あ、あとがきにて大事なお知らせがあります。
ではではどうぞ。
軽い音を立てて小さな四つのタイヤが回って橙矢を前へ前へと進ませる。
「どうだ橙矢。揺れてないか?」
「だったらとっくに言ってるよ。問題ない」
車椅子の後ろから押す妹紅に心配されるが素っ気なく答える。
二人は現在妖怪の山へと来ていた。と言ってもまだ椛がいる場所にはほど遠いが。
「………橙矢」
「何だよ」
「何で妖怪の山なんだ?」
「……………椛を一目会いたくてな。ただの娯楽程度に」
「あー、あの白狼天狗ね。………なぁ、そこまであの犬が気になるのか?」
「何だよ急に。まぁ気になるのか気にならないか、と聞かれたら確かに気になる。あいつが今どうしてるか、そして元気にやってるか、それが気がかりでな」
「…………そうか、橙矢はあいつを選んだんだな」
「は?何言ってんだよ。……頭大丈夫か?」
「私じゃ駄目なのか?」
「……………何も駄目とは言ってねぇだろうが。椛はきっと俺の心臓を貫いたことをまだ気にしているか。……それを確かめに行くだけだ。あいつはそういうの気にするタイプだからな」
「………………」
「それにさっきのお前が言っていたことが本当だとしたらわざわざお前と来たりしてねぇよ」
「……………そうか」
「しおらしくすんなよ。お前らしくない」
「……そうかな。………そうかもね」
「………さて、あとどれくらいかしらね」
押されるがままに二人はさらに奥へと歩いていった。
▼
「盟友がいなくなった?」
友人である河童の河城にとりが将棋の駒を差しながら目の前にいる椛にオウム返しに聞く。
「はい、永遠亭で昏睡状態で寝ていたのですが先程急に姿を消しまして」
「うーん………、それはなんかなぁ……。他の部屋に移されたとかは?」
「全ての部屋を視てみましたが何も」
「困ったね。……直接永遠亭に行ってみるのもありだけど私はつい先日行ったばかりなんだよね……」
「にとりさんが?何用で?」
「なに、ただの提供さ。椅子に滑車がついた車椅子ってのをね。それを使えばあら不思議。足に障害をもって歩けない人も移動可能に」
「へぇ……そんなものを作ってたんですね」
「まぁこっちはかなり貰いましたからね」
手で銭の形を作る。余程それなりの額を貰ったのだろう。
「医者がそこまでするなんて珍しいですね」
「うん、そこは私も疑問なんだよね。知り合いだったのかな、使う人が」
「………どう考えてもいませんよねそんな人………」
―――――瞬間、椛が何かを感じ取ったのか耳が逆立つ。
「侵入者か!!」
立ち上がって天叢雲剣を握ってにとりに振り向く。
「にとりさんすみません。どうやら侵入者が来たようで、私はこれで失礼します」
「あいあい、頑張り過ぎないでねー」
身を屈めると滝壺から飛び出た。その際に水が派手に吹き飛んでそれが合図となる。
待機していた白狼天狗達が椛の後に続いた。
何ら変わりない、いつもの光景だった。
着地するとさらに跳んで切り立った岩に足をかける。
「私が先陣を切ります。他の者達は後に続きなさい!!」
誰よりも速く駆ける。勢いを殺さずに木々の中を駆けて山を下る。他の天狗では真似できない、白狼天狗だからこそ為せる技。鴉天狗はそれこそ天狗の中では最速だがそれは空での話。地を駆けることに関しては白狼天狗の方が上だ。
やがて山の麓近くに来ると急停止して止まった。
「ここらのはずなのですが………」
辺りを見渡すが侵入者らしき人物は誰一人としていない。それどころか先程までついてきていた白狼天狗すら見えない。………まさか。
「場所を間違えた………」
慌てて千里眼を使って山全体を見渡す。すると妙に白狼天狗が集まっているところがあった。特に距離は離れていない。
「………一体誰が……」
恐らく侵入してきたのは新参者の妖怪か里の人間だろう。そう予感して侵入者の顔を見る。
「竹林の蓬莱人………と……………え?」
