東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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今さら気付いてしまった。


そういえば夏休みだったんだ。
いやいや、家に引き篭もっていると今日が何日の何曜日なのか、時折分からなくなるときがあります。

ではではどうぞ。



終章
第百十七話 少年の考察


異変解決から早一ヶ月。

幻想郷では異変解決による宴会は行われていなかった。異変解決者はいるものの異変を起こした者がいなかった。

――は異変終息後すぐに永遠亭へ運ばれた。しかし奇跡は起こらずただただ悲しみを深めただけだった。

里の方は里長が殺されたことによって一時機能が停止していたものの新たな里長を起てることによってそれも収まった。さらに退治屋制度も紫が止めさせて自警団と呼ばれる集団で里を守護する。というものに変えられた。元々妹紅が一人で承っていたものだがそれでは荷が重いという理由で人数を増やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――の墓は里に近い森の中にある無人の小屋の近く。亡骸は新郷神奈の墓の隣に埋葬された。

 

が、墓には名前は書かれていなかった。

それは何故か。

誰も彼の名前を覚えてなかったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はどしゃ降りで気分も鬱だ。傘はさしているものの湿気が毛に絡んで嫌な気分になる。

花を一束。里で買ったものを持ってきていた。

背負った大きな剣と腰に刀を差した犬走椛が視線を上げると前方にひとつの簡易な小屋があった。その近くには二つの墓がある。名前の知らない。そして誰のものか分からない墓。

しかし椛は何故かここへ足を運んでいた。……大切な人の墓のような気がしてならなかった。確か一ヶ月前に異変を起こした者、と聞いている。椛もあの異変を解決した者の一人である。それくらいのことは覚えている。しかしどう頭を捻ってもその異変を起こした人物の顔と名前が出てこない。思い出そうとするとノイズが走り、妨げられる。

「…………………――さん」

どうしても思い出せない。逆にそれが椛の気を焦らせていた。

その人に撫でられた感触も、抱き締められた時の温かさも、全部覚えているのに一番肝心な顔と名前が覚え出せない。

「…………………」

「あら、チワワちゃんじゃない」

ふと後ろから声がした。

「…………幽香さん。何でしょうか」

振り返らずに返す。

「貴方に用は無いわ。そこの墓にね」

「貴方も?」

「も、ということは貴方もそういうことね」

「あの」

「覚えてないわ」

はっきりと言われて言葉を無くす。

「………あの異変のことは覚えているわ。けどそれを起こした人。……それが思い出せないの」

「……幽香さん」

「………おかしいわ。大切な人のはずなのに忘れてしまうなんて」

その時二人の間にスキマが開かれる。

「――――………久し振りね二人とも」

妖怪の賢者、八雲紫が出てきて微笑む。

「紫、貴方どうして?」

「そう警戒しないでちょうだい。ただ少し話をしに来ただけよ」

「話を?」

「えぇ、どうやら貴方達何か大切なものをお探しで」

「………ッ!」

「焦る気持ちは分かるわ。けれど待ちなさい」

視線を落として扇子を広げると口を隠す。

「主役は揃ってからよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫がああ言ってから一時間も経たないうちにその意味が理解した。

異変を解決した者達が家の前に集まってきたからである。それぞれやはり彼のことを覚えてないようだった。

「それで、何を話すつもりかしら」

霊夢が腕を組みながら問うと紫は扇子で近くの小屋を指した。

「ひとまずあの小屋に場所を移しましょう。……今は誰も住んでないわ。それに雨が降っているのに外で立ち話は嫌でしょう?」

「………ひとついいかな賢者」

「何かしら船幽霊」

「今は、誰も住んでない。つまり元々は住んでたんだよね?………新郷神奈ではないのは確か。……その小屋の持ち主は私達が忘れている彼……だよね」

「――――正解よ。……さ、立ち話もいいでしょう」

「うん、すまないね。時間取って」

「構わないわよ。………私も一ヶ月待たせたもの」

「?」

「………行きましょう」

紫が小屋の戸を開けて中へと入る。

椛が中へ入ると懐かしい雰囲気に包まれた。

「………懐かしいです」

「えぇそうね」

椛の一言に天子が答えた。

「そういえば貴方達は来たことあったわね」

「………えぇ」

「さ、何処でもいいわ、座りなさい」

各々がバラバラに座り込む。

「さて、何処から話したものかしら」

「まずは私達が誰を忘れているか。それを教えてくれない?」

「あぁそうね。じゃあ彼の歴史をもう一度振り返ってみましょうか」

「完璧無視かコラ」

「………………口が悪いわよ船長」

ため息をつきながら何から話そうか。そんなことを考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は普通の人間としてこの世に生を受け、そして普通の人間として育てられていた。彼が十六歳になったばかりの時であろうか、彼の影が薄くなり始めたのは。

