更新は遅いです。
あ、あとこの士郎はPS2版Fateルート後(一年後)の士郎です。
「ん………」
冷たい床の感触に、また土蔵で寝入ってしまったか、とぼんやり考える。
それにしても今朝は冷える。
二月とはいえ、比較的温暖な冬木じゃ珍しいぐらいの冷え込みだ。
桜が起こしに来て、心配させてしまう前に起きて着替えておかなければ―――
「―――って、どこだ、ここ!?」
思わず漏れたオレの声が、高い天井に反響した。
ありがちな衛宮士郎の異世界闖入モノ~第一話
そこは、薄暗い倉庫か何かのような空間だった。
オレの背より少し高いぐらいのモノが、整然と立ち並んでいる。
人の―――オレ以外の生物の気配は感じない。
にもかかわらず、この広く薄暗い空間のそこかしこから―――もっとはっきり言えば、ここに整然と鎮座しているナニかのいくつかから、
もちろん、オレの気配を読み取る技術なんて高が知れているし、魔力に関してもそれは同様だ。
なんてコトをもし遠坂にぽろっとでもこぼしたら、たぶんにこやかに『殴ッ血KILL』とか言われて、その言葉通りの過激な修行兼お仕置きにさらされるのだろう。
―――自分の連想にちょっとげんなりしながら、オレは静かに息を吸い込んだ。
軽く息を止め、思い描くのは撃鉄が落ちるイメージ。
頭の中の撃鉄は18個。
がちん、がちん、とそれらが落とされる度に、オレの中の魔術回路に
「
小さく呟いて、指先に明かりを灯す。
ゆらゆらと明かりが揺らめくのは、別にオレの魔力不足って訳じゃない。
そりゃ遠坂に比べたら微々たる物だが、魔術回路の本数が二桁超え、というのは初代魔術師にしては多い方、らしい。
外付け魔術回路とも言うべき魔術刻印はもちろん無いが、それでも血の繋がった両親が―――おそらく―――一般人だったことからすればむしろ異常な本数だと、オレの魔術の師である遠坂は言っていた。
足りないのはオレの素養の方だ。
はっきり言ってしまうと、オレは自分本来の属性である『剣』以外には、『火』の属性しかまだまともに扱えないのだ。
―――その『火』の属性に限っても、まだまだ修行中の身ではあるのだが。
まあそれはともかく、この『灯明』もまた、『火』の属性がどうしても混ざりこんでしまい、炎のようにゆらゆらと揺れ動いてしまう。
早く遠坂やイリヤのように均一な明かりを灯せるようになりたいところだが、焦ってもしょうがない、と遠坂に耳にタコが出来るほど言われてもいる。
それに明かりを灯す事そのものはすでに出来ている。
現に今も、薄闇のなかに沈んでいた『気配』の正体を照らし出す事には成功している。
「これは―――?」
多少ちらつくように揺らめく光源の中、オレの目の前に現れたそれ。
見れば「男の子」の過半が目を輝かせるであろう、分かりやすい輪郭。
「
それにしては構造材が足りないようにも思えるのだが。
しかしそれでも、そのパワードスーツらしきナニかは、起動可能な状態にあるように思えた。
一瞬だけ、映画スタジオにでも紛れ込んだか、と考えてみるが、答えは否。
―――目の前のパワードスーツらしきナニかから感じる存在感は、撮影用のただのハリボテではありえない。
これは本当に人に着用されてその身体を強化、保護するものだと、オレの魔術使いとしてのどこかが判断している。
それに、オレが明かりを灯したせいだろうか?
こちらに向けられる『意識』の数と勢いが増したような感じがする。
目の前の一体もその『気配』の内の一つだ。
「………」
そっと周りを見渡してみる。
少なくともオレの灯した明かりの届く範囲内に、人影は無い。
触ってみるなら今の内だろう。
オレだって男なのだ。
こんなモノ見たからには、そりゃちょっと以上にワクワクしている。
だからだろう、ここはどこか、なんて基本的な事よりも先に、このパワードスーツについて調べよう、なんて思ってしまったのだ。
手を伸ばし、胸を覆うのだろうと思われる装甲に触れる。
「
頭の中に浮かび上がるワイヤーフレーム。
同時に理解する。
このパワードスーツは明らかに、何らかの力場でこの一見ばらばらに見えるパーツ同士を一体として運用する構造だ。
そして見た目以上に容積が大きい。
空間を圧縮している、訳ではない。
どんな技術なのか、見当も付かない。
ますます面白い。
小学生の頃―――
あれと全く同じ事が、このパワードスーツには出来る、かもしれない。
具体的には無限のミサイルとか、胴体の太さより全長の長いミサイルを腹から打ち出すとか。
―――ジャパニメーションの走りの頃は、ミサイルって万能兵器扱いだったからな。
などと下らない横道に思考を割きつつ、このパワードスーツの中枢らしき部分に解析の手が届く。
「………む」
拒絶された。
物理的に解析できなかった訳ではない。
明らかに外部からの干渉をよしとしない『意識』に抵抗されたのだ。
この中枢部分以外―――中枢をサポートするためだろうコンピュータらしき基盤や、無闇に高精度っぽい外部センサーの類に関しては普通に解析できた。
やはりこの中枢には何らかの形で自意識があるのだろう。
なら、別のアプローチを試すまでだ。
「トレース・カット」
明かりも解析も一旦中断して、仕切りなおす。
頭の中で引き上げた撃鉄を、再び打ち落とすイメージ。
今度は先ほどの解析で見当を付けた中枢の位置に、直接意識を集中する。
「
中枢の自意識に語りかけるイメージで、そっと接触してみる。
『ほら、痛くない、痛くない』って感じだ。
だが、返ってきた反応は中々強烈だった。
「―――ぐっ!?」
キィン、と頭蓋に響く金属音。
それと同時に流れ込む膨大な情報に、オレの脳が悲鳴を上げる。
だが、それはまだ、オレには耐えられる情報量でしかない。
確かに脳は悲鳴を上げてはいるが、それでも。
―――大師父の宝石剣を見せられた時は本当に死ぬかと思ったものだが、それはともかく。
悲鳴を上げ、灼熱しようとする脳神経を意志の力で強引に黙らせて、流れ込んでくる情報の奔流を受け止める。
「っ………!」
おかげでこのパワードスーツの総称がISであることや、この機体が「打鉄」という名の日本製の汎用機であることが認識できた。
ついでにISが本来は女性にしか扱えないものであることも。
なぜ『本来は』と断るかといえば。
「………なんでさ?」
目の前の架台に打鉄の姿は無く。
オレの体に装着されて起動していたからだ。
そして、呆然としていたオレは、決定的な隙を作ってしまった。
「そこで何をしている―――む?」
不意に向けられた問いと、懐中電灯―――おそらくはマグライトだろう明かりに照らし出されても、そちらを振り返る事しかできなかった。