たぶんこれからもこの調子で、気が向いた時にふらっと投稿するスタンスだと思いますので、それでも付き合ってやろう、という心の広い方、よろしくお願いします。
さて、どうするべきか。
何はおいても、まずここの人たちの信用は勝ち取っておきたい。
最低限、ここから無事に摘み出される程度には。
「―――あー………」
考えながらも、オレのため息は止まりそうにない。
だって、どう言えば嘘じゃないって信じてもらえるんだ、この状況―――
ありがちな衛宮士郎の異世界闖入もの~第三話
とはいえ、オレに与えられた時間は限りなく少ない。
今にも外の女性―――雰囲気がちょっと桜ににていた気がする―――と話を終えたおりむら先生が戻ってくるだろう。
悠長にため息ばかり吐いている場合じゃない。
とりあえず、今のオレにできることは―――
魔術の存在を証明した上で、魔法と魔術の違いを含めて事情を話して、信じてもらう。
これしかないだろう。
その上で出来ればこの世界で―――遠坂か大師父が迎えに来てくれるまで―――生きていく手助けをお願いできれば言うことはないのだが、さすがにそこまでは虫が良すぎるかもしれない。
魔術の存在を証明する、という点については、まあ実際に目の前で実践して見せればいい。
問題は何をして見せるか、なんだが。
「―――入るぞ」
オレが考えをまとめるより早く、おりむら先生が扉を開けた。
「改めて聞こう。―――貴様は何者だ?」
「―――っ」
やばい。
何がやばいかって、おりむら先生の眼光がやばい。
さっきの格納庫?にいた時よりも目つきが鋭いぐらいだ。
背筋が粟立つような感覚を、聖杯戦争以来ひさびさに感じる。
それでも、たぶんまだこの人は本気じゃない。
おそらく敵認定一歩手前、って所だろう。
そりゃそうだ。
不法侵入した挙句、自ら名乗った名前も住所も嘘―――いや嘘じゃないんだが、向こうから見れば虚偽申告にしか思えまい。
「さっきも名乗った通り、オレは魔術使いです。名前も住所も事実です」
「………白ばっくれるな。エミヤシロウ、という人物も、冬木市という地名も、存在していない」
「でも事実なんです。―――つまりその、オレのいた
おりむら先生の形の良い眉が寄る。
「
「―――オレも自分で言っててそう思いますし、予測も入ってますが、たぶん間違ってはいないと思います」
「………そう判断した根拠は?」
良かった。
問答無用に敵認定はされていないようで、きちんと話を聞いてくれるらしい。
それでもおりむら先生の眼光は鋭いままだが。
「まず、オレはさっき実際に打鉄を着るまで、ISという物を知りませんでした」
「―――それも貴様の自己申告だな。それから、ISは着るのではなく乗るモノだ」
………そうか、ISって乗り物扱いなのか。
っと、そうじゃない。
「そうですね、じゃあオレの個人的な判断理由は置いておくとして―――こちらに魔術は無いんじゃないですか?」
「む。………まあ、私も世界の全てを知っている訳ではないが、確かに聞いたことはないな」
肯定してくれたおりむら先生の目の前で、人差し指を立てて見せる。
そのまま脳裏の撃鉄を一つ落とし―――
「
指先に明かりを灯した。
さっきの格納庫でやった時とは違い、光量そのものは大して必要ないから、必要最低限の魔力と魔術回路しか使わない。
オレは遠坂みたいに有り余る魔力の持ち主でもなければ、宝石に魔力を溜め込んでおける訳でもないからな。
節約できる時は節約しないといけない。
相変わらず不規則にちらつく光球を見たおりむら先生の反応は、と言えば。
「ふむ。トリックは分からんが、なかなか便利そうな手品だな。―――そういえば先ほど格納庫でもやっていたか?」
と、シビアなご意見。
―――まあ無理もない。
何しろ、オレの『明かり』は全力でやっても、その辺で売っている安物の懐中電灯と大差ない光量しかないのだ。
しかもべらぼうに魔力の変換効率が悪く、全力でこれを一分灯し続けるのと、黒鍵一本投影するのとが、ほぼ同等の魔力消費だったりする。
この分じゃ、光球の代わりに火を灯して見せても手品扱いされるだろうな。