椛の目にはずっと会いたかった人の顔が映っていた。
「橙矢………さん……………」
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「おい橙矢。この状況どう説明すればいい?」
呆れながら庇うように橙矢の前に立つ妹紅の向こう側には何十人もの白狼天狗。
「………そういや忘れてたわ。妖怪の山って侵入禁止だったんだ」
「……なんかすまない。私も解ってたはずなんだけど」
「貴様等何者だ!!」
白狼天狗の一人が声を上げる。それに妹紅は両手をあげて戦意がないことを示す。
「まぁ待て待て。私達に敵意はない。こいつがちょっとばかし会いたい人がいてさ。そいつと会ったらすぐに出てく」
「そんな嘘通じると思っているのか!いいから出ていけと言っているんだ!」
「……………あぁ言ってるけど橙矢?」
「………。頼むよお前等。俺は椛と会いたいだけなんだ。それだけでいいからさ」
「知るか!大体貴様は何者なんだ!」
「………なぁ妹紅、これって言っていいのか?」
「さあ?遅かれ早かれバレるからいいんじゃないか?」
「うーん、名乗るのは苦手なんだよな……椛がいてくれば助かるんだけど………」
「まぁそこは仕方ないだろ?いないわけだし」
「はぁ………。分かったよ。いいか、俺の名前は東雲―――――」
「―――――橙矢さん!!」
「そうそう、橙矢――――――へ?」
「……おい橙矢」
妹紅が橙矢の肩を叩いてある一方向を指差す。
「………やれやれ、ようやく来たか」
そちらを向くと――――あれ、誰もいない。
「…………ん、んん?……あの妹紅さん。何もいないのです――」
が、と続けようとしたがその前に後ろから何者かに突撃される。車椅子から落ちそうになるが何とか踏みとどまる。
「橙矢さん!」
聞き覚えのある声が背後からしてすぐに誰か分かった。
「………椛か。久しいな」
「はい!橙矢さん……。本当に……お久し振りです……」
振り向いて約二ヶ月振りに見るその顔は喜びに満ちていた。
「…………」
「橙矢さん………」
椛が橙矢を抱き締めて胸に顔を埋める。
「馬鹿……大袈裟過ぎだっての」
苦笑いしながらも橙矢も椛を抱き締めた。
「………ずっと……ずっと待ってました。貴方が、橙矢さんが起きることを」
「……待たせて悪い。けど今日起きたばっかなんでな」
すると椛は心臓辺り擦り出した。
「身体は……身体は大丈夫なんですか!?」
「おかげさまでな。見ての通りだ」
「あ、あの……さ。邪魔しちゃ悪いと思ってんだけど……そろそろ話を進めていいか?」
妹紅が咳払いしたところで周りに白狼天狗達がいたのに気が付いて椛が慌てて橙矢から離れる。
「あ、いやその、これは、ち、違……。いや違わないで……あ、あぁ……」
混乱して白狼天狗達に椛が必死で弁解するがそもそもついていけてないようだった。
「…………椛、落ち着けよ」
「あ、あうぅ……。……すみません皆さん、その……後の処理は私がやっておきますから。………帰ってください」
ひとまず落ち着いたのか依然として混乱してる白狼天狗達を指揮して返すと再び橙矢の元へと戻ってきた。
「……いいのか?全員帰して」
「………はい、構いません。橙矢さんですからね」
「なんだ橙矢。何回もここに来てるのか?」
「今日含めると四、五回………かな。いやいやそよりも妹紅。お前さっき椛がいる方とは逆の方を指したろ。そのことについて俺と少々裁判しないか」
「サプライズだよサプライズ。単に驚かしちゃつまらないだろ?」
片目を瞑って舌を出す。
「………時を考えろアホ」
「……けど橙矢さん。……どうして椅子に座っているんですか?まだ身体が慣れてないとか……ですか?」
「ん、あぁ………それはもう少し落ち着いてから話すよ」
「……橙矢、いいのか?」
「……もう少しだけ幸せを感じさせてやれ。すぐ陥れるような馬鹿な真似はしねぇよ」
「………それは多分間違ってるぞ」
