可能性もあります」
「なるほど……パワータイプなほど、全員で攻撃されたら対処が出来ない。なんとか一人一人を分散させる方法を考えるべきか……」
「最近の堕天使達の行動も活発化して来ていますし、それらを同時に対処できる戦略が必要です」
この敵か味方か分からない者達と表面的な同盟を組んでる状態で、一番危惧すべきはリアス達が攻撃してくる事である。
現代兵器で対処しなければいけなく、普段部隊のメンバーを分担させている晴心とα小隊にとっては、攻撃時の予想がつかない強襲が一番恐ろしい攻撃方法だ。
しかも最近になって堕天使達の行動が少し活発化して来ている。この事も頭に入れながら戦略を練らなければならない。
これらを対処するには、迅速な部隊集結と、リアスや堕天使達の動きを知る事が重要になって来る。
しかし、晴心は情報統制の心配は一切しない。それにはらとある理由がある。
「だが、情報は握ったと見て良いだろう。何かあったら報告を待つだけだ」
「ですが中佐、奴は本当に我々に協力しているのでしょうか?自分には、まだやつの事は信用できません」
「それが普通の考えだろう。だが、残念ながら私は頭のネジの何処かが外れているらしくてね。普通の判断が出来ないのだよ」
「ご冗談を……」
「それに、もう何回も情報を送って行くれているのだ。明確な証拠がある以上、信用せざるを得んよ。それに、奴とはお前達以上に付き合いが長いんだぞ?」
「まぁ……そうですね……」
突然、部屋の引き出しの中に置かれている通信機(トランシーバー)からビビビッと言う発信音が鳴り響いた。
それを晴心が待ってましたとばかりに手に取り、緑色の通話ボタンを押した。
「こちら中佐だ。ヤマト、聞こえるか?」
耳に当て、聞こえてくる筈の音声を待つ。
だが、聞こえてくるのは何かが擦れる音と慌てる様にカリカリと引っかいている様な音だけだった。
この音を聞き、ハァ…と大きな溜息をした後、すぅっと息を大きく吸う。
「ヤマト!!!」
『うわぁ!』
大声をトランシーバーを持っているも思われる人物に浴びせかける。
小さく悲鳴を上げる女性の声。その数秒後、何がおきたのか理解した声の主は、マイクに向かって話し始めた。
『そんな大きな声を出さなくてもいいにゃ!』
「こうでもしないと聞こえない。どうせまたボリュームを下げてたんだろ?」
『五月蝿い!だって機械とかまだよく分からないし、このトランスフォーマーとか言うのだって使い方を完璧に覚えた訳じゃないにゃ!』
「別にそれは変形しないから。トランシーバーだから。あともう何回も連絡してんだからそろそろ使い方位覚えろよ」
『分からない物は分からない!』
(開き直りやがった……)
話が脱線して来ている事にここまでは何時も気付かない。
ここで、晴心が話を元に戻そうと話を変える。
「それはいいとして、今回はどうなんだ?」
『壊れ掛けの小さい協会に3人の堕天使がいるにゃ。2人は黒いタキシードの様な物を着て、もう一人は紳士服の様な律儀な格好をしてる。何かを探している様だけど、周りに赤い液体が飛び散っている所を見ると、余り穏やかじゃない感じだにゃ』
「了解した。β小隊を送る。座標を言ってくれ」
『え〜と……アップ〇ランド駒王店の二軒隣の家にゃ。ほら、今日卵のバーゲンセールがあった所の…』
「……はぁ、了解した。直ぐに向かわせる。ヤマトは暫くそこら辺の安全な場所で待機していてくれ」
『あのさ、別にコードネームで呼ぶ必要は無いと思うんだけど?』
「細かい事はいいから、黒歌は早く待機していろ」
『ふふふ、そんな事言いながらちゃんと名前で呼んでくれる所が可愛いにゃ〜』
「Shut Up!!」
ピシュンと機械的な音を立ててトランシーバーは音を止める。