ちなみにオレが灯せる火の大きさは、最大でもどこかのバカな子供が火力調整をいじり倒した使い捨てライターぐらい。
おまけに一度何かに点火してしまったら、それ以上干渉はできない。
―――実際、タネが魔力である点を除けば、まさに手品レベルの事しかできないのだ。
さて。
あとオレに出来る中で、手品扱いされない可能性がある魔術は―――
ここで、オレは最大の手札を切ってみる事にした。
手近にある物を強化するだけじゃ、また手品扱いされる可能性も捨てきれないからな。
魔力消費を度外視してでも、ぐうの音もでないほどしっかりと
「じゃ、こんなのはどうですか?―――
十八の撃鉄全てを叩き落し、魔力を景気よく注ぎ込んでいく。
イメージするのはセイバーの《
この場合、別に物は黒鍵でも何でも良いのかもしれないが―――どうせ投影を見せるなら、一目ではっきりとした存在感を示すあの剣がたぶんベストだ。
掲げたオレの掌の中で魔力が集束し、形と重みを得て、顕現する。
「―――何っ!?」
ふう、とオレが一息つく間もなく、おりむら先生が椅子を蹴立てて飛び退き、構えをとる。
―――しまった、失敗した。
そりゃいきなり目の前に剣をかざされたら、普通は警戒するだろう。
ましてやオレは今、おりむら先生にとって潜在的な敵なのだ。
魔術の証明にばかり気を取られて、そんな当たり前のことも失念していた。
慌てて投影したカリバーンを机の上に置き、両手を挙げる。
「あ、違います!別にこれは先生を攻撃するために投影した訳じゃ―――!」
「………」
じっ、と目を見られる。
相変わらず凄まじい眼光だ。
だが、オレは目を逸らしたりしない。
そんな事をすれば、おそらくおりむら先生はオレを信じてくれはしないだろう。
「―――ふむ。嘘ではなさそう、だな」
「もちろん」
オレは一も二もなく頷いた。
たとえオレがカリバーンを持って斬りつけても、この人なら余裕で回避して反撃してくる。
まるで勝ち目のない戦いなどごめんこうむる。
いや、勝ち目があってもやらないが。
「どこから出した、と聞くのは時間の無駄か」
ちらり、とオレの恰好を確認したおりむら先生は軽く片目を瞑って呟いた。
今のオレの服装は、いつも作業着にしているツナギだ。
カリバーンのような長物を隠しておく場所はない。
「それに、投影、と言ったか?」
「はい。―――それはオレが魔力で作り出した偽物です。
蹴倒した椅子を戻しながら、おりむら先生はオレが投影したカリバーンに視線を落とした。
「―――持ってみても?」
「どうぞ」
オレの答えを待って、おりむら先生はカリバーンを軽く目の前に掲げ、観察していく。
なんだか、宿題を目の前で採点されているようで、むずがゆい気分になるな。
そして相変わらず、それなりに重量があるはずの真剣を手にしながら、おりむら先生の重心は少しも乱れていない。
「見事な剣だな。ただ美しいだけではなく、バランスも良い。何より実戦で使い込まれた形跡がある。―――これらもキミが再現したのか?」
「はい。―――というか、オレにはその状態でしか投影できません」
「?、新品を作り出せない、と?」
「ええ、オレにできるのは、見たことがある剣をそのまま再現することだけです」
―――実際にはたぶん、色々と手を加えてやる事で新品に近づけることは不可能じゃないはずだ。
だが、それはもう
内包する神秘の格も存在感も、大幅に薄れるはずだ。
「偽物、とキミは言ったが―――私にはとてもそうは見えないな。だがその、魔術とやらで作り出した、ということは、消すこともできるのか?」
「はい。やってみせましょうか?」
「ああ、頼む」
そう言ってオレにカリバーンを返そうとするおりむら先生に、オレは軽く手を振った。
「そのまま先生が持っていてもらっても大丈夫です―――
オレが投影を破棄した瞬間、おりむら先生の手の中でカリバーンがその姿を失う。
カリバーンの形を取っていた魔力が解放され、周囲の
「おっと。―――なるほど、確かに消えたな………」
軽く方眉を上げただけで、特に苦も無さげに体勢を保ったまま、おりむら先生は重量の消え去った掌を不思議そうに眺めた。