「……………。勝手に言ってろ。俺は今は話さない」
「別にいいけど……後悔はさせないでやりなよ」
「言われなくても」
「………橙矢さん?」
「ん?どした椛」
「あの………せっかく会えましたことですし………奥で話しませんか?」
「…………そうだな、そうさせてもらうよ。妹紅。お前はどうする?」
「…………………………いや、私はいいよ。元々その白狼天狗まで会わせるのが私の仕事なもんでね。邪魔者はこれで失礼するよ」
踵を返すと来た道を戻っていく。そんな背に一言声をかける。
「……妹紅、何処行くんだよ」
「……決まってるだろ。帰るんだよ。……私は邪魔者らしいからな」
「何言ってんだよお前」
「…………」
顔だけ振り返って微笑むと、また戻して片手を上げた。
「じゃあねお二人さん。………暇だったら顔を出してくると嬉しいよ」
「…………………」
「………………妹紅さん」
悠然と戻っていく姿は何処か何かを我慢しているかのようにも見えた。
「…………馬鹿。本物の馬鹿だよあいつは。正直に言えばいいのによ」
「………………橙矢さん、行きましょうか」
「……そうだな、行こうか」
歩いていく妹紅に背を向けると車椅子を動かす。すると椛が後ろから押してくる。
「こんな感じでいいんですか?」
「ん、押してくれるのか?」
「えぇ、これで橙矢さんが楽になるなら」
「………ありがとう、助かるよ」
「いえ、私が好きでしていることなので」
「………これからもそうしてくれると嬉しいよ」
「ご冗談を。今は起きたばかりですから足の感覚が戻らないだけでしょう?」
「…………だとしたらどれだけ良いことか」
「橙矢さん……?」
「悪いな、俺はもう二度と歩けない」
「…………え」
「神経が切れたんだってよ。足の自由が効かない。それどころか感覚がない」
「永遠亭の医者でも駄目だったのですか?」
「あぁ、無理だったよ。…………ここまでは妹紅の力があったから来られた。けど………もう俺は来るつもりはない。だから最後にお前に会えて良かった」
「ちょっ、ちょっと待ってください。馬鹿なこと言わないでくださいよ。……いくら橙矢さんといえど笑えませんよ」
「……………」
「橙矢さん!」
「いい加減にしろ!治らねぇもんは治らねぇんだよ!」
怒号一喝。それだけで椛を黙らせる。
「…………これは俺が犯した罪の報復だ。解るんだよ。俺はもうこの世界で大それたことは出来ない」
「…………」
「………まぁあくまでこれまでは医者の意見だ」
「………………?」
「何しょげてんだよ。可能性がないとは一言も言ってないだろ」
「……けど橙矢さん。貴方は足の神経が切れているんじゃ」
「人間の自然治癒力だったら、の話だ」
「どういうこと……ですか?」
「出てく前に聞いたんだ医者に。……あまり奨めはしないがその二本足で歩きたいのなら人間では無理ってな。……つまり人外になればいいだけのこと」
人間が人間をやめる。それはこの幻想郷においてもっとも業が深い罪だ。
「手っ取り早いのは不死の薬を飲むことだ。妹紅に言っちゃああれだがたかが足二本を治すためだけに不死になろうとは思わねぇよ」
「では妖怪に、ですか?」
「……いや、もっと上だ」
「上………?」
「…………あぁ、俺の中にはまだ神力がある程度残ってるらしいからな………神になろうと考えている」
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橙矢から放たれた言葉に椛は耳を疑った。
「神になる……?何を馬鹿なこと言ってるんですか?」
「神と言っても東風谷と同じような現人神だぞ。……人間とそんな変わりないが多少の自然治癒力は望める。……まぁ妖怪の方がそっちは優秀だがな」
「だったら妖怪の方がいいじゃないですか!」
「…………………そうだな。あぁそうだ。そんなことは解ってる。けどそれを踏まえての答えだ」
「どうして……どうしてそこまで?」
