ではではどうぞ。
橙矢は血反吐を口から吐き出して大きく後退した。
「……………」
それを冷ややかな目で幽々子は観察していた。
「くそ……!やりやがったな……!」
そう言う橙矢の姿が段々と薄れていく。
「貴方、何故生きているの?」
「何がだよ……」
「私の能力は〈死を操る程度の能力〉。今の蝶はその力を使って編み出したもの。本来であれば触れただけでその生命は芽を瞑るはずなのだけれど……」
「知らねぇよそんなの……ァ……!」
苦しそうに呻き声を上げると悶える。
「お前ら……よくも…よくも俺の……」
紫と幽々子を睨み付ける橙矢の顔が段々と崩れ落ちていく。
「………やはりね。……さて、貴方は何者なのかしら?」
姿を現した仮面の男は諦めがついたのか落ち着きを取り戻して立ち上がる。
「…………ハァ…………まったく。東雲クンを真似してみたんだけど……やっぱり駄目みたいだったね」
「……………」
「にしてもボクの変化に気付く者がこの世界にいたんだね。感心感心」
「何かしら。今ものすごく馬鹿にされた感じがするのだけれど」
「聞き間違えだ。ボクは感心しただけだよ。それなのになんで馬鹿にした、なんて言葉が出てくるんだい?」
「………東雲さん以上に面倒ね」
「それはそれはもう面倒だよ。なんせ悪戯好きな神様だからね」
「悪戯好きな神様……?」
「そうだよ。キミ達は聞いたことないかい?ロキって名を」
「ロキ?………聞いたこと無いわね。紫、貴方は?」
「……聞いたことあるわ。確かこの世の終わりと始まりの神々の戦争、ラグナロクを引き起こした第一人者……!」
すると半分が仮面に覆われている顔が歪む。
「だぁい正解!そうさ、ボクの名はロキ。ラグナロクを引き起こした悪戯好きな神さ!」
両手を広げて高らかに嘲笑う。
「まさか本当にいるなんて………死んでなかったのね」
「死にかけたけどね。いやはやあの時は本当に危なかった」
「………死んでいたら良かったものの……」
「おいおい物騒なこと言わないでくれるか」
「………では、今ここで始末するわ」
「お、来るか?」
「行きますよ悪戯神!」
紫が手を伸ばすとロキの周りに結界が張られる。
「……………ッ」
ロキが驚いたように目を見開く。
「良くできた結界だ。ハッキングするのにかなり時間を有する。何処ぞの馬鹿だと力任せに破壊出来そうだ。……けど、ボクは他のやり方で抜けさせてもらうよ♪」
パチン、と指を鳴らすと結界が解かれた。
「結界が……!」
「かなりの時間を有するんじゃなかったの?」
「それは普通の神様、という意味で言ったんだ。残念だったね。ボクはそんじょそこらの神様よりもここが違う」
頭を指先で叩く。
「そう、馬鹿って意味ね」
「そうそう……って馬鹿野郎。ナチュラルにディスるなよ。気付かなかったわ」
「あら違ったかしら?」
「いやいやお姉様、いくらボクでも傷つくって」
「お姉様、ね。その言葉だけは嬉しいわ。それで私は何歳に見えるかしら?」
「……人間でいう……五十歳?」
「――――――――――」
「あ、あれ……答え間違えた?」
黙りこく紫に焦りを覚えたロキは幽々子に助けを求める。しかし幽々子は額に手を当ててため息をついただけだった。
「…………赦さないわ」
「あ、あの………」
「――――赦さない!!」
怒りのままに弾幕を放った紫に驚きを隠せなかった。
「マジかよ………」
「私は永遠の十七歳よ!覚えておきなさい!あの世でね!」
「うぉい冗談でもきついぞそれは!!」
距離を取って弾幕をあしらう。
「黙りなさい!私を馬鹿にしたこと後悔させてあげるわ!!」
「やめてください。いやほんとやめてくださいごめんなさい」
半ば本気で泣きそうになりながら謝る。だがそれが無駄な事は言うまでもない。
「ったく………そろそろいいか?」
ロキがボソリと呟くと弾幕が一瞬にして晴れた。
