デミえもん、愛してる! 作:加藤那智
はじめてデミウルゴスを見たとき体に電流が走った。
「えへへ、おはようデミウルゴスー」
起きて1番にデミウルゴスに挨拶する。
ここは第7階層のデミウルゴスの執務室。ログイン、ログアウト場所はここに決めていた。
ニョロニョロぴょん!
ニョロニョロぴょん!としながら、デミウルゴスに近づく。
わたしはナザリック内ではレベルダウンのリングをしてコブラの体になっていることが多い。
半人半神形でいると、どこからか兄がやってきてぎゅうぎゅう抱きしめてくるのだ。
そうなるともう抱き枕状態にされるので兄の気がすむまで行動が不可能になる。困ったおにいたん。
あんまり嫌がるとリアルでいじけるので、添い寝したりして機嫌をとらないとならなくなる。かわいいおにいたん。
そんなわけでコブラ体でいることが多くなった。
コブラの体は進むスピードをあまり考えず外装優先でつくったので、すごくのろい。
尻尾が少ししかないので飛び跳ねたほうがはやいくらい。
ぴょんぴょん。
キャラメイクしたデフォルメされたコブラは、体長80センチ位で立ち上がる部分は50センチほど。全身は白く金色の光沢がある。頭の下のフードは威嚇していなくても常時広がっており、ハムスターみたいな丸い黒目だ。
足が遅いのと手軽さからギルメンにはよく持ち運ばれている。
半人半神形のときも結構抱っこされていることが多い。
スキャニング外装を基本に使用しているため、リアルでなかなか背が伸びないのがそのままユグドラシルにも反映されていて小さいまんまなのだ。むう。
鍛えすぎて骨にいく分を筋肉に使ってしまったせいかもしれない。いっそもっとムキムキになればいいのに新体操選手みたいな筋肉だ。もっと牛乳を飲もう。そしてアルベドみたいな、でるとこでてて引っ込むとこ引っ込んでる体型になるんだ。
ぴょんぴょん。
やっと机に近づけた。
椅子にすわって書類整理しているデミウルゴスの膝にのる。
「ついた〜!」
デミウルゴス充。はわーん。幸せ。
たっちさんから拠点づくりはじめるよーと言われたときは、やっとデミウルゴスに会える!と大喜びした。
はやる気持ちをおさえられず、拠点ーーナザリックにドンドン課金していたら職質された。リアル警察官こわい。ちびる。
犯人はわたしじゃありません!と心でいいながら説明したら、自分の稼いだお金だよーというのがわかってもらえて遠慮なく課金していった。
ガチャが「あと10000回回せます」て表示されたときは1回1回回すのも大変だからもうちょっとなんとかしてもらえないか運営に頼んだらいっぺんに回せるようにしてくれた。
あわせてアイテムボックス拡張も拡張数指定できるようにしてほしい、ていったら1週間でできるようになった。運営ありがとうありがとう。
拠点づくりが進んで、
ドーン!
ドーン!
と、階層を追加していって、第7階層までできたときには感動したなあ。
ここがデミウルゴスのおうち……!
ギルメンみんなの前での階層守護者お披露目の時は心臓がバクバクしてた。
だって生デミウルゴスだよ!?生デミー!
期待と焦りで高揚する気持ちを抑えつつお披露目を迎えた。
第1階層からお披露目がはじまり、シャルティアを披露するおにいたんは「俺の夢を全てつぎ込んだ!」ドヤア!と言っていた。おにいたんの夢が眩しくてみられないよ。
ガルガンチュアには男性陣が興奮していた!ど迫力!
とっても大きくて中に乗って操縦できたりするんじゃないのかなーて思うほど大きかった、ゴーレムというより建物、ビルみたい。
コキュートスを見た時は、仏教の護法善神の金剛力士像を初めて見た時のような感動を受けた。
はやく手合わせしたいな〜転移が待ち遠しいなあ〜。
アウラは驚いた。紹介する時、お姉ちゃんが、
あれ、女の子だったよね?と疑問に思いお姉ちゃんに聞いたら、「妹充はできてるから、足りないのは弟充なのよね」と言われた。えー。
アウラとマーレは、男の双子になっていた!