「……………俺が妖怪になれば恐らくお前と同じ白狼天狗になるはずだ」
「えっ……」
「知らないか?妖怪の持つ妖力を普段から浴びていれば人間であろうと妖怪になるって。このケースの場合一番妖怪の中で椛、お前がそれに該当している。それなりに会っている仲だ。その分俺にはお前の妖力が悪い言い方をすると憑いている」
「橙矢さんは……私とは嫌……ですか?」
「………正直言うと俺はそっちを選びたい」
「だったら」
けど、と椛の言葉を遮って橙矢は続ける。
「そうしたらまたお前に迷惑がかかるんじゃないかと思ってな………。もう嫌なんだよ俺のせいで他人に迷惑をかけるのが」
「……………橙矢さん」
「だったらお前が幸せになる方を俺は選ぶ。……だから俺は――――」
言いかけたところで頬に弾けるような音が響き、次いで鈍い痛みが走る。そこで橙矢は椛にはたかれたと理解した。
「何が……私の幸せですか…………」
驚愕して椛の顔を見ると目に涙を溜めていた。
「椛…………?」
「ふざけないでください!貴方に会えなくなるのが私の幸せ!?冗談じゃないです!私は………!私は貴方がいないと……貴方と一緒じゃないと幸せなんて感じられません!」
はたいた状態から崩れ落ちて橙矢に寄りかかる。
「お願いです……。お願いですから……もう自分一人で背負うのはやめてください……。貴方には私の他にも理解してくれる人がいるんですから……。ですから貴方が背負っているもの………まずは私にも請け負わせてもらえませんか………?」
「……………………お前………」
橙矢はすでに椛が自らのことを大切に思ってくれている、ということはとっくに気が付いていた。だがこれほどまでとは正直思っていなかった。
「…………椛」
「………はい」
「………………本当に……俺はお前らと一緒にいてもいいのか?」
「当然ですよ!」
「また……迷惑をかけるかもしれないが……」
「そんなこと気にしていたらキリがないです」
「…………ありが……とう」
「それを言うのは足が治ってからです。して橙矢さん。改めて聞きます。貴方は足を治すために種族を変えなければなりません。何に成りますか?」
「……妖怪。さらに強いて言うなら白狼天狗だ。……手伝ってくれるか椛?」
微笑んで椛の頭を撫でる。椛はそれが終えると橙矢を抱き締めた。
「はい!もちろんです!」
「……ありがとうな。ほんとに」
「ふふ、どういたしまして。それと橙矢さん」
「ん?」
不意に先程はたかれた箇所に柔らかいものが触れた。それが椛の唇だと気付いて頭が真っ白になって混乱する。
その間に椛は離れると満面の笑みを橙矢に向けた。
「橙矢さん、愛してますよ」
それは椛からの最高の贈り物だった。
▼
数ヵ月後。
妹紅は妖怪の山へと足を運んでいた。特に理由はない。ただ登りたくなった。それだけだ。
「おいそこの人間。止まれ」
すると1匹の白狼天狗が妹紅の前に現れた。
「もうすでにここは妖怪の山だ。お前みたいな人間が来るところじゃねぇよ。とっとと失せな。………にしてもお前は運がいいな。俺じゃなくて他の白狼天狗だったら躊躇なしに襲いかかられるぞ」
明らかな拒絶意志。だが妹紅はそれに笑みを浮かべるだけだった。
「………ったく、馬鹿だなお前は。私が蓬莱人だってことは知ってるだろ?」
「さぁ知らねぇな。第一に俺とあんたは初見だろ?」
「白狼天狗となった今では、な。そうだろ橙矢?」
東雲橙矢。かつて人間だったが妖怪へと種族を変化させた者。そして今の今まで里に顔を出さなかった人物。
「誰だよそんな奴。その人間は叢雲の異変の時に死んだはずだぞ」
「人間としてはな」
「…………………何が言いたい」
「……お前は変わらないな。それだけだよ」
「……俺は変わっちまったよ。何ヵ月か前にな」
「…………後悔は」
「してねぇよ」
妹紅の言葉を遮って白狼天狗が否定する。
「………してねぇよ。あのまま足が治ってなけりゃあ俺はそのままつまらねぇ日々を送っていたかもだしな」
