東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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ここ最近雨が酷いですね。
まぁ私は受験生なのでずっと家にいましたが……集中出来ねぇ!

今回はいつもよりは糖分多めです。ですが過度な期待はしないでください(;´д`)

ではではどうぞ。



第百十九話 廻り巡る

彼岸にも桜が咲くのだろうか。少し前に起こった四季の花々が咲き乱れる異変があった。恐らく今回もその原理を応用したものだろう。…………桜を咲かせているもの、それ即ち魂。未だ死んでないと思っている魂が花々に憑き、そして花を咲かせている。

それはそれは美しくて………だが裏を返せば恐ろしくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「橙矢さん………本物の……橙矢さんですよね………?」

すると橙矢は微笑む。

「当たり前だろ?俺以外に誰がいるんだ」

「………橙矢さん!!」

椛が橙矢に飛び込んでくる。が、橙矢の身体を通り過ぎた。

「………馬鹿、俺は死んで魂だけなんだ。実体なんてあるわけないだろ」

「……………」

「…………会ってそうそうに悪いな。けどこれが事実なんだ」

「待ちなさい東雲橙矢」

二人を見かねた映姫が声をあげる。

「いかがなされました」

「…………………特別です。貴方に実体を差し上げます。けれど………」

「……………構わないですよ」

何か察したように頷くと橙矢の身体がはっきりと見えるようになる。

「椛………もう大丈夫だ」

倒れている椛に手を差し伸べる。

「橙矢さん………」

恐る恐る手を伸ばして掴む。掴んだ。掴めた。

「橙矢さん!」

急に椛が橙矢の胸に飛び込んだ。椛を受け止めるが勢いを止められずに押し倒される。やれやれと思いながら椛の頭を撫でる。

「…………」

チラ、と映姫の方に視線を送ると理解したのか踵を返した。

「……………小町、行きますよ」

「え?あ、はい」

映姫が小町の腕を掴むと小町の能力でその場から消えた。

そんなことに気付かない椛はより一層強く抱き締める。

「橙矢さん……橙矢さん!」

「あぁ、俺はここにいるよ」

「ほんとに…………橙矢さん……です」

急に安堵したのか橙矢の身体に乗ったまま倒れ込む。

「も、椛?」

「?どうかしましたか橙矢さん?」

椛が顔をあげると至近距離で見つめ合う。

「…………………近くないか?」

「…ちか………~~~~~ッ!」

跳び跳ねて橙矢との距離を離した。

「す、すみません……つい嬉しくなってしまいまして」

「いや、気にしなくていい」

橙矢は立ち上がると椛の隣まで歩くと座り込む。

「………せっかく二人きりなんだ。色々と話そう。……まだ時間はある」

「時間、ですか?」

「あぁいや、こっちの問題だ。気にしなくていい。異変の時なんだが……こうしてお前が無事だってことは解決したんだな。……ありがとう」

「……いえ、当然のことをしたまでですよ」

「………俺が死んだ後、大体は想像出来るが………何があった?」

「……ロキが貴方の悲願を叶えるために、と私達に襲いかかってきました」

「……やっぱりか。ロキもシヴァ……までとはいかないがかなりの強者だったはずだぞ?どうやって殺ったんだ?」

橙矢の視線が椛の腰の刀に移る。

「………なるほど、ね。大方分かった」

「分かるんですか?」

「大方、だけどな」

喉の奥でクッと笑うと椛が橙矢の肩に首を置いた。

「そんなんじゃつらいだろ。膝貸してやるから」

「………嫌です」

「は?」

「………橙矢さんの温かさを少しでも感じたいですから」

「……………ハッ、中々可愛らしいこと言うじゃないの」

「それはそうと橙矢さん」

「ん、何だよ」

「………ロキを倒した後……何故か貴方のスペルが発動しまして………何か仕掛けました?」

ロキを倒した後、結界が破壊される寸前、急に橙矢の発動させた禁忌〈忘却の彼方〉が発動した。

「…………いや別に」

「では勝手に作動した、ということですか?」

「さぁ、どうだろうな。……あぁそういえば結界が直るまで作動し続ける、てのはかけてあったが。まぁそのおかげで俺の中にあった神力やら霊力やら妖力がなくなったけどな」

「…………」

「………そんな辛気くさい顔すんなよ。せっかくまた会えたんだから」

「…………私は」

「あ?」

「…………私は、まだ信じられません……橙矢さんが亡くなってしまったこと」

「…………………………」

「橙矢さんもそうでしょう……?」

「………………いや、事実だ」

椛を抱き寄せる。

「………確かに初めは信じられなかったさ。……けどここに来てからは何故か考えるのも馬鹿馬鹿しくなって……。現実逃避しても無駄だって気が付いたんだ」

「……まだ生きたいとは思わないのですか?」

「思わねぇな。………幻想郷とお前らが無事だった。それだけで充分だ。未練なんてねぇよ。未練があるとしたら…………そうだな。……あぁいや特に無いな」

何か言いかけたが途中で止めた。

「――――未練があるのならここで晴らしておいた方がいいんじゃないのかい退治屋?」

「………急に背後に現れるのは止めてくれるか死神」

後ろを見ずに声だけで誰かを言い当てると背後にいた小町が笑う。

「あっはは、大正解。邪魔しちゃって悪いねぇ。つい若いもんを見るとからかいたくなっちまうもんでね」

「あんたも結構若そうだけどな」

「おいおい、女の子の前で他の女を褒めるのはNGだよ。それこそあたいは本気にしちゃうよ」

「生憎とこっちは死んでる身なんでね。恋沙汰には興味ねぇよ」

「ブレないねぇあんたは。まぁそこがあんたの良いところだけどね」

「それはどーも」

「邪魔したね。………東雲橙矢、幸せに逝けるよう祈ってるよ」

「………………あぁ」

地を少し踏む音がすると気配が消えた。

「まったく……」

「橙矢さん………ほんとに未練は無いのですか?」