そして、いよいよデミウルゴスの番がやってきた。
ウルベルトさんによるデミウルゴスの紹介がはじまり、悪魔は姿を現した。
その時の気持ちをなんていったらいいのか……!
どこか、期待したほどじゃないだろう、実在じゃない偽物なんだから、とハードルを下げてガッカリしないようにしていたのに、一目みて心奪われた。
たしかに、ゲーム内のキャラクターである為、リアルのような質感や温かみはない。
けれどわたしにとっては彼は偽物ではなく本物だった。
同時に今はまだ彼に意識が芽生えていないことに安堵した。相手に意識があればこんな一方的に好意を押し付けることはとてもとてもできないだろう。
転移前だからできることだ。
デミウルゴスの後、ヴィクティム、セバス、アルベドの紹介をする。みんなが階層守護者に近寄って、触ったり、モーション、ステータスを確認して、出来栄えの感想を交わしている中で、わたしはデミウルゴスをガン見していた。
かぁこいいようかっこいいようー。うーうーうー。どうしよう触りたいようー。
触っても特に感触がないことはわかっていても触れてみたかった。
ギルメンがいなければ、ぎゅっと抱きついたり、床でじたばた悶えてたかもしれない。
身長181cmのデミウルゴスをわたしが見上げると後ろに転びそうになる。
なので、ぴょんぴょん飛び跳ねてみていたら、餡ころもっちもちさんに
「抱っこしてほしいの?」
と言われて、餡ころもっちもちさんに抱っこしてもらえたら、デミウルゴスの顔をもっと間近でみれる!と思い、
「あ……はい!もしよかったら」
と答えたら、餡ころもっちもちさんは「ヘロヘロさーん!」とヘロヘロさんを呼んだ。
あれ、餡ころもっちもちさんが抱っこしてくれるんじゃなかったのかな?
と不思議に思っていたら、
餡「ウラちゃんNPCに抱っこしてもらいたいみたいですよ〜」
ヘ「あ、そうなんですか。あー確かにウラちゃんギルメンいない時でもNPCが運んでくれたら便利ですよねえ」
えっ?えっ?
「あーそうだねー」「そうですね」「いいかも」「いいんじゃないですか」「うんうん」「いんじゃね」「じゃ、時間見て全NPCにプログラム流しておきます」
こうしてわたしがよくわかっていない間に、抱っこプログラムがNPCたちに追加された。なにこの棚から餡ころもっちもち。
ありがとう餡ころもっちもちさん!
ありがとうヘロヘロさん!
おかげでわたし幸せです!
「『デミウルゴス』『抱っこ』して」
名前と行動指定ワードをいうと、デミウルゴスの腕が動き抱っこしてくれる。
はわわ〜ん。お顔が間近に見れて鼻血でそう。目は宝石なんだよね。目を開く動作はないから転移しないと見られないのかあ。目開いたらどんな感じなのかなーわくわく。
ちら。執務室のドアはぴったり閉まっているのを確認。
「んーいしょ、えいえいっ」
半人半神形のときに指にした指輪は、コブラになると歯に通された状態になる。わたしは口のなかをむにむにさせて、歯に通されたレベルダウンの指輪を外した。
目線が少し高くなり自分の手と白い前髪が目に入る。にぎにぎ手を閉じたり開いたりして動きを確かめた後、抱っこされたままの状態で腰をひねり、デミウルゴスに抱きつく。コブラだと抱きつけないのが難点である。
横顔をじっと見つめる。ほっぺにちゅーしたい。
しかしまだ意識がないとはいえ、キスをする勇気はない。なんか悪い気がする。ひょっとしたら悪魔にもファーストほっぺちゅーに何か思いいれがあるかもしれない。そうだ、了承なくほっぺを奪うのはよく無い。単に勇気がないだけ、ヘタレともいう。
デミウルゴスの首筋に顔をうずめて落ち着く。体温はないけど落ち着く。
「デミウルゴス好き」
そのままログインを維持しつつ仕事をはじめた。しあわせニヨニヨ。
デーミデミ充!充!