東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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今回は少しだけ短めです。

ではではどうぞ。



第百十五話 貴方の温もり

 

 

――――――――――薄々はそうなるんだと心の奥底で思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椛は信じられないものを目の当たりにしていた。

自らが握る剣が橙矢を貫いていたからだ。

「と……うや……さん……」

剣が抜けて血が吹き出る。

「ゴフッ!………う……ァ………」

橙矢が糸の切れた操り人形のように倒れて椛にもたれ掛かる。

「椛………悪いな………お前に……人を殺させて………」

椛に凭れながら弱々しく言葉を発する。

「なんで……こんな真似………」

「………薄々は気付いていたんだ……。俺が誰かを殺してしまうんじゃないかって……だから………俺はそれを……防ぐために八雲さんに俺を殺してくれと…………頼んだ……」

「橙矢さんがそんなことするはずないじゃないですか……!」

「ハッ……お前はほんとに優しいな………」

ゆっくりと橙矢が手を上げると椛の頬に添える。

「………事実を言うと………ほんとは怖かったんだ……お前らの知らないところで死んで………そしていつか忘れられる……そう思うと不安で……不安で仕方なかった……」

けど、と続けたところで大きく咳き込んで血を吐き、地に撒き散らす。

「橙矢さん!もういいですから永遠亭へ……!」

橙矢を抱えて飛び立とうとするが橙矢に止められる。

「頼む……最後まで聞いてくれ……。けどな俺は……椛、お前に……殺されてほんとに良かった……」

「何馬鹿なこと言ってるんですか……!」

「………………馬鹿は百も承知……だ。こんな異変を起こしておきながら………最期はこの様だ………」

残った手で椛を抱き締める。

「俺は……最悪な奴だろ……?自分で起こした異変を……結局はほったらかしにするんだ………。こう言っても……信用してもらえないが…………新郷に会ったんだ……」

「新郷神奈………?」

「あぁ……。それでな………幻想郷を救えって………」

「え…………?」

すると橙矢が激しく咳き込んだ。

「橙矢さん!」

「………椛……恐らく俺の命は……持っても………数分だ………。その間にお前らは八雲さんを使って………逃げろ……」

「逃げる………?馬鹿言わないでください!」

椛が橙矢を強く抱き締める。

「貴方を置いていけるわけないじゃないですか……!」

「椛…………」

「もう放しません……貴方を放しはしません………一緒ですよ」

「………………………………ハッ、犬のくせに生意気………言いやがって………」

「犬じゃないですよ。………白狼天狗です」

そう言う椛の声に嗚咽が含まれていた。だが今の橙矢にそんなの気にしてられる余裕はない。

「………………あぁ…そう……だな……」

段々と視界が暗くなっていく。先程まで激しく動いていた鼓動も心なしかゆっくりになっていく。

「……………椛……………」

「………はい」

「……………温かい……な………お前……」

「………生きてるからですよ」

「………そう………かもな…………。俺は幸せ者だな………俺を……こんなに思ってる………奴に見送られて………死ねるんだからな………――――――」

(新郷……今から行くからな………)

言い終えると橙矢の視界が真っ暗になり、全身の力が抜けた。

「…………………橙矢さん……?」

椛が橙矢の名を呼ぶが何も反応しない。

「橙矢さん……!橙矢さん!嫌です!逝かないでください!」

椛が橙矢を放して肩を揺らす。しかし橙矢の瞳は閉じたまま開かない。

その時に煙が晴れて椛と橙矢の姿が残りの者達の瞳に映る。

「え………?」

「橙矢………?」

「――――」

それぞれの反応はどれも同じだった。

だが椛はそんなことには気付かない。

「橙矢さん!橙矢さん!!」

「やめなさい!」

急に椛の手を横から何者かが掴んだ。

「……………」

顔を上げると幽香が今にも泣きそうな顔で掴んでいた。

「……………もう、いいでしょうチワワちゃん。休ませてあげなさい」

「ゆう………かさ……ん」

「…………最後に本当の橙矢に会えて良かったじゃない……。それだけで充分よ」

橙矢を寝かせると椛の頭を撫でる。

「……貴方はほんとによくやったわ」

「…………………ゥ……ウゥ……アァ…ァ…………アアアアアァァァァァァ!!」

溢れ出る涙がボロボロと流れ出て頬を濡らす。その姿を見て幽香は椛を自身の胸に抱き締める。

「……良いわよ。好きなだけ泣きなさい………」

そう言う幽香の瞳からも一筋の涙が。

「…………私も堕ちたものね、橙矢………」

 

 

 

 

東雲橙矢。享年十七年。

………あまりにも早すぎる死だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風を切る音が聞こえて何かが落下してくる。

それは幽香のすぐ背後、橙矢に突き刺さった。

「え………………」

槍は橙矢の心臓を正確に撃ち込んでいた。

元々椛によって空けられた穴より数ミリ右に撃ち込まれていた。

「橙矢………!」

「―――――そこまでだよキミ達」

「誰!?」

ゆっくりと上空からひとつの影が落ちてくる。

幽香が慌てて傘を構える。

「誰って………ボクさ」

顔の半分を仮面で被った男が幽香達の前に着地した。

「……ロキ……!」

「そうさ、大正解」

「何しに来た……!」

「まぁまぁそんな邪険にならないでよ」

ロキがどうどうと宥めると橙矢を一瞥して傍らにしゃがみこんだ。

「お疲れサマ東雲クン。後は任せてよ」

立ち上がると槍を掴んで蹴る。その際に橙矢の身体から血が吹き出る。

「………ッ!貴方!橙矢をそんな……ッ!」

幽香が睨み付けるがロキは微笑んでるだけだ。

「おいおい、いかにもボクが人を物扱いしているみたく言うんじゃないよ。ボクはただ東雲クンの悲願を叶えようと思ってるだけだよ」

ニヒルな笑みを浮かべると槍が燃えて形状を変えて燃え盛る剣へと姿を変える。

「………ボクが彼の代わりに幻想郷を滅ぼす……………show timeの始まりだ」

レーヴァテイン・レプリカを空へ向ける。

幻想郷を覆う結界が音を立てて崩れている。

「残された時間は一時間も無いよ。さぁ早く結界を直す方法を考えた方がいいんじゃないかな?もちろんそれを易々と許すボクじゃないけどね」

一薙ぎすると幽香に駆け出す。

「……………さないわ」

ボソリと呟くと幽香は鋭すぎる眼孔でロキを捉える。

「許さないわ!!ロキ、橙矢を……橙矢を侮辱することは私が許さない!!」

「だったら行動で示してみなよ妖怪!」

「覚悟なさい駄神―――――!!」

傘を突き出してレーヴァテイン・レプリカと激突させた。

 





感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです!
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