東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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if storyの続きです。

今回は幽香ルート。中々書きやすかったです。

ではではどうぞ。




花妖怪の頁

 

 

 

 

 

 

 宴会の翌日

 

 東雲橙矢が太陽ノ丘へと着くと咲いていた向日葵達が一斉に彼に向いた。

「相変わらずな歓迎だな」

 よくもまぁこんな細工したものだと逆に感心する。だが彼女なら出来て当然だろう。なんせ『花を操る程度の能力』を持つのだから。

 自分の身の丈ほどある向日葵の間をかき分けてあるひとつの場所へと向かう。

 太陽ノ丘の中心部にある花妖怪の家。そこに橙矢は向かっていた。大切な用があるのかと聞かれれば否だが。

「…………何て言い訳しようか」

 もちろんここに来た言い訳、だが。ただフラりと来ただけで何かをしようとも幽香に言うことがあるからとかそういうこともない。まぁ最悪『頼まれていた妖怪退治の際にたまたま近くを寄ったから』でもいい。

 

 

 

 

 そうこうしている間に向日葵のトンネルを抜けて広い空けている場所に出る。その向こうには赤を基調とした家が建っていた。

「久々だなあいつの家も」

 最後に来たのは………確か『叢雲の異変』のとき。あまり思い出したくないが。とにかくその時に燃やし尽くした向日葵や花達は元気に咲いている。それを見れただけでも来た甲斐があったものだ。

「さて、とあいつは何処に………」

 辺りを見渡すとかなり離れたところで向日葵に水をやっている姿が目に映る。

「………いつも通りか」

 何も変わってないな、なんて当たり前のことを思いながら近付いていく。

「幽香」

「…………あら、橙矢。来ていたのね。気が付かなかったわ」

「嘘言え。向日葵を通して見ていただろうが。俺がここに来てからな」

「ふふ、さすがに解るのね」

「まぁな」

「けど貴方がここに来るなんて珍しいわね。何か用事があってのことかしら?」

「いや、別に用なんてない。暇だから来た」

「あらそうなの?てっきり婿に来てくれたのばかり」

「今なら冗談で済ませてやる」

「つれないわね。………けどほんとにそうなのだとしたら嬉しかったわ」

「おいおい、俺はまだ17だ。出来るわけねぇだろ。考えろよ」

「そんなの関係ないわ。私は貴方が愛しい。逆に貴方も私が愛しく思えば……成立じゃない?」

「生理痛?」

「やめなさい馬鹿」

「うぃ」

 と、幽香が水をやる手を止めて橙矢の方を向く。

「橙矢、せっかく来たのだから家に寄っていかない?お茶くらいは出すわよ」

「………そうだな、久し振りにお前と落ち着いて話をしたいし。言葉に甘えるよ」

「そう、ならいらっしゃいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 家の外に出されているテーブルにハーブティーの入ったカップが置かれ、橙矢の反対側にある椅子に腰かける。