「…………………元気そうでなによりだ」
「お前こそな。いつまでも変わらないでいて良かった。……まぁいつまでも山で燻っていちゃあ身体が腐っちまう。……そろそろ落ち着いてきた頃だしな。近々里にも行こうと思ってる」
「ッ!本当か!?」
「あぁ、慧音先生から妖怪目線での妖怪の山を語ってやってほしいだとよ。ガキに」
「…………それは良いことを聞いたな。いつにやるんだ?」
「さぁ、詳細はまた後日って言ってたからそろそろ日が決まるんじゃないか?てか先生から聞けばいいだろ。………ん、バレたか」
不意に白狼天狗が振り向いて苦笑いする。その視線の先には―――
「橙矢さーん!」
もう1匹の白狼天狗だった。橙矢の後ろに着地すると落ち葉が舞う。
「まったく、何処に行ってたんですか!今は侵入者がいないからいいものの即戦力である橙矢さんがいなくなったら機能性がなくなるんですよ」
「悪い悪い。けど俺がいなくなったところでそこまで堕ちるとは思わないけどな。思ってる以上に頑張ってくれてるさ。それに俺はお前と違って位が低いから自由にあっちこっち行けるんだからな。てかお前こそこんなところ来てていいのか?」
「橙矢さんは自覚がないだけですよ!位が低くても貴方は白狼天狗の中でも一、二を競うほどの実力者なのですよ!?」
「それは言い過ぎだ。白狼天狗になってからまだこの身体になれねぇからロクに動けやしねぇ。と言うか一番はお前だろうが椛」
「いいですか!貴方がいつもいつもそうやってやる気のなさそうに哨戒の時に寝ているからそれなりの位が与えられないんですよ!」
「大層な位なんざいらねぇよ」
「橙矢さん!」
「………………ハァ、解った解った。そろそろ帰ろうと思ってたところだ。すぐに戻る」
「………そうですか。なら早くしてください」
「………っと悪いな妹紅。上司様がお怒りだ。というわけだからそろそろ戻るわ。一応日付とか決まったらお前にも知らせる」
「あぁ………頼むよ」
「じゃあな。また今度」
踵を返して椛と共に山の奥へと歩いていく。その背に声をかけた。
「橙矢」
「…………」
「お前は今、幸せか?」
「…………………あぁ幸せだ」
顔だけを妹紅へと向けた。
「人の身を捨ててもか?」
「…………人間のままだと歩けずに一生を送っていたからな。……これが俺が思う最善の策だ」
それだけ言うと跳んで木の枝に乗って駆けていった。
それを見ていると橙矢が急に木々を飛び越えてもう一度妹紅へと振り返る。そして微かに笑みを浮かべた。何も言わずにそのまま木々の中へと消えていった。
そしてその日、二度とその姿を現すことはなかった。
かつて妖怪を忌み嫌っていた退治屋は妖怪である白狼天狗と成った。果たしてそれは彼にとって幸か不幸か。だが彼は即答するだろう「幸であった」と。妖怪の身体は持とうとも心は人間のままであり東雲橙矢という人格は消えてないからだ。たかが寿命が少し延びただけのこと。
それに彼には愛し愛される者がいる。その者とならいつだって何処だって幸になる。
彼は、東雲橙矢は一度世界の誰からも忘れ去られ、そして幻想郷へと迷い込んで様々な出会いを繰り返してきた。その中で彼は大切なものを見つけ出し、護ることを誓った。東雲橙矢はもう二度と誰からの記憶からも消えない。逆に彼も二度と誰かを拒絶するような真似はしない。忘れられることがどれほど悲しいか知っているが故に――――――
読んでくださりありがとうございました。
さてさて前書きでも言った大事なお知らせ、というのはですね………。また、東方空雲華シリーズの続編を書かせて頂きます、ということです。本編ではなく白狼天狗の頁、の続編です。つまり橙矢君が白狼天狗に成ったその後を書いていこうと。その投稿はここに同時に載せるとごっちゃになるため新たな作品として投稿します。それの詳細はまた後日。
次回は新郷神奈ルートです。
では次回までバイバイです。