そのせいかクラスではいないもの扱い。幻想郷では寺子屋といった方が自然か。それにいち早く気付いた彼は嫌われた、と思って学校に行くのをやめた。

さらにそこから彼を追い詰める事態が。

家族すら彼の存在に気付かなくなった。

とうとう一人になって少年は一人で生きることを決めた。そこから簡易な荷物をまとめると家を出た。一応携帯を持っていったものの誰からも連絡が来ず、彼の頭はさらに冷えた。

山近くの誰一人いない廃村になった小屋が十あるかないかくらいのところへ移動してきた。

ある程度の食料は残っていたためやっていけたがそんな生活が長く続くはずなかった。

食料も次第に底をつき始め、やがてなくなる。そう見当付けた彼はこの世から自身という存在を消すため自殺を図り、山奥へと足を運んだ。

しかしその道中彼はある異世界に迷い込んでしまう。

 

 

 

 

「……………幻想郷?」

「えぇそうよ。山奥で自殺を図るなんて……誰にも気付かず死ぬつもりだったんでしょうね」

 

 

 

 

 

異世界、幻想郷へ迷い込んだ少年は様々な出会いをしながらあるひとつのところに身を寄せた。それが紅魔館だ。しかしタイミング悪く封印されていた妖怪が復活してしまう。少年は運悪くそれに遭遇。相対した。

死線を繰り広げるなか殺害に成功する。

しかしドラキュラにより紅魔館の妖精メイドが全滅。

それが原因なのか少年は紅魔館から姿を消した。

それからは退治屋としてスペルカードルールを守らない妖怪の駆除に勤しんだ。が、数日後にこれを放棄。里から追われる存在となる。それと同時に常闇の妖怪、ルーミアの封じていた力が解かれ、元の力を取り戻した。里の自警団、藤原妹紅とこれと対峙。何度か殺されかけるものの博麗霊夢、霧雨魔理沙、藤原妹紅と共に再封印に成功。

ルーミアから受けた傷が原因で意識を失うが三週間後目を覚ます。

永遠亭を出て命蓮寺に辿り着き、世話になる。そこで村紗水蜜と出会う。出会い方は散々だったが。

家に帰ると邪仙の霍青娥が待ち構えており、少年に協力して結界を破壊するよう提案。しかし彼は断った。それからだった。青娥につく者とそれを阻止する者との戦いが勃発したのは。

少年はそこで風見幽香と死闘を演じ、天人の邪魔が入るものの他の者達と協力して打ち勝った。

かのように思われた矢先、霍側についていたフランドール・スカーレットが暴走して幻想郷を片っ端から破壊し始めた。さらに地下からは覚妖怪、古明地さとりの妹、古明地こいしが出現。これに加担。

二人は止まることを知らずに里まで侵攻。それに加えて少年が妖怪と成る。理由は退治屋をしていた時に妖怪が持つ妖力の塊、血を大量に浴びていたことによるものだった。一時的に暴れだすものの霊夢、魔理沙、妹紅、慧音により沈黙。正気を取り戻した少年はフランドール並びに古明地こいしを瀕死状態まで追い込み、ひとまず落ち着いた。

かと思われた。

直後にシヴァと名乗る男が上空より飛来。幻想郷を破壊するという命を最高神ゼウスより承ったという。

もちろんこれと相対するが実力者共々蹴散らされた。

 

 

 

 

 

パチッと椛の頭の中で何かが弾けた音がする。

「ッ…………」

一瞬彼の名前を思い出せそうな気がしたがまたノイズが入る。

 

 

 

 

 

シヴァに呆気なくやられた翌日、幽香に看病されていた少年は目を覚ます。さらにその翌日、少年はある少女と出会う。

 

 

 

 

「それが新郷神奈?」

「えぇそうよ。……偶然にも迷い込んだだけなのにね」

「…………それを……」

「……それが偶然なのかシヴァが起こしたものなのか……いまだ不明よ」

 

 

 

 

 

そのあと退治屋の襲撃やら天人の墜落やらを終わらせた少年は新郷神奈を無事保護し、外の世界へ帰すべく博麗神社へと向かう。しかし彼女はどうやらどうやらシヴァとの命を繋いだ妃、サティーの生まれ変わりらしい。しかし幻想郷は神奈を殺せばシヴァも死ぬ、そう考えて神奈を襲う。

しかし幻想郷を敵に回してまで少年は神奈を守りたかった。

何とか博麗神社に着くが霊夢と紫の攻撃に合い、一時撤退。その際に天界を下したシヴァも割り込み、三つ巴になった。

混戦の中どうにかして神奈を逃がした少年はシヴァに命蓮寺近くまで吹き飛ばされた。命蓮寺の面々に助けられた少年はその寺で神奈と再会するもののすれ違いで命蓮寺と決別。

 

 

唯一信頼していたところと決別したため少年の精神は徐々に崩壊していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あの時の私達はシヴァを殺すことに集中し過ぎて自棄になってたわ」

「………今考えれば馬鹿なことをしてた」

「けど過ぎたことよ。……今さら後悔しても遅いわ。……それでどうかしら思い出せそう?」

紫の問いに全員は首を小さく横に振った。

 

 

 




長かったため二つに分けます。

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです!
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