ついつい442連隊戦闘団にいた時の癖で英語で切ってしまったが、まぁ相手がアレだからいいか。と心で反復しながらα1に向き直り、机に置いてある駒王町の地図の一部を指さす。
「α1、β小隊に通達だ。至急、アップ〇ランドに急行してくれ。武装はいつも通りだ。α3と4も合流させろ」
「はッ!」
バタンッと言う音を立て、晴心の部屋の扉が閉まる。部屋に1人残った晴心は、地図に載っているアップ〇ランドの近くの家を紅く塗り潰した。
「……やはり、何かあるな」
駒王学園を中心とし、円を描く形で紅く塗られている地図を見て、晴心は溜息と共に呆れの感情が混ざった言葉を発した。
何か探しているのか、誰かを探しているのかは知らないが、堕天使の動きを最新の注意を払って見張る必要がある。
「あっちもこっちも敵だらけ……昔を思い出すな。思い出したくないけど」
目の前に青白いウィンドウを開き、現在の兵力を確認する。
最近レベルが上がり、入隊してきたβ小隊。彼等は主に狙撃に特化している。勿論、近接戦闘や泥沼の銃撃戦も出来るのだが、狙撃と言う長所がある故、α小隊と晴心の後衛に着いて貰っている。
装甲車や戦闘ヘリは二機まで同時運用が可能。地雷やタレット等の設置型兵器も多く運用出来る様になった。
追撃等は昔よりは長けてきている筈だ。もしもの時は軍備を総動員して対処すればいい。
今の晴心の一番の問題はモチベーションだ。
「明日学校か……面倒臭いな」
世界には学校に行けない子供も居ると言う事実は分かっているつもりだが、どうしても欝にならずには居られ無かった。
キーン コーン カーン コーン……
毎日の鬱な時間が終わりを告げた。
教室の生徒はワラワラと家へと帰宅する為に席を立ち、先生は名簿表を持ち教室から出る。
毎日の様に子猫が猫の如く俺を睨んでくるが、そんな事気にせずに荷物をまとめる。そろそろ信頼性を上げないと後々面倒臭いな。
まぁ、今はそんな事どうでもいい。今日もとっとと部室へと向かおう。
大型のリュックを背負い、俺は席を立つ。
「あ、そう言えば俺今日日直だったんだっけ……」
すっかり忘れてた……。他はどうかは知らないが、ウチの学園は今日あった出来事を纏めたプリントを毎日提出しなければならない。
昔のプリントの山と格闘する日々と比べたら相当マシだが、それでも面倒臭い事に変わりはない。でも行かなきゃいけないので、俺は職員室へと向かった。
「はぁ、ようやく終わった……」
何処に不満があるのかも分からないままに何故かプリントを書き直させられたが、何とか30分以内に終わらすことが出来た。これも昔の事務仕事の賜物か……ありがたや ありがたや。
さて、気を取り直して旧校舎へ向かうとしよう。相当時間が経ってしまったが、現場にいるα小隊はどうしているだろうか?
そろそろ個人の名前でも決めようと思っていたのに、どうやって話すか忘れてしまった。奴等自分達の魂に名前の記憶は無いとか言いやがって。何時までもα1とか2とかじゃ可愛そうだからなぁ。こういうのを考えるのも総隊長の務めか。
務めか?
何となく面白くもない考え事をしながら旧校舎へと歩を進める。妙に本校舎から距離のある部室へと向かう事1分、漸く旧校舎が見えてきた。
「ん?」
その旧校舎は何処かいつもと違う違う気がして、変な違和感があった。この時間帯はまだ連中の仕事に行っていない筈なのに、何故か水を打った後の様に静かだ。
これは、警戒を強める必要がある。α小隊がいるからって安心は出来ない。
俺はハンドガンを腰ホルスターにしまい、念のためデリンジャー(ポケットハンドガン)を裾に隠しながら少しづつ旧校舎へと近づく。
その時だった。
ボオォォォォウウ!!!