「え…………」
「さっきは色々あったが……忘れてないか?ボクは神様、キミ達下等生物とは違うんだ」
「…………………」
ロキが腕を横に薙ぐといつの間にか手に燃え盛る剣を握っていた。紫と幽々子にはその剣に見覚えがあった。
「レ、レーヴァテイン!?」
「惜しい。レーヴァテイン・レプリカだ」
「レプリカ……?つまり偽物……?」
「確かにそうだよ。けど威力は遥かにオリジナルを凌駕する」
「何ですって………!」
「嘘だと思うなら証拠を見せてあげるよ」
ロキがレーヴァテイン・レプリカを構えると振り下ろす。それと同時にレーヴァテイン・レプリカからフレアが巻き起こり紫と幽々子を巻き込む。
「紫!」
「分かってるわ!」
紫と幽々子の背後にスキマが開いて二人を呑み込む。
「…………あれ、外したかな?っと!!」
真後ろの空間に突き刺すと丁度そこにスキマが開く。まるでそこにスキマが開くことを予測していたかのように。
「なん――――!」
「紫避けて!」
幽々子が紫の腕を掴むとスキマの中へと放り投げた。瞬間幽々子の身体にレーヴァテイン・レプリカが突き刺さった。
「ッ…………!」
「幽々子!」
「……………そこ」
レーヴァテイン・レプリカを真上に投げ付ける。そこにはスキマから半身を出す紫が。
「ッゥ!」
何とか避けてスキマの中へと逃げ込む。
「随分逃げ腰だね……。つまらないよ」
手に再びレーヴァテイン・レプリカを顕現させた。
「何回も出せるの……!?」
「こんなのただのトリックさ」
「反魂蝶‐八分咲‐……!」
幽々子が肩で息をしながらスペルを宣誓すると蝶が舞い散り、ロキに迫る。
「おいおいこの蝶は…………見飽きたんだよ!!」
レーヴァテイン・レプリカを地に突き刺すとそこから焔の竜巻が起こって幽々子の吹き飛ばした。
「………ァ…………」
「幽々子!」
スキマを開いて幽々子を呑み込んで白玉楼の中へと避難させるとゆっくりと出くる。
「………よくも幽々子をやってくれたわね」
「それはそっちからやってきたからだろ?それともボクがこんな強くないと思った?」
「ク…………ッ!」
「残念、ボクは神の中ではかなり上位に座している。嘗めないでいただきたい」
「紫奥義〈弾幕結界〉!!」
ロキの周りに結界が張られて弾幕が襲う。
「っとまたこれ……!」
レーヴァテイン・レプリカを振り上げる。
「外力〈無限の超飛行物体〉!」
レーヴァテイン・レプリカを握る手にスペルをぶつける。
「……ッ!」
思わず手からレーヴァテイン・レプリカを放す。
「しまった………!」
「行きなさい。私の可愛い弾幕」
ロキの周りに弾幕が浮かび上がると次々と激突していく。
「グ……ァ……!この……!」
レーヴァテイン・レプリカを顕現させると同時に再びスペルを宣誓して弾く。
「ボクがお前ら如きに……!」
「終わりよ悪戯好きの神様」
一気に弾幕が凝縮すると高速でロキの心臓目掛けて飛んでいく。
「うおぉぉぉぉああぁぁぁぁ!!」
雄叫びを上げると同時に結界が爆発した。
「……………………」
終わった、と大きく息を吐いた。
「……後は東雲さんを止めるだけね……」
「――――ちょいと待ってよ」
瞬間ドスッ、という鈍い音が響いた。
「…………………………………………ぇ?」
後ろを振り返ると口を三日月に歪めたロキがレーヴァテイン・レプリカで紫を貫いていた。
ゴフッ、と血を吐くとその場に崩れ落ちた。
「なん………」
ロキはレーヴァテイン・レプリカは引き抜くと真上に構える。
そして――――
「今度こそ終わりだね」
躊躇なく振り下された。
今週から考査週間に入りますので更新ペースが少し遅れるかもしれません。すみません。
ですが高校の中でも今は一番大切な時なので……。出来るだけ早めに更新しようとは思ってます。
感想、評価お待ちしております。
では次回までバイバイです!