「ありがとさん。……………ん、美味しいなこれ」

 一口飲むと透き通るような味が口のなかに広がった。

「紅魔館とは少し違うでしょう?まぁ香霖堂からの貰い物だけれど」

「香霖から?お前あそこと接点あったんだな」

「意外かしら?私は顔は広い方よ」

「何処ぞの人形遣いみたくお友達がいないものかと」

「やめてちょうだい。私にもあの子にも失礼よ」

「そりゃ失礼」

 戯けるように肩を竦めてもう一口飲む。

「俺が言うのもなんなんだが……よくあれから花を咲かせたな」

「あれから……?あぁ貴方が起こした異変ね。多少の苦労はしたわ。けど私の好きな花達を咲かせるためだもの」

「………そうか」

「なに?嫉妬かしら?」

「んな訳あるか。何で花に嫉妬しなけりゃならん」

「時には素直になるのもいいかもしれないわよ」

「余計なお世話だ。……それにそれはよく言われてきた」

「だったら尚更じゃなくて?」

「ふん、うるせぇ」

 幽香から視線を外してそっぽを向く。

「あら、ご機嫌斜めになっちゃったかしら?」

「………別に」

「そんな拗ねないでちょうだい。まぁ拗ねてる貴方も見てるのも悪くないけど」

「あのなぁ………拗ねる拗ねるって別に俺は拗ねてるわけじゃ――――」

 幽香の表現に苛ついて視線を戻す。と同時に絶句した。目の前に身を乗り出して橙矢の顔を覗き込む幽香の顔があったから。

「あ、あの………幽香さん?」

「………何かしら?何か摩訶不思議なものでも見たような顔して」

「何でこうも顔が近いのでしょうか。説明を求めます」

「愚問ね。愛しい人の顔を見ていた。それだけよ」

「………よく臆面なく言えるなそんな恥ずかしい言葉」

「私と貴方の二人きりなのよ。何を恥ずかしがる必要があるのかしら」

「いやそういうことじゃなくてだな」

「橙矢、どうしたら貴方は私の気持ちに気が付いてくれるのかしら?」

「……………………」

 真っ直ぐな好意に思わず視線を外す。これほどストレートにぶつけられたことはなかったため少しばかり焦ってしまう。

「……悪いな、この場合どう答えてやればいいのか分からねぇや」

「別に答えなんて私は求めてなんていないわ。貴方がここにいる。私の傍にいてくれる。それだけで充分だもの」

「傍に、ねぇ。だがな幽香」

「私は妖怪、貴方は人間。寿命は比べるまでもなく違うわ。けどね橙矢、長さなんて関係ないわ。大切なのは中身よ」

「…………あぁそうだ」

「私はこれからもずっと………ずっと貴方といたい。これに偽りなんてないわ」

「………………」

「もちろん貴方がそれを望まないのなら拒絶してくれたって構わないわ。……貴方の幸せの邪魔をしたくないわ」

 急にしおらしくなった幽香を見てそれが本気であると感じた。

「…………ハッ、最強の妖怪も堕ちたものだな」

 橙矢が意地悪げな笑みを浮かべて言葉を続ける。

「たった一人の人間に左右されるなんざお前らしくねぇ。いつもいつもお前は力ずくでやってきたじゃねぇか。今回もそうだ。……どうだ、力比べと行こうか?」

 腰に刺してある童子切を抜いてその刀身に幽香を映す。明らかな宣戦布告。それに対して幽香は驚いた顔をするもすぐに好戦的に口元を三日月に吊り上げる。

「……橙矢が偉そうに言うようになったじゃない。……そうね、貴方の言う通りだわ。解答を待つなんて私じゃないものね」

 立て掛けてある傘を掴むと橙矢と一気に距離を取った。

「勝負を挑むわ東雲橙矢!私、風見幽香が勝ったら私の気持ちに答えなさい。貴方が勝てば好きにするがいいわ!」

 高らかに宣言する幽香を見て楽しそうに椅子から立ち上がると童子切の刀身を全て抜く。

「上等だ幽香!その勝負受けて立ってやろうじゃねぇか―――――!!」

「決まりね橙矢!行くわよ!!」

 二人は同時に駆け出して距離が零になると各々の武器を振り下ろして衝突した。すると辺りに衝撃波が発生し、花を揺らす。

「ッ…………!」

「相変わらずなだな幽香……!」

「貴方もね!」

 力任せに幽香が橙矢を押し切って下から傘を振り上げる。

「なめんな……!」

 鞘を引き抜いてペン回しのように回転させると弾く。

「早々にリタイアして幻滅させんなよ幽香!」

傘の上から刀を叩き付けて流れるように回転して鞘を幽香に振り抜く。だが避けられると横から殴り付けられ、吹き飛んだ。

「チッ!しゃらくせぇ!」

 傘の先から光の奔流が放たれて橙矢の足下に着弾して煙幕が視界を覆う。その中を幽香が突っ切って突撃してきた。

「ッラァァ!!」

 強化した腕で地を殴り付けて地盤を盛り上げて幽香の進行を阻む。その衝撃を使って後ろに後退した。やがて煙幕が晴れると互いに睨み付けあっていた。

「…………楽しいわね橙矢」

「馬鹿言うなよ。お前と殺り合う時はいつも命懸けだっての」

「それが楽しいんじゃない。いずれ貴方にも解るわ」

「ハッ、あいにくだが娯楽は睡眠だけで充分だ」

「それだけじゃつまらないわ。……私が教えてあげるわよ」

 傘を真っ直ぐ橙矢に向けて構える。

「さぁ、本番はこれからよ。用意はいいわね!」

「ハァ……。まったく……勝手に殺り合おうなんて言ったのはお前で本番も勝手に決めて………まぁそれがお前の良いところかもしれんが」

 刀を構え直して幽香を睨み付けた。

「……あぁ、お前の言う通りになってやるよ。お前の全力、この刀で受け止めてやる!!」

 それを聞くなり幽香は笑みを浮かべ、体勢を低くする。対して橙矢も一気に低くすると、

「行くわよ橙矢!」

「来な!幽香!」

 

 

 

 

 

 

 同時に駆け出して――――――

 

 

 

 

 

 

「「―――――――!!…………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつ果てることなく続く一人の人間と一匹の妖怪の戦いを見届ける向日葵は、力強く、綺麗に咲き誇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回は咲夜ルートです。

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです。

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