旧校舎の窓と言う窓から紅蓮に燃え盛る炎が穴の空いたタイヤから空気が漏れるかの様に吹き出した。
まさか火事とは……想定外の自体だ。火の形状からいってグレネードの類では無いがナパームとも少し違う。正体は分からないが、早急に旧校舎から紅蓮を消し去る必要がある。
俺は急ぎ旧校舎へと向かい、廊下に置いてあった消火器を手に取り、勢い良く部室の扉を開けた。
「火元は何処じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
俺自身、テンションが上がっている理由は分からないが、大声で叫びながら部室の中を見渡す。急いで火を消火しなければ……!
だが
「中佐!」
「晴心……?」
そこにいたのは真っ赤に燃える火などではなく、一人の男を半分囲む様にして立っているリアス先輩一同と、その後ろで小銃を抱えているα小隊だった。
「誰だおまえ?」
見知らぬ金髪の男が体から火の粉を散らしながら俺に問い掛けてきた。見た目はリアス先輩と同じ位。それに加え趣味の悪い赤色の制服の様な物を着ている。にしても、
初見の人間に向かってなんだこの口の聞き方は。これだから最近の若い連中は困る。
「ライザー、この人が先ほど話した者よ」
少し叱ってやろうと構えた時、俺の事と思わしき事をライザーと呼ばれる男に話した。
俺が来る前に俺の事を話していたらしい。わざわざご苦労な事だ。
「ほう……お前が『月光(ムーン・ライト)』か」
「月光?俺は王生晴心だ。それ以上でもそれ以下でも無い」
月光とは俺の事なのだろうが、俺の名前はご存知の通り王生晴心だ。月光と呼ばれる記憶も何一つ無い。てか何だムーンライトって……中二臭すぎるぞ。
俺がどういう事か説明を求めると、ライザーと言う男の隣にいたメイド服のグレイフィアと名乗る女性が説明してくれた。
「月光と言うのは魔界での貴方の名称です。貴方が討伐したはぐれ悪魔があまりにも多く、対応も早い事から、『夜に現れる光』と言う意味でこの通り名がつけられました」
とても丁寧な説明に感謝したい。この人に習ってライザーって野郎も礼儀を知れば良いものを……。
にしても俺が別名で魔界に名を馳せる事になるとは思わなかった。喜んでいいのか悪いのか分からんな。
だが、ここで一つ訂正して置かなければならない箇所がある。礼儀には礼儀で返さねば……
「自分は単身ではぐれ悪魔を屠ってきた訳ではありません。自分の仲間がいてこその結果です。その箇所は修整願いたい」
「……なるほど、リアス様の言葉通りの人の様ですね。人間として置くのには勿体ない位です」
「残念ですが、自分は人間を辞めるつもりはありません。今は授かった命を、与えられた制限時間の内に最大限に輝かす事を目標に生きております。与えられた人間の体のみで、この "人" 生を全うする所存であります。ご理解頂けないと思いますが、この意思を曲げるつもりはありません」
「いえ、充分理解出来ました。どうやら、予想以上に強い意思をお持ちの様ですね」
何か久しぶりにまともな会話をした気がする。今まで碌な連中がいなかったから、こういう人と会話すると本当の自分に戻れる様だ。
「ん、んん!そろそろ話を戻してもいいかな?」
金髪の男がわざとらしく咳払いをする。それと同時に、今までボーッとしていたリアス先輩達が男を睨みつけた。
眷属達も警戒態勢を作り、ライザーから発せられる言葉を待つ。
そして、リアス先輩が口を開いた。
「ライザー、私は絶対に貴方と結婚しない。私は自分の人生は自分で決める!」
この時、何の話かも分からず聞いていた俺が、まさかこの野郎の一言で波乱に巻き込まれる事は、予想すらしていなかった。
いけ好かないイケメン野郎と接触だけで終わってしまいましたが、前半が伏線の地雷原になりました。爆発しなかった人はもう一度地雷原を歩いて見て下さい。