「ねぇよ。……皆が無事だった。これ以上の喜びはない。あの中の一人でも消えていれば………幻想郷は徐々に崩れる。そしてここもな」

橙矢がそう言うと桜が急に荒々しく舞い散り始めた。

「ッ!一体何が………」

「……………思ったより早かったな」

「橙矢さん!これは……」

「椛、俺がさっき時間はまだある。……そう言ったよな」

「え、えぇ……」

「……ここは映姫さんに無理して造ってもらった魂を一時的に留めることが出来る空間なんだ。………まぁ一時的にっていうことだから寿命はあるんだけど。……俺が実態を戻したことによって寿命が一気に短くなったんだ」

「それって……」

「そういうことだ」

立ち上がると椛が来た方とは逆の方へ歩いていく。

「橙矢さん!何処へ行くんですか!」

「決まってんだろ?彼岸へだよ。……椛、お前もそろそろここから離れな。俺と一緒にお陀仏だぞ」

じゃあな、と手をあげて立ち去ろうとする。

「待ってください!」

走り出して後ろから抱き付かれる。

驚いた表情で振り返る。そこには涙を流している椛の姿があった。

「…………椛?」

「待って……ください………。まだ私は貴方と話したいことがたくさんあるんです!閻魔様に他の場所を造ってもらえばいいじゃないですか!そうすればもっと――――」

「椛!」

橙矢が大声を出して椛が身体を震わせる。

「と、橙矢さん………?」

「……もういいんだよ。お前に会えただけで充分だ」

「……そうですよ犬走椛。これ以上彼に迷惑をかけるのはよしなさい」

桜の木の陰から映姫が出てくる。

「他の閻魔に無理言って造ってもらったところなんです。二度目はないです。……それに死んだからといって終わりではないのです」

「閻魔様……」

「…………お前が俺のことを思ってくれるのは嬉しいよ。……けどいつまでも引きずってもらっちゃあ俺が安心して逝けないんだ」

「ッ……………」

「それにお前の傍にはいつも俺がいる」

橙矢が視線を下げると天叢雲剣が。

「お前がそれを手放さない限りずっと一緒だ」

椛の頭を撫でるとその手が粒子となっていく。

「東雲橙矢。……そろそろ」

「えぇ分かってます。………椛、そろそろ俺は逝くよ」

「…………はい」

涙を拭って笑顔を作る。

「やっぱりお前は笑顔がいいよ」

「橙矢さんの笑顔も素敵ですよ」

「そうかもな」

「えぇ」

最期に抱き締める。

「………………悪い椛。俺……ずっと嘘ついていた」

ふと橙矢の声が揺れた。

「橙矢さん?」

「さっき未練なんてないって言ったが……ほんとは…………死にたくない。もっとお前達と生きたかった……」

橙矢の頬を涙が伝い、止まらない。

「……とう……やさん……」

「…………ごめんな。最期になってこんな馬鹿なこと言っ――――――」

とそこで椛が橙矢を放して首に腕を回すと橙矢の視界が椛で覆われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いた時には唇を椛に塞がれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

一瞬橙矢の中の時間が止まる。というより頭が真っ白になる。

「………………………………………ッ!?」

そうこう考えているうちに椛が離れる。

「……………橙矢さん」

「椛……?」

二人して頬を真っ赤に染める。

「…………橙矢さん。私は………私は貴方が、東雲橙矢さんが好きでした。ずっと……ずっと…………」

「椛…………」

「貴方はもう充分に生命を果たしました。貴方が生きられなかった分私が生きます。それに………貴方のことは忘れません。………ですから、ですから橙矢さん、貴方の答えを聞かせてくれませんか?」

桜吹雪が二人を包み込んで二人の空間を作る。

「………………」

橙矢の姿が淡く光り、粒子と化する。そろそろ消える頃だろう。

橙矢は笑顔でこれまでのことを思い出しながら椛の頬を両手で包んで額に額をコツン、と当てて口を開いた。

「椛………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――俺も、好きだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間桜吹雪がより一層強くなって思わず椛は目を閉じる。

「ッ!橙矢さ―――――」

椛が再び目を開くとそこに橙矢の姿は無かった。

「橙矢……さん……………」

涙を流しながら精一杯の笑顔を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………さようなら。私の愛した愛しい人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後。

三途の川を小町の小舟に乗りながら映姫は散っていった一人の少年の一生を手にしている鏡で見ていた。

「なるほど………彼は相当な人生を生きていたようですね」

「映姫様?退治屋の一生を見ているので?」

「…………えぇ。しかしいくら経っても慣れませんね。人の別れというのは」

「そうですね…………あたい達だと尚更ですよ」

「………ですが今回のは特異です。なにしろ世界そのものから忘れられた人ですから」

「しかし彼は結局どうなるんでしょう」

「忘れられるか、ですか?でしたら安心なさい。彼の歴史は幻想郷縁起に描かれましたから。これで彼は幻想郷縁起がなくならない限り幻想郷で永遠に生き続けます」

「………ですが映姫様。残された者達はどうです?」

「………その心配はありませんよ」

映姫は笑みを浮かべると指で虚空に円を描く。

「この世は輪廻転生の世。魂はいくらでも廻り、そして巡ります。……それに二つの魂が二度と交わらないということは無いのですから」

「ふふっ………そうですね」

二人を乗せた小舟は三途の川の漂う霧の奥へと消えていった。

 

 




感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです!
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