今回からは第五章のスピンオフ、新郷神奈目線で書きたいと思います。本編とは少し台詞が違うときがあると思いますが話そのものには深く影響しませんので安心を。
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ではではどうぞ。
第一話
この世は理不尽と無秩序の塊か。それとも秩序が護られる安定した世の中なのか。
新郷神奈は普通の田舎町に生まれたごく普通の少女、だった。……あの地獄の風景を見るまでは。
ある事情により夜遅くまで学校に残っていた神奈は帰り道にとある場所に辿り着く。いや、辿り着いてしまった、というべきか。それが幻想郷。神との戦いの最中に放り込まれて神奈は訳の分からないままその渦の中に巻き込まれていく。
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恐る恐る一歩一歩歩き出しながら周りを警戒する。
学校に少しだけ残っていたら遅くなり、早く帰ろうと近道にと森の中にある道を通ったところ出られなくなっていた。
「何処……ここ」
空はすっかり暗くなり、明かりのひとつも見えない。どうやら森の中へと迷い込んでしまったようだ。
「参っちゃったな………あ、GPSがあった」
タッチ画面式のケータイ取り出すと立ち上げる。しかしそこには圏外の表示が。
「なん……だと……?」
電波が通ってなければケータイはあってもないようなものだ。
「どうしよう……………あ」
ふとケータイから視線を上げるとそれまで 見えなかったがひとつのぼんやりとした明かりが見えた。
(こんな山奥に住んでる人なんているんだ)
山育ちなのでそんなに驚くことなく感心してそちらに足を進める。明かりが点いているということは恐らく中に人がいるのだろう。
小屋ともいえるものの前に来ると少し違和感を感じた。何やら小屋の周りの地が一ヶ所抉られていたからだ。……まるでちょっとした隕石が落ちてきたかのように。
不安を感じながらも小屋の戸を叩く。すると中からこちらに歩いてくる影がひとつ。
軽い音を立てて戸が開かれる。
「はいはいどちら様で」
気だるそうな声の主が神奈の前に現れる。学生服を来ている少年だ。どうやら同じ高校生のようだ。
一応人に会えたことに安堵する。
「す、すみません……少し道に迷ってしまいまして……」
すると少年は何か見定めるように目を細める。
「それはご愁傷様」
「つかぬことをお聞きしますが……。ここの山から下りられる道ってありますか?」
「………」
すると少年は困った顔をする。何か変な質問だっただろうか。
「……あんた、ここが異世界だって俺が言ったら信じるか?」
「…………………は?」
何を言ってるんだこの人は。いや、道を訪ねておいてなんなんだがあまりにも馬鹿らしすぎて開いた口が塞がらない。
「あー、普通ならそういう反応するよな」
視線を逸らしながら気まずそうに頬を掻く。
「困ったな……どうしようか」
すると少年は何かに気付いたかのように少し神奈から距離を取る。
「ま、今からその証拠見せてやるから」
すると少年はおもむろに腰から刀を抜いた。…………って、ゑ………刀!?
「じゅ、銃刀法違反!?」
「………そこを動くな」
刀が閃くと同時に神奈の首筋を通り過ぎて背後へと刀が突き出される。
「え……………?」
刹那、神奈の背後に何かが突き刺さる音が聞こえた。
反射的に振り返ると歪な形をした生物が神奈の目の前にまで迫ってきていた。しかしそれは叶わず少年の刀により顔面を貫かれて絶命していた。
「ひ………!」
血飛沫が舞い、神奈の背を血で塗らす。
「……………少しやり過ぎたか」
少年は特に殺したことに関しては何も感じてないよう。それが逆に神奈の恐怖を駆り立てた。
「里を出たら常に警戒してろ」
冷たい一言とともに刀が抜かれて更に血が吹き出る。
あまりの突然の出来事に腰を抜かす。
「おいおい、大丈夫か?」
たった今生物を殺した人の手が差し伸べられる。自然と神奈の腕はその手を弾いていた。
「さ、触らないでください!」
自分でも何が何だか分からないまま踵を返して走り出す。
「ば……!おい待て!!」
少年が何か叫んでいるが神奈の足は止まらなかった。
…………視界の端に白い毛並みが見えた気がするがそれどころではなかった。
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「ハァ……ッハァッ…………」
どれくらい走った後であろうか、頼れる光が月明かりだけになった森の中で神奈は酷く後悔していた。
「うぅ………。私どうして逃げたんだろ……助けてもらったのに………」
あの時は気が動転していて何も考えられることが出来ずに逃げ出してしまった。
「来た道も…………忘れたし」
完璧な遭難である。
「おんやぁ、そこにいるは人間じゃないか?」
すると横から下品な声が聞こえた。人かと思い、思わず顔を上げる。しかしそこにいたのは先程少年が殺したものと少し似て似ていない生物がいた。
「おやおや、そこの綺麗なお嬢さん。迷子かな?」
「いや………!こ、来ないで………」
すぐに立ち上がって逃げようとする、が逃げた先に別の生物が。
「何処に逃げたって無駄だ。…………見たところ里の人間じゃなさそうだし……久々の人肉だ。余すところなく喰ってやるよ!」
「な、何なんですか貴方達は!」
「あ?俺らは下等の妖怪だ。妖怪の賢者にハブられた――――――」
「そいつを放しやがれェェェェ!!」
絶叫が妖怪の背後から聞こえるとその妖怪が飛んできた木によって貫かれた。
「ご…………!」
「…………ッ!」
突然の事に再び頭が混乱する。ただ分かることは何者かが妖怪を殺しに来たことだけだった。
妖怪達はすぐに乱入者を排除すべくそちらの方へ駆け出す。
「おい、そいつを今のうちに連れていけ!」
一匹の妖怪がそう言うと神奈の腕を掴んで奥へ連れていこうとする。
「いや!止めてください!!」
「そいつを放せって言ってんだろうがッ!」
妖怪達を振り切ってひとつの人影が神奈へと近付く。
「た、退治屋……ッ!」
「邪魔だ!」
神奈を掴んでいた妖怪を蹴り飛ばした人影、少年は神奈の肩を掴む。
「おい、大丈夫か」
「いや!触らないで………ッ!」
相当混乱しているのか少年の顔も認識出来ないようだ。
「チッ!やるしかないのか……」
少年は刀を振り上げると振り抜く。するとその軌道上にあったものが全て切り裂かれる。妖怪も例外ではない。
血が舞って全ての妖怪が崩れ落ちた。
少年は神奈の前へと来るとおもむろに顎を持ち上げて視線に自分を入れさせた。
「しっかりしろ。俺だ」
「え、……あ………」
向こうも気付いたのか視点があって焦点が橙矢に合わされる。
「あの時の…………」
「あぁそうだ。 …もう妖怪共はいない。安心しろ。…それで、だが」
「……いえ、もう何も言わなくていいです」
「そうか?だったら俺は何も言わねぇよ」
少年が手を差し伸べると今度はその手を取った。
「ん、今回は取ってくれるんだな」
「え、あのその………」
「まぁいいさ。さっきのことは水に流してやるよ」
「す、すみません………」
「気にしなくていいって言ってるだろ」
律儀なやつだな、と付け加えて起き上がらせる。
「怪我してないならまだマシか……無事で良かった」
少年が初めて笑みを溢す。
「さて、もう夜遅い。里まで送ってやるよ。他の妖怪共に出会したら面倒だしな。そういえばまだ君の名前聞いてなかったな。俺は東雲橙矢。…………人間だ」
何やら一瞬影が差した気がするが今はそれどころではなかった。
「あ、……わ、私は新郷神奈です。新しい郷と神に奈良の奈で新郷神奈です」
「そうか。新郷、よろしくな」
「は、はい」
神奈も安心したのか微笑む。
……これが後に神殺しとなる少年と神の血を受け継ぐ少女の出会いだった。
一応一話目が終了です。
感想、評価お待ちしております。
では次回までバイバイです。