ラブライブ! ~お嬢様と一つ屋根の下~   作:軍曹ニキ

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key.14 にこにこのミラクル

かよちんの風邪も治って、メンバー全員で練習する日常が再び戻ってきた。

 

いつものように朝には神社で練習し、放課後は学校の屋上で練習。

 

 

 

…だが、何かおかしい。

 

なんだろう、違和感は。

 

 

 

誰かに見られている気がする。

 

 

 

俺が気にし過ぎなのだろうか?

自分で自分のことを神経質だとは思ったことはこれまでにないのだが…

 

それでも、誰かからの目線が気になる。

 

今までは感じることがなかったのだが…ふと、その目線が気になる方にチラリと見てみる。

明らかに人影が一瞬隠れるのが見えた。あれが目線の正体だろう。何者だ。

 

 

普通に断定するならば不審者だろうか?

いや、不審者ともあろう者が、こんな明るい朝っぱらから表に出てくるわけがない。

 

だとすれば…追っかけ、ファンの人?

そう考えるのも多少無理があるな。μ'sはまだ駆け出しのグループなのだ。

前に穂乃果先輩に見せてもらったが、誰が撮ったのかわからない講堂のライブ映像。それを見たにしてもいくら何でも固定客がつくには心もとない実績なのだから。

 

そんな俺達のことを知っているのはごく限られた人間。音乃木坂の生徒とみるのが妥当だろうか?

そしてこうやって裏でコソコソとしている様子…盗撮でもしていたら目も当てられない。女子なら写真を撮らせてくださいと言っても、そこまではおかしい話ではないのだから、男子とみるのが正しいか。

 

…となると、一向にも早くあの不審者らしき人物を捕まえなきゃな。

 

 

「竜也、どうかしたのですか?」

 

「…いえ、特に何も。この階段ダッシュが終わったら皆さんは陰で休んでてください。俺はちょっと自動販売機のところ行ってきます。今日飲み物忘れちゃったんで」

 

飲み物は普通に持ってきているんだけどな。

 

さて…相手が隠れてるであろう場所に行くとするか…まだ逃げないでくれよ?

 

 

俺がさも自然な感じで振り向き、そこへ行こうとすると、相手も立ち上がりさも自然な感じでその場を離れようとした。…それで逃げれると思ってるのか?

距離はさほど遠くない。ここから全力で走れば、相手がよほど早くない限り、俺の脚力なら追いつけるはずだ。

 

 

よし。

 

 

俺は迷う事なく全力ダッシュを試みた。

相手も萎縮したのだろうか?逃げようと走るものの足は遅かった。残念だったな、俺から逃げるんだったらもう少し脚力をつけてからにするこった。

 

追いついた俺は相手の肩を掴み、そのまま押し倒した。暴れられると困るからな。

一応気絶させたら面倒だからその際に頭は保護しておいたが。

 

うつ伏せになっていたところを仰向けに直す。ご丁寧にグラサンまでしていた。見るからに不審者要素たっぷりだ。

 

しかし不審者にしては少し甲高い声を出していたように思う。しかも背丈も随分と小さい。

帽子を被っているから目立たなかったが…こいつもしや…

 

 

 

女の子か?

 

 

いや、もしやどころじゃない。間違いなく女の子だ。

 

冷静になるべく、ここで今の俺の行動の整理をしよう。

 

 

第一に不審者を見つけた。

 

第二に不審者を捕まえた。

 

第三に不審者が暴れないようにその場で取り押さえた(押し倒した)。

 

 

結論を言おう。

 

俺は不可抗力とはいえ、女の子を朝っぱらからこんな道端で押し倒しているということだ。

 

相手が怪しい恰好をしていなかったらどっちが不審者なのかわからなくなってしまうじゃないか。

 

俺が不審者? 冗談じゃない。

 

 

「ち、ちか…!!んぐ…!」

 

「ばっ…!喋るな!」

 

 

今すぐにでも"痴漢よ"と叫びそうなその口を手で抑えた。

 

しかし、この状況で長居するわけにもいかないな…。不審者を取り押さえたとはいえ、女を押し倒してるわけだし。

 

 

「…え、えーっと、竜也君は何してるのかな?」

 

後ろから凛ちゃんの声が聞こえた。

 

…マズイ。

 

 

マズイマズイマズイマズイ。

 

どう言えばこの状況をスムーズに脱却できる?

この女を抑えれてはいるが、今にも暴れ出す気満々だ。

 

…よし、とりあえず俺は"ただの不審者を取り押さえた"ということにして、冷静さを装う、そうするしかない。

 

 

 

「お、凛ちゃんいいところに。さっきから怪しそうに俺らのことを見てた人が居たから、不審者と思って捕まえたんだよ。ただ、見た感じ女の子っぽいし、痴漢だと叫ばれたら面倒だから誰か来てほしいなーと思ってたところ」

 

「そうなんだ。なんかね、急に竜也君が走り出したからどうしたんだろう?と思ってついてきたんだけど、そしたら竜也君が誰かさんを押し倒してるからビックリしちゃったよ。凛はてっきり竜也君のことを"女の子がそこに居たからとりあえず押し倒した人"にしか思えないところだったにゃ~」

 

「俺の扱いひでぇな!女の子をところ構わず手を出してるような奴じゃないか!」

 

そういう扱いをされるのは癪だ。生まれてこの方、女に手を出したことは一度もないのだぞ。

 

…こういう不可抗力を除いてだが。

 

「え~、凛なら納得するけどなあ。かよちんにも手を出そうとしてるのをこの前本人から聞いちゃったし」

 

「あれは不可抗力だってかよちんも納得してるはずだろ!」

 

ってかなんでそんな話知ってるんだ。さては真姫の仕業か…?

勘弁してくれよ。そんな扱いされて、この後もアイドルグループのマネージャーなんてやってられなくなるぞ。

 

「それはともかくとして…だな、とりあえずこの女を調べたいし、みんなのところへこの子を連れて行くよ。ほら、お前も立て」

 

そう言って不審者を立つように促した。

 

「わかったから早く離しなさいよ!」

 

えらく強気でめんどくさそうな女だこと。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

「ふ~ん、神社なんかでまた女を捕まえたのね。ホント、隅に置けないヤツだわ…」

 

「真姫、そういう言い方やめろ。所持品を見せてもらったがカメラを持ってるみたいだし、まずはそれをチェックしようか」

 

女の持っていたカメラを回収し、先輩方に中を見てもらう。

どうやら上級生のようだが…こんな小学生と雰囲気が変わらない人が上級生とは驚きだ。

 

カメラの中身は俺がチェックしても良かったんだが、男である俺が女のカメラの中身を見るのはあまりよくないだろうから、先輩達にお願いした。

 

「先輩、中はどんな感じでしょうか…?」

 

「ほとんど遠目でだけれど、私たちの写真ばっかりだよ」

 

穂乃果先輩がそう答えた。

ズームが効いて顔がよく判別出来るレベルの写真ばかりを撮られていたら後々面倒なことになりかねなかったからな。

 

「ふーん、どうせ盗撮するならもう少しいいカメラを買いなさいよね」

 

「金持ちのお嬢様が言うと煽りっぷり半端ねえなオイ」

 

相変わらず毒を吐く女だこと。

 

「しかし…なぜこういうことをされていたのでしょうか?」

 

海未先輩が"不審者"に尋ねた。まあ、確かにそうだな。

自分達で言うのもなんだが、まだ駆け出しだし、身内を除いて固定ファンがいるわけでもないのだ。

写真を撮らせてくれと頼んだら、海未先輩はともかく、穂乃果先輩あたりは喜んで被写体になるだろうし、断る理由なんてどこにもない。

 

「ふ、ふん!別に何だっていいじゃない!それよりも、アンタ達とっとと解散しなさい!」

 

「いきなり解散しろって言われましても…」

 

海未先輩も困っていらっしゃる。発足して間もない上にメンバーも集まり始めたところに解散しろというのも癪な話だ。

 

「スクールアイドルの輪の中に一人男が居て、しかもコイツは私のように急に女の子を押し倒すような奴なのよ!あり得ないわ!アンタ達のやってることはアイドルへの冒涜、恥なのよ。アンタ達なんかじゃ絶対長続きしないわね!」

 

 

そう言った後に穂乃果先輩から自分のカメラを強引に取り返し、一目散に走っていった。

 

…………ファンどころかアンチの方だったか?

 

 

「…どうしましょう、今から走っても追いつけそうな脚力の子ですが」

 

「彼女のことは今は置いておきましょう。私たちも練習を続けたいですし」

 

「ちょっと災難だったね~」

 

「いつかはああいう子もファンの一人になってくれるといいんだけどなぁ~」

 

 

解散しろだとか暴言を吐かれても尚、いつかはファンになってくれるようにと思う穂乃果先輩、まさに聖人である。

俺には真似出来ないな… 穂乃果先輩はこういう人だから、周りに色んな人がついてくるんだろうな。俺もその一人でもあるわけだし。

 

 

 

その日はひとまず、練習を続けることにした。

 

それからしばらく練習を同じ場所、同じ時間で続けていたが、その女は現れることはなかった。

心を入れ替えて盗撮はやめたのだろうか?

いずれにせよ、トラブルメーカーになりかねない人物との衝突は避けたかったし、ありがたいことだ。二度と会わないのが吉。

 

 

 

 

そう思っていたのだが、現実はそうもうまくいかないものだ。

 

 

翌日、学校の廊下にて。

 

 

 

「あなたがアイドル研究部の部長さん!?」

 

 

 

生徒会長と話をしてきた先輩3人によると、アイドルに関する部活である"アイドル研究部"が既に存在するらしく、新しく部活を作るためにはここと話をつけなければならないとのこと。

まあ、部長一人しか居ないみたいだし、名前だけ統合することして、活動は別々にすれば大丈夫だろうと俺は高を括っていたのだが、ここで問題が発生した。

 

 

そのアイドル研究部の部長さんとやらが、この前の"不審者"の女だった。

 

 

相手も自分の素性がバレてしまって驚いているようだ。

俺達も頭を抱えたくなる状況だが、相手は一人ぼっちだから俺達以上に頭を抱えたくなる状況なのではないのだろうか。

 

そして俺達の存在を確認するや即座に部室へ籠城してしまった。

穂乃果先輩は開けて下さいと呼んでいるようだが、ドアの開く気配はない。

 

…とはいえ、たかが学内で籠城したところで下校時間まで俺達が張り付いていれば出て来ざるを得ないだろうし意味がないのでは…。

盗撮してた時もそうだったが、そういう咄嗟の判断が弱いな、この人は。

 

 

「外から行くにゃー!」

 

 

そう言って凛ちゃんはその場を飛び出した。

窓から侵入する気か。凛ちゃんらしい発想だ。

 

とりあえず成り行きに身を任せておこう。

今日は雨が降っているみたいだし、凛ちゃんと同じく外に出るのはちと控えたい。

 

 

 

 

で。

 

 

 

 

凛ちゃんはいとも簡単に捕まえてきた。さすがの行動力だ。

 

そして部室の中に立ち入ることが出来た。

 

部室の中はアイドルグッズの山に溢れていた。

かよちんの目が終始輝いているし、見る人が見れば相当凄いのだろう。スクールアイドルに対する知識があまりない俺にはあまりどのくらい凄いのかはわからなかったが。

 

アイドルの話をするかよちんはなんだか別人のようだ。喋る言葉が早口になってるし…キャラが変わってる。これが普段の日常生活に活かされてたらいいんだろうけど、それが出来たら苦労しないか。

 

しかし、俺達の目的は部室に入ってただ感嘆としているだけではダメだ。

 

穂乃果先輩が口を開く。

 

「アイドル研究部さん!」

 

「…にこよ」

 

そういえば流れで名前を聞いてなかったが、にこ先輩というのか。一応覚えておこう、

 

穂乃果先輩が続けてアイドル研究部との話をつけようとしたのだが。

 

 

「お断りよ」

 

 

そうは問屋が卸さなかった。

 

 

「言ったでしょ、アンタ達はアイドルを汚しているの!」

 

「でも、ずっと練習してきたから、歌もダンスも!」

 

「そういうことじゃない…」

 

穂乃果先輩が言うように、俺が見てきた限りではみんな一生懸命に歌もダンスも取り組んできたはずだ。それが汚している…だと? いくら先輩だろうがアイドル研究部だろうが聞き捨てならねえ…。

一言文句言ってやりたいが、それで交渉が無駄になったらみんなに迷惑がかかってしまうのがネックだ。

 

とはいえ、アイドル研究部という違った目線からの意見は案外重要なものなのかもしれない。ここはグッと堪えてにこ先輩の次の言葉を待とう。

 

 

 

 

「アンタ達、ちゃんとキャラ作りしてるの?」

 

 

 

 

 

…なんだそりゃ。

 

 

 

「お客さんがアイドルに求めるものは楽しい夢のような時間でしょ?だったら、それにふさわしいキャラってものがあるの!…ったくしょうがないわね、いいわね、例えば…」

 

にこ先輩は力説した後に何かを始めようとしていた。

しかしアイドルに求めるものは楽しい夢のような時間というのは間違いではない…よな。アイドルに限らずどんなものにでも楽しい時間を求めることは必須なのだから。

 

しかし、次ににこ先輩が行った行為は想像を遥か斜め上をいったのだ。

 

 

 

 

 

 

「にっこにっこに~!

 

あなたのハートににこにこに~!

 

笑顔届ける矢澤にこにこ~!

 

にこに~って覚えてラブにこっ!」

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

「う…」

 

「これは…」

 

「キャラというか…」

 

「私ムリ」

 

「ちょっと寒くないかにゃ?」

 

「寒いというか痛々しいっすね」

 

「ふむふむ…」

 

 

かよちんだけは熱心にメモを取っていたが、それ以外は言葉に困っていた。無理もない。

仮にも男である俺からしてもこれは正直寒い。むしろ痛々しい。見てられない。よくぞこんなことを人前でやろうと思ったな…。

 

 

「ちょっとアンタ寒いって…、そこのアンタも痛々しいですって…? にこにかかれば男なんて大半はイチコロなのよ!?」

「あ、でもすっごく可愛かったです!」

「凛ちゃん無理して先輩を乗せなくていいんだぞ」

「ちょっと竜也、いくら見てられないからって褒めてる凛を止めなくてもいいでしょ」

「そういう真姫ちゃんも地味に先輩に刺さること言ってないかにゃ?」

「で、でもこのようにお客様を楽しませる努力は大事ですよね!」

「よーっし!そのくらい私だって…」

 

 

 

 

 

「出てって!」

 

 

 

 

そして案の定部室から半ば強引に追い出された。お願いしてる側なのに邪険な扱いしてしまったしそりゃ仕方ないか。

 

 

「…それにしても、あれは意味わかんないわね」

「奇遇だな、俺もそう思ってたところだ」

「アンタと意見が合うだなんてそれこそ意味わかんないわ」

「それはこっちのセリフだ」

 

なぜかにこ先輩に対してだけはウマの合ってしまう俺と真姫だった。

普段ほぼウマが合うことはないのだが…まあ、それだけにこ先輩が衝撃的な人だったということだろう。ありゃ100人中100人は似たような意見を出すだろう。

 

…せめて熱心にアイドルを研究してるであろう、かよちんにはそれとなく遠回しに言っておいてあげよう。あれはアイドルでも真似はしない方がいい、と。

 

 

この後俺達は一旦解散して、穂乃果先輩達はどうやら別の先輩と話があるようだった。

神社の巫女さんのバイトをしてる人だな。あの人もすっかり関係者か。

 

 

しかし、アイドル研究部と話をつけなきゃいけないのにこれはちとマズイ状況ではないのだろうか?

軽く失言をしてしまった俺と凛ちゃんに問題があったのは否めないが。

 

 

で、翌日。昨日の後に先輩達3人で少し話し合ったらしい。それで今後の方針はというと。

 

 

「とにかくにこ先輩のことを理解して受け入れよう!」

 

 

とのことだった。

 

穂乃果先輩によれば(先輩も伝え聞いたらしいが)、にこ先輩は過去にスクールアイドルを志していたらしい。しかし、彼女の厳しいアイドルへのこだわりにより他のメンバーは次々と退部。やがては一人になってしまったという。

まあ、あれほどのキャラを持ってる人だし、アイドルへのこだわりは人一倍なのはよく伝わってくる。それを強要してしまっては…当然の結果だろう。

 

では俺達はどうするべきか。

 

穂乃果先輩の出した結論は、ありのままのにこを先輩を受け入れ、一緒にスクールアイドルとして活動してもらおうとのことだった。

にこ先輩が俺達に対してこれほどに噛み付いてくるということは、少なからず興味があるということ。だったら一緒に活動してもらえれば話は早い。

 

正直なところ俺は、あんなキャラの濃い人がグループに入ってくるのに対しては不安でしかないのだが、穂乃果先輩が大丈夫だと言ってしまうのになぜか納得してしまっていた。

 

 

あのコミュ力の塊のような人だからなんとかなるんじゃないか、って。

 

 

…穂乃果先輩には敵わねえな。

 

 

 

「というわけでアイドル研究部の部室の鍵を借りてきたよ!」

「ど、どうやって借りてきたんですか?」

「希先輩に言ったら快く貸してくれたよ~」

「とにかく作戦開始にゃ~!」

 

 

ホント、この人の行動力ときたら、、、敵わねえ。

 

 

そして。

 

 

「「「「「「「お疲れ様でーす!」」」」」」」

 

 

にこ先輩が入ってくると同時に皆で声をかける。

 

皆で部長部長と声をかけてノせようという魂胆だ。

まあ、きっかけは何でもいい。

にこ先輩に少しでも俺達がスクールアイドルに対して真摯に向き合っているという事が伝われば何でも。

 

 

「…こんなので押し切れると思ってるの?」

 

「押し切る?私はただ相談しているだけです。音乃木坂アイドル研究部所属の、μ'sの7人が歌う、次の曲を!」

 

 

あくまでも、下手に出て、そしてにこ先輩が溶け込みやすくする。

 

 

「厳しいわよ?」

 

 

最終的に、にこ先輩はのってくれたみたいだ。

思ってたよりも案外簡単に折れてくれたみたいだ。

まあ、それだけ本気度が伝わったと言うことだろう。

 

「わかってます!アイドルへの道が厳しいことぐらい!」

 

「わかってない!アンタも甘々、アンタも、アンタも、そこの男も、アンタ達も!

 

いい?アイドルっていうのは笑顔を"見せる"仕事じゃない!

 

笑顔に"させる"仕事なの!

 

それをよーく自覚しなさい!」

 

 

 

厳しい言葉はあれど、にこ先輩の言葉には一理あったし納得せざるを得なかった。

この人のアイドルに対するこだわりは、少しは見習うべきなのだろう。

 

 

「わかったら早速練習に行くわよ!ついてきなさい!」

 

 

 

と、少しはにこ先輩のことを見直していたのだが。

 

 

 

「いい?やると決めた以上、ちゃんと魂込めてアイドルになりきってもらうわよ!わかった?じゃあいくわよ?

 

にっこにっこに~!」

 

 

「「「「「にっこにっこに~!」」」」」

 

 

あり得ねえ。結局、なんでこんなのをやらされてるんだ…。

 

 

「ちょっと目つきの悪そうなそこのアンタ、真面目にやりなさいよ!釣り目のアンタも気合い入れて!」

 

「いや待て、女の子達はともかくとして俺は別にやる必要ないだろ?」

 

「アンタもアイドルに対する想いが足りないからやりなさい!ほら、大きな声出して!」

 

「なんだよそれ…そんな恥ずかしい事をやるくらいだったらそこら辺の芸人のモノマネしてる方がまだマシだぞ、俺は帰る」

 

「私も…さすがに耐えきれないわ」

 

「ちょっと待って真姫ちゃん竜也君!」

 

そう言って穂乃果先輩に呼び止められた。

待ってくれ、いくら穂乃果先輩に呼び止められてお願いされても、男の俺がこんなマネをするのだけはゴメンだ。

聞こえなかったフリをしてそのまま屋上を後にしよう…

 

 

すると直後に肩に強い力が働いた。

 

 

「穂乃果が待ってと言ったのですから待ってあげてください…私もこんなこと死んでもやりたくないのですがガマンしているんですよ…?穂乃果に協力してあげてくれませんか…?」

 

震えるような、何かをガマンするような怖い声をしながら海未先輩が俺に語り掛けてきた。

女だと思って甘く見てたけど、割りとこの人力強くないか?ヒョロガリの男だったら一発で殴り飛ばせるくらいの力は持ってそうだ。

何よりもこういう状況での威圧感が半端ねえ。

 

「は、はあ…」

 

腑に落ちないが先輩の脅迫には納得せざるを得ない。

 

 

結果的に俺は半ば無理やりにやらされることになった。

意地でも声だけは出さなかったが。

 

 

それでも何か大事なものを失ってしまった気がしないでもない。

 

…こういう部活で俺一人が男なのだからこういうシチュエーションは今後もあり得そうだよなあ…。

 

 

 

「はぁ…」

 

 

思わずため息をつくしかなかった。

 

隣にいた真姫も同じく「やれやれ」と言いたげな顔をしていた。

今回ばかりは真姫の毒舌を聞いている方がまだマシだと思ってしまっていた。

おそらく、お互いにそんな気持ちだろう。

 

 

皮肉なことに、にこ先輩に対する気持ちだけは合致する、俺と真姫だった。

 

 




お久しぶりです!
更新がなんと3ヶ月ぶりですか…すっかりfinalライブも終わっちゃいましたよね…w
色々と忙しい日々で待っていて下さった方がいらっしゃれば申し訳ないです(汗
マイペースながら今後も更新していくと思いますので、引き続き今後ともよろしくお